例の会があり、ミナミ法善寺の「南進」へ。
店先に古きよき南地の風情が漂う。だが漂うのは間口数間だけ。
隣りは大人のおもちゃ屋だったりする。
ここは10月~4月まで、つまりふぐの時期だけ開ける店だ。
一階はごちゃごちゃと物置みたいになっていて、客は二階に通される。
二階は昔の料亭風の個室がいくつかあって、駿河湾ごしの富士山がすりガラスに刻まれていたりする。ちょいと趣きあり。
これはお通しのながれ子。いかにも守旧派。お運びのお姐さんたちは全員化粧っ気のない田舎から出てきた感じの方で好感が持てる。だが若干言葉が通じにくいのはご愛嬌。大陸方面の方なので。
皮の湯びき。この中には外側から、鮫皮・とうとうみ(遠江)・身皮の
3種類が入っている。それぞれに食感がちがう。
見事に薄く造ってあるてっさ。メガネの曇りのように見えた…は冗談
だが、一枚二枚はへばりついて見逃したかもしれぬ。
主人は酒をたしなむのだろう。ちょっとした気の利いたふぐの酒肴がある。これは「てっさのからすみ巻き」。あとはとうとうみのこのわた和え、山葵和えなんてのもあったが、品切れとは面白くなし。
噛み切りにくく、一口で行くには勿体なく、結局バラバラにしてカラスミを齧っては熱燗をクイッ。
これとカラスミは追加メニュー。唐揚げ。たくさんはいらないが、
ないと寂しい一品。ぽん酢攻めなので、ちょっと口を変えるには有効。
てっちり。鉄火な男達が命がけで食ったのは見得も虚勢もあっただろうが、昔は一般人の食卓に上がるようなものではなかったのにな。
悪食だし不細工なくせに、身は信じられないほど上品。あたしゃクエよりもこっち派。骨についた身が一番美味いということをしみじみ感じさせられる。やはり鍋あとは・・・
ぞうすい。ちょいと海苔がでしゃばり過ぎのきらいがある。
この卵でとじたのは普通の場合で、こちらにはさらに奥の手が・・・
これが白子雑炊。だしの中にも白子が溶かされ、さらに焼き白子が一人前2個入っている。これを砕きながら食す。塩をパラパラ振りかけると、一層味が深まった。雪のチラつく夜に震えながら、色白美人と差し向かいでこのぞうすいを食うなんてどう。白い白いが白いなりけり。
水菓子の干し柿。メロン出されるより、こちらの方がシブくていい。
てっちりつついてる最中に電話あり、旧友が亡くなったとの報せ。
陽性で大宴会には欠かせぬ人柄だった。ふすま芸でシンクロナイズドスイミングという持ちネタがあった。
彼とはこうして鍋をつつく機会ももうない。
友逝きてちょいとしょっぱきふくの味 馬骨
この世じゃなかなか会えなかったけど、また、あの世で
ゆっくり飲もうや。な?O島さん。