難聴者の生活

難聴者の日々の生活から、人工内耳など難聴者のコミュニケーション、聴覚障害者の制度改革について語る。

難聴者のエンパワメントはクリーム入りドーナツ(3)

2006年09月21日 17時11分18秒 | エンパワメント

キバナコスモスサンフランシスコの風さんから

ラビット 記

写真はキバナコスモス
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まず紙に大きな二重円を書いてください。内側の小さな円は難聴者個人を指します。外側の円は環境です。内側の円は内的資源(個人がもともと持っている力)、外側の円は外的資源(リソース)といえます。
そして、二重円ごと時計でいえば正午、3時、6時、9時のところで4分割する十字を入れてください。これで8部分のスペースができましたね。正午から3時までは(二重円ごと)医学・健康面、3時から6時までは心理面、6時から9時までは社会面、9時から12までは精神面の資源(リソース)です。

繰り返しますが内側の円は個人がもともと持っているもの、外側のドーナツ部分は外的資源です。自分に対して健全で正しいイメージを持っている(セルフ・エスティームがある)ほどその人のありようは、しっかりした内側の円と外側の円が調和しています外側の円も大きいです。
外的資源を探ろうとしない、あることすら知らない難聴者は内側の小さな円どまりか、下手すると健康を害したり、友達を失ったり、うつ病などに陥って小さいほうの円も縮小していきます。
カウンセリングやセルフヘルプグループの働きは心理面と社会面の外側のドーナツ部分にあって、難聴個人の小さな輪をさらに強固に大きくし、将来はドーナツの縁よりも大きくなることを助けます。間接的にはその人の体の健康にも影響しますね。

医学面ももともと健康な人はさらに健康に、そうでない人は身体のお医者や心理カウンセラーを頼ることで健康に(ドーナツ部分を大きく)することができます。
4つのパイは互いに連鎖しあうので、はっきり切れているわけじゃありません。ひとつのパイに影響がいけば、他のパイにも影響がうつります。
9時から12時の精神面は日本人には一番分かりにくいのですが、欧米ではSpiritualityといい、人間のもっとも奥深いところで人間を人間たらしめる信仰や宗教のような心のよりどころになるものです。何かをありがたく思う気持ち、自然に対する畏怖や謙遜の気持ちのようなものでもいいかも知れません。それからパイは他にももっとあるかもしれません。
社会面のパイの基本は家族と学校です。大人になったら大学や会社。もうお気づきかも知れませんが、内的資源がもともと強い人はちょっと外的資源が加わるだけで飛躍できます。逆に元の円が小さくても外の資源に恵まれれば大きく成長することができます。どっちにも恵まれない、自分から求める力がないともともと小さい円も縮小して点になってしまいます。これは避けねばなりません。

おんぶばった1それから自分個人が全く空虚で外側ばかり求めているドーナツさんも危険です。ドーナツの空洞を埋める努力をしなければなりません(ミスタードーナツでいえば中にクリームが入っているアンパン型がいいです)。
わたし個人のイメージするエンパワメントのモデルはこの4分割(なん分割でもいいのです)されたクリーム入り(アンパンでもいい)ドーナツです。4分割されてもそれぞれが味わいあるドーナツです。



難聴者のエンパワメントはクリーム入りドーナツ(2)

2006年09月21日 12時14分40秒 | エンパワメント

木の実?サンフランシスコの風さんから。


ラビット 記
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わたしもラビットさんが考えられているように、エンパワメントの制度化にあたっては個人とグループでのサポート体制が両立するのが好ましいと思います。
個人のエンパワメントについては、ギャローデット大学のアレン・サスマン教授がもう20年も前に「社会的に好適応できる聾者の特徴」という有名な論文を書いていて、なんとなくこれが今でも聴覚障害者一般のメンタル・ヘルス(カウンセリング)のモデルになっているようです。下に彼の理論を抜粋しました。

Allen E. Sussman,Ph.D. on the characteristics of a well Adjusted Deaf Person. He states, "The well-adjusted deaf person possesses a positive self-concept and a healthy level of self-esteem. She does not think she is less of a person because of her deafness. She does not evaluate her worth as a person according to her English or oral skills. Hence, the development, fostering and enhancement of positive self-concepts and high levels of self-esteem laced with opportunities to experience success and achievement, begins with parents and then in school."

つまり、「健全な自己のセルフ・エスティーム(自己イメージ)をしっかりともった聾者は社会に適応しやすい。それには親や学校の教え方が大きく影響...」ということです。
自己の健全なイメージを育てるために、個人カウンセリングと手話講習会などのグループ形式のセルフヘルプ組織の両方が制度化されることが大事です。
健全な自己イメージを持った聴覚障害者を見極めるためには以下のようなモデルをわたしはイメージしています(大学やプロになってから学んだことから影響を受けています)。

(続く)