古稀からの手習い 水彩ブログ

人生の第4コーナー、水彩画で楽しみたいと思います

今日来ずば明日は雪とぞ降りなまし・・・(在原業平の返歌)(高野切第一種(巻第一)の拡大・臨書)

2023-04-03 06:59:15 | 書道
高野切第一種の練習を続けさせていただいています。
前々回(3.20)の拙ブログ(在原業平の親しい女性の歌)(古今和歌集62番歌)の続編であります。

めったに訪ねてこない彼・業平が、桜花満開時に来たときに詠んだ歌として、
“徒(あだ )(一時的で儚い)との評判の桜花だが、
我が家の桜は、年のうち稀にしか来ない人を待って咲いている”
としたものでした。

今回はそれに対する業平の返歌(同63番歌)です。

返し 業平の朝臣
今日来ずば明日は雪とぞ降りなまし 消えずばありとも花と見ましや

[介(け)不こ春(す)はあ春(す)はゆ支(き)とそ布(ふ)利なまし
支(き)え春(す)はあ利とも者(は)なとみましや]
(縦半切略1/2大)

ネット上諸氏の解説によると大方の歌意は、
今日来ないと明日は雪のように散ってしまうだろう。
消えないで残っていても花を見たであろうか。
いや、見ないね。だから満開の今日来たんだ。
・・・とする解釈が一般的なようです。

他には雪との関連から冷たい返し歌だとする解釈もあるようです。

男女の相聞歌としてみた場合も、女性の一途さに比べ
モテる男性の“来てやってる感”は否めません。

ところで今回の主人公は在原業平。
その彼に関連して驚いたことが。
それは、いつもコメントをお寄せいただいている「サガミの介」様は
「業平小学校」(墨田区)のご出身とのこと。
前々回のブログのコメントでご紹介されている
「名にし負わばいざ言問はむ都鳥、わが思う人はありやなしやと」
の歌の「言問橋」と同小学校は(グーグルマップで調べたら)数百メートルの距離。
小学校は、あのスカイツリーのほぼ真下。

また、在原業平は官職として相模権守(ごんのかみ)を兼任された時もあり、
同国に住む者として親しみすらを感じるようになりました。


さてその在原業平、六歌仙(古今和歌集の仮名序に掲げられている平安初期、歌道に秀でた六人の歌仙)
にも選ばれた天才歌人です。
古今和歌集には30首という多くの歌が選ばれているとのことで、例えば、
「ちはやぶる 神代も聞かず 竜田川 からくれなゐに 水くゝるとは」
「世の中に たえて桜の なかりせば 春の心は のどけからまし」
など結構有名な歌があるようです。

業平は伊勢物語の主人公とも言われ、
サガミの介様お示しの“名にし負わば・・・”は
同物語の東下り 隅田川編で詠まれたとのことです。(本歌は古今集にも)

また、上の“ちはやぶる・・・”は小倉百人一首にも17番歌として選ばれています。
その小倉百人一首の解釈を覚醒させていただいた小名木善行氏は、
その著「ねずさんの日本の心で読み解く 百人一首」の17番歌の解説の中で、
伊勢物語に出てくる在原業平と小野小町(同じ六歌仙の一人 美貌の歌人)
の歌のやり取りを紹介されています。それによりますと、
モテ男業平が小野小町を口説くためにに送った歌
「秋の野に笹分けし朝の袖よりも 逢わで寝る夜ぞ ひちまさりける」
(秋の野に分け入ると朝露で袖が濡れてしまうけど、
あなたに逢わないで寝る夜は(逢えない寂しさで)袖が濡れてしまいます)

これに対する小野小町の返歌
「みるめなきわが身を浦と知らねばや 離(か)れなで海人(あま)の足たゆく来る」
(あなたは収穫もない(筆者註:海辺では“みるめ”という海藻は採れない・・・私にその気はない)のに、
しつこく海にやってくる海人のようですわね)

さしものモテ男・業平も小野小町の才能の前に撃沈だったようです。(小名木氏)

☆お知らせ
拙ブログ、所要のため翌週、翌々週は休ませていただき、
次回は4月24日(月)からと予定させていただきます。


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2 コメント

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Unknown (mori)
2023-04-03 07:15:18
何時見ても素晴らしいとしか言いようが御座いません。バランス、筆の走り、墨の濃淡等々。
書だけでなく、説明コメントには歌の歴史からそのやり取り・人間性等々と、殆ど知識のない私にとっては、成程とそうだったんだと勉強になり納得させれれます。
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Unknown (サガミの介)
2023-04-03 12:00:02
前回のコメントに解説で深い蘊蓄を加えていただき感激です。
業平朝臣は、小学生時代から耳に親しむ歌を教えられ百人一首も好きでした、業平小学校の4年先輩にプロ野球、世界の王さんがおられたのも誇りです、
横道に逸れ失礼しました、作品はいつものように全体の美しさ、筆使いとバランス、特に中段から下段への重心の妙を感じ、解説で知る一字一字の仮名文字に日本語の深みを覚えました。
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