よく主人公が記憶喪失に罹っている映画を観ることがあるが、そのような映画には傑作が多い。その中でも今回紹介する映画かくも長き不在は、派手な場面は無いが観る者に悲哀を感じさせる傑作だ。戦争による悲劇は命を失うだけではない。本作の場合だと幸せな思い出もぶっ壊してしまうのが戦争の悲劇として描かれている。
ド派手なシーンは無いが、充分に戦争の悲劇を感じさせるストーリーの紹介を。
パリの郊外で喫茶店を営む女主人のテレーズ(アリダ・ヴァリ)は店をお手伝いの少女を雇い切り盛りしていた。周りの住人が夏休みのバカンスで殆ど人が居なくなり、テレーズも恋人らしきピエールと一緒にバカンスに出かけて、いったんお店を休みにするつもりだった。
そんなある日のこと、いつも朝と夕方になると歌を口ずさみながら店の前を通る浮浪者(ジョルジュ・ウィルソン)の姿を初めて間近で見る。それは16年前にナチスドイツの秘密警察であるゲッシュタポに強制連行されてから行方不明になっていた夫アルベールとそっくりだった。
テレーズはアルベールとそっくりの浮浪者を追いかけてつぶさに観察するのだが、実は彼は記憶喪失になっていて今までのことを殆ど覚えていなかったのだ。
その浮浪者はもしかしたら夫ではないのかもしれなかったが、夫だと確信しているテレーズはあらゆる手段を使って彼の記憶を取り戻さそうとするのだが・・・
さて、浮浪者は本当にアルベールなのか、それともただ似ているだけの人物なのか?。すでに女盛りも過ぎてしまい独身を貫きとおしたテレーズに希望を抱かせる。前半は大したシーンは無かったように思うが、テレーズがこの浮浪者を見る瞬間から惹きこまれる。彼の記憶を取り戻そうとするシーンは希望と絶望の両方を感じさせる。
特にテレーズが河辺のボロボロの小屋に住んでいる彼を自分の店に誘い、彼女はドレスアップして一緒に食事をしたり、音楽を聴いたりするシーンは何とか彼の記憶を呼び起こそうとするシーンで美しくも、どこか切ないシーンだ。そして、二人きりでダンスをするシーンにおいてはもう見ていて涙がボロボロ出そうになる。本来なら幸せを感じさせるのがダンスシーンなのだが、ここでテレーズは戦争の現実を知ってしまい、彼の記憶が戻る可能性がゼロに近いことを知ってしまう。
さて、彼は本当にアルベールだったのか、やはりソックリさんだったのか!最後にそれまでの流れとはうって変わって衝撃的なシーンが訪れるのだが、その時の浮浪者(アルベール?)はいったい何を悟ったのか?
だけどこの映画が凄いのは最後の最後に語るテレーズの台詞。絶望感しかないような結末だが、それでも暗闇の中にほんの小さな希望の灯をを感じさせる台詞だ。今にも消えそうなぐらいの弱々しい灯だが、それでも生きている限りこの灯は消せないのだ。
フランス映画の名作を見たい人、映画第三の男を見ている人で、その映画の女優さんが気になった人、当たり前のことだが戦争ってダメだよな~と改めて感じたい人、女の執念を感じたい人等に今回は映画かくも長き不在をお勧めしておこう。
ちなみに監督はアンリ・コルピ。監督としては本作しか知られてないようですが、主に編集者として活躍していたみたいです。
それよりも今回の主演女優のアリダ・ヴァリ。本作に出演していた時は40歳ぐらい。若い頃からそれほど綺麗だと思いませんが、名作に何本か出演しており、しかも息の長い女優さん。彼女が出演しているお勧め作品としてキャロル・リード監督の不朽の名作第三の男、ルキノ・ヴィスコンティ監督の女性の怖さを思い知らされる夏の嵐、ベルナルド・ベルトルッチ監督の1900年が良いです。
ド派手なシーンは無いが、充分に戦争の悲劇を感じさせるストーリーの紹介を。
パリの郊外で喫茶店を営む女主人のテレーズ(アリダ・ヴァリ)は店をお手伝いの少女を雇い切り盛りしていた。周りの住人が夏休みのバカンスで殆ど人が居なくなり、テレーズも恋人らしきピエールと一緒にバカンスに出かけて、いったんお店を休みにするつもりだった。
そんなある日のこと、いつも朝と夕方になると歌を口ずさみながら店の前を通る浮浪者(ジョルジュ・ウィルソン)の姿を初めて間近で見る。それは16年前にナチスドイツの秘密警察であるゲッシュタポに強制連行されてから行方不明になっていた夫アルベールとそっくりだった。
テレーズはアルベールとそっくりの浮浪者を追いかけてつぶさに観察するのだが、実は彼は記憶喪失になっていて今までのことを殆ど覚えていなかったのだ。
その浮浪者はもしかしたら夫ではないのかもしれなかったが、夫だと確信しているテレーズはあらゆる手段を使って彼の記憶を取り戻さそうとするのだが・・・
さて、浮浪者は本当にアルベールなのか、それともただ似ているだけの人物なのか?。すでに女盛りも過ぎてしまい独身を貫きとおしたテレーズに希望を抱かせる。前半は大したシーンは無かったように思うが、テレーズがこの浮浪者を見る瞬間から惹きこまれる。彼の記憶を取り戻そうとするシーンは希望と絶望の両方を感じさせる。
特にテレーズが河辺のボロボロの小屋に住んでいる彼を自分の店に誘い、彼女はドレスアップして一緒に食事をしたり、音楽を聴いたりするシーンは何とか彼の記憶を呼び起こそうとするシーンで美しくも、どこか切ないシーンだ。そして、二人きりでダンスをするシーンにおいてはもう見ていて涙がボロボロ出そうになる。本来なら幸せを感じさせるのがダンスシーンなのだが、ここでテレーズは戦争の現実を知ってしまい、彼の記憶が戻る可能性がゼロに近いことを知ってしまう。
さて、彼は本当にアルベールだったのか、やはりソックリさんだったのか!最後にそれまでの流れとはうって変わって衝撃的なシーンが訪れるのだが、その時の浮浪者(アルベール?)はいったい何を悟ったのか?
だけどこの映画が凄いのは最後の最後に語るテレーズの台詞。絶望感しかないような結末だが、それでも暗闇の中にほんの小さな希望の灯をを感じさせる台詞だ。今にも消えそうなぐらいの弱々しい灯だが、それでも生きている限りこの灯は消せないのだ。
フランス映画の名作を見たい人、映画第三の男を見ている人で、その映画の女優さんが気になった人、当たり前のことだが戦争ってダメだよな~と改めて感じたい人、女の執念を感じたい人等に今回は映画かくも長き不在をお勧めしておこう。
かくも長き不在 デジタル修復版 [DVD] | |
アリダ・ヴァリ,ジョルジュ・ウィルソン,ジャック・アルダン,シャルル・ブラヴェット | |
KADOKAWA / 角川書店 |
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ちなみに監督はアンリ・コルピ。監督としては本作しか知られてないようですが、主に編集者として活躍していたみたいです。
それよりも今回の主演女優のアリダ・ヴァリ。本作に出演していた時は40歳ぐらい。若い頃からそれほど綺麗だと思いませんが、名作に何本か出演しており、しかも息の長い女優さん。彼女が出演しているお勧め作品としてキャロル・リード監督の不朽の名作第三の男、ルキノ・ヴィスコンティ監督の女性の怖さを思い知らされる夏の嵐、ベルナルド・ベルトルッチ監督の1900年が良いです。
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