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国は今こそ貨物列車迂回対策を!

子ども甲状腺がん裁判 井戸謙一弁護団長発言

2022-01-29 23:14:39 | 原発問題/一般
27日、甲状腺がん患者6名が東京電力を相手取り、訴訟を起こした。裁判後の報告会での井戸謙一弁護団長発言内容を入手したので、昨日、記事にした原告発言に続いて転載する。一般メディアでこの発言内容を載せているところはないと思われる。

なお、井戸弁護士は元裁判官で、金沢地裁時代の2006年3月、北陸電力志賀原発(石川県)2号機の運転差し止めを認める判決を出したことで知られる。確定前でも暫定的に法的拘束力が生じる仮処分決定と異なり、裁判継続中は法的拘束力を持たない通常の判決だった。北陸電が控訴し、高裁で判決は覆されたため、実際には原子炉の運転を止めるには至らなかった。

しかし、当時は福島原発事故の5年も前。日本で原子力の運転が始まってから、この判決以前で住民側が勝訴できたのは、わずかに高速増殖炉「もんじゅ」差し止め訴訟控訴審判決(2003年1月、名古屋高裁金沢支部)だけという状況だった。

「もんじゅ」は実験用原子炉だったので、電力会社が一般向け発電用に動かしている、いわゆる商業用原子炉をめぐって差し止めの判決が出されたのは日本の原子力史上、志賀原発裁判が初めてだった。しかも、その5年後の2011年3月に福島原発事故が起きたため、志賀原発訴訟は結果として「福島」以前に商業用原子炉をめぐって運転差し止めを命じる裁判としては唯一の事例となってしまった。

そうした経歴を持つ裁判官が、退官後、弁護士となり、この裁判の弁護団長を務めることになった。弁護団は総勢17人。原告の3倍もの規模の弁護団が結成されること自体、今回の裁判の困難さと、これから原告たちを襲うであろう苦難を示唆するものといえる。強大な原子力ムラ総力を挙げての卑劣な原告つぶし攻撃、東電からの「セカンドレイプ」的反対尋問にとどまらず、社会的弱者の置かれた困難に心を寄せる意思も能力も持たない冷酷な『世間』からのものも含むあらゆる攻撃からの原告防衛という、きわめて困難な任務を弁護団はこの裁判終了まで担うことになる。

なお、当ブログは、連れ合いとの家庭内会議の結果、この裁判の重要性・困難性に鑑み、極めて異例の金額だが5万円を寄付することを決定した。近く、クラウドファンディングを通じて寄付することになる。

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(以下、井戸弁護団長発言)

本日、福島原発事故当時福島県に居住し、事故によって被ばくし、その後小児甲状腺がんになった若者6名が、小児甲状腺がんになったのは被ばくが原因であるとして、東京電力に対し損害賠償を求め東京地裁に提訴した。

6名の年齢は17歳から27歳。事故当時は6歳から16歳の子どもだった。そもそも小児甲状腺がんは100万人に1人か2人しか発生しないきわめてまれな病気だ。福島県の子どもの数は30数万人だから、福島県なら2~3年に1人出るか出ないかというまれな病気だ。

ところが、原発事故後の福島では県民健康調査で266名、それ以外で27名、合わせて293名の小児甲状腺がん患者がすでに発生している。

原告たちはそのうちの1人になってしまい、思い描いていた人生を狂わされ、なぜ自分が十代でがんにならなければいけなかったのか、考え続けてきた。しかし、いくら考えてもその答えは“被ばく”しか考えられないのだ。あの2011年3月中旬以降、被ばくを避けるように厳しく注意してくれる大人はいなかったし、被ばくなんて気にしないでそれまで通りの生活をしていた。それぞれが相当量の被ばくをしたと考えられる。

しかし今の福島では、自分のがんの原因が被ばくではないか、などとは言えない。医者に質問すれば頭から否定される。質問しないのに「君のがんは被ばくが原因ではないからね」と言う医者もいる。周りの人に対してそういう疑問を口にすれば、福島の復興に水を差す風評加害者としてバッシングされる。彼らは自分が甲状腺がんに罹患したことさえ隠して生活してきたのだ。

しかし、将来の不安は高まるばかりだ。6人とも手術で甲状腺の半分を摘出したが、そのうち4人は再発し、甲状腺全部を摘出した。甲状腺を全部摘出すると、残った甲状腺組織をやっつけるために放射性ヨウ素が入ったカプセルを内服するRI治療という過酷な治療を受けなければならない。そのカプセルに入っている放射性ヨウ素は何と少なくとも10億ベクレルだ。

さらに、甲状腺がないから生涯ホルモン剤を飲み続けなければならない。再発を繰り返し、4回も手術を受けた若者がいる。再手術の可能性を医師から指摘されている若者もいる。肺転移の可能性を指摘されている若者もいる。全員が再発を恐れている。進学にも就職にも支障が出ている。将来の結婚、出産なども不安だ。

このまま泣き寝入りするのではなく、加害者である東京電力に自分たちの甲状腺がんの原因が被ばくであることを認めさせ、きっちりと償いをさせたい。思い悩んだ末、彼らはそう決意し、提訴するという重い決断をした。

しかし彼らが提訴の決断をしたのは、それだけが理由ではない。同じ境遇の300人近い若者たちが同じように苦しんでいるだろう、誰かが声を上げればその人たちの希望になる、そしてできればその人たちとも一緒に闘いたい。さらに、原爆被爆者の方がたが被爆者健康手帳をもらって生涯にわたって医療費や手当の支給を受けているように、原発事故による被ばく者にも支援の枠組みをつくってほしい。そこまでつなげたい、と彼らは願っている。

国や福島県が小児甲状腺がんと被ばくとの因果関係を認めていない中で裁判所にこれを認めさせるのは難しいのではないか、と考える方がおられるかもしれない。しかし、100万人に1人か2人のはずだった病気が数十倍も多発しているのだ。そして甲状腺がんの最大の危険因子が被ばくであることは誰もが認めることだ。教科書にいの一番に書いてある。そして原告らは確かに被ばくをした。

最近、福島県民健康調査では必要のない手術をしているという過剰診断論が流布されているが、原告らのがんは進行しており、過剰診断ではあり得ない。したがって、東京電力が原告らのがんの原因が被ばく以外にあるのだと証明しない限り、原告らの甲状腺がんの原因は被ばくであると認定されるべきであるとわれわれは考えるし、その考え方は裁判所にも十分ご理解いただけるものと考えている。

6名の若者は本日、闘いの第一歩を踏み出した。請求金額は全摘の若者4名が1億円に弁護士費用1千万円を足し1億1千万円、かつ片葉切除の若者2名は8千万円に弁護士費用800万円を足し8800万円だ。長い闘いになる。本当は1人1人がみなさんの前で顔と名前を出してその気持ちを訴えたいのだが、今の福島、今の日本の現状ではそれをすることはできない。今後も匿名で訴えることになるが、その点はぜひご理解をお願いしたいと思う。

最後に、メディアのみなさまには「福島の事故は終わった」「福島事故による健康被害者はゼロだ」などという政府のウソのプロパガンダに惑わされることなく、この現実を日本中世界中の人びとに幅広く伝えていただきたくお願い申し上げる次第だ。

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