農家の次男坊に
生まれながら、
小さいころから
百姓仕事を手伝う機会が
あまりなかった。
兄が急逝して、
急遽田舎へUターン。
兄の代わりに田んぼを任されたが、
やることなすこと
初心者そのもの。
四苦八苦の連続だった。
稲づくりで
田んぼをトラクターで耕した。
ほぼ耕し終わって、
残る端っこに
トラクターを進めた時だった。
右側が下がりかけたと思うと、
ズブズブと
沈み込んでいくではないか。
泡食ってハンドルを急操作したが、
なんの効き目もなく、
ますます泥の中へ!
何とか止めたものの、
完全に斜めに傾き
身動きが取れない。
途方に暮れていると、
近所の老人が
救いの手を差し伸べてくれた。
駆動を切り替えバックして、
なんとか泥から解放され、ホッ!
「まだ慣れとらんからや。
大変やけど頑張りや。
困ったらなんでも声かけてや」
隠居はしていても
根っからの百姓だった
老人の優しい言葉に、
落ち込みかけていた私の
やる気は再び頭をもたげた。
あの日の老人は、
もうなくなって久しい。
そして
私の百姓ライフは
今は昔状態である。
山川惣治氏の絵物語、
いつもワクワクドキドキを
貰った愛読書。
少年ケニアもよかったが、
他の作品も、
心弾ませて読んだものである。