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■Sapporo Section 3 : [記憶と記録の札幌] (2016年4月2日~6月29日、札幌)

2016年06月29日 16時42分17秒 | 展覧会の紹介-写真
 作家7人が札幌を見つめ直した作品と、「特定非営利活動法人北海道を発信する写真家ネットワーク」が北1条通りの地下通路で展開してきた「北一条さっぽろ歴史写真館」のこれまでの展示をまとめたプリントの2部構成からなる。

 7人は、木村伊兵衛賞を受けた本城直季、オランダ出身で札幌の天神山アートスタジオにアーティスト・イン・レジデンスで滞在するInge Trienekens (インガ・トリネケンズ)、それに札幌ゆかりの山本顕史、北川陽稔、竹本英樹、メタ佐藤、佐藤雅英の5人。山本さんら4人は、どちらかというとアート寄りのフィールドで活躍しているという印象があり、そのカテゴリーで言えば、まさに代表的な創り手といえると思う(これに藤倉翼さんが加われば、顔ぶれがさらに強力になるという感じかな)。
 それに比べると、佐藤雅英さんは1946年生まれのベテランで、札幌交響楽団(札響)の団員や道内芸術家(画家や書家)の肖像写真など、世間一般がイメージする写真家というものに近い活動をしてきた感が、筆者にはあるのだが、個人的にいちばんうならされたのは、その佐藤さんの、旧北大恵迪けいてき寮をテーマとした一連の写真だった。
 寮歌「都ぞ弥生」で知られる恵迪寮の建物は明治期に建てられ、1983年に取り壊されて、現在の建物となった。取り壊しの直前、寮側から委嘱されて、記録写真を撮ったのが佐藤さん。バンカラ学生の日常が詰まった部屋や廊下には、中森明菜のポスターとマルクス、毛沢東の肖像画が、「日本型ファシズムを許すな!」といったアジビラと、おそらくどこかの店先から拝借してきた看板とが、渾然一体となっている。この時代らしいなとも思う。
 寮生がひとりもうつっていない寮の中をとらえたあと、名物行事だった「じゃんぷ大会」の様子を紹介し、幻想的なポプラ並木の1枚で締める構成もあざやか。
 まさに「記憶と記録」というテーマにふさわしい。

 北川さんは旧作だが、「なつかしい未来」の被写体のひとつに、バスセンターがあるのがミソ。展示場所のすぐそばなのだ。
 竹本さんも、プリント自体はすでに発表したものだが、ひとつひとつを古い木箱におさめている。鑑賞者はふたを持ち上げて見る仕掛けになっており、記憶の封印を解くのにふさわしいスタイルといえる。


 なお、500m美術館では「MyCollection」展も開催されていた。
 市内のコレクターが集めた作品が並んでいた。その過半が、ギャラリー門馬、CAI02、cojica cafe、ト・オン・カフェで発表した道内作家の作品である。
 ひねくれた見方をすれば、札幌時計台ギャラリーやギャラリーミヤシタや北海道画廊でも絵画を中心にした美術作品が買われているはずなのにそれらが全くといっていいほど登場しないあたりに、500m美術館かいわいが表象する「札幌の現代アート」業界の狭さが見て取れる。実態はどうあれ「現代アート業界はごく一部の内輪の人のもの」という印象を鑑賞者に与えるのだとしたら、それ自体は決して良いことだとは思えないのだが。

 

2016年4月2日(土)~6月29日(水)午前7:30~午後10:00(最終日のみ5:00まで)
札幌大通地下ギャラリー500m美術館

http://500m.jp/exhibition/3744.html


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