❸ あのミスタータイガース・田淵はもうマスクを被れない?
「来年の田淵は正捕手の座を奪われるだろうし、また田淵が捕手にこだわるとチームは分裂するかもしれない」これが阪神担当記者の声である。まさかミスタータイガースがそこまで追い込まれていようとは思わなかった。しかし周辺を取材すると意外と根拠のある話であるのだ。外から見たら不動の四番で守りの要の捕手として君臨する田淵も内部での評価はガラリと変わる。「ブチにマスクを被らせ続けるのならもう投げる気が失せてしまう」と話す投手がいたり、「田淵を捕手から外さない限り阪神の優勝は遠ざかる」とまで言うコーチがいるのである。遂には「田淵はプロとして通用する捕手ではなくなった」と決めつけるフロント陣までいる。
「サインを出しても投手と呼吸が全く合わない。しかもそのサインが走者ばかりではなく相手ベンチから丸見えなんだよ。盗塁が見え見えの場面でも腰を落としたままでフリーパス状態では投手がかわいそう」との声が球団内から漏れて来る。捕手・田淵への不信感を決定的にしたのが7月31日の甲子園での巨人戦だ。吉田選手が打ち上げた一塁側ベンチ前のファールフライを一歩も動かず一塁手のブリーデン選手に任せたが捕球できなかった。命拾いした吉田は本塁打を放ち巨人が勝利した。この時はさすがの虎キチも「田淵の怠慢プレーで負けた」と怒り心頭だった。辻作戦コーチは「捕手失格だ」と吐き捨てた。
この試合を機に田淵と他の選手との間にあったモヤモヤした感情が一気に噴出し表面化した。更に田淵の起用に関して吉田監督とコーチ陣の間にも溝が出来てしまった。吉田監督は就任1年目の昨季が終わると看板選手の一人であった江夏投手を放出した。江夏のトレードに関しては球団内にも賛否両論があったが吉田監督の英断で決行されたのだが、今季の江夏の成績を見れば吉田監督の判断は間違っていなかったと見る向きが多く球団内で吉田監督の影響力は増した。その吉田監督は田淵を重用してきた。投手交代の際は投手コーチより田淵の意見を重視していた。田淵が捕手として結果を出していれば異論は抑えられたが昨今の田淵のプレーは素人の目にさえおかしいと映るものが頻発されるようになった。
そうした理由からか来季の阪神は田淵の他に太平洋から移籍した片岡選手と3年目の笹本選手で正捕手の座を争う事になる。仮に田淵が争いに敗れればコンバートを強いられる。現実問題としてあの動きで使えるのはせいぜい一塁手ぐらい。今季の一塁はブリーデン選手が守っていたが来季の契約は未定で田淵の状況次第で解雇も有りうる。ただ問題は捕手失格の烙印を押された田淵がコンバートに納得するかだ。何しろ年俸三千二百万円の押しも押されぬ大スター選手だ。プライドを傷つけられておとなしく従うかは疑問だ。「厄介なのは四番・捕手という重責に対しての高年俸であって、その重責に負けたとなれば大幅ダウンは間違いなく田淵がどいう態度を取るか未知数だね(担当記者)」と。
そもそも片岡や笹本で田淵の代役が務まるのか、ブリーデンを解雇して打線が小型化しないのか、そうしたプラスマイナスについて球団内でも意見が分かれる。首脳陣の間の意思疎通の問題解消など田淵がミスタータイガースといわれるだけあってそう簡単に進展するコンバート話ではない。「田淵の打撃を生かすには思い切って一塁にコンバートする方が選手生命も伸びて本人の為にもなる。怠慢プレーではなく今の田淵は内臓疾患による体調不良のせいで捕手の重労働には耐えられないのだ」と消息通は言う。「ミスタータイガースの称号は掛布選手に譲って気楽にプレーする年齢になったと思えばいい(担当記者)」と。優勝を逃すと色々な雑音が飛び交うのが野球界の常である。
❹ 猫の手も借りたい時なのに…かつてのエース・木樽は今?
木樽投手といえばロッテのエースというより球界を代表するエースだった。それが今や1勝も出来ずに二軍で調整を続けている。現在のロッテ投手陣は猫の手も借りたい状態だが今後の見通しは決して明るくない。木樽はロッテ在籍11年、堀内投手(巨人)と同期で昭和40年11月の第1回ドラフト会議で指名された好投手である。昭和45年には21勝10敗で最多勝、ロッテを10年ぶりにリーグ優勝に導きMVPに輝いた。翌年も24勝8敗と2年連続20勝投手となり押しも押されぬ球界を代表するエースとして君臨した。昭和22年生まれだからまだ29歳で決して老け込む歳ではない。
ここ数年の不振の原因は言うまでもなく持病の腰痛である。「僕の腰痛はもう完全には治らないかもしれない。一番つらいのはこの痛みを他の人に分かってもらえないこと」と木樽は寂しそうに言う。しかし復活を諦めた訳ではない。「ヤツを何としても今一度マウンドに立たせてやりたい」と話す醍醐二軍監督の下で再起を目指して懸命の調整を続けている。今季のロッテは首位争いを演じ8月の時点で2位の南海に2ゲーム差をつけて首位にいた。しかし疲労が溜まった投手陣が底を尽きかけていた。そこで金田監督が苦肉の策として木樽を先発投手に起用した。騙し騙しやってきた腰が悲鳴を上げ、今季は開幕から満足な投球を出来ずにいた木樽。しかしかつてのエースとしてのプライドが敵前逃亡を許さなかった。
「これは大博打や!チームにもタル(木樽)にとっても命運を決める大博打や」と金田監督。8月14日、平和台球場での対太平洋7回戦に先発した木樽は打者3人・被安打2・四球1・3失点と1回持たず僅か14球を投げただけで降板した。いつもの通り金田監督は怒り沸騰で「ワシもタルも博打に負けた。もうタルは一軍で使えん」と二軍落ちを告げた。翌朝、木樽は荷物を纏めて帰京。以降、真夏の炎天下での二軍通いが始まった。今季の成績は14試合・0勝2敗・防御率5.50 に終わった。投球回数35回2/3で被安打45と滅多打ちだった。右打者の内角をえぐるシュートも外角へ鋭く逃げるスライダーも影をひそめた。昨季も5勝14敗で年俸も激減し復活を目指したが成らなかった。
持病の腰痛は木樽の投球を蘇らせてくれなかった。長いイニングは厳しいと判断した金田監督は木樽を救援の切り札で起用しようと考えた。監督自ら投球フォームの改造に乗り出したりもしたが実らなかった。ランニングをしても完走できず、投球練習も50球がせいぜいと歯がゆい思いをし続けた。「精神的に苦しい筈なのに練習時間も皆と同じで自分の練習が終われば若手へのアドバイスも欠かさない。むろん練習を休んだことはない。見ているこちらが辛くなるよ」と醍醐二軍監督は同情的だ。前田投手コーチも「今年の木樽はキャンプから出遅れて二軍での調整も不十分なまま一軍に上がった。もう少し二軍で調整してからの方が良かったのでは」と。
一軍が本拠地球場を持たないジプシーなら二軍も同じくジプシー。普段は東京証券の鶴瀬グラウンドを使わせてもらっているが、使えない時は日ハムや大洋の多摩川グラウンドを拝借してのジプシー練習が続く。そんな厳しい状況でも木樽は再起を目指している。腰痛さえ治れば10勝する力は持っている。それだけに今オフにはトレード要員として他球団から狙われるのは間違いない。「中日の近藤コーチがロッテ時代から木樽の面倒をよくみていた関係から中日あたりがトレードを申し込むのではないか。本人にとってもこのあたりで心機一転ユニフォームを変えてみるのも良いのでは」とロッテ担当記者は言う。契約更改では25%以上の減俸提示も有りうるだけに本人の気持ち次第で移籍する可能性はある。
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