難聴者の生活

難聴者の日々の生活から、人工内耳など難聴者のコミュニケーション、聴覚障害者の制度改革について語る。

要約筆記はなくなりません。

2009年12月04日 12時55分30秒 | 日記(つぶやき)
もじらさんの「特別支援教育支援員日記」要約筆記講座3に、コメントを投稿した。

要約筆記は、話された言葉がそのまま文字化されてもなくなりません。
ぜひ、頑張ってください。


ラビット 記
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要約筆記の講習会に通って頂き、ありがとうございます。

人が話した言葉をそのまま文字化するシステムが出来たとしても、要約筆記はなくなりません。
すぐにご理解いただけると思いますが、普通の会話には多くの非言語要素が入っています。それはオンを文字に置き換えられたとしても表現できません。
「もういいです」が怒気を含んだ言葉だったり、十分満足したのか、遠慮しているのか、これは文字で伝えようと思ったら伝えられないです。
「いりません」「十分いただきました」「もう結構です」などの表現を使う必要があります。
また、話された言葉を聴くのと文字化された言葉を読むのとでは脳の使い方、ストレスがだいぶ異なります。
生まれたときから、オンを聞いて言語化してきた脳はその生後時間をかけて多様な概念を言語化し、さらに数年後に文字を学習し、その文字化したものを読んで理解するにはさらに数年の時間を要します。それだけ、文字を読むと言うことは高度の能力を要します。
そのことから、パッと読んで意味を理解する表現を要約筆記者は専門的技術として磨いています。
書くのに時間がかかるから要約しているのではなく、瞬時に理解が出来るように要約しているのです。
講演や講義などは、即時双方向の応答が求められないものは、そのまま文字化されてきましたが、その場で読んで理解するのは時間がかかるので、その記録を読むことが必要になります。

著作権院内集会での聴覚障害者の報告

2009年12月04日 08時25分40秒 | 日記(つぶやき)
著作権集会で報告された内容。

ラビット 記
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聴覚障害者の著作権問題について
(社)全日本難聴者・中途失聴者団体連合会
 理事長 高岡 正
 特定非営利活動法人CS障害者放送統一機構 副理事長

1.聴覚障害者の情報バリアー
 著作権法第37条の2で、聴覚により利用する著作物を聴覚著作物としています。毎日テレビやラジオで放送されるキー局、ローカル局、ミニ放送局の番組、インターネットで流れるニュースサイトの動画。販売、レンタルされるDVD、CD。上演される演劇、舞台など聴覚によって利用するコンテンツは枚挙にいとまがありません。
しかしこれらに字幕や手話、手話通訳が付くことはまだ少ない。災害時のテレビ情報に字幕も手話も付かないのは台風18号、20号の例を見ても明らかです。

2.著作権法の改正
 改正著作権法は、視聴覚障害者を視覚または聴覚により著作物の利用が困難な人とし、初めて視覚または聴覚障害者以外の障害者の情報アクセスに道を開いたという巨大な意義があります。
 中途失聴者、難聴者にとっても身体障害者手帳を有無を問わず、その聴力デシベルの程度、利用の程度によらない、広く難聴者の情報アクセスに道を開いたという大きな意義があると思います。
 聴覚著作物に字幕や手話を付加して貸出しすること、字幕と手話の公衆送信に著作権制限が認められたことは大きな前進です。

3.しかし、改正著作権法は、障害者が障害を持たない人との同じ権利を有すること、その是正に国が措置することを求めた障害者権利条約からみると極めて不十分なものというのが聴覚障害者関係団体の一致した考えです。
これらを聴覚障害者がアクセスできるように著作権が制限されるのは二つの場合のみです。一つが自動公衆送信です。もう一つが複製の貸し出しです。

聴覚著作物の音声の文字化と「聴覚障害者等が利用するために必要な方式」による複製を自動公衆送信出来るとありますが(第37条の2第1項の方式)。
この「聴覚障害者等が利用するために必要な方式」というのが手話のことだと文化庁は説明されています。
音声の字幕データ(文字による複製)と手話の映像データ(手話の複製)がインターネットで送信できるようになったがテレビ番組に手話と字幕を付けてインターネットで配信しようとすると映像は送信できないと著作権課が説明しています。
しかし、手話は元の映像なしにはあり得ないコミュニケーション方法です。話者が自ら手話を使うか、音声で話す話者と手話通訳両方を同時に見るかのどちらかありません。手話通訳は話者の表情から話し方、指示動作、服装までの情報を生かして、通訳するコミュニケーション支援技術だからです。
聴覚障害者は手話通訳だけでは利用出来ず、「聴覚障害者等が利用するために必要な方式」とは、手話通訳と音声を含む映像との一体的複製しかあり得ないのです。
元の映像と一体でなければ、手話通訳の映像と同期させるための技術が必要となり、新たな障壁となります。
従って、第37条の2の第1項の自動公衆送信とは、手話を付加した映像の自動公衆送信が送信可能化権とともに認められているもとと理解すべきです。

二つ目の問題として、著作物に字幕と手話を付加する場合、原板の入手方法が問題になります。放送事業者や制作メーカーなどに提供を受けて字幕等を制作するとなると特に災害時等の放送は時機を逸してしまい、社会の中で情報を等しく得る機会が保障されません。私たちは便宜的な方法を求めています。

三つ目の問題は、複製物の貸し出しにあたって著作権者に相当の金額を支払うことになっていますが、私たちは元々利益を得るどころか著作物にアクセスできていないために字幕等を入れた著作物が必要なのです。本来は著作権者が負担しなければいけないのではないでしょうか。字幕や手話を挿入するのは全国に無数のボランティアのグループが行っています。これらの方々に補償金を求めるならば制作が止まってしまうでしょう。
まだまだ多くの問題がありますが、当事者を交えた協議で解決することを強く望みます。