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格安ツアーバス消滅危機 規制強化でコスト増、LCC台頭も逆風

2013-06-22 22:47:13 | 鉄道・公共交通/安全問題
格安ツアーバス消滅危機 規制強化でコスト増、LCC台頭も逆風(産経新聞) - goo ニュース

昨年4月、乗客7人が死亡した関越道バス事故を受け、国交省に設置された「バス事業のあり方検討会」の最終報告(PDF)を基に、いよいよ今年8月から高速バスが新制度に移行する。具体的には、従来、道路運送法が適用されていなかったツアーバスにも同法を適用、停留所設置など高速路線バスと同様の運行形態を義務づける。運行形態だけを見るならば、事実上、ツアーバスの高速路線バスへの統合といえる。

これだけでも、不法な路上駐車など、ツアーバスがもたらしてきた問題にある程度の改善は図られるだろう。しかし、「高速ツアーバス乗務員は語る 家族は乗せたくない!」(自交総連大阪地連・編)が指摘する根本的問題――「顧客」である旅行会社からツアーバス運行会社への無理な要求――がなくならない限り、問題の根本的解決にはつながらないように思われる。

停留所を設置し運行本数や運賃を事前に届けることや、バスを自社で6台以上保有することといった新たなバス事業の認可基準により、現在のツアーバス事業者の半分が撤退に追い込まれる見通しだという。こうした認可基準は、2000年の道路運送法「改正」以前なら当たり前に守られてきたことばかりで、当ブログは別に厳しいとも思わない。誤解を恐れず言えば、この程度の規制強化で撤退せざるを得ないような事業者は、初めから参入などさせてはならなかったのである。

引用した産経の記事は、運輸省(当時)が行った規制緩和には触れることなく、「高速バスの安全運行は大前提だ。コスト増は事業者も利用者も理解してくれると思う」という「国交省幹部の説明」を何食わぬ顔で紹介しているが、それではあまりに公正さに欠ける。規制緩和でさんざん参入を煽っておきながら、事故が起きると梯子を外され、撤退に追い込まれるバス事業者から見れば「勘弁してくれよ」が正直な気持ちだろう。

「バス事業のあり方検討会」自体、関越道バス事故を受けてようやく設置され議論が始まったものに過ぎない。そもそも、2000年の道路運送法「改正」により、バス事業を認可制から届出制に変更、バスを5台所有するなどの一定条件を満たせば誰でも参入できるような極端な規制緩和を行ったのは運輸省だ。その上、2007年、あずみ野観光バスによる大阪府内での死亡事故を受け、総務省が実施した行政評価により改善勧告を受けながら、国交省は何も手を打たず、事態を漫然と放置して関越道事故を招いた。当ブログと安全問題研究会は、国交省の責任を追及すべきだと考えている。過去の規制緩和の失敗を認めず、悲惨な事故が起きてようやくなし崩し的に規制強化に動く国交省の「人柱行政」を改めなければ、他の交通分野でも事故は避けられないだろう。

今回の新バス制度により撤退に追い込まれるのは、乗客の命を預かって運行しているという自覚に乏しい事業者がほとんどだろう。そのような事業者はどんどん撤退させておけばよい。バス事業者の数が減って過当競争が改まれば、バス事業者の旅行会社に対する発言力も強まり、無理な要求はきちんと拒否できるようになる。事故から1年、貴い命の犠牲を契機として、公共交通に関しては市場原理は万能ではないことを改めて確認すべきだ。

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