日曜日を除いて日本郵便の配達人が使っている赤いホンダのスーパーカブを見ない日はない。この赤いバイクは郵便配達専用なので一般には販売されていない。犯罪に使用されたり、無用な混乱を避けるためであるがある意味当然のことだ。バイクが導入される前はたしか同じように赤い自転車だった。子供の頃の記憶に、頑丈な重そうな自転車の前に大きな鞄を括り付けて制服を着た郵便配達人が家のポストに郵便物を入れていくのを見ていたことがある。夏の暑い日や冬の寒い日など、あの重たい鞄を乗せた自転車を一日中漕いで配達するのはさぞかし大変だろうと思った。
郵便配達は、日本だけでなく世界中を網羅するネットワークでもある。世界が分断されていた時でさえ、郵便は世界の共通のインフラとして、独自の機能を発揮し続けてきた。ビジネスにおいても郵便に対する信頼感がその根底にあったように思う。
日本の郵便の記号はかつての逓信省の「テ」をシンボルマークとしている。一方、ヨーロッパでは、郵便馬車や馬による郵便輸送の発着時間を知らせるために用いた郵便ラッパをモチーフにしたデザインが多い。この郵便ラッパを抱えた配達人が自転車に乗って草原の向こうからやって来るヨーロッパの風景を想像するのは、郵便を待つ期待感とも相まって楽しい。
ニューヨークの国連本部から数ブロック離れたところにあるイタリア料理の店、その名もIl Postino。自分がいた当時、この店はイタリアらしい陽気さに満ちた、活気のある店だった。入り口では大きな花瓶に盛られたこれまた大きな花が迎えてくれる。席に着くと、数人のウエイターが取り囲むように集まって、多分その中の一番年長と思われる一人が、暗記している今日のメニューを大声で歌うように披露する。
スープはこれこれ、アンティパストはこれこれ、パスタは、メインの魚料理、肉料理は、そしてデザートまで、数えきれないほどの料理の名前が一気に読み上げられる。そこで、さてご注文は?とくるのだが、そんな長いメニューを覚えているはずもないから、もう一度聞くか、その場合には少し内容を絞って、あるいはメニューの本を持って来てもらう。これだけを聞いてすぐに注文出来るのはイタリア料理をよほどよく知った客に違いない。普通はこれは一つの儀式、パフォーマンスと考えた方がよいだろう。
値段はこの近辺のレストランと比べても高い方ではない。味は、特に素晴らしいということはないが、値段を考えれば十分妥当な水準にあると言えた。住んでいたところに近かったのでたびたび利用した。大事な客の接待には少し不向きだが、友人や知人との食事には、この楽しい雰囲気が堅苦しさを忘れさせてくれる。ここでは随分多くの人と食事をした。その中には、事情があって他人にはその光景を見られては困るような人もいた。こういう時にはこの喧噪と混雑が人相を紛らわせてくれるのに好都合だったし、特に、日本人にはこのような雰囲気は余り好まれないように思えた。事実、知り合いと鉢合わせしたことはない(と思う)。こんな店だから大声で話すか、あるいは顔を近づけて話すかしかない。訊かれては困るような話だと、どうしても鼻を突き合わせる格好になった(コロナ禍の今では御法度だろうが)。
多分今の状況では開店してはいてもごく限られた人数しか入店できないだろう。あの喧噪も聞かれないのではないかと思う。このレストラン、1994年の同名のイタリア映画と何か関連があるのかどうかは知らない。
ロンドンのアンティークショーで、ふと目にして買った郵便ラッパの3種類のセット。Made in Englandの刻印があるが、果たしてイギリスで使用されたのかどうかはわからない。少なくとも自分がいた頃にはもう使用されていなかった。
さすが、すぐにピンと来られましたね。その通り、ドイツはラッパそのものです。その他スイス、スエ―デン、チェコ、スロバキアなどヨーロッパの多くの国はこのラッパのマークを使用しています。フランスLe Rosteは鳥のマーク。
イギリスはRoyal Mailと言う王冠のマークです(いつもヨーロッパと時は一線を画すところがイギリスらしいです)。
アメリカは国鳥のハクトウワシと言う鷲のデザインでした。
日本のマークは少し硬すぎるかもしれませんね。