心の風景 認知的体験

癌闘病記
認知的体験
わかりやすい表現
ヒューマンエラー、安全
ポジティブマインド
大学教育
老人心理

広告登場者の言説の信用度

2021-06-12 | わかりやすい表現
第一 料理師などエキスパート
「本物を超えてる」<<エキスパートは嘘は言わない

第二位 素人(らしき人)
「私史上、いちばん」<<朴訥さに真実味を感じる

第三位 俳優
「こりゃ、うまい」<<いかようにも真実性を演ずることができる



説得力アップ

2021-06-02 | わかりやすい表現
説得力アップ

●子どもを説得する
 言葉があやつれるようになり、自我ができはじめる3歳頃。第1反抗期がはじまります。この時期は、親が子どもに説得という行為をはじめる頃でもあります。言うことをきかない子どもをそれなりの理屈で説得しなければなりません。
 やがて小学校に入り知識が増えてくると、説得よりも説明主体の対話になっていくのですが、中学校に入る頃になると、再び反抗期がはじまります。親離れのためです。これが、第2反抗期です。
ここでも説明よりも説得する(したくなる)ことのほうが何かと多くなりますが、第1反抗期の時とは違い、子どもの側の知識量も豊富になりますから、説明と説得をうまく使い分ける必要が出てきます。

●説明と説得をバランスよく
 両者はそれほどはっきりとは区分はできないのですが、説明は子どもの知識に関連づけての情報提供、説得は子どもに有無を言わさずにこちらの言い分や考え方を受け入れさせることとなります。
 説明ばかりではらちがあきません。そうかといって、力まかせの説得ばかりでは、表面的な納得しか得られません。説明と説得とがほどよいバランスを保つことが求められるところです。
 わき道にそれますが、夏休みになると、NHKで子ども電話相談がはじまります。
 子どもの質問のおかしさ、おもしろさもさることながら、回答の先生方の名解説には感心させられます。ただ、「わかりましたか?」とアナウンサーが聞くと、どの子どもも「わかりました」と答えるのが気になります。おそらく、いかに名解説でも、たとえば「熊は4本足であるくのに、人間はなぜ2本足であるくのですが?」「命はなぜ一つなのですか?」という5歳の子どもへの回答が、本当に「わかっている」かは、かなり疑問です。でも、どの子どもの一様に「わかりました」と答えます。ここには、説明の妙だけではなく、NHKという権威?による説得の力を子どもが感じ取っているような気がしました。

●「説得への抵抗にも配慮を」説得のコツ その1
 説得の入り口のところで、説得されることそのものに抵抗する傾向のあることが知られています。心理的リアクタンスと呼ばれています。反抗期の中学生くらいになると、とりわけ強いリアクタンスがあることを承知しておく必要があります。
 事の是非よりも、ともかく説得されることへの反発、時には説得内容とは逆の方向へあえて態度や信念を変えてしまうこともありますから、困ったものです。
 心理的リアクタンスを少しでも下げるようにしないと、いつまでも入り口にとどまってしまうことになります。
 そこで、TPOに応じて、その場でただちに説得、といった急いた気持ちを押さえて、
  • あめ玉でもすすめる
  • 雑談や世間話をする
  • 言い分をじっくりと聴く、
といったことが考えられます。要はあせらないことです。

●説明と同意の上で」説得のコツ その2「
 医療現場でのインフォームド・コンセント(説明と同意)については、ご存じだと思います。治療側がしっかりと根拠を示して、治療方針を患者に納得してもらうというものですね。
 日本でもかなり普及してきてはいますが、現場ではさまざまな問題があるようです。そのいくつかを挙げてみます。
・患者の理解にあう形での根拠の示し方が難しい。
・患者の不安が理解を妨げてしまう。
・治療側への一方的な依存が発生しがちで自分なりに理解し納得してもらえない。
患者と医師とは違って、子どもと教師の間には、基本的に対等な関係ではありませんので、真のインフォームド・コンセントは、子ども相手ではなかなか難しいところがあります
 子ども相手になると、わからないままの納得のほうが多いかもしれません。そのようなときは、「そうせざるを得ないので、そうした」という認識を説得する側が、しっかり持つことが大事ではないかと思います。
 薬を飲ませたい、しかし、なかなか根拠を示して説明してもわかってもらえない、本人も納得しない。しかし、ことは急を要する、というような場面はいくらでもあります。むろん、可能なら、保護者や担任に立ち会いのもとでの説得もあります。

●「勇気づける説得もある」説得のコツ その3
 説得はおおむね、こちらの言い分を相手に受け入れさせることですが、時には、子どもなりの考えや行動の良いところを見つけて、そのすばらしさをほめ勇気づけてやることもあってよいと思います。
 説得、すなわち対立、強制ではなく、子どもなりの態度や信念に対して教師なりの共感のメッセージを送ってやる勇気づけも、広くは説得と言って良いかもしれません。

●「説得には権威も必要」説得のコツ その4
 教師はただ教師であるだけで権威者だった時代は、子どもに対する説得は実に簡単だったと思います。その意味では、今の時代、説得の難しい時代です。しかし、教育という知の陶冶の現場では、むしろ、好ましい時代というべきかもしれません。
 権威をかざしての説得は、相手が子どもであるだけにできるだけ避けたいところです。子どもの知識に訴えながら、みずからの意志で納得することが知的な陶冶につながるからです。
「友達をいじめるな」とこわもての説得をするよりは、そのことの理非を考える機会と知識を与えることが説得の王道です。
 もちろん、いつもそれでいけるとは思いません。あれこれ言う前に子どもを動かさなければいけない緊急の時もあれば、絶対にやってはいけないことを止めさせなければならないときもあります。そんな時は、権威を振りかざしての本気の説得が必要です。
 
●「恐怖に訴える」説得のコツ その5
 権威を振りかざしての説得がだめなら、いよいよ最後は、恐怖や脅しに訴える説得になります。「言うとおりしないと罰(ばち)が当たるよ」という常套句がそれです。この変形は実にいろいろありますね。
 もっとも「罰(ばち)」が通用するのは、小学生まで。中学生ともなると、もっと理屈っぽくなってきますから、「罰(ばち)」の内容を科学的なものにしないと納得してもらえません。罰(ばつ)としては「携帯使用禁止」、脅しとしては、「いい高校に入れませんよ」などなど。
 なお、恐怖の裏返しとしては、安心や賞賛があります。これも、説得に使えます。「この薬を飲めば痛みがなくなる」「よく勇気を出して話してくれたね」などなど。
 いずれにしても、このコツは、あまり頻繁に使うと、効果が薄れます。

●最後に
 説明が理性的であるのに対して、説得には、感情的な要素が入ります。相手にどうしてもそうしてもらいたいという気持ちがあります。その気持ちのままに説得すれば効果があがるというものでもありません。
 そこには、説得のテクニックが必要です。言葉による説得をもっぱら想定して、そのいくつかを紹介してみました。

話し方力アップ

2021-06-01 | わかりやすい表現
話し方力アップ
  

●話し方はどうしてこれほど気になるのか
 話し方に強い関心があるのは、なぜなのでしょうか。その理由は3つあると思います。
1つは、言語活動の中で話す、聴くにさく時間が圧倒的に多いからです。
 2つは、うまく話せなかったという失敗体験に起因するものです。話すのは、その時その場での実時間での行為です。この点、書くのとの大きな違いです。となると、当然うまく話せなかった、あるいは、言い落としてしまった、さらには言い間違いをしてしまった、といった体験をごく日常的にすることになります。後味の悪さばかりを引きずることになります。
 関連して個人的な体験を一つ。しかるべき地位につくと、スピーチが多くなります。時には突然の指名での即興もあります。プレゼンならそれなりの準備とそれなりの草稿がありますからこんなことはあまりないのですが、スピーチとなると、程度の差をあってもほぼ毎回こんな後味の悪さを感じています。
 第3には、しかし、努力すれば失敗しないようになるはず、さらにうまく話せるようになるはずなのですが、努力の仕方がわからないのです。それが、話すことに興味、関心を向かわせるのだと思います。

●子どもとは心で話す
 ところで、眼の前にいる一人の子どもとうまく話すには、どんなことに配慮したらよいのでしょうか。基本的なことを2つ挙げておきます。
 子どもは、話の内容より、話し手の意図や気持ちの方を読み取るのに長けていることを、まず認識する必要があります。とりわけ、低学年になるほど、この傾向は著しいものがあります。
「頭が痛いの?」と子どもに話しかけた時に、どれくらいその子どものことを本当に心配してくれているかを、子どもはただちに理解してしまいます。
 これは、考えてみれば当然のことで、生まれ落ちて言葉を自由自在に操れるようになる5、6歳頃までの間に、こうした力を自分の周囲りにいる人々とのコミュニケーションの中で体験的に身につけてきているからです。子どもはハート・リーダー(heart reader)の天才であることをしっかりと知っておく必要があります。

●第一声が大事
 その上で、やはり言葉を使って話しかけることになるのですが、その第一声が極めて重要になってきます。第一声にこそ、ハート・リーダーの天才・子どもは大人の気持ちをしっかりと読み取ってしまうからです。
 子どもに対する愛があり、自分の気持ちがポジティブであれば、おおかたの第一声は、ハート・リーダーの心をとらえるものが無意識のうちに自動的に出てきます。したがって、それほどあれこれと心配することはありません。
 問題は、意に反しての第一声です。
まずは、例えば、どやしつけたいほどの怒りをどうやって言葉で表現するかです。そのまま叱責するのが最適な場合もあります。子どもの方にそうされて当たり前との認識がある場合です。
 その認識がない子どもにストレートな叱責は禁物です。こちらの気持ちを静め、ゆっくりと、「どうしたのか」という問いによって、状況把握に努めるところからはじめることになります。これがあなたの気持ちを平静にしてくれることにもなります。
 もう1つ、意外に面倒なのが、いわば気持ちにはあまり依存しなくてよい第一声です。大人どうしの場面でよくみられます。ここでは、いつものしきたり通りに、あいさつと子どもの調子や用件を尋ねるのが一般的ですが、その後に続く一言が、思いもよらず子どもの心を傷つけてしまうことがあります。
 不登校の子どもと廊下でばったり。あなたの第一声は、「こんにちは。元気でやっている?」ですか、それとも「あら!久しぶりね。どうしていたの?」ですか。
「普通の状況では普通に語りかける」のが原則ですね。それでなくとも、子どもは普通でなく見られるのを極度に恐れているはずですから。それを増強するような後者のような語りは禁物です。

●話し方のコツ
 第一声に続く話し方は、状況に応じてさまざまですので、ここでは、一人の子どもに何かを説明する状況を想定して、そこでの話し方のコツを4つほど提案してみたいと思います。

  • 自分ひとりで話す時間を短く
 どんなテーマにしても、話す材料は、教師の方が圧倒的にたくさん持っています。ついつい一方的に話すようになってしまいがちです。会話とは違いますから、話のやりとりはそれほどなくてよいのですが、それでも、理解の確認を随所でしながらの語りをした方がよいと思います。
  • 一度に説明する量も少なめに
 一度にどうしてもあれもこれもとなりがちですが、これも、子どもの理解能力を超えたものになりがちです。量を減らすだけでなく、紙に要点を書いて手渡すくらいまでやらないと、せっかくの説明もうまく伝わらないことになります。その際に、「わからないことがあったら、また来て」の一言も忘れずに。
  • ほめ言葉を豊富に
 ほめられれば誰しもが気持ちよくなります。話すほうも、ほめ言葉を使うことで気持ちよくなります。安直なほめ言葉の乱発はただちにその嘘っぽさを見抜かれてしまいますが、気持ちが本気ならそれを言葉で表現できればそれに越したことはありません。
 あなたは、今ただちに、どれくらいのほめ言葉が思い浮かびますか。
昔いた大学の知り合いの女性教授は、すべてにわたりエレガントなのですが、もう一つ、ほめ言葉が実に豊富なのです。お会いするたびに、気持ちが浮ついてしまいました。
ほめ言葉の語彙を豊富にする努力をすることです。さらに、表現全体をポジティブなほうにバイアスをかけるようにしておくことです。ポジティブ・コミュニケーションの項を参照してください。
  • 対面より90度の位置で
 一番よくあるのは、180度の位置に座って話すことだと思います。この位置だと、お互いに相手のことがよく見えます。
しかし、説明してわかってもらうような状況では、相手が見えすぎてしまうのは、説明内容のじっくりとした理解には、ノイズになってしまうことが時にはあります。視線、ジェスチャー、表情などが気になってしまうのです。それに資料などを見せるときには、対面では具合がよくありません。そこで、90度の位置に座って、資料や紙に書いたりして一緒に見ながらの話も時には効果的です。

最後に、カウンセラーの東山紘久著「プロカウンセラーの聞く技術」(??)の目次から、話し方のコツを挙げておきますので参考にしてください。
 
 ・自分のことは話さない 
・聞かれたことしか話さない 
・情報以外の助言は無用 
・言い訳しない 
・話には小道具がいる 
・沈黙と間の効用を知る 
・評論家にならない


文章表現力アップ

2021-05-31 | わかりやすい表現
文章表現力アップ
 なお、以下、コミュニケーション力アップのすべてにわたり、その基礎には、受け手の頭の働きのくせに配慮したコミュニケーションという観点――私は、これを認知表現学と称していますがーーがあります。
 
●メリハリ表現をーー文章表現力アップその1
 図の左側に示したのは、バスの非常口の開け方です。実例です。しっかりと読めば、内容的には正確で情報的にも充足しています。しかし、いざというときに、こんな表示を読んでもらえるでしょうか。

@@@@@@@@@@@@@@@@
「実例」
非常のときは、レバーをまわし、座席を前に倒し、
非常ドアをあけて、外に出る。

「メリハリをつけた表現に改訂」
非常のとき
(1)レバーをまわす

(2)座席を前に倒す

(3)非常ドアをあける

(4)外に出る

 かりに文字ばかりで書かれた文書であっても、図右に示したように、メリハリのある書き方をすれば、それなりの表示効果を期待できるはずです。
 メリハリ表現とは、意味のまとまり(区別化)と大事さの程度(階層)が、一目でわかるようにしたものです。

●意味のまとまりが見えるようにする
 メリハリをつけるためには、まずは、意味のまとまり(チャンキング)の可視化が必要です。
 さきほどの例なら、箇条書きの形で「1文1動作」になっているところです。
 文書は、読んでわからせるのが王道なのですが、見ただけで読み方がわかるようにすることもまた大事なのです。
 お遊び例を一つ。次のひらがな文はどうでしょうか。
 「うらにわにはにわにわとりがいる。なかにわにもにわにわとりがいる」
 「うりうりがうりうりにきてうりうりのこしうりうりかえるうりうりのこえ」
 見た目では、なかなか理解しにくいですね。
 日本の通常表記である漢字かな混じり文にして、読点を入れれば、正確かつ迅速にわかってもらえるはずです。
 文書作成でよく使う小見出しにも、大きな意味的まとまりを見せる効果があります。
 一定の長さの文書になると、内容的にもいくつかのユニットに分かれます。その分かれ目に小見出しを入れます。 
 なお、小見出しをつけるようにすると、書くときにも、より一層、内容の精選をするようになる副産物もあります。

●大事さを見せる
 意味的なまとまりの可視化の次は、内容の大事さの可視化です。
 話は簡単です。大事さの程度に応じて、目立ちやすさを変えるだけです。
 たとえば、本書では、部―>章―>節―>小見出しの順に活字の目立ちやすさを変えています。
 これを階層化と呼んでいます。
 目立つものには注意が向きます。注意されたものは、深く処理をされます。ですから、大事なものを目立つようにしておくのです。

●適切なタイトルをーー文章表現力アップその2
 一定の長さの文書には、タイトルを付けます。そのことは誰もが知っているのですが、どんなタイトルを付ければよいかについては、意外に無頓着なところがあります。
 まず、タイトルは、文書をわかりやすくする要(かなめ)であることを知っておく必要があります。
 ここでまたお遊び。下に示した文書を読み、これが何のことを述べたものか考えてみてください。

「その手順はまったく簡単です。まずものをいくつかの山に分けます。もちろんその全体量によっては、一山で十分でしょう。もし次の段階に必要な設備がないためどこか他の場所へ移動する場合を除いては、準備完了です。一度に沢山やりすぎないことが大切です。沢山にやりすぎるより、少なすぎる方がましです。すぐにはこの重要さがわからないかもしれませんが、めんどうなことになりやすいのです。」
(ブランスフォードによる)
 
 この文書にタイトル「洗濯をする」を付ければ、たちどころに内容が理解できるようになってくるはずです。試しにもう一度、読んでみてください。
 どうしてこういうことになるかと言うと、タイトルを見ると、それに関する頭の中の知識が活性化するので、文書に書かれたあいまいな内容が取り込みやすく(既有知識と関連づけしやすく)なったからです。
 そこで、タイトルをつける際のポイントを一つだけ紹介しておきます。
それは、具体的でイメージのわきやすい内容にすることです。
多くのタイトルは、マクロで抽象的なものになりがちです。「かぜの予防」「かぜをひかないように」といった類です。
これはこれで、文書全体で言いたいことをおおまかにわかってもらう効果はあるのですが、それが、かえって、「そんなこと自分は関係ない」「また風のはなしかー」となりがちです。
それよりも、「うがいでかぜを防ごう」「冷えすぎによるかぜに注意」のように、その文書で言いたいことの核心をずばりタイトルにもってきたほうが、読み手の注意を引く効果は大きし、場合によっては、タイトルだけしか読んでくれない人にもそれなりの効果を期待できます。
マクロで抽象的なものをサブタイトルとして使うと、なお効果的です。

●読ませる工夫もーー文章表現力アップその3
 文書は作る側からすると、かなりしんどい仕事になります。そのためもあってか、自分の作った文書は受け手に読まれて当然との錯覚をしがちです。
 しかし、考えてもみてください。読み手も、読んで理解するのは、かなりの努力がいるのです。努力に値する文書かどうかをタイトルや小見出し、さらにはレイアウトなどから瞬時に判断することに長けています。その点の配慮も必要です。
時には、「ぜひ、この文書は読んでほしい」との気持ちを文書に込めることも必要なのです。それには、広告宣伝で使うアイドマ(AIDMA)の法則を知っておくとよいかと思いますので紹介しておきます。
@@@@@@@
Attention  目立たせて注意を引く
  例;大事なところに色を付ける 
Interest  興味、関心、利益に訴える
  例;「かぜの予防はクラスを救う」

Desire  欲求に訴える
  例;「かぜのつらさよりうがいをする ほうが楽」
Memory  覚えてもらう
  例;手を変え品を変えて何度も繰り返して伝える
Action  行動してもらう
  例;先着順です
@@@@@@@@@@@@


書くことの効果 2011-04-12 |

2021-04-18 | わかりやすい表現
書くことの効果
2011-04-12 | Weblog

書くことの効果

 書くことには心にとってどんな効果があるのでしょうか。

 一つには、思考との関係があります。
 言葉と思考との関係はよく知られていますが、書くこと、話すことの効果は、思考を活性化させ、さらに思考の整理、高度化に貢献します。とりわけ、書く行為は、思考の外化、つまり、考えていることが文字で表現されて目に見えますので、活性化、整理、高度化への貢献度が高くなります。
 考える、それを文字にする、それをみてさらに考えるの繰り返しが思考には有効です。

 さらに、感情との関係も無視できません。
 たとえば、日記を書く行為。
 一日を振り返っていやだったこと、うれしかったことを日記に記すと、気持ちが穏やかになります。これが書くことによる感情の知性化、結果として、感情を平穏な状態に戻ることができます。
 もう一つは、書くという行為に内在する前向き(ポジティブ)な力の活用です。本を読むよりもはるかに、書くほうが気持ちが前向きになります。書いているうちに、どんどん気持ちが上向いてきます。





ヒューマンエラーを防ぐためのマニュアル作り

2021-04-12 | わかりやすい表現
04/3/9海保 岡山講演用
       ヒューマンエラーを防ぐためのマニュアル作り
         ----認知心理学からの提案----
          海保博之(筑波大学心理学系)
「概要」--------------------------------------------------------------------------------
 ヒューマンエラーを防ぐための仕掛けの一つとして、マニュアル(仕事の手順書)を位置づけたとき、マニュアル作りではどんなことに配慮すればよいかを考えてみる。まず、ヒューマンエラーを、「使命ー”計画・実行・評価サイクル”」の枠組で分類して、それぞれのエラーを防ぐためのマニュアル作りの指針を、認知心理学の立場から提案してみる。
---------------------------------------------------------------------------------------------------------------
はじめに----マニュアルの5つの役割
 マニュアルには、仕事の手順書と、道具・器械の取扱説明書とがある。いずれも、次の5つの支援機能がある。なお、本講演では、手順書の意味である。
○操作支援 決められた操作が確実にできるようにする
○参照支援 必要な情報がどこにあるかを示す
○理解支援 操作の意味や目的がわかるようにする
○動機づけ支援 マニュアルを読んでみたいと思わせる
○学習・記憶支援 必要なことを覚えてもらったり、学んでもらう
**ppt 済み
第1 使命ー「計画・実行・評価のサイクル」の枠組で多彩な
   ヒューマンエラーを分類する
○やってはいけないことをしてしまう
 「使命の取り違えエラー」
  例 ノルマを達成するために手順を無視して効率化をはかってひやり
○勝手な思い込みをしてしまう
 「思い込みエラー(ミステイク)」
  例 モニターの警報が鳴った。いつもの警報の不具合と思い込んでいつも   の操作をしたが、圧力が限界点に達してしまいひやり。
○やるべきことをしない/余計なことをしてしまう
 「うっかりミス」
  例 同僚と話をしながら、機械操作をしていたら、あやうく機械に巻き込まれ    そうになった。
○やるべきこと/やったことを確認しない
 「確認ミス」
  例 確認「行為」はしたものの、きちんとしなかったために、工具を置き忘れ    てしまいひやり。
******pp1 pdsの枠組 済み


第2 使命の取り違えをさせないためのマニュアル作り
 人はエラー、事故を起こさないことを目標に生きているわけではない。安全という制約(上位の使命)の中で仕事上の目標を達成することになる。ところが、しばしば、仕事上の目標が安全の制約をはみ出てしまったり、両者が葛藤したりすることがある。それが事故を発生させることにもなる。
****ppt 済み
指針1-1「使命(mission)を明確に書く」
指針1-2「そうする(how)のはなぜ(why)を書く」
   *慣れると、whyは意識から消えてしまいがち
   例 T社のミッション・ステートメントの例 
        ***ppt 未決
指針1-3「適度の具体表現で書く」
   例 「安全第一」では抽象的、「手順書通りに」
指針1-4「目標の葛藤の発生を防ぐために、安全の下に仕事のミッションを書く」
   例 「速く、確実に」は危険


第3 思い込みエラーをさせないためのマニュアル作り
 状況の中にある顕著な手がかりだけに基づいて、その時その場で活性化している知識だけが使われてしまい、思い込みエラーを起こさせることがある。          とりわけ、即応を要求されたり、状況の激変のために、何が何やらわけがわからなくなってしまうような事態では、その時その場で目立つ限定された手がかりだけに基づいて駆動された知識だけを使って状況の解釈モデル(メンタルモデル)を構築しがちである。それが状況とのかかわりにふさわしくないとき思いこみエラーとなる。
****ppt  済み
指針3-1「目標をわかりやすく先に書く」
 例 大文字のTを逆さまに描いて、その上に三角形を描く
***ppt 済み 
指針3-2「妥当な状況認識を支援する書き方をする」
 例 こういう時は(what)、こういうことだから(why)、こうする(how)


第4 うっかりミスをさせないためのマニュアル作り
 うっかりミスのほとんどは、注意管理不全から起こる。人の注意資源には限界があるからである。また、注意資源の活用の仕方も、いつも適切であるとは限らないからである。注意管理のくせを知った上での最適化が必要となる。
指針4-1「マクロ化表現に注意」
 例「フロッピーをセットしてください」はだめ
指針4-2「1文1動作で書く」
 例 ppt 済み
指針4-3「操作の説明はビジュアル表現を使う」
 例 適当な紙について、次の操作をしてください。
    1)紙を半分に折ってください。   2)右隅をちぎってください。
    3)もう一度、半分に折ってください。 4)また、右隅をちぎってください。
    5)3と4を、もう一度くりかえす。      6)紙を広げる。
指針4-4「予想される危険、エラーは、あらかじめ書き、かつ、起こりそうなところにも書く」
第5 確認ミスをさせないためのマニュアル作り
 エラーをおかすのは人間である限りしかたがない。とすれば、エラーをしたかどうかを確認して、事故につながらないようにすればよいということになります。
 ところが困ったことに、確認という行為にも
○確認行為そのものを忘れる。とりわけ、確認行為が習慣化してしまっているときが怖い。ストーブの火を消したかどうかなどのように、実際にやったこととやったつもりとの区別ができなくなる(現実モニタリングの混乱)ことがある。
○確認そのものにミスが起こる
となると、確認忘れ、確認ミスは起こるという前提で、うっかりミスとおなじような仕掛けを作り込んでおくことをまず考えておく必要がある。
指針5-1「操作の結果を示す」
指針5-2「確認行為も、手順の一つに入れる」
 例「指さし呼称で確認すること」
指針5-3「参照しやすくする」
 例「目次、索引を充実させる」「本文中でも、メリハリをつける」


おわりに----マニュアルの理解支援機能を強化する
 エラーを防ぐには、マニュアル通りにすることが最低限の要件となる。しかし、現実世界では、想定外の事が起こる。そのとき、「マニュアル通り」に固執すると、事態をさらに悪化させてしまうことがある。
 それを防ぐためには、マニュアルに理解支援機能を作り込むことである。
 ・「いかに」に加えて、「なぜ」を書き込む
 ・知識の高度化をうながす情報を書き込む  
***ppt済み
 さらに、「想定外」を減らすための努力も必要となる。
 ・ベテラン、エキスパートがもっている暗黙の知識を可能な限り形式知化する
 ・マニュアルは現場で作る
***ppt すみ
海保のマニュアル関係の参考書
1)海保博之 2002「くたばれ、マニュアル! 書き手の錯覚、読み手の癇癪」新曜社
2)海保博之ら 1987「ユーザ・読み手の心をつかむ マニュアルの書き方」共立出版
海保のヒューマンエラー関係の参考書
1)海保博之・田辺文也 1996 「ワードマップ ヒューマン・エラー---誤りからみる人と社会の深層」新曜社 1900円  
2)海保博之 1999 「人はなぜ誤るのか---ヒューマンエラーの光と影」  福村出版 1800円
3)海保博之 2001 「失敗を”まあいいか”とする心の訓練」小学館文庫 500円
4)海保博之 ○2002年1月より8回連続 「ヒューマンエラー防止のための心理安全工学」 「働く人の安全と健康」に所収 中央労働災害防止協会
○2003年1月より「ヒヤリハットの心理学」を「安全衛生のひろば」(中災防)に連載

自己チェックリスト「あなたの文章表現力は?*(再掲)

2021-03-02 | わかりやすい表現

自己チェックリスト「あなたの文章表現力は?」 次の各項目について、 「自分に当てはまっている」と思ったら--->3 「どちらでもない」と思ったら----2 「自分には当てはまらない」と思ったら--->1

(1)書いたり読んだりするのが好き(  )
(2)言葉に関心がある(  )      
(3)文章を書く時に自分なりの工夫をしている(  )
(4)日記をつけている(  )

(5)漢字に興味がある(  ) 
(6)読み手のことを考えて書いている(  ) 
(7)レポート作りや手紙を書くのは苦にならない(  )
(8)作文コンクールなどに応募したことがある(  )
(9)文章のなかに図を入れてわかりやすくすることがある(  )
(10)国語が好き(  )




ステレオタイプ表現はリスクがある

2021-02-13 | わかりやすい表現
男とは、ーーー
白人とは、ーーー
日本人とは、ーーー
などなどステレオプ表現は、だれもがしばしば使う。
コミュニケーションにはとても便利だからである。
それが今回、森発言では仇になった。
事実認識の上でも一般的に妥当ではないし、
さらに女性のネガティブな社会的処遇とセットで語ったからである。
ステレオタイプ的表現をするときには、
①事実に関しての確認
②社会的処遇への配慮
を慎重に行う必要がある。
とりわけ、責任ある立場の人の公のコミュニケーションの場では要注意である。


説得的に説明する]再掲

2021-02-13 | わかりやすい表現
説得的に説明する]
2017-10-25 | わかりやすい表現


説得的に説明する
 説得表現で最も大切なことは、相手を説得するに足る自己主張の内容があることである。これがないと、どれほど趣向を凝らしても、それは騙しや空虚な演説になってしまう。
 説得のためには、わかりやすさが前提となるが、その上で、声の調子や手振り身振りや顔の表情が大事になってくる。さらに、OHPやパワーポイントのようなプレゼンテーション用具の使用も効果的である。
 こんなことを実践的に学ぶには、広告宣伝や選挙演説で使われている趣向が参考になる。
 試しに、今回の選挙で、説得性の観点から、各党首の演説を採点してみてほしい。



「---と思います」菅語録

2021-02-04 | わかりやすい表現
菅首相の演説や会見で目立つのは、語尾に,「---思います」が多いこと。
これが聞く人に訴える力をそいでいるいる(と思う)。
「”思う”のは、あなたの勝手」となってしまって、主張を弱めてしまう(と思う)。
かように思うのだが、いかがであろうか。
前回の記者会見は、プロンプターを使ったので、【--おもう」は、激減した。


日米首脳が演説を交換してやったら、どうなるかなーとふと夢想した

2021-01-21 | わかりやすい表現
内容 プレゼン 聴衆        効果

菅  バイデン流 日本人    >>違和感?びっくり??
菅  バイデン流 アメリカ人  >>失笑??
菅  菅流 アメリカ人    >>失望??
バイデン 菅流  日本人    >>寝ちゃう??
バイデン 菅流  アメリカ人  >>帰る??
バイデン バイデン流 日本人  >>感動的?







会話力アップ

2020-12-13 | わかりやすい表現
会話力アップ

●会話にも決まりがある
 「たかが会話、されど会話」である。
グライスという言語学者が、かつて会話が成立するための公準を提案したことがあります。
①適度の情報量
 会話では、必要とされている情報よりも、多すぎても少なすぎても、よくない。
②真実性
 ことわりのない限り、あるいは自明でない限り(自明なら嘘は一つの修辞表現)嘘を言わない。
③一貫性
 会話の流れに関連したことを言う。それをそれる時は、「話は違うけれど、」といったヘッジ(枕言葉)を入れる。
④明瞭性
 簡潔にはっきりと話す。

 この公準、至極当たり前ですが、よくよく自分の会話や周りの会話を観察すると、公準違反があることに気がつきます。
自分の知っていることを長々と話したり、確かめようのないうわさを話したり、平気で話題を変えてしまったり、専門用語をも造作に使ったりといった会話です。
会話をしてどっと疲れたりストレスを感じるのは、こうした公準違反に原因があることが多いはずです。

●言葉のキャッチボールをする

 誰と会話するにしろ、会話は、言葉のキャッチボールというくらい、思いや感情が相手との間で頻繁にいったりきたりします。
 ところが、時にはピッチャーが投げキャッチャーがとる関係になってしまう会話もあります。
 電車で遭遇した光景。
3人の中年女性が賑やかに会話しているのですが、真ん中の女性がひたすらしゃべり、左隣の女性がもっぱら聞き役。右隣の女性は我関せず。これが下車するまで30分も続いていました。こうなると会話を装った演説ですね。
 会話を分析するときの一つの指標に、ターンテーキング(turn taking)というのがあります。
 攻守ところを変える会話のキャッチボールが何回行われたかを数えるのです。それが、会話の質、さらには会話参加者の相互関係作りに大事ということです。

●会話には癒し機能がある
ただ、会話には、話すことでうっぷんがはらせる、という癒しの機能もありますから、お互いさまで、「今日は私の話を聞いて」ということで会話をすることもありだそうです。会話(おしゃべり)好きの女性から聞いたことがあります。
  「ものを言わぬは腹ふくれる業なり」です。でも、そのお返しは必要です。次にあなたが聞き役を引き受けることです。大きな流れの中でで、公平なターンテイキングにするのです。
カウンセリングではここに注目して、クライアントにもっぱら話させて、カウンセラーはもっぱら聞き役という会話場面をあえて作ることもあります。
保健室では、子どもからの一方的な訴えをひたすら受け止めるような会話が多くなります。ストレスが溜まりますが、職務としてたんたんとこなすことになります。

●会話の知的機能を活用する
 会話にはさらに大事な機能があります。それは、情報を収集したり、相手に情報を提供したりすることです。
 今はコンピュータの検索機能やメールが、かつては会話でしていたことのかなりの部分を代替するようにはなってきていますが、それでも、対面会話から得られる「生の」情報には捨てがたいメリットがあります。
 メリットその1は、会話では、情報のその人なりの評価、それも明示的な評価だけでなく、その情報を言ったり聴いたりした時の表情や声の調子などの言外の評価情報が生のまま得られることです。
 メリットその2は、会話での知的触発です。会話の最中に、突然、何かを思いついたという経験はなかったでしょうか。あるいは、会話内容を後で思い出して、「そうだ! そう言えば」といったことはなかったであしょうか。相手のちょっとした言動がそうしたことのきっかけになっているのです。

●表情と視線は、会話の潤滑油
 対面会話では、言葉以外の情報も否応なしに相手に伝わります。なかでも、表情・ジェスチャーと視線の役割は重要です。相手の話に同意、不同意も表情やジェスチャー、時には視線で即座にフィードバックできます。
 にこやかで応答的な表情は、相手の話を促すし、不機嫌な表情は、会話を抑制します。
さらに また視線は、主に会話でのターンテーキングの調整をしていることが知られています。自分が話す時には相手から視線を避け、終える時は次はあなたの番とばかりに相手を見るのです。
 表情・ジェスチャーと視線はいずれも、あまり意識的にコントロールされていないのが特徴です。それだけに、本音が出ます。それだけに、意識的なコントロールのもとにある言語情報との整合性が問われることになります。
これに関連して、「二重拘束」というおもしろい概念が哲学者・ベイトソンによって提案されていますので紹介しておきます。
 たとえば、保健室登校をしてきた子どもに、本当は教室にいってほしい気持ちを押し隠して元気で「おはよう」の挨拶を交わすような光景を想像してみてください。子どもは、あなたの2重の矛盾した気持ちを瞬時に読み取り、戸惑います。本音と建前のギャップにとまどうことといってもよいかと思います。
 表情・ジェスチャー、そして視線がこんな大切な役割を果たしていることをまずは知ってください。その上で、それなりの配慮ができるようになってください。項をあらためて、考えてみます。

●会話では、知的共感性が大事
 1章で、共感的理解の話をしましたが、それはもっぱら感情的共感についてでした。共感には、それに加えて、知的共感性も会話も含めたコミュニケーションでは大事です。
 知的共感性とは、以下のようなものです。
・相手の立場にたって物事を考えることができる
・反対意見も尊重する
・どんな問題でも対立する意見や考えがあることを承知している。
・批判や悪感情を持つ前に、相手の立場を考えられる
これらは、桜井茂男氏が作成した共感性をはかるための項目から抜粋したものです。
知的共感性とは、このように、相手の頭の働きや知識の思いをはせられることです。
会話だと相手が目の前にいますから、この知的共感性が直接試されることになります。



コミュニケーション力アップ

2020-12-12 | わかりやすい表現
コミュニケーション力アップ

 

●対面から遠隔へ
 音声を媒体にしたコミュニケーションは、文字を媒体にしたものと比べると、使いやすいのですが、それだけに信頼性は低くてすぐ誤ります。ただ、誤ってもすぐに訂正できますので、便利です。
 この便利さが、音声コミュニケーションの多彩な形態を生み出してきました。ちなみに、この多彩さは、対面から遠隔へと移動しつつあるのが、高度情報化社会の特徴の一つです。その問題点、とりわけ子どものコミュニケーション・スキルの劣化については、これまで随所で指摘してきました。

●知識をスキルに
 その時、その場で発生するのが、音声コミュニケーションの特徴です。相手から発信される情報を瞬時に処理して、自分の思いをこれまた瞬時に言葉として表現する必要があります。この一連の過程は、ほとんど無意識に自動的に行われます。。
 したがって、いくらこうした本を一生懸命に読んで知識を蓄えても、いざという時に使えないのではないかと疑問を持たれるかもしれません。
 知識を蓄えるだけなら、確かにその通りです。知識を力に変えるためには、もう一つ、努力が必要になります。それは、知識を意識して使ってみることです。このスキルを使ってみようと意識して使い、その使い方の巧拙を自己評価してみることです。そして、それを反復して試みていると、やがて意識せずとも自然にそれができるようになってきます。こうなったら、知識が力になったことになります。これを知識の手続化と呼びます。
コミュニケーション・スキルに限りません。いかなるスキルの習得も、こうした手順を踏みます。これをしないと、多くの知識は宝の持ち腐れになってしまいます。

●コミュニケーションは相互作用
 これは、とりわけ子どもの方に言いたいことなのですが、コミュニケーションは、相互作用の賜物だという認識を持つ必要があります。
社会心理学のおもしろい実験を一つ紹介してみます。
教室で、先生が講義を始めます。サクラとなっている学生は、先生の話を熱心に聴いているふりをします。先生は、熱弁をふるいます。途中から、サクラの学生は、不熱心な聴講態度になります。そうすると、先生のほうも、次第に熱意のない講義になっていきます。
  この実験は、コミュニケーションが相互作用の賜物であることを如実に示しています。対面コミュニケーションでも、まったく同じようなことが発生しているのは言うまでもありません。
 このことをお互いが認識していれば、コミュニケーションの場は、良質なものになるはずです。しかし、相手が子どもではそうもいきません。そこで、聴き方力が試されることになります。子どもから話を引き出す力ですね。これがうまくいくと、子どもとのコミュニケーション場が活き活きとしたものになるはずです。
 そして、その相互作用のベースが子どもへの愛だと思います。
 歯の浮いたような表現になりますが、愛さえあればすべて解決とはいきませんが、それなくしては、いかなるスキルも砂上の楼閣です。

●音声言語は知と情の合成物
 音声言語には知的な面と情的な面とがあります。人の名前を呼ぶ時でも、そこにいくらでも情を込めることができます。短く強く呼べば、それは叱責になりますし、ゆったりと呼べば、それは親しみになります。
 情的な面は、もっぱらパラ言語(抑揚やポーズなど)が担います。知的な面は、ある程度は、意識的にコントロールできますが、パラ言語は気持ちを無意識のうちに反映したものになります。それも前述したような訓練によって、スキルアップできますが、基本はポジティブな気持ちだと思います。明るく、元気に、相手にぜひこのことを伝えたいとの気持ちだと思います。この気持ちさえあれば、すべて解決と言いたいところですが、やはり「何をいかに話すか」という知的な面も必要です。

●TPOに応じて
 昔、ラジオ番組に出演したことがあります。アナウンサーと2人で、時間について語る軽い番組です。プロデューサーは、気楽に本番で思い付いたことを語ってくださいとは言うものの、そんな芸当はできないだろうなーと思いつつスタジオに入りました。対談が進行するうちに、次第に緊張もとれたのだと思いますが、台本とは違った話がどんどん出来るようになりました。
 コミュニケーションとはまさに相互作用なり、そして、TPO(Time,Place,Occasion)なりを体験しました。
 音声コミュニケーションは、準備万端でもその筋書き通りにはなりません。その時、その場の雰囲気があります。それに思いをはせて準備することも大切ですが、それでも思いとは違ったものがコミュニケーションの現場にはあります。自分の経験でもこんなことがありました。
・聴衆の数が100名くらいと言われたが、行ってみたら20名だった。
・あらかじめ送付しておいたパワーポイントが使えない会場なのに、そのことが現場にいくまでわからなかった。
 それでもなんとか切り抜けました。TPOに応じたコミュニケーションができるようになれば、一人前ということでしょうか。

●あたなたのコミュニケーション力をチェックしてみよう
 コミュニケーション力の要素技術や基本的な観点を取り上げてみました。2-1)文章表現力アップ以外はいずれも、もっぱら子どもとの対面でのコミュニケーションを想定してみました。前半はもっぱら音声言語を使ったコミュニケーション(話し方、聴き方、説得)、後半は、非言語的コミュニケーション(見た目、視線、ジェスチャー)について考えてみました。
 何度も述べたことですが、これら6つのテーマはコミュニケーションの現場では一体です。いずれかが欠ければ、十全なコミュニケーションにはなりません。
 みのもんた氏のようなコミュニケーションの達人をよく観察してみてください。あるいは、身の回りにも、うまいコミュニケーションをするなーと感心させられる先生方もたくさんいるはずです。
 いずれも、ここで取り上げた6つの要素が見事に調和したコミュニケーションをごく自然に実行しているのがおわかりいただけると思います。そうした方々から盗めるものはどんどん盗んでいただき、自らのスキルとして定着させていただきたいと思います。
 さて、最後の最後です。
あなたのコミュニケーション力をチェックするリストを挙げておきます。やや長いチェックリストですが、「サーティファイ日本語コミュニケーション能力認定試験」のテキスト((株)ウイネット「コミュニケーション技法」)から掲載許可をえたものです。そんなものを手がかりに、コミュニケーション・スキルを磨いてください。

コミュニケーション力チェックリスト
1. 自分からいつも明るくあいさつしている
2. 苦手な人でも、何とか笑顔で話しかけられる
3. 見知らぬ人にも気軽に声がかけられる
4. 人と会って話をするのが好きである
5. 話題を提供して相手やグループをリードするのがうまい
6. 相手の意見に反対するときは、遠慮なく言える
7. 自分の考えや意見は誰であってもきちんと伝えようとしている
8. わからないことはすすんで質問する
9. 物事に対して、前向き、肯定的に考えることができる
10. 話す前に内容を整理して、組み立ててから話をしている
11. 話の目的を、いつも頭に入れてから話すようにしている
12. あなたの話し方はわかりやすいと周りからよく言われる
13. 自分の考えを誰に対しても粘り強く説得できる
14. どうしても伝えたいことは必ず最後に念を押している
15. 相手に応じた言葉遣い、敬語、適切な表現ができる
16. 相手をよく見て、反応を確かめながら話すようにしている
17. 座が白けたとき、自分から盛り上げようとしている
18. 突然指名されても、話ができる
19. 反対意見でもカッとせずに、まずは受け入れられる
20. 外見、先入観で人を判断しない
21. なるべく相手の立場に立って物事を考えるようにしている
22. 思ったこと、感じたことは素直に表現できる
23. 相手の良いところに気づき、素直に口に出してほめられる
24. 自分が間違っているとわかったら、素直に謝ることができる
25. 相手の態度や表情、口調に配慮して話を聞いている
26. 相手と喜びや悲しみを共にしようと思う
27. 話すだけ、聞くだけでなくバランス良く会話している
28. とっさのときでも話せる持ちネタをいくつかもっている
29. 世の中の移り変わり、流行には敏感だ
30. 新聞やニュースから、世の中の動きを常に情報収集している