一寸の虫に五寸釘

だから一言余計なんだって・・・

『プリシラ』

2010-02-14 | キネマ
ひとことで言ってしまえば、3人のゲイのロード・ムービーなんですが。

オーストラリアのDrag Queenが都会(多分シドニー)からアリススプリングス(エアーズ・ロックの最寄の都市で、オーストラリア大陸のど真ん中の僻地)でショーをするために「プリシア」と名づけたバスで旅をするという話です。
(Drag Queen:女装のゲイ。語源はこちら参照)。以下ちょっとネタバレ注意)


ゲイ/Drag Queenという設定に人生の喜怒哀楽を凝縮した味のある脚本に、芸達者(駄洒落でなく)なキャストとオーストラリアの大自然があいまって、いい映画になってます。

1994年の映画で、まだ若いヒューゴ・ウィーヴィング(Matrixの"Agent Smith"、ロード・オブ・ザ・リングのエルフの姫の父親、懐かしい!でも、こっちの方が先の作品なんだよね)やガイ・ピアース(これがデビュー作に近いんじゃないかな)が生き生きと演技しています。

「私たちゲイは都会の壁に守られている」と感じるところや、子供に対して自分の「ショウ・ガール」としての仕事に負い目を感じつつ理解してもらいたい父親の気持ちなど、普通のサラリーマンにも通じるところがあるなどと感じながら、一方で、80年代のディスコ・ミュージック満載の音楽と奇抜な衣装と達者なダンスで楽しめる映画になっています。

これもおすすめ。


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「いのちを守る」政策に立ちはだかる「自分を守る」壁

2010-02-13 | あきなひ

金融法務事情の2/5号に「熱血対談 金融円滑化法実務の定石」という連載の第2回「件数は結果であり、目標にあらず」がけっこう「熱血」で面白い、というか緊急対策の政策立案の難しさのいい実例になってます。  

以前、亀井大臣のモラトリアム発言の時のエントリ(参照)でちょっと触れたように、前のバブル崩壊局面において中小企業への融資が形式上は中小企業になる投資ビークルとしてのSPCへの融資にすり変わって行ったということが、今回も起きるのではないかという指摘がなされています。  

小田(大輔弁護士) パブコメ(金融円滑化法政府令関係5番)によれば、SPCのうち会社法上の会社に該当するものは「中小企業者」に含まれるとの見解が示されており、線引きと言う意味では明らかなのですが、立法当時、当局は、流動化のビークルとしてのSPCはほとんどが会社法上の会社に該当しないとの認識のもとに、会社法上の会社でないSPCを適用除外としておけば足りると考えていたようです。ただ実際には、合同会社をビークルにして不動産の証券化をしたりしているケースがあるわけです。SPC(合同会社)に対するノンリコースローンの条件変更等を促進しても中小企業金融の円滑化に直接つながらないし、法の趣旨からは外れると思いますが(以下略)  

行方(洋一弁護士) 
パブコメで「立法事実の認識に誤りがあるのではないか」とされているものですね(以下略)

このコメントを付けた人の心意気は立派だと思いますが、金融庁は立法の際に実地に検査に入っているSESCなどにSPCの実態をヒアリングしたりはしなかったのでしょうか。   

行方 結局この論点は、一昔前に中小企業向け融資の実績を積み上げるためSPCや大会社の関連会社などが悪用されたことが、金融円滑化法でも防ぎきれてないということでしょうか。 
小田 ご指摘のとおりだと思います。

ちなみに一般企業の名誉のために言えば、一昔前に「悪用」したのはもっぱら銀行が自分のノルマを消化するためや不良債権の「飛ばし」会社の延命のためだったように記憶しています。(当然結果的に恩恵をこうむった企業があるのは事実ですが。)  

行方 現時点では、法令を改正するのも容易ではないでしょうから、悪用事例については、検査や監督を通じて検出するしかないのかもしれませんが(以下略)  そうはいっても「悪用」と断定するのは難しい、という話になります。
小田 ノンリコースローンについては、今の不動産市況を反映して、債務の弁済に支障を生じており、又は生ずるおそれのあるもの」に該当するケースもあり得ると思いますので、その場合に・・・実績として積み上がっていくことには、やはり違和感があります。  

ダヴィンチのように、あきらめ早くSPCをデフォルトさせるところがあると、特にそうですね(参照)。  

小田 しかし、法令上、開示・報告対象に該当する場合に、逆にそれを集計していなかったら、かえって問題になりませんか? (中略) 
行方 たしかに行政側での明確化を期待したいですね。もっとも、金融機関側でも、条件変更等の目標数値を掲げるような取り組みが、怪しげな事例を紛れ込ませる原因になっているのではないでしょうか。 (中略) 
小田 理念はわかるのですが、法令上除外事由に該当しない場合のSPC向け貸付債権について、現実に条件変更をするケースもあり得て、それを開示・報告するのが不適切だというのも一方で言いにくいでしょう。 
行方 だからといってSPC等を悪用して積み上げをしてはいけない、そういう常識的な線ではないでしょうか。 
小田 そういう意味では・・・開示・報告に関する態勢整備上の問題が見受けられることはあり得るのかもしれませんが、問題になるのはきわめて悪質なケースに限定されると私は思います。 
行方 個々の債務者実態をきちんと把握していない段階で、目標数値などを決めるからおかしくなるのですよね。ここのあたりは運用上なかなか悩ましいですが、金融機関側でも意識改革が必要かもしれませんね。  

金融機関の業界紙にしては、「熱血対談」というだけあってかなり踏み込んで言及されていますが、「いのちを守る」政策の前には「自分を守る」という壁が立ちはだかっていることがよくわかります。 

そのへんのインセンティブを調整するのが政策立案の腕の見せ所だと思うので、せっかくの「政治主導」であれば掛け声だけでなく作り込みの部分でこそ力を発揮していただきたいと思います。

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『北国の帝王』

2010-02-12 | キネマ
この映画は、中学生か高校生のときにテレビで観て、題名は忘れたもののずっと記憶に残っていたのですが、TSUTAYAをぶらついていて発見し、即鑑賞。

期待にたがわず面白かった。


1973年の作品ですが、舞台は1930年。大恐慌下のアメリカで、職を求めて国内を渡り歩く定職・定住先を持たない"Hobo"と呼ばれた連中がいました(親父ギャグ自粛)。映画は、移動のために貨物列車などに無賃乗車を繰り返すHoboとそれを取り締まる車掌の戦いの話です。

Hoboのただ乗りを許さず、見つけるとハンマーで殴って殺すこともいとわない名物車掌シャック(アーネスト・ボーグナイン:『ポセイドン・アドベンチャー』に出てましたね)と無賃乗車の名人A-No.1(エース・ナンバーワン、という分かりやすいあだ名、リー・マービン-記憶だとジェームズ・コバーンだったんだけど)の戦いを描きます。


とにかく問答無用の男と男の闘い、登場人物に一人も女性が出てこない、というかほとんどがオヤジ、それもHoboと機関車の運転士や保線要員というような汗臭く油臭い男ばかりです。

シャック対A-No.1の対決も、自分の列車に乗せたくない対乗ってやるという男の意地の対決で、最近の映画のようにPolitical Correctnessを気にしたりはしません。
A-No.1のシャックの暴力行為に対する義憤とか、列車に乗らなければならない背景事情などはおかまいなしの潔さです。

敵役のアーネスト・ボーグナインの迫力が特筆モノで、今風に言えば最初から最後までボスキャラ対決という贅沢な映画です。

A-No.1の座を狙おうとからむ若者も出てきますが、それに対しても「いい指導者」などという気持ちは微塵も持たずに、世の中の厳しさを徹底して叩き込みます。


問答無用の面白さを楽しめる映画です。



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社会正義の実現か、予見可能性か

2010-02-11 | 法律・裁判・弁護士

献本御礼(@勤務先)『公開買付けの理論と実務』
ちょうどKDDIとJ-COMなどもあり斜め読み。

このケースのような間接取得について 

当事者が当該取引を検討する前から・・・問題となる株券等を保有していた場合、・・・当該株券等の公開買付けを法が強制すべき合理的理由はない。

というのはその通りだと思います。  

ただ、KDDIのリリース株式会社ジュピターテレコムへの資本参加についてをみると、今回KDDIが取得する中間持株会社は、J-COMの株しか持っていないようで、そうすると「買おうと思っていた対象会社がたまたま上場会社の株を持っていたからってその会社にもTOBをかけないといけないのはおかしい」という理屈でなく、「実質的にJ-COM株を保有するためだけの会社を買うのならTOBしろよ」という理屈も成り立ちます。

このへんは当然意見が分かれるようで、
焦点:KDDIのJCOM出資手法は適法か、TOB解釈で専門家も二分
(2010年1月25日 ロイター) によれば

西村あさひ法律事務所の太田洋弁護士は、3分の1以上の取得を目指す買い手に、強制的にTOB義務を課す現行の制度の合理性をどうみるかによって見解は分かれ得る、としたうえで「法律の趣旨からするとどうかという議論はある。しかし、中間持ち株会社が以前から存在するなら露骨な脱法とはいえず、違法とまでは言えないのではないか」と語る。  

TMI総合法律事務所の中川秀宣言弁護士は「KDDIはJCOMに直接TOBをするべきではないか」と指摘する。今回の開示資料だけでは中間持ち株会社の中味を明確に理解するのは難しい、としながらも、JCOMの株式を保有する以外の機能がない、実質ペーパーカンパニーであれば「TOBルールに照らして(今回のやり方は)おかしい」と語る。  

形式を優先するか、実質をみるか、という違いですね。

上の本でも「たとえば・・・強制公開買付けの適用除外(法27条の2第1項ただし書)を利用して売主が1年以上保有している子会社に公開買付規制の適用のある株式を譲渡し、あるいは会社分割によって子会社に当該株式を切り出した上で、即座に当該子会社株式を買主に譲渡するような場合」は脱法行為とみられる、と言っています。  

ただ、取得対象会社に、問題となる上場株式以外の資産がほんの少しだけでもあればいのか(現金10万円とか)、という議論になると実質判断も微妙な部分があります(新株発行における「主要目的ルール」のdeja vu)。
しかも、TOB規制違反に対する課徴金が相当引き上げられた現状においては(まあ、違法行為を抑止するためなのでそれは仕方ないとしても)、予測可能性がないと実務上はとても悩ましい判断を迫られることになります。

実もふたもない言い方かもしれませんが、そもそも一つの制度にもろもろの社会正義の実現を委ねること自体に無理があるのかもしれません。


本件については、金融庁はTOB規制に抵触するという判断をしたとか(KDDIは否定してます)、もう一方の株主の住友商事がTOBをかけるかなど、状況はさらに流動的になっているようですので、また取り上げる機会もあるかと思います。


※ 住友商事はCATV事業の初期のころから、地域会社(当時は広域での免許を認められていなかったように思います)をこつこつと作っていたと思うので、ここで「トンビに油揚げ」は納得できない部分もあるんでしょうね。。

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『黒笑小説』と『ちんまん』または最果ての国と月並みの国

2010-02-10 | 乱読日記

『黒笑小説』は東野圭吾の短編集。

短編の分だけ急カーブのひねりが効いていて面白い。

特に売れない作家と編集者の関係を題材にした冒頭の4作は、作家と編集者に対する実体験を元にしたであろう観察眼が光っています。
解説で奥田英朗が書いているように「編集者が情熱を注ぐのは、賞を取れそうな新人と売れる作家に対してだけ」という現実をブラックユーモア(黒笑)でつつんでいます。

『ブラック・スワン』でも触れられているように、文学者の世界は「一握りの人がパイの大部分をぶんどって、残るみんなは、何を間違ったわけでもないのに、手元にはほとんどなんにも残らない」(これを著者のタレブは「果ての国」と名づけてます)という構図があるので、出版社・編集者は勝ち馬に乗りたがるのも仕方のないことではあります。

果ての国の反対には「月並の国」があります。



一方で、月並みで平凡で中ぐらいの連中が取り仕切っている類の仕事がある。そういう仕事だと、平凡な連中が、全体として見れば大きな力を持つ。

もしわたし自身が誰かにアドバイスするとしたら、勧めるのは稼ぎが何倍にもなったりしない仕事の方だ!


とタレブは言います。


東野圭吾の毒は、作家という仕事が「最果ての国」に属することに加えて、そこに乗ろうとする編集者が「月並みの国」に属していることで、より効果が大きくなっています。

流通ルートを持つ出版者がないと作家は日の目すら見ない一方で、作家に日を当てる側の編集者は収益を上げる=勝ち馬に乗ることを宿命付けられた「平凡」な人々の集合体なわけで、そこには「作家を育てる」という大義名分とは違う行動原理が働き、そこが悲喜劇を生むわけです。

 
そういう悲劇、というかこじれてしまった例として、知ったのが中村珍、という漫画家。

漫画家よりも雑誌の連載が打ち切りになった経緯をつづったブログの方を先に知ったのですが(参照:ご愛読ありがとうございました)ここを読むと、作家と編集者のコミュニケーションのズレが拡大していく様子が(作家の側からだけですが)痛々しいほどにわかります。(ちなみに打ち切りになった連載は、別の雑誌で復活したようです。)

商売という目で見れば、作家における雑誌連載の負担、編集者のインセンティブなどを読み間違ったという感じもしますが、若手漫画家とてはまず雑誌に連載しないと始まらないという弱い立場から出発しているので、そこでの編集者との関係悪化は負の連鎖を招くことになるのだと思います。

東野圭吾は人気作家になった今だからこそ、それをユーモアに昇華できるわけですが、「何を間違ったわけでもないのに、手元にはほとんどなんにも残らない」人にとっては笑える状況ではないはずです。

編集者・出版社側は(当然のことながら)本件についてコメントはしていないようですが、これから売れる(かもしれない)作家の生殺与奪の権利を握っている、しかも新しい売れる作家を発掘していくのが大きな役割だということの自覚が、日常生活で多数の(結果的に)売れない作家を相手にしている中で鈍くなってきてしまっていたのかもしれません。


僕自身「平凡で中ぐらいの連中が取り仕切っている類の仕事」に従事する身として、自らを省みる必要がありそうです。



ところで、中村珍は1冊だけ初期の短編を集めた『ちんまん』という単行本を出しているので買ってみました。

ストーリーは荒削りながらもう一歩ひねれば面白いな、という感じではあるのですが、ちょっと絵が好みでなかった(画風が濃い目なのと、登場人物はなぜかみんな顎がとがっているあたりが・・・)のが残念です。

 






 





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「買った」というより「『買えなかった』にならなくて済んだ」?

2010-02-09 | あきなひ

昨年9月30日に売却が公表されてから引き渡しが引き伸ばされてきた三越池袋店ですが、ついに売却されたようです。

ですが、
【売買】シンプレクス・リートが旧三越池袋店を取得、ヤマダ電機が資金を拠出
(2010年2月8日 日経不動産マーケット情報)によると  

シンプレクス・リート投資法人は1月29日、豊島区東池袋1丁目にある旧三越池袋店を三越から取得した。2008年9月に結んだ売買契約に基づく取得で、取得価格は750億円。現在はヤマダ電機が店舗として利用しており、取得にあたってはヤマダ電機が取得資金の全額を出資している。  

売買契約時点では2009年9月の物件引き渡しを予定していたが、手続き上の理由から引き渡し時期が変更になった。シンプレクスは当初、投資家や金融機関からの資金調達を検討していたもようだが、最終的にヤマダ電機から全額を調達した。今後、ヤマダ電機へ物件を譲渡する可能性もあるとみられる。今回の取得と同時に、ヤマダ電機が788億5000万円の抵当権を仮登記している。

要するに、自分では資金調達ができなかったので、ヤマダ電機に金を出してもらったということのようです。 
シンプレックスとしたら決済ができなければ違約金の支払い義務が生じるうえに、ニューシティレジデンスの民事再生以降金融庁もうるさくなっている「フォワードコミットメント」のリスクを初の物件取得で顕在化させたら、投資運用業者としても厳しい立場に立たされるので、とりあえず「買った」という形は作らざるを得なかったのかもしれません。  

問題はスーパーディスカウンターたるヤマダ電機がそのまま788億円で買ってくれるか、ということだと思いますが、抵当権も付けているので最悪でも788億で物件は手に入れられるという上限がは決まっている交渉ですから、シンプレックスにとっては、買ったはいいものの依然として「まな板の上の鯉」の状態は続いているようです。  

しかし、ヤマダ電機は今年新宿店もオープンするし資金がよく続くものだと思ったのですが、実は新宿店は2008年に既に取得していたようで、(参照)さらに 第三四半期の決算短信をみると、業績好調のおかげで営業キャッシュフローを全部つぎこめば788億くらいは払えないこともなさそうです(その積極姿勢はすごいけど)。

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宇都宮弁護士といえば消費者金融問題、というのは短絡的過ぎるかもしれませんが

2010-02-08 | 法律・裁判・弁護士
再投票になった日弁連選挙ですが、反主流派(というと良くないのかな?改革派というと肩入れしているみたいだし...まあ、僕には投票権がないんですが)の宇都宮弁護士といえばサラ金のグレーゾーン金利にかなり早い時期から切り込んだ人というイメージが強い人です。

現在では過払い訴訟は多くの弁護士の食い扶持になっているわけですが、このビジネスモデルのすごいところは、争えば必ず勝つし、相手の貸金業者がつぶれるまではとりっぱぐれがないことです。
アメリカ流に言えば「七面鳥撃ち」ですね。

その結果、過払い訴訟の分野が過当競争になり(しかも司法書士も取り扱えるようになったので輪をかけてます)、別の問題--簡単に結果が出る案件しか扱われず本当に困っている複雑な事情の人は相手にされない、とか、過払い額というパイが明確なので依頼人への返還と弁護士報酬がゼロサムになりそこにコンフリクトが生じるなど--が出てきているくらいになっているわけです。

今回宇都宮弁護士がどのような理由で支持を集めたのかは知りませんが、ひょっとすると(ご本人はそんなことは思っていないでしょうが)「第二の過払い訴訟」のような新しいビジネスモデルの開拓を期待されているのかもしれません。


個人的には、それはそれで世の中いい方向に行くんじゃないかな、とも思っています。

というのは、もし裁判所が現在の契約なり慣行なりがおかしいというのであれば、企業としてもリスクマネジメントの観点からは問題点を早い時点で指摘してもらったほうが早めに修正して損害も少なくて済むので「太らせてから喰え」とやられるよりはずいぶんましです。

実際、過払い訴訟のように過去に遡って不当利得返還を求められるような超過利得を得ている企業というのはそんなに多くなと思います。
(最近話題の更新料訴訟も、個人的には一律に消費者契約法違反というのも無理があるように思うのですが、その話は機会があれば後日--これは借地借家法の正当事由制度と高齢者の住居の確保のセーフティネットの問題など別の意味で根深いと思うので)

ただ、企業がすばやく対応してしまうと「七面鳥撃ち」にならないので弁護士の収益としては美味しくないということになってしまうのが悩ましいところかもしれません(社会正義が実現されれば、弁護士の方はそんな小さいことにはこだわらないでしょうが)。

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価値喪失株式に係る証明書

2010-02-07 | よしなしごと

考えてみれば当たり前ですが。株主総会の入場券と記念の株券代と思って会社更生申立後に買った身としては、なんだか得した気分。
(今年株で負け越さないことが前提ですが、配当の源泉徴収とかとも損益通算できるのかしら。)

日本航空(9205)を保有されているお客様へ

日本航空(9205)は、会社更生法の申請にともない、2月19日を売買最終日として、2月20日に上場廃止となります。
上場廃止後、当該銘柄は証券保管振替機構の取扱いが抹消されるまで保有銘柄として残高表示されます。 特定口座内で上場廃止銘柄を保有し、特定管理口座を開設されているお客様は、更生計画において無価値化が決定した場合「価値喪失株式に係る証明書」が証券会社より発行されます。上記証明書をもって確定申告時に当該銘柄を譲渡損失として申告することが可能です。

5円のときに株主総会の入場券代わりに買おうかと思ったけど、どうせ1円になるだろうからと思い立ったときの株価5000円との差額をハイチに寄付したんだけど、もうちょい追加の寄付ができそうです。

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日弁連会長選挙、再投票へ

2010-02-06 | よしなしごと

紛争解決や紛争になったときにそなえた解決のメカ二ズムを契約に盛り込むのが専門の弁護士の、日弁連会長選挙におけるデッドロック。


日弁連会長選、初の再投票に 主流派・山本氏に地方反発
(2010年2月6日1時2分 朝日新聞)  

日弁連の会員数は約2万8千人。日弁連の仮集計によると、投票総数は1万8361票で、得票数は山本氏が9525票、宇都宮氏が8555票と、山本氏が上回った。ただ、会長選の規定では、全得票数が最多でも、全国に52ある弁護士会のうち3分の1の18会以上で得票数が1位でなければ当選者になれない。山本氏がトップだったのは東京、第一東京、第二東京、大阪などの9会にとどまり、条件を満たせなかった。  

一方、宇都宮氏は地方を中心に42会で1位となり、地方の「反乱」が史上初の再投票を招いた形だ。 日弁連によると、3分の1の条件は、会員の6割が集中する東京・大阪の意見に偏らないよう、バランスを考えた規定。再投票でも適用され、決まらなければ改めて候補者を募って「再選挙」をすることになる。その場合は投票まで2~3カ月かかることが予想されるという。  

シミュレーションをする能力もないのですが、東京・大阪主導(ずっと東京と大阪の弁護士会候補が当選していた)への反発や、若手の弁護士会の派閥による締め付け(けっこうあるらしい)への反発(でも無記名投票なので安治川親方のような人も出てくるのでは)などを考えると、山本氏が9つの弁護士会で逆転するよりは、宇都宮氏が山本氏に投票した500票を切り崩すか無投票層を取り込んで逆転する方が可能性が高いようにも思います。

 

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『ブラック・スワン』

2010-02-05 | 乱読日記
この本は昨年話題になったときに読んでいたのですが、この本のカバーする範囲がとても広く、また僕自身に特に数学的・経済学的な知識が不足しているので、うまくレビューがかけそうになかったので放置していましたが、朝青龍の引退というニュースをきっかけに書いてみようかと。

「ブラック・スワン」(=黒い白鳥)とは、現実にはありえそうにないが、それが存在しないことを証明することができないものを象徴しています。

そして、世の中では往々にして黒い白鳥が現われる=経済理論や経験に基づく予測をはるかに超えたありえそうもないことが起こることがある。
実はその予測自体がそもそもバイアスがかかっているが、我々はその予測を裏打ちする「普通の日常」に慣れてそれを信じ切ってしまうがゆえに、「ありえないこと」が起きたときの衝撃が大きい。
その反面、一度それがおきてしまうと、それを説明するもっともらしい理屈が現われ、なんとなく分かったような気になってしまう。
そしてまた、普通の日常で普通の予測になじんだ生活を送るうちに、またいつか黒い白鳥が現われる。

と、抽象的に言えばそのようなことを言っています。

この本は「何が正しいか」ではなく「人は往々にしてどのように誤るか」を語っているので、経済理論や確率論が分からなくても、世の中の物事や自分の行動に対する見方を開いてくれるという意味で非常にためになります。


たとえば、芸術家・スポーツ選手・思想家・科学者などの分野は、成功がほんの一部に集中し、彼・彼女らが大半の稼ぎや名誉を手にする。その結果は能力の差よりもはるかに大きい。

スポーツ選手だと朝青龍(やっと出てきた)やタイガーウッズ、小説家だと村上春樹なんかがそうですね。

そして、リスクというのは予想外のところにある、という例として、あるカジノが存亡の危機に瀕したリスクというのをあげています。
それはイカサマ師の集団に狙われたことでも、大富豪が大金をかけて大勝ちされたことでもなく、会計処理のミスにより不正を疑われ認可を取り消される直前まで行った、とか、処遇に不満の従業員がカジノに爆弾を仕掛けたとかと、通常のリスクマネジメント(コンサルタントがお勧めする「リスクマップ」とか)では想像もつかないことが原因になってます。


これも、朝青龍やタイガー・ウッズに当てはまりますね。
選手生命を危くする怪我やスランプ、モチベーションの低下、強力なライバルの登場とかでなく、日常生活のトラブル--それも、後から見ればとんでもないことでしょうが、本人はそれが「とんでもない」と非難されるまで普通のようにやっていたこと--が原因となったというわけです。


ことほど左様に、いろいろと示唆に富む本ですので、読まれていない方はぜひご一読を。




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Twitterのまとめ投稿

2010-02-04 | Weblog
ブログパーツが上手く表示されないので、Twitterのまとめ投稿というのを設定してみました。
一方でTwitterのほうにblogを自動投稿する設定をしているので、循環になりゃしないかともちょっと心配ですが、こっちは1日1回なので大丈夫でしょう。
多少マトリョーシカみたいなツィートが出るかもしれませんが。

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プリウスのブレーキ問題

2010-02-04 | よしなしごと

「欠陥」でないとしたら、ハイブリッドカー普及の過程で、普通の車との違いを意識しないで乗れるようになることが求められはじめているにもかかわらず、マーケティング上手のはずのトヨタが上手く対応できなかったということでしょうか。

毎日新聞経由トヨタ自動車の説明によれば(参照)

ガソリンエンジンと電動モーターを併用して走るHVのプリウスは、通常のガソリン車に使われる油圧ブレーキと、比較的利き目が弱い回生ブレーキの2種類を搭載。さらに、凍結した道路など路面がスリップしやすい場合には、ブレーキでタイヤがロックして車体が横滑りするのを防ぐため、ブレーキを一時的に解除するABS(アンチロック・ブレーキ・システム)が働く。  

ブレーキが利きにくくなるのは、このABSと油圧ブレーキとの兼ね合いの問題といい、ABSが作動し、油圧ブレーキがきちんと利くまでに1秒弱の時間差が生じるためで、それが運転者に「ブレーキが利かなくなった」との違和感を持たせるという。横山常務は「ブレーキをもう一度踏み込めば、きちんと止まる」と説明した。

ABSは普通ホイールがロックした場合に瞬間的に解除してタイヤのグリップを維持させながら回避・減速するための仕組みなので、「作動してから1秒間もブレーキが利かない」ということはないはずで(それなら即リコール)、おそらく通常作動する回生ブレーキがABS作動時には電子制御を同時にできないとかの理由で油圧ブレーキに切り替わるプログラムなんだけど、1秒間タイムラグがあるということではないのかと。

もしその理解が正しいとして、その1秒の間は(どっちの回路のブレーキにしろ)きちんとブレーキが効いていれば安全性には影響がないのでしょう。

ただ、作動しているのが回生ブレーキと油圧ブレーキによってブレーキの感触が違うとか、ABSの作動と合わさると妙なリアクションになる、という問題があるとすると、仏の人には違和感があるのでしょう。
そもそもABSだって雪道とか凍結路でないと(僕の経験ではドライな路面では相当乱暴な操作をしない限り)めったに作動しないですし、一般の人は何が正しい感触なのかもよくわからないのではないでしょうか。

ハイブリッドカーを特殊な車と自覚して、動力や制動系統の違いを楽しむような人ならともかく、これからの普及にはそういう感触(マン=マシン・インターフェイス)の部分にこそこだわる必要があるのかもしれません。


 

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男の嫉妬

2010-02-04 | あきなひ
今回のトヨタのリコール問題については、日本の経済界・財界人もけっこう批判的なようでで、そこには「ここ数年調子に乗りすぎ」というようなトーンが見え隠れするように思います。
ダボス会議では中国批判が続出したのと似たような感じがします。


全体の論調は、直接の批判でなく、アメリカでの日本企業バッシングや、日本企業の品質管理を危惧する風でいながら、その実「トヨタ叩き」をやっているような。経済同友会の桜田会長の発言とか。

取引先にコストカットを強いつつ好業績を謳歌し、社長OBは財界での存在を増す一方で「大政奉還」まで実現したトヨタに対し、財界人の嫉妬というのもあるのではないかと。
今回の対応でもジュニアでなく副社長しか出てこないというあたりも、世の社長連に評判がよろしくないのではないかと。

「水に落ちた犬を打つ」というのは世間やマスコミの習性でもありますが、経営者の嫉妬も混ざっているような感じがします。



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『嘘つきアーニャの真っ赤な真実』

2010-02-03 | 乱読日記

2006年に亡くなった、ロシア語通訳の第一人者であると同時に名エッセイストであった米原万理さんの名作です。

僕は本については大事と思う本ほど読むのがもったいなくて後にとっておくという妙なクセがあって、前世はひょっとしてリスかハムスターなのではないかとときおり思うのですが(そうだとするとけっこう短い前世ですが)、これもしばらく熟成させてあった本。  

米原さんが1960年、10歳のときから4年間を過ごしたチェコスロバキア(当時)のプラハにある「在プラハ・ソビエト学校」に通っていた各国からきた友人達を、ベルリンの壁・ソビエト連邦の崩壊、ボスニア紛争後に消息を訪ねて探し出すドキュメンタリーです。  

人格を形成する時期に知り合った友人たちの、子ども時代の思い出と再会までの人生が、それぞれの時代背景にどのように影響されてきたかが印象深く描かれます。

巻末に斎藤美奈子の秀逸な解説がありますので、詳しくはそちらをご参考にされたほうがいいと思います(本屋で立ち読みでもしてください)。

「」たしかに、社会の変動に自分の運命が翻弄されるなんてことはなかった。それを幸せと呼ぶなら、幸せは、私のような物事を深く考えない、他人に対する想像力の乏しい人間を作りやすいのかもね」
「単に経験の相違だと思います。人間は自分の経験をベースにして想像力を働かせますからね。不幸な経験なんてなければないに越したことはないですよ」

これは米原さんと、ルーマニアのブカレストでのガイドの青年との会話。

他のエッセイを読んでも他人に対する想像力の塊のような米原さんをしてそう言わしめるほど、友人たちの人生も波乱に満ちています。
その一方で、子どものころと同じ表情を、30年後の顔の中に見出す米原さんの暖かい視線も印象的です。

 



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雪国

2010-02-02 | うろうろ歩き
昨日は東京も雪だったようですね。

僕は新潟にいました。


これは昨日の苗場スキー場

20年ぶりでした(^^;
当時は筍山までリフトが通ってなかった。

平日はガラガラ。

空いてさえいればいいゲレンデです。





ほくほく線





雲洞庵

降雪から一夜明けての快晴がいい感じです。

境内の大木の枝に積もった雪が降るように落ちてきます。







思い立って塩沢の知り合いを訪ねようとしたのですが、時間の都合で今回は断念。



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