ミナミちゃん・・・・ ショックでっす!
ホークスが・・・・負けてしまった・・・・・
実は俺、ホークスの隠れファンだ。
だが、勤務時間中は、そのようなそぶりは、微塵たりとも部下達に見せたりはしない。これが上司たる者の心得だ。
遅番で出勤早々、新人2ヶ月半の分際で正々堂々と?
「副店長、プレーオフを観たいので、帰ってもいいですか?」
などと、のさばる鈴木すず子とは違うぜよ。
確かにプレーオフはお昼の12時だったか、1時だったかで、
俺も とてもとても気にはなってはいた。
しかしだなぁ。
俺は、ちらっと時計に目をやりながらも、全神経は仕事に集中していた矢先に、あれだ。
「副店長、プレーオフを観たいので、帰ってもいいですかぁ?」
帰ってもいいですかぁ・・・帰ってもいいですかぁ・・・・いいですかぁ・・・かあ・・・・カア
俺の頭上をカラスが飛んでいく・・・かア 皆既日食を横切るカラスの図が見えたような気さえした。
あれは。。。。カラスは流石に幻か。
とにかくよぉ。
余りのドキモを抜くような台詞に、俺は一瞬、言葉を失った・・・。
いや、もっと正直に言うと、この冗談とも本気とも理解しがたい台詞に俺はこともあろうか、棒立ち状態になったまま、身動きできずに居た。
あのとき以来、俺は何度、固まったことだろう?
固まるミナミちゃんの輝かしいデビューは間違いなくホークスのプレーオフ戦だ。あの年がパリーグがプレーオフ制度を取り入れた最初の年だった。俺のデビューとも重なる訳だ。
俺が帰っても宜しいとも駄目だとも返答をせずに固形ミナミ(何処かで聞いたな?汗)のままでいると、鈴木すず子は契約更新に印鑑鈴木を押して安心したのか、るんるんで店長室を出て行った。あと一秒、ここに居たら、
「本気で帰るのなら更新取り消します」 と言えたのだが、
机に向かってペーパーワークをしていた西村に、
「副店長にプレーオフが気になるから、帰ってもいいですか?って尋ねたら何も言いませんでした。ここへ電話して、ホークス戦を観るので休みますって言ったら、懲戒解雇ですよね?」
と、鈴木鈴子が話している声が聞こえていた。
なんだ、分かってはいるのか。そうだ!本気なら懲戒解雇だぜっ!瞬時で冷凍保存されたかのような俺の身体もどうにか解け始め、心の中で なんだ、ジョークかぁ、と呟いた瞬間。。。
西村は、ちょっと考えて、
「そうですね・・・・。途中経過なら、カトくんに聞いてください」
と、返答していた。
西村は元野球部の野球少年だ。きっと俺、ミナミちゃんよりプレーオフに興味があるだろうに・・・。涙ぐましい返答???
そして・・・・何よりもグットアイデアを提供してくれた。
西村も俺も上司という立場上、全従業員たちが気になって仕方がない様子のプレーオフについて堂々と語ることができない。しかし、バイト(当時)のカトなら・・・
俺は、部下に 「こんにゃく出して!」と指示を出しつつ、さりげな~くカト周辺を行ったり来たりし、カトの台詞を聞き逃さなかった。
「すずさん!今、松中が打ちましたよ!これで5点目が入りました。あっ、今、6点目が入った!これで勝利は頂き。。。。」
恐らくカトはでチェックしたのだろう。ふと、精肉部門の江原オーラの泉チーフがいる方角へ目を向けると、あっちの方でも 今、点が入ったみたいだ、と盛り上がっている。本心は、俺も仲間に加わりたい。しかし、俺は あの日も我慢の副店長だった。
それに、厳しい南副店長と部下達から言われながらも、こちらホークス情報交換部 については、実は黙って見逃していた優しい副店長なのだ。
翌日だって、そうだ。
しかし、勤務時間が終了すれば、話は別だ。
俺は、カトを誘い、自慢の とあるカーの中でホークス最終戦を観た。
これに勝てば、ホークスがパリーグ優勝。
負ければ・・・・負・け・た。
あれは、誰がどう観ても、斉藤和己が打ち取った当たりじゃねぇかよおおおおおっ。
しかも、大村も、ズレータもセーフなのにアウトの判定。
審判、しっかりしてくれよ。頼む。
カトは泣いていた・・・・。
俺もこころで泣いた。
8ヶ月に及ぶ鈴木すず子を指導する日頃の業務は、あの日と同じ、涙なしには語れない・・・
そこで、今夜スタートした新連載。
俺、ミナミ@@;
この看板をみた瞬間、俺は気絶しそうになった。
今夜は悪酔いしそうだぜぇ。。。
ミナミ