難聴者の生活

難聴者の日々の生活から、人工内耳など難聴者のコミュニケーション、聴覚障害者の制度改革について語る。

障害者権利条約と難聴者(2)

2008年05月04日 22時41分33秒 | 権利
080504_1618~001.jpg080504_1615~001.jpg難聴者にとっての障害者権利条約のポイントの二つ目は、コミュニケーションの定義だ。


権利条約では、障害者の種別や程度、環境によらず、コミュニケーションはあらゆる手段、様式を掲げており、しかも対面のその場のコミュニケーションだけではなく、アクセシブルな情報通信によるコミュニケーションも含めている。

難聴者のコミュニケーションは、聴覚、視覚的、体感的な情報のやりとりによって行われる。
権利条約では、聴覚には音声、音響、音楽、音などを聞くことを指し補助的な方法として補聴器や補聴支援システムがそれにあたる。
表記された文字は文字の掲示、音声の字幕、要約筆記などが該当し、手話は言語として規定された手話(いわゆる伝統的な手話)も音声の代替え的な手話表現も含まれる。
読話は音声の代替的な様式にあたる。筆記は書記言語、書き言葉で表されたもの、あるいは書くという方法、触覚その他の感覚による意思の伝達(コミュニケーション)などを全て網羅していることがポイントだ。


ちなみに条約の原文ではcommunicationコミュニケーションだが政府訳では「意思疎通」とされている。

コミュニケーションは情報の受け手の理解によって意味が生じる。
声を出しても相手にが聞こえなければコミュニケーションにならないということを良く考える必要がある。

Article 2
Definitions
For the purposes of the present Convention:
“Communication” includes languages, display of text, Braille, tactile communication, large print, accessible multimedia as well as written, audio, plain-language, human-reader and augmentative and alternative modes, means and formats ofcommunication, including accessible information and communication technology;
“Language” includes spoken and signed languages and other forms of non spoken languages;
(http://www.dinf.ne.jp/doc/english/rights/protocol.html#article2)

川島聡・長瀬修両氏仮訳(2008年4月18日付)。
第2条 定義
この条約の適用上、
「コミュニケーション〔伝達・通信〕」とは、筆記〔文字言語〕、音声装置、平易な言葉、口頭朗読その他の拡大代替〔補助代替〕コミュニケーションの形態、手段及び様式(アクセシブルな情報通信技術〔情報通信機器〕を含む。)とともに、言語、文字表示〔表記〕、点字、触覚伝達、拡大文字及びアクセシブルなマルチメディア等をいう。
「言語」とは、音声言語、手話及び他の形態の非音声言語等をいう。

(政府仮訳)
第二条 定義
この条約の適用上、
「意思疎通」とは、言語、文字表記、点字、触覚を使った意思疎通、拡大文字、利用可能なマルチメディア並びに筆記、聴覚、平易な言葉及び朗読者による意思疎通の形態、手段及び様式並びに補助的及び代替的な意思疎通の形態、手段及び様式(利用可能な情報通信技術を含む。)をいう。
「言語」とは、音声言語及び手話その他の形態の非音声言語をいう。




ラビット 記



難聴者の家族との会話

2008年05月04日 12時47分20秒 | 生活
080503_1624~001.jpg080503_1625~001.jpg難聴者が家族や兄弟と会食した場合、コミュニケーションはどうなるか。

家族や兄弟なので本来は一番気のおけない関係のはずだ。何でも話せるし、何でも頼めるはずだ。

しかし、実際には聴こえる家族どうし、兄弟の会話が優先される。
聴こえる家族はそれなりの会話の必要性や楽しさがあるからだ。
例えば子供や姪、甥の近況や親の様子はお互いのコミュニケーションに欠かせない。
難聴者の兄弟や叔父だからといってコミュニケーションをする方法を理解しているとは限らない。

その時に、聞こえないのでホワイトボードに書いてと頼んだこともある。法事の時に要約筆記を頼んだこともある。


家族が楽しそうに話し合っている時になかなか今のは何の話しとは聞きにくい。何度か言ったことがあるがその度に会話が中断するし、大きい声で言われても周りがうるさいと聞こえず、お手上げだ。言ってもらってもわからないので聞くのをやめてしまう。

昨夜は気の優しい姪がいたから頼めば書いてくれたかもしれない。いろいろ考えごとをしていたので頼む機会を失っていた。
難聴者は心身ともに元気でないと自らの立場の主張も言いにくいのだ。


難聴は見て分からない障害というのは聞こえるか聞こえないか見て分からないということもあるが、言わないと分からないということだ。世の中には言うに言わない「配慮のある」難聴者がいかに多いことか。

これが難聴者の日常生活だ。


ラビット 記



2008年5月8日、障害者権利条約の発効を喜ぶ

2008年05月04日 12時20分50秒 | 権利
080503_1617~001.jpg080503_1609~001.jpg2008年5月3日、障害者の権利条約が発効した。
世界の障害者の悲願であった、権利条約だ。
この批准のために、各国の障害者組織は国や社会に働きかけている。
日本でも、日本障害フォーラムJDFを中心に、政府と交渉を続けている。

これまで、4回、障害者の権利条約について、講演したが、その度に痛感することは、障害者自身の意識の向上だ。もちろん、政府や自治体にも社会の世論を高め、障害者の自覚を促す役割が課せられているが、障害者の観点で説明するには障害者自身が説明する必要がある。
それでこそ、権利条約の意義が理解出来るし、社会を理解させられる。

「合理的配慮の否定は差別になる」、「法以外の枠組みも対象になる」はちょっと説明に詰まったところだ。

障害者の権利条約については、障害者自身が学ぶ必要がある。


ラビット 記
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障害者権利条約が発効 - MSN産経ニュース
世界に6億5000万人いるとされる障害者への差別を禁止し、健常者と同様の権利を保障する「障害者権利条約」が3日、発効した。批准が発効条件の20カ国に達した先月.・・
http://sankei.jp.msn.com/world/europe/080504/erp0805040108000-n1.htm

2008/05/03-14:43 障害者の権利条約発効=「歴史的」と評価-国連総長
【ニューヨーク3日時事】世界に6億5000万人いるとされる障害者に健常者と同等の権利を保障する国際条約「障害者の権利条約」が3日、発効した。
国連の潘基文事務総長はこれより先、「すべての人の人権実現を追求しているわれわれにとって歴史的瞬間だ」と評価する声明を発表した。・・
http://www.jiji.com/jc/c?g=int_30&k=2008050300181

障害者の権利条約が発効 128カ国署名、批准25カ国
2008年05月04日18時08分
【ニューヨーク=松下佳世】障害者への差別をなくし、社会参加を促す「障害者の権利条約」が3日、発効した。締約国は、差別をなくし、教育や雇用などあらゆる分野で障害者に健常者と同じ権利を保障する義務を負う。
http://www.asahi.com/international/update/0504/TKY200805040123.html?ref=goo