北新地と書いて、きたのしんち。古い新地族はこう呼ぶ。
北政所を、きたまんどころ…と読まないのと同様。
古い言葉は駆逐されていく、だが、失ってはならない響きというものがあろう。
特に地名などはストーリーがあり、大事にしたいと思うのだが、行政ってヤツは
曽根崎新地とか東心斎橋なんて味気のない地名でひとくくちにしやがる。
さて、ここはその北新地の料理店「川添」。
カハラ直系の店。ずっと来たいと思いながら、やっと実現した。
飲食店を展開する後輩Dと一緒。
最初に出てくるのは、一切れのパン。
少しお腹を落ち着かせてから、という意味合いか。
人気の高いブランジェリーPBのイチジクパンを軽くトーストして。バカにうまい。
一皿目、海鮮とキノコのサラダ仕立て。
アワビ茸、スーナ、手長ダコ、炙り新サンマ(根室)、だだちゃ豆、アワビ・・・など
スーナとは沖縄産とさか海苔。
ソースは十六島海苔(出雲)、モロヘイヤ、アカモクを散らしたビネグレットソース。
斬新な素材を使うのは、長年修業されたカハラ森さん譲り。
ロワーヌ河上流のサンセールの白と、ブルゴーニュのシャルドネ。
どちらもいただきました。
小皿2種
タコの肝煮 サンマのわたのリエット
人生と同じく、ほろ苦い。
この味はガキにゃわかるめぇ。
赤ピーマンのスープ仕立て 乾燥ものいろいろ
干しナマコ、キクラゲ、干し大根、黒大豆、青大豆、ゴーヤ、高野豆腐、
黒オリーブ、干し鱈
この夏のカレーまつりでは、赤ピーマンのカレーを出していた川添さん。
どうやら彼のブームらしい。 素材そのままなのだが、それが重層的に影響しあい
複雑な味わいになっている。
ふつうのスープみたいにサ~ッと飲めない、噛んで楽しめるスープ。
魚料理 鱧焼き霜、素麺かぼちゃ、鱧の卵カレー風味、 サリコーン
ソースは冬瓜のソース
上にのる切り干大根みたいなのが、素麺かぼちゃ。
付け合わせのスギナみたいなのは、サリコーン、厚岸草ともよばれ、
干潟に生息する海藻。海のミネラル分を吸いこむので、塩気を持つ。
♪~ サリコーンはつらいね、ってなことおっしゃいましたかね~~ 鼻歌が古すぎる。
あっさりとした大人の味だ。
いろいろ食べて来て、人生折り返したような人にはぴったり。
もちろんヘルシーなので若い女性にも。
ギラギラした若い男には似つかわしくない。
コーンスープが出たが、撮り忘れた。
川添さんの故郷、宮崎のスイートコーン、おだしのジュレ。
そしていざ、お肉へ。
鹿児島牛のステーキ
肉味噌・スクランブルエッグ・金時草・キムチトマト・タスマニアマスタード
ひとくちサイズにカットされた肉。付け合わせを肉に付けても、そのままでも。
なんだか、芸妓はんとでも来たいような。
美味いし、目にも楽しい。
これもまた師匠譲りですな。
シメはネタ箱が目の前に出され、「どれになさいますか?」
青背の魚で小さな丼が出るのが、こちらの定番。
まるで寿司屋である。
上からサゴシ(鰆の稚魚)、サゴシ・タイラギの昆布締め、
仕事のしてあるサバ、カスゴ(小鯛)、コハダ
全部もありです・・・というので、当然、私は全種類を少しずつ。
お魚丼
シンプルで美味。
香の物替わりに、オクラといぶりがっこ。
日本茶が美味い、やっぱ日本人だなぁ~。
水菓子 オレンジのゼリー
その後、新地内のクラブへと案内されたのであるが、
アタシみたいな、金の匂いのしない書生ふぜいは格別女性たちにモテるわけでもなく、
もちろん自腹で常連になんぞなれる訳もなく、
いつまでたっても、どうもなんだか苦手意識が消えないのである。
新地はメシがよろしいようで…。
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