一寸の虫に五寸釘

だから一言余計なんだって・・・

MOMA

2010-10-05 | うろうろ歩き
マンハッタンの中ではグッゲンハイム美術館(企画展準備中で一部の展示のみだったので駆け足)と近代美術館(MOMA、これも大きかったので賭け足)を回りました。

こういうところを見ると、日本は明治維新以降の近代化と敗戦後の高度経済成長はして世界第2位の経済大国にまでなった、富の蓄積という点ではまだまだ不十分なところでピークを迎えてしまった(ここであきらめちゃいけないですけどw)と思います。

特に美術のような「衣食足りて」系の蓄積だとそのへんの差を実感します。まあ、その期間もアメリカはずっとGDP世界一だったわけですからストックの部分で追いつくのは無理があるのですけど。


ちょうどMOMAではマティスの企画展をやっていたのですが、日本でよくある企画展のようにどこそこの美術館からまるまる借り出した(最近のオルセー美術館の改装に伴う各所での印象派展など)ものでなく、自分の所蔵品に他所からの貸出を加えて厚みのある展示になっています。

このへんは、全米各地の美術館だけでなくヨーロッパの美術館とも距離的に近いというアドバンテージもありますね。

それから、展示作品のキャプションを見て気が付いたのですが、MOMAが購入したものは意外と少なく、"gift of xx"(寄贈)
とか"xx fund"(基金?)の所有というものが多いこと。
ファンドの中には独自のコーナーを持っているものもいくつかありました。

ここでfundと別にfoudationというのも登場します。たとえばこれ

 Kenneth Noland
 Trans Shift, 1964
 Acrylic on canvas, 254 x 288.3 cm
 Solomon R. Guggenheim Museum, New York,
 Purchased with funds contributed by
 Elaine and Werner Dannheisser and The Dannheisser Foundation

 81.2812
 (C) Estate of Kenneth Noland/Licensed by VAGA, New York, NY

fundは「投資ファンド」の「ファンド」と同じ作品の所有や購入を目的とする基金で、foudationは法人格のある財団みたいなものでしょうか。

なのでソロモン・R・グッゲンハイム美術館Solomon R. Guggenheim Foundationが運営していて、ソロモンの弟(ともに鉱山王の一族らしい)は"Simon Guggenheim fund" を残してMOMAに展示されていたりします。

このへんの仕組みを知ろうと、帰国してから『美術館は眠らない』というホイットニー美術館のdevelopment officeという資金調達をする部署でフェローをしていた人の本を探して(今は絶版)読んでみました。

この本によると、大きな時代背景としては、個人の名を冠した美術館が個人の手を離れて非営利目的の公益法人としての認定をうけるよになったのは1960年代から70年代にかけてで、同時にその時期から美術館にdevelopment officeという部門が設けられるようになったといいます。

一方で、財団とか基金と聞くと、下世話な私はすぐ相続税などの税金対策を考えてしまうのですが、1970年代までは作品を美術館に寄贈する際には寄贈時の市価を申告すればほぼ100%税の控除を受けられたものが、1986年からは36%になり、しかも鑑定士の評価が必要になってしまったそうです(現金の寄付も同様)。
 
ただ一方で、アメリカの富豪や企業家には、税制上の動機以上に、豊かになったぶん社会に還元しよう、また自分たちの文化は政府の介入なく自分たちで支えようという意識が強く、社会貢献として文化活動への資金が継続的に流れているそうです。
そしてその資金を取り込もうと、それぞれの美術館がしのぎを削っているようです。


この本ではこれと対比して、公立が多く「お上の予算」に縛られている日本の美術館や、企業などの芸術への援助のありかたを描いていますが、その辺の構造はこの本が出てから20年経った今では多少は変わっているかも気になるところです。
 

美術館に行っても、ソロバン勘定が気になってしまう性分は如何ともしがたいようですが、日本の美術館も負けずに元気をだしてもらいたいものです。

 
余談ですが、Musium Shopは美術館の1階と通り向かいの2箇所にあります。
ただ、売っているものは所蔵品のポスターや書籍を除くと、小物類はどこかで見たことのあるものが多く、日本の雑貨店の品揃えの良さにあらためて感心します。
ちなみにMuseum Shopの奥の一角にはMUJI(無印良品)のコーナーがあったりするのもその印象を強めます。

一方で表参道にMOMA Design Storeというのがあり、これは三洋電機がライセンスを得てやっているようです(パナソニックになったらどうなるんだろう)。
ネット通販もあるけど、売れているんでしょうか。
  






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