
全国的な水彩の団体公募展のうち道内では、日本水彩画会(日水)と水彩連盟の二つが毎年支部展を開き、見応えのある展示を続けています。
水彩連盟は毎年4月に国立新美術館(東京・六本木)で公募展を開催しています。北海道支部展は秋なので、来春出す作品をまず見せて先輩や同僚の意見を仰ぐ人も、半年前に東京で展示した作品を持ってくる人もいるようです。
冒頭画像の左は、竹津昇さん「父のいたところ」。F100の、水彩としては相当な大作です。
このテーマで近年、古い農家の屋根裏などを描いている竹津さんですが、段ボールなどのコラージュをしていない作品を見たのは数年ぶりのように思います。
画面全体に打たれている白い点が遍在する光を感じさせます。建物がモティーフなので直線が多い中、サイロの壁面をはうツタの曲線が、全体に生き生きとした動感を与えています。竹津さんの画歴の中でも、ひとつのマイルストーンとも呼べる力作です。
右は、竹津さんに水彩を習った盛岩唯史さんの「還る時を待つ」(F80)。たしか昨年の道展出品作です。
放置されている廃バスの車体を粘り強い点描で描き、目を引きます。
この粘り強い姿勢が、時の経過などを表現するのに貢献しているように思います。
左は湯淺美恵さん「いつか何処かで(時)」(F60)。
(会場で配っていた目録は「湯浅美恵」になっていました)
女性像と歯車などを、丹念な写実で描いています。
全体に細かい線が縦横に走っていますが、これは「くものす描法」と呼ばれる手法によるもの。
薄い化学繊維などをびろーんとのばして画面全体に張り渡すと、そこに絵の具がたまるそうで、偶然のなせるわざでもあります。
中央は安田昌子さん「大地の華」(F80)。
毎年キャベツをモティーフにしている方だとのこと。こちらは、画面にびっしりと走る左右の斜線は手がきのようで、大変な労作です。
右はベテラン三村克彦さん「永訣の時」(F80)。
三村さんは古びた機械と小さなチョウという、対照的なモティーフを同居させた絵を毎年描いています。
非生命と生命、長い時間と一瞬…。いろいろなことを考えさせる画題です。
霧のような空気感すら伝えるような、丁寧な筆遣いです。
こちらも画面全体に細かな模様が走っていますが、こちらは「しわ紙」といって、紙をいったんくしゃくしゃにしてから水張りをするという手法なんだそうです。
左は石垣渉さん「雪の道」(S50)。
中央に配された、凍てついた道の風景は、ここ数年取り組んでいるもの。よく見ると銀色のアルミ箔がところどころに貼られています。
周辺には絵の具のにじみを生かした、たらしこみ手法などによる、白い斑点が点在しています。
3枚目は小路七穂子さん「亜麻やさしい風」(F60)。
じっくりと描かれた女性像です。
他の作品は次の通りです。
青坂龍子 「朝光」F50
坂本早枝子「ひととき」F80
佐藤恵利子「Bloom(23-2)」P100
佐藤幸子 「時の刻み」F80
高田みち子「少女と花」M100
土井上初枝「閑かな朝」F30
中野圭子 「海月」F50
廣瀬水帆子「春香山に佇んで」F30
宮﨑里美 「語り部」F80
宮武輝久 「コスモ バージョンI」F80
2023年10月31日~11月5日(日)午前10時~午後6時(最終日~4時)
ギャラリー大通美術館(札幌市中央区大通西5 大五ビルヂング)
□水彩連盟 https://www.suisai-renmei.org/
過去の関連記事へのリンク
■第9回 水彩連盟 北海道札幌支部展 (2014)
■水彩連盟北海道札幌支部展 (2013、画像なし)
■第3回水彩連盟北海道札幌支部展 (2008、画像なし)
■第2回水彩連盟北海道札幌支部展 (2007、画像なし)
■第1回水彩連盟北海道札幌支部展 (2006)
■石垣渉 水彩画のせかい展 (2023年7月、札幌)
■第7回グループ水煌展 (2022年6月21~26日、札幌) =竹津昇、湯淺美恵、佐藤恵利子の各氏が出品
■小路七穂子水彩画展 透明水彩の小品たち III (2017)
■想紫苑(おもわれしおん) 第四回三人展 (2016)=小路七穂子さん、湯淺美恵さん出品
※各出品者の過去の展示は上のリンクからさかのぼってください
水彩連盟は毎年4月に国立新美術館(東京・六本木)で公募展を開催しています。北海道支部展は秋なので、来春出す作品をまず見せて先輩や同僚の意見を仰ぐ人も、半年前に東京で展示した作品を持ってくる人もいるようです。
冒頭画像の左は、竹津昇さん「父のいたところ」。F100の、水彩としては相当な大作です。
このテーマで近年、古い農家の屋根裏などを描いている竹津さんですが、段ボールなどのコラージュをしていない作品を見たのは数年ぶりのように思います。
画面全体に打たれている白い点が遍在する光を感じさせます。建物がモティーフなので直線が多い中、サイロの壁面をはうツタの曲線が、全体に生き生きとした動感を与えています。竹津さんの画歴の中でも、ひとつのマイルストーンとも呼べる力作です。
右は、竹津さんに水彩を習った盛岩唯史さんの「還る時を待つ」(F80)。たしか昨年の道展出品作です。
放置されている廃バスの車体を粘り強い点描で描き、目を引きます。
この粘り強い姿勢が、時の経過などを表現するのに貢献しているように思います。

左は湯淺美恵さん「いつか何処かで(時)」(F60)。
(会場で配っていた目録は「湯浅美恵」になっていました)
女性像と歯車などを、丹念な写実で描いています。
全体に細かい線が縦横に走っていますが、これは「くものす描法」と呼ばれる手法によるもの。
薄い化学繊維などをびろーんとのばして画面全体に張り渡すと、そこに絵の具がたまるそうで、偶然のなせるわざでもあります。
中央は安田昌子さん「大地の華」(F80)。
毎年キャベツをモティーフにしている方だとのこと。こちらは、画面にびっしりと走る左右の斜線は手がきのようで、大変な労作です。
右はベテラン三村克彦さん「永訣の時」(F80)。
三村さんは古びた機械と小さなチョウという、対照的なモティーフを同居させた絵を毎年描いています。
非生命と生命、長い時間と一瞬…。いろいろなことを考えさせる画題です。
霧のような空気感すら伝えるような、丁寧な筆遣いです。
こちらも画面全体に細かな模様が走っていますが、こちらは「しわ紙」といって、紙をいったんくしゃくしゃにしてから水張りをするという手法なんだそうです。

左は石垣渉さん「雪の道」(S50)。
中央に配された、凍てついた道の風景は、ここ数年取り組んでいるもの。よく見ると銀色のアルミ箔がところどころに貼られています。
周辺には絵の具のにじみを生かした、たらしこみ手法などによる、白い斑点が点在しています。
3枚目は小路七穂子さん「亜麻やさしい風」(F60)。
じっくりと描かれた女性像です。
他の作品は次の通りです。
青坂龍子 「朝光」F50
坂本早枝子「ひととき」F80
佐藤恵利子「Bloom(23-2)」P100
佐藤幸子 「時の刻み」F80
高田みち子「少女と花」M100
土井上初枝「閑かな朝」F30
中野圭子 「海月」F50
廣瀬水帆子「春香山に佇んで」F30
宮﨑里美 「語り部」F80
宮武輝久 「コスモ バージョンI」F80
2023年10月31日~11月5日(日)午前10時~午後6時(最終日~4時)
ギャラリー大通美術館(札幌市中央区大通西5 大五ビルヂング)
□水彩連盟 https://www.suisai-renmei.org/
過去の関連記事へのリンク
■第9回 水彩連盟 北海道札幌支部展 (2014)
■水彩連盟北海道札幌支部展 (2013、画像なし)
■第3回水彩連盟北海道札幌支部展 (2008、画像なし)
■第2回水彩連盟北海道札幌支部展 (2007、画像なし)
■第1回水彩連盟北海道札幌支部展 (2006)
■石垣渉 水彩画のせかい展 (2023年7月、札幌)
■第7回グループ水煌展 (2022年6月21~26日、札幌) =竹津昇、湯淺美恵、佐藤恵利子の各氏が出品
■小路七穂子水彩画展 透明水彩の小品たち III (2017)
■想紫苑(おもわれしおん) 第四回三人展 (2016)=小路七穂子さん、湯淺美恵さん出品
※各出品者の過去の展示は上のリンクからさかのぼってください