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鉄道・運輸機構理事長が年明け辞任を表明 工事「総崩れ」状況を見ると当然では?

2020-12-27 23:13:46 | 鉄道・公共交通/交通政策
北陸新幹線開業遅れ、改善命令 国交省、鉄道・運輸機構に(共同)

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 国土交通省は22日、北陸新幹線金沢―敦賀(福井県)の開業遅れと建設費増加は管理体制に問題があったとして、建設主体の鉄道建設・運輸施設整備支援機構(横浜市)に業務改善命令を出した。国交省が機構に改善命令を出すのは初めて。機構の北村隆志理事長は記者団の取材に「代表者としての責任を明確にする」として、年明けに辞任すると表明した。

 上原淳鉄道局長が22日午後、北村氏を国交省に呼び、命令文書を手渡した。来年1月29日までに改善内容を報告するよう求めている。

 機構は03年、日本鉄道建設公団と運輸施設整備事業団が統合して発足した独立行政法人。
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鉄道機構理事長が辞任表明 初の改善命令受け 北陸新幹線工事遅れ(時事)

 工事の遅延で北陸新幹線金沢―敦賀間の開業が2023年春から1年遅れる問題で、国土交通省は22日、建設主体の鉄道建設・運輸施設整備支援機構に対し、独立行政法人通則法に基づく業務改善命令を初めて出した。

 これを受け、機構の北村隆志理事長は、年明けにも引責辞任すると表明した。

 国交省は命令で、施工管理体制や沿線自治体との情報共有を強化するよう要請。来年1月29日までに改善策を報告することも求めた。

 北村理事長は記者団の取材に「このような事態に至ったことを重く受け止める。機構の代表者として責任を明確化する」と説明。機構が改善策をまとめる前に辞任する考えを示した。小島滋副理事長も退任する。
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独立行政法人鉄道建設・運輸施設整備支援機構(鉄道・運輸機構)に対し、「北陸新幹線工事の遅れ」を理由に国交省が業務改善命令を出した。業務改善命令は、正面衝突事故を2度も起こした京福電鉄(福井県、現えちぜん鉄道)やJR北海道などに出された例はあるが、鉄道・運輸機構への発出は記事にもあるように初。機構は理事長、副理事長の「2トップ」が年明けに辞任することになった。これも異例中の異例である。

しかし、今や鉄道・運輸機構が手掛けた工事は総崩れ状態にある。この間ずっと整備新幹線問題、リニア問題を追ってきた当研究会の目で見れば、これだけの事態を招いた機構の責任は問われて当然であり、辞任はむしろ遅きに失した感さえある。

北陸新幹線金沢~敦賀間は、2023年の敦賀開業を目指して工事が続いているが、貫通済みのトンネルから亀裂が見つかったことを11月初旬、各メディアがいっせいに報じた(参考記事:北陸新幹線工事、地盤が膨張し割れ目…1400本の固定ボルトが必要 加賀トンネル、完了2割程度(「福井新聞」2020年11月4日付))。さらに重大なのは、機構がこの亀裂の発生を9月段階で把握していたにもかかわらず、11月まで2ヶ月近くも隠蔽していたことである。この亀裂は大規模なもので、1400本ものボルトを追加で打ち込む必要があることから、2023年の敦賀開業は絶望視されている。

このところ、機構が手掛ける工事はあちこちで頓挫している。北海道新幹線札幌延伸工事は、北斗市内で有害物質を含んだ残土置場が満杯になったまま「次」の置場が決まらず、9月から工事中断となっている(参考記事:新幹線工事中断、来年2月末まで 渡島トンネルの一部(「北海道新聞」2020年11月26日付))。九州新幹線西九州ルートについても、フリーゲージトレイン頓挫によって、当初計画になかった武雄温泉~鳥栖間のフル規格格上げに佐賀県が反発し、工事が事実上暗礁に乗り上げている。実態は当ブログ2018年7月25日付記事「フリーゲージトレイン試験とん挫で混迷深める長崎新幹線~規格も決まらない路線に1兆円もの資金投入目指す「世紀の愚策」~」でお伝えしたとおりである。

そして、機構が国からの財政投融資3兆円を受け入れ、JR東海に「又貸し」する形で支援しているリニア新幹線も、大井川の流量減少問題をめぐる静岡県の抵抗で、静岡県内では工事にまったく入れていない実情がある。このように、今や機構が手掛ける現在進行形の新幹線工事(リニア工事含む)は「全滅」状態となっている。

これが古き良き「昭和」の時代なら、札ビラで地元の頬を叩き、デマとねつ造で事業の「有益性」を強調、最後は強制収用など力ずくで押し切れば新幹線は造れたであろうし、いざ造ってしまえば地元は万歳三唱で迎え、ぶつくさと反対していた連中も便利さに負けて結局は使うんだろう、と推進側は高を括っていればよかった。

しかし、従来の国のやり方では今や地元住民はおろか自治体すら納得しない。「こんなに便利に(あるいは速く)なるのに、なぜそんなに反対するのか」と昔のまま思っているなら、推進側はいずれ高い代償を払うことになるだろう。人々の価値観は多様化し、便利にさえなればいい、スピードアップさえすればいいという人ばかりではない。変わっていないのは事業を推進する政治家と官僚だけで、市民意識という意味では時代は変わっていないように見えても着実に変わっている。いつもと違うコロナ禍の年の瀬の風景からは、そんな日本社会の「底流」の変化も透けて見えてくる。

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