フルートおじさんの八ヶ岳日記

美しい雑木林の四季、人々との交流、いびつなフルートの音

「マチネの終わりに」平野啓一郎 を読み終えて

2020-01-11 | 濫読

 
 「その時こそ、死者たちは、銘々が最後の最後まで捨てずにおいた、いつも隠し持っていた、私たちの未だ見たこともない永遠に通用する幸福の硬貨を取り出して、一斉に投げ与えるのではないでしょうか。
ふたたび静けさを取り戻した敷物の上に立って、今や真の微笑みを浮かべる、その恋人たちに向けて」
(主人公洋子の父親である監督が作った映画「幸福の硬貨」 リルケ「ドゥイノ悲歌」より)

平野啓一郎「マチネの終わりに」を読み終えた後、さわやかな心地よい風が心の中に吹いている。

途中、「二人の恋人が交わした話をもっと具体的に展開してくれたらいいのにな」という不満が常に付きまとったり、まさか、こんなことはありえないだろうと思い続けたりしながらも、最後のシーンを迎えたとき、静かな感動で満たされた。

コンサートの最後に演奏される「幸福の硬貨」


心に残った言葉
・ 人は変えられるのは未来だけだと思い込んでいる。だけど、実際は、未来は常に過去を変えてるんです。」~「花の姿を知らない  まま眺めた蕾は、知ってからは、振り返った記憶の中で、もう同じ蕾じゃない」
・ トーマス・マンの「ヴェニスに死す」と、「ヴェニスに死す症候群」~「中高年になって、突然。現実社会への適応に嫌気がさして、本来の自分へと立ち返るべく、破滅的な行動に出ること」
・ 「マリアとマルタの姉妹」 キリストは世話をするマルタの不満に対して、側で黙ってキリストの話を聞くマリアから、それを取り上げてはならないと語る。
・ 「初めて本当にバッハを好きになれた気がしたの。やっぱり、(1618年~1648年の)30年戦争の後の音楽なんだって、すごく感じた」

ギタリストが主人公の物語なので、色んなギター曲が出てきた。村上春樹の小説を読むときでもあったが、これはどんな曲かなと、you tubeで確かめるという楽しみがあるのもいい。

ロドリーゴ「アランフェス協奏曲第2楽章」
バッハ「無伴奏チェロ組曲第1番、3番、5番」
フェルナンド・ソル「幻想曲作品54」
バリオス「大聖堂」
ロドリーゴ「トッカータ」などなど

you tubeで「マチネの終わりに」と題するプレイリストを作り、それを聞きながら読み進めた。
 
ラストシーンとなったニューヨーク「セントラルパーク」 https://wondertrip.jp/87450/


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