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福知山線脱線事故:JR西日本の山崎社長ら10人書類送検

2008-09-09 23:44:14 | 鉄道・公共交通/安全問題
JR西日本の山崎社長ら10人書類送検(毎日新聞)

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 兵庫県尼崎市のJR福知山線脱線事故(05年4月)で県警尼崎東署捜査本部は8日、業務上過失致死傷容疑でJR西日本の山崎正夫社長(65)ら鉄道本部幹部経験者9人と高見隆二郎運転士(死亡、当時23歳)の計10人を神戸地検に書類送検した。これを受け地検は遺族や負傷者に意見などを聞くアンケートを実施し、約20人の専従捜査チームを設ける方針。立件の可否について年内を目標に判断するとみられる。

 幹部経験者9人は▽元鉄道本部長の山崎氏と梅原利之氏(69)、徳岡研三氏(61)▽元安全対策室長の池上邦信氏(63)、村上恒美氏(59)▽元運輸部長の仲井徹氏(60)、長谷川進氏(58)、橋本光人氏(55)、三浦英夫氏(58)。県警は山崎社長ら5人には地検に刑事処分の判断を委ねる「相当処分」、他の4人には起訴を求めない「然(しか)るべき処分」と意見を付けた。9人は「事故を予見できなかった」などと容疑内容を否定している。

 神戸地検のアンケートは犠牲者106人の遺族と負傷者562人に郵送し、捜査への意見や現在の気持ちなどを聞く。

 事故は05年4月25日午前9時18分に発生。快速電車(7両編成)が制限速度70キロの現場カーブに時速約116キロで進入して脱線し、乗客106人と高見運転士が死亡、562人が負傷した。

 ◆10人の容疑内容◆

・高見運転士=ブレーキ操作を怠り速度超過でカーブに進入し電車を脱線させた。

・山崎氏、梅原氏、池上氏、仲井氏、長谷川氏=現場が急カーブに変更された96年当時、自動列車停止装置(ATS)設置などの安全対策を怠った。

・徳岡氏、村上氏=現場へのATS設置が決まった03年9月以降、事故までATS設置を完成させなかった。

・徳岡氏、橋本氏、三浦氏=日勤教育などで高見運転士に過度のプレッシャーを与えた。

 ◇社長辞任せず
 JR西の山崎社長は8日、記者会見で進退に触れ、今後も辞任しない意向を示した。「安心できる鉄道をつくりあげ、企業風土を抜本的に変えていくことが、今の私に課せられた責務」と述べた。
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当ブログは、かねてから高見運転士の立件につながる書類送検に強く反対してきた。高見運転士は、被害者との関係において加害企業社員としての地位を持っているが、一方では決定権のない末端の社員であると同時に、締め付けが厳しく、自由のない社内において日勤教育に怯えながら勤務していた。その意味で運転士もまたこの事故の犠牲者である。高見運転士を犠牲者の列に加えず、事故から3年経った今なおこの事故の犠牲者数を106名とするJR西日本の姿勢を許すことはできない。

運転士の立件は事故の原因究明に何ら寄与しない。運転士のみならず、鉄道乗務員に刑事罰が加えられることになれば、乗務員が自己にとって不利益になる供述を拒むことになり、真の事故原因の究明がかえって困難になるからだ。事故の原因究明と再発防止のためには、乗務員を免責する勇気を持たなければならない。

JR西日本幹部らの立件は妥当である。とりわけ、山崎社長と徳岡研三氏の責任は厳しく追及されなければならない。なぜなら山崎社長は、1996年、現場の線路が付け替えられ、半径300メートルの急カーブとなった際の鉄道本部長であり、急カーブ化と同時に速度照査型ATSの設置を決定しなかった責任があると認められるからである。徳岡氏に至っては、尼崎事故当時鉄道本部長であったばかりでなく、これに先立つ2002年、尼崎市の東海道本線で列車にはねられた中学生を救助しようとした救急隊員が後続列車にはねられ死亡した「救急隊員死亡事故」の際にも鉄道本部長の職にありながら、尼崎事故後、その責任を取る振りをして辞任後、程なく子会社に天下りしている。徳岡氏こそ、傲慢で堕落しきった安全軽視のJR西日本を象徴する人物である。

今回の事故をめぐり、事故当時社長だった垣内剛氏をはじめ、96年の線路付け替え以降の社長である井手正敬氏、南谷昌二郎氏の送検が見送られたことには納得できない。送検見送りの理由を県警は「事故当時の安全状況について詳しい報告を受けていなかった」ためであると説明するが、経営トップが事実を知らなかったから立件できないというのであれば、現場とトップの間が階層化・重層化し、官僚主義化した大企業ほど経営トップは免責される結果につながるからである。事故の犠牲者遺族・負傷者にとって、相手が大企業であるほど責任を追及できないなどという理不尽なことが許されてよいはずがない。

このような事故が起こるたび、法人としての企業を処罰することができない日本の刑事法の不備を実感させられる。「犯罪は個人が起こすもの」であるから刑事で法人は罰しないとする従来からの古典的な刑事法思想が、企業犯罪が多発する現在においては特定の個人に責任をかぶせ、企業を免責するための隠れ蓑に使われてしまっている。個人の集合体としての官僚主義的な組織のあり方こそが企業犯罪の主な構成要因となっている現在、このような時代遅れの刑事法は社会情勢に応じて見直さなければならない。

大勢の利用者の安全に直接関わる企業犯罪の刑事責任は、企業を主、個人を従とすべきだと当ブログは考える。刑事法の抜本的見直しが困難であれば、当面、個人と同時に法人にも刑事責任を負わせる「両罰規定」の整備を進めながら、法人たる企業を主として財産刑を科することができるような法体系の構築を急ぐべきである。事故を起こすことが、法人たる企業にとって「高くつく」ことが明確にされるなら、企業はこぞって安全対策を進めると考えられる。JR西日本のように、必要な安全投資まで削減したことによって蓄積された利潤は不当利得にほかならないのであり、これを没収して犠牲者遺族・負傷者に補償を行うことは、不当利得の還元という意味でも社会的意義を持つ。

関係者の送検という節目を迎えるに当たり、当ブログは、107名(後追い自殺者を含めると108名)の犠牲者遺族に改めて哀悼の意を表するとともに、今なお治療過程にある負傷者の方に対しても、お見舞いを申し上げるとともに1日も早いご快癒をお祈りする。同時に、鉄道事故の再発防止という当ブログに課せられた使命を再認識し、引き続き安全問題に取り組んでゆく。

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