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習慣的動作の自動化も安心できない(再掲))

2021-03-22 | ヒューマンエラー
習慣的動作の自動化も安心できない

 朝起きて歯を磨き、髭をそり、----といった一連の動作を意識的にやっていては身がもたない。あたかも自動機械がやってくれているかのように進むからこその毎日の習慣的動作である。ここでは、注意努力はまったく不要である。
 しかし、ここでも、子どもが突然泣き出して習慣的な一連の動作が中断され、歯磨きまでしてあとのひげそりはついうっかり忘れてしまった(省略エラー)というようなことが起こる。 



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●あなたの思い込みやすさをチェックしてみる

2021-01-08 | ヒューマンエラー
●あなたの思い込みやすさをチェックしてみる
1)勘違いすることが多い(  )
2)即断即決するほう(  )
3))何がなにやらわけがわからないのは嫌い(  )
4)見込み運転するほう(  )
5)人の意見をあまりきかない(  )

 

ヒューマンエラー

2020-12-12 | ヒューマンエラー
05/9/18
30文字/1行で86.1行(タイトル6行を含む)+7行=94行。  24行で1p 3p+22行  4p
*****7行目****1部
ヒューマンエラー
————エラーを事故につなげないことこそ肝心

●ヒューマンエラーの分類枠
ヒューマンエラーのあらわれは多彩である。したがって、どこに着目するかでその分類は様々なものが提案されている。たとえば、
・心的機能のどこで起こるエラーか
  例 知覚エラー 記憶エラー 判断エラー 実行エラー
・どんな作業で起こるエラーか
  例 「定型作業 非定型作業」「保守作業 点検作業」
・どんな原因によって起こるエラーか
  例 4M(Man   Machine  Management   Media )
それぞれ、分類の意義はそれなりにあるが、ここでは、人が何かの仕事をするときの一連の心的過程として、計画(plan)—実行(do)—確認(see)サイクルを想定し、それぞれの段階でどんなエラーが発生するか、という観点から

●「To err is human」
 エラーするのは人の常、エラーするから人間なのだ。だからといって、エラーし放題というわけにはいかない。エラーはしないで済むならしないほうが良いのはもちろんである。
そのためには、ヒューマンエラーにはどんなものがあり、それはどのようにして発生するのか、どうすれば防げるのかについての知識をしっかりと持ち、エラーをしないような安全な行為を自らが心がけることになる。
その上で、さらに、次に述べるような、エラーができない、あるいは
エラーが事故に直結しないような、エラーに強い安全環境を作り込むことである。

●エラーに強い安全環境を作り込む
まずは、エラーをしないような安全環境を考えることが先決である。高齢者家庭では、バリアーフリー、つまり行動を妨げる段差やスリップ、転倒防止の手すりなどが今はかなり普及してきているのは、好ましいことである。
この他に、ロックを解除してからでないとお湯がでないような仕掛け(フールプルーフ)、順番通りにしないと動かない仕掛け(インターロック)、うっかりハンドルを回しすぎても遊びがあるので急カーブしない仕掛け(冗長化)は、危ない行為をしないよう、あるいはしても大丈夫なように配慮した技術である。
次はエラーをしてしまったらどうするかである。
まずは、エラーをしたことの認識、つまり確認をきちんとすることである。エラーをした瞬間が最も確認精度が高いので、何かしたら、それが計画通りであるかどうかの確認をしっかりとするように習慣づける。あるいは、次の行為をするときに、それまでの行為が間違いなくできているかどうかを確認する。たとえば、外出時の一連のチェックなどなど。
行為の実行エラーには、エラーをしたとたん怪我や事故になってしまうことがある。たとえば、転倒。エラーと事故との距離が近いのである。こんな時には、事故、怪我の程度を緩和化する方策をあらかじめとっておく。下に厚いソファーが敷いてあれば、怪我は軽くて済む。エアーバックは衝突の衝撃を緩和してくれる。
最後の手段は、援助要請である。誰かの助けが必要であることを周囲の人々に知らせることである。これが、意外に素直にはなされないところがある。恥ずかしさや返報の面倒さや自力の回復期待やプライバシーの擁護など、余計な配慮が働いてしまうためである。注2*** 
事故対応、防犯、防災では、援助要請、それに対する援助行動は必須である。それも警察や行政への要請以前に、その時その場でのとりあえずの援助要請と援助行動がどこまで適切になされたかがその後を決める。
(K)






ミスをしてもよい領域を作っておくとよい。

2020-11-22 | ヒューマンエラー
ミス

ミスをしてもよい領域を作っておくとよい。
(海保博之)
@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@

ミスの功罪の功のほうの話。
ミスは何かやったからこそ起こったのだ。何もしないより良い。
さらに、新しい挑戦的なことをすればするほどミスが起こりやすくなる。挑戦したことをほめたい。
ミスがあったからこそ、見えてくるものがある。
そこには、将来のミスを防ぐヒントだけでなく、新しい創造的な世界への導きがある。
とはいっても、ミスが破滅的な事態を招く領域もある。そんなところで、ミスの功をとくわけにはいかない。
そこで提案は、ミスのこうした功を体験できる領域を意図的に用意しておくのである。
たとえば、趣味のテニスで、あるいは、酒席で、多いにミスを楽しむのである。
生活のすべての領域でミスなしの窮屈さから縮じこまってした自分を、そんなところで解き放つのだ。人間がひとまりもふたまわりも大きくなるはずである。





医療と看護の現場における ヒューマンエラー低減のための認知心理学からの提言(旧)

2020-11-02 | ヒューマンエラー
                    05/2/23 海保  改訂
医療と看護の現場における
ヒューマンエラー低減のための認知心理学からの提言
        筑波大学「心理学系」  海保博之

概要**************************************************
 エラーを事故につなげないためには、5M(Mission、Man,Machine,
Media,Management)一体で取り組む必要がある。ただ人が人を相手にして働く医療と看護の現場でのヒューマン・エラーは、ただちに事故につながってしまうことが多いだけに、その発生をできる限り抑えなければならない。
 そこで、本講演では、医療と看護の現場でのヒューマンエラーを減らすために看護師みずからが留意すべきこと(提言1ー5)と、エラーを事故につなげないための環境設計(提言6)とについて、認知心理学の立場から、6つの提言の形で提案してみる。
提言その1「コミュニケーション環境を良くする」
提言その2「目標管理を最適化することで使命の取り違えエラーを防ぐ」
提言その3「適切な知識管理によって思い込みエラーを防ぐ」
提言その4「適切な注意管理によってうっかりミスを防ぐ」
提言その5「確認を確実にすることで確認ミスを防ぐ」
提言その6「安全工学の考えを生かす」
****************************************************
 医療・看護の現場でのヒューマンエラーの特徴をプラントや原子力発電所におけるそれと比較してみると、2つの特徴を指摘することができる。
1)医療・看護の現場でのそれは、事故の被害が1人か2人程度に限定される。
プラントでは逆に、1人のエラーが大規模な被害を引き起こしてしまう。事故の被害が小さいと、マスコミも注目しない。当事者に限定的にしか事の重大さが認識されないため、より広範な対策にまで思いが及ばないということが多くなる。
2)医療・看護の現場では、エラーと事故との距離が非常に近いということがある。エラーがただちに事故につながってしまう。
 プラントでは、うっかりミスをしても、多彩な防御システムが用意されていてただちには事故にならないようになっている。
 このことは、医療・看護の現場では、働く人々一人一人がエラーをしない方策を考える必要があることを強く示唆している。

前提その1「メタ認知力を高める」
 人は必ずエラーをおかす。しかし、メタ認知力(自分の心を知り、自分をコントロールする力)を高めることで、事故につながるエラーを少しでも減らすことはできる。メタ認知力を高める王道は、エラー、事故に関する知識を豊富にすることである。本講演では、これが主となる。さらに、メタ認知力を高める方策として、内省/反省( reflection)をする習慣をつけ、さらに、その質を良質にすることが考えられる。    
    「エラーを知りおのれを知れば百戦たりとも危うからず」
前提その2「エラーを引き起す多彩な要因に目配りする」
 ヒューマンエラーを、その時その場にいたヒューマン(人)だけの問題として孤立させてとらえてはならない。その人を含めた組織、機械システム、メディア、さらに組織の使命にまで幅広くかつ深く原因追及の目を向けなければ、次の事故の防止にはつながらならない。     
      「”誰がした”より”何がそうさせた”かを考えよう」
前提その3「重大事故(アクシデント)を防ぐためには、     多層防御の仕掛けを作り込む」
 ハインリッヒの法則(1:29:300)は、エラーと事故との直結を断ち切る障壁を工夫することの重要性・有効性を示唆している。 
  「エラーは庭に生えた雑草 積み取らないとどんどん増える」


提言その1「コミュニケーション環境を良くする」
 チームで仕事をしているときは、コミュニケーション環境が良好であることが、エラー,事故の防止に役立つ。思いを話す、意見を聞くといったことから、正確に伝える、わかりやすく伝えることまで、コミュニケーション環境を良好にするための努力を怠ってはならない。   
   「ホウレンソウ(報告、連絡、相談) 事故防止の栄養源」
1-1)自由な発言、きちんとした権限関係が良好なコミュニケーション環境を作る   
○権威主義はエラーチェックが効かない(医師ー看護師)
○言わずもがなは危険(看護師ー看護師)
○患者はエラーチェッカーの最後の砦(看護師ー患者)
       「伝える勇気 受け取る素直さ」(ビル工事現場にて)
1-2)指示・連絡を正確に
    「サクシゾン 一文字抜けば 死を招く」(赤穂市立病院)
○口頭伝達は、誤解のもと
○複雑な指示は、反唱確認、メモなどによるダブルモードでの確認を 
  例 「IV(Intravenou;静脈内に)」と「1V(1 Vial;1瓶)」
      *略語は同じでも意味は違う
    「フェルムカプセル」 と 「フルカムカプセル」
    「アルマール」と「アマリール」
    「タキソール」と「タキソラール」
      *最初と最後の文字が同じ。文字数も同じ
      *メニュー画面にこれが隣同士で表示される
       *薬名1文字違いは、1520件ある(読売新聞)
1-3)指示・連絡をわかりやすくする
 指示・連絡の内容の「正確さ」と「充足さ」が、まず、大切。
 しかし、これを重要視するあまり、正確さ・充足さ中毒に陥り、わかりに くい指示・連絡になってしまうことがある。
             「正確さ中毒はわかりやすさの大敵」
  実習1「電話で絵を描かせると」
○相手の知識と状況に配慮する
 ?関連知識がどの程度あるかに配慮
  ・伝えたいことに関連することを知っているかを確認する
 ?状況への配慮
  実習2「同じことでも状況によって異なる表現をする必要がある」  
○指示(作業)の全体像や意味を先に説明することで何が何やらわけのわか らない状態にしない

** 
提言その2「目標管理を最適化して使命の取り違えエラー    を防ぐ」
 人はエラー、事故を起こさないことを目標に生きているわけではない。安全という制約(上位の使命)の中で仕事上の目標を達成することになる。ところが、しばしば、仕事上の目標が安全の制約をはみ出てしまったり、両者が葛藤したりすることがある。それが事故を発生させることにもなる。
  
 例 ミッション・エラ(使命の取り違いエラー)
    ・なにがより大切な目標かを見失う
    ・出来もしないことをやってしまう
    ・積極的行動によるエラーと表裏一体
       自己顕示欲と自己効力感がくせもの
    ・人によく思われたい/助けたい/喜んでもらいたい
             「ストっプ ザ 使命変更への誘惑」
2ー1)使命を意識して絶えず確認・活性化をはかる
  日本社会は、ハイ・コンテクスト(文脈規定性の強い)文化。 暗黙の使命が支配している。したがって、しばしば、使命と個人の内化目標との間にズレが発生する。安直な業績主義、合理化は、暗黙のしかし強力な目標となって、エラー、事故を誘発することが多い。
       「安全には 言わずもがなのことでも口に出す」
2-2)適度に具体的な目標に落として意識化する 
上位の使命(理念的使命)も下の使命(行動的使命)も同時に意識できるよ うな目標にしておく(ミドル・アウト表示)。
  例 「患者第一」より「安全ケアーを第一に」
    「安全運転」より「法定速度の遵守」
    「落っこちるより遅れる方がまし」
2-3)目標行動を単線化して、目標間の葛藤を起こさせない
何が何より大事かを完璧にわからせる  
  例 宅配便 
    ・3つの使命が葛藤している
       時間決め配達  安全運転  競争
    ・「安全第一」が「迅速配達」の上にくるようにしておく
     「安全第一は いつも第一に」

***
提言その3「適切な知識管理によって思い込みエラーを防     ぐ」
 人が頭の中に貯蔵した知識はすぐに不活性化してしまい、その知識を必要とするときにタイミングよく思い出せないことがある。 
               「仕事前 頭の準備体操も忘れずに」
 実習1「活性化した知識しか使われない」  
3-1)適切な知識を活性化する機会を頻繁に用意する
○研修会や朝会での打ち合わせでエラーに関連する知識を活性化する
 危険予知訓練(KYT)   

3-2)エラーにかかわる知識の高度化をする
知識の高度化とは、要素知識を体系化しより抽象化されかつ普遍化すること○高次の知識をテストすることで、低次の知識も活性化される 
  記憶--理解--応用--分析--総合--評価
○知識活性化と知識の高度化の観点からのマニュアルを見直す
  ・マニュアルの5つの役割   
     操作支援 参照支援 理解支援 動機づけ支援 学習記憶支援
  ・とりわけ、理解支援を工夫する
     操作の意味をわからせる 
          「手順には そうする意味があることを知る」3ー3)思い込みエラーに対処する
 知識の不活性化とは逆に、その時その場で活性化している知識だけが使われてしまい、思い込みエラーを起こさせることがある。          とりわけ、即応を要求されたり、状況の激変のために、何が何やらわけがわからなくなってしまうような事態では、その時その場で目立つ限定された手がかりだけに基づいて駆動された知識だけを使って状況の解釈モデル(メンタルモデル)を構築しがちである。それが状況とのかかわりにふさわしくないとき思いこみエラーが起こる。  
 例 患者を取り違えているのに気がつかないで、誤った手術を完璧にして   しまう。 
 実習2「メンタルモデル駆動型の状況解釈を経験する」  

○思い込みエラーの特徴
 ?限定的な手がかりだけに基づいて状況を解釈している(視野狭窄)
 ?思い込みを否定する情報は無視される
   例 いったんつけられた病名が一人歩きをする
 ?状況が激変するまで、エラーであることに気がつない
                  「その思い 今一度の点検を」
○思い込みエラーに対処する  
 ?わけがわからない状況にしないことです
 ・仕事の目標や全体像をあらかじめ意識する
   実習3「大文字のTをさかさまに描いて、その上に三角形を」
 ・仕事に関連する知識を豊富かつ高度化しておく 
                「知は力なり」(ベーコン)
 ?あえて判断停止(エポケ)をする
 ・情報収集の時間をかせぐ
 ・ステレオタイプ(固定観念)による思い込みの防止  
 ?妥当なメンタルモデルを持つ
 ・使えそうな知識を動員する
 ?自分の思いを人に話せるようにする/話すようにする
 ・コミュニケーション環境を良好にしておく
 ・人と情報を共有する 
           「一人より 皆で確認 事故防止」(人事院)
 ・思いを外に出すことで自分の思い込みに気がつくことがある
 ?現場を一時的に離れてみたり、知識量や考え方の異質なメンバーを入れ  て、新鮮な目(fresh  eye)によるチェック体制を作り込む
              「一言居士 あなたは悪魔の代弁者」

****
提言その4「適切な注意管理によってうっかりミスを防ぐ」
 うっかりミスのほとんどは、注意管理不全から起こる。人の注意資源には限界があるからである。また、注意資源の活用の仕方も、いつも適切であるとは限らないからである。
「選択」、「配分」、「持続」についての注意の特性を知った上での注意の自己コントロールと、さらに注意管理の外部支援が必要となる。            「注意1秒 怪我一生」
4ー1)認知的葛藤状態にしない(「選択」の自己コントロール)
  実習「漢字ストループ課題」
  実習「1から10まで、ひらかなで書く」
 ○習慣的処理とは違ったほうを選択して処理するため過剰な注意が必要
 ○よそ見による見落とし
   外と内によそ見をさせるものがあるので面倒
          「このあたり美人多し よそ見するな」
4ー2)あわてない(「配分」の自己コントロール)           実習「書字スリップを起こしてみる」
      「あ」「数」をできるだけ速く何度も書いてみる
  ○配分された注意と仕事が要求する注意とのギャップ
    ・容量ギャップ(例 足りない)
    ・時間ギャップ(例 間に合わない)
4ー3)多重課題にしない(「配分」の自己コントロール)
  実習「自己チェック;あなたの聖徳太子度はどれくらい」
  ○多重課題は、注意量の限界に達しやすい         
4-4)管理用の注意を残しておく/複眼集中の状態にする
(「配分」の自己コントロール)
  仕事用に7割、管理用に3割    
 ○集中しすぎ(過剰集中)による視野狭窄
4-5)感情を安定させる(「配分」の自己コントロール)
  感情は注意の調節弁
   例 パニック時  恐怖が対象への過剰集中をもたらす
     高ストレス時  ストレスの原因に注意が取られる
4ー6)休憩の自己管理をする(「持続」の自己コントロール)
  退屈も疲労も危ない。いずれも、ある程度の自己モニタリングが可能。
 ○服務規程に従って休息管理に加えての、休息の自己管理も。

番外;自分の注意の特性を知る
  実習4「注意の持続力と集中力とを組合わせると」  


*****
提言その5「確認を確実にすることで確認ミスを防ぐ」
 エラーをおかすのは人間である限りしかたがない。
とすれば、エラーをしたかどうかを確認して、事故につながらないようにすればよいということになる。
 ところが困ったことに、確認という行為にもミスがある。
○確認行為そのものを忘れる
確認行為が習慣化してしまっていると、
・マクロ化の罠 
 PDSサイクルが一体化してしまい、See(チェック)だけ を分離させる のが難しくなる。
・現実モニタリングの混乱
 ストーブの火を消したかどうかなどのように、実際にやったこととやった つもりとの区別ができなくなることがある。
○確認そのものにミスが起こる
となると、確認忘れ、確認ミスは起こるという前提で、うっかりミスとおなじような仕掛けを作り込んでおくことをまず考えておく必要がある。
              「確認は 事故を防ぐ最後の砦」


5ー1)確認行為を確実なものにする
○一連の仕事の流れをあえて中断して確認する場所(ホールド・ポイント)を設ける
 とりわけ、仕事に熟練すると、ほとんど努力なく「むり、むだ、むら」(3ム)なく流れるかのごとく仕事が進んでいく。たくさんの要素行為があたかも一つの行為であるかのごとくになる。これを「仕事のマクロ化」と呼ぶ。その途中で、うまくいっているかを確認するのは、なかなか難しい。     「ベテランになる直前は要注意」
               「ベテラン意識はエラーのもと」
○確認を動作と言葉とで外に出すようにして(外化)、確認行為を確実なものにする
 例 指さし呼称
    指でさす---確認場所や行為の焦点化
    呼称---頭の中だけの確認にしない
        「指先で 危険読み取る 作業前」(中災防)
  
5ー2)確認ミスを防ぐ
○確認は複数で独立に行う
○仕事が終わった後の確認を確実に行う
  例 4S(整理 整頓 清潔 清掃)
          「4Sは エラーを防ぐ身だしなみ」

******
提言その6「安全工学の思想を生かす」
 安全工学は、人はエラーをおかすもの、機械・システムは故障するものとの前提で、機械・システムや人工環境の安全を工学的に保証する技術である。その背景には、エラー、事故防止のためのちょっとした心がけや仕掛けのヒントがある。まとめの意味で、そのいくつかを紹介してみる。
            「人は弱い葦(あし)されど工夫する葦」
6-1)馬鹿なことをしても大丈夫なようにしておく---フールプルーフ(fool proof;)
○すぐにはできないようにしておく
 ・カバーをかけておく
 ・手の届かないところにおいておく
○入れないようにする
 ・強制排除(ロックアウト)
○やるときに意識化せざるをえないようにしておく
 例 指さし確認
   ロックを解除してから湯を出す
○順番通りにやらないとだめ
 例 インターロック
    ふたを閉めないと電源が入らない電子レンジ
6-2)一つがだめでももう一つがあるようにしておく---フェールセーフ(fail-safe;故障しても大丈夫)
○複数で別々にやる
 例 ダブル・インカム(夫婦で稼ぐ)
○複数のシステムが動いているようにする
 例 コンピュータ・システムと口頭報告システムの併存

6-3)一つがだめならその次で防ぐ---多層防御(幾重にも障壁を設ける)             「安全には厚化粧もがまんのうち」
○ダブル、トリプルで「独立に」チェックをする
 例 稟議システム
6ー4)自然にそうしたくなる/したくないようにする---アフォーダンス(適切な行為を自然に誘う仕掛け)
○形を使う(シェイプ・コーディング)
○色を使う(カラーコーディング)
  例 国際標準(ISO) 緑は安全、赤が危険、青は低温、赤は高温
    文化差があるので要注意
○場所を使う(ポジション・コーディング)
  同型性になるように
   例 レバーを下ろすと水が出る  右のものは右で
                  「百の説法より一つの仕掛け」

*********
まとめ
 使命(M)からはじまって、計画(Plan)-実行(Do)-評価(See)の
M-PDSサイクルで起こる4つのエラー---「使命の取り違えエラー」「思い込みエラー」「うっかりミス」「確認ミス」---をめぐって、その特徴とそれが事故につながらないための方策を提言してみた。25
 メタ認知力をつける、あるいはメタ認知力の発揮を支援するための一助になれば幸いである。
       「メタ認知こそ ヒトを猿から分けるもの」
最後に蛇足ながら
 しかし、やみくもな精神論(弛んでいるから、もっとしっかりやれ)にならないように注意してほしい。
 大事なことは、合理的な精神論の普及である。心理学の知見や考え方に裏づけられた「精神論」「自己コントロールの方策」を話させていただいたつもりである。
             「エラーにもエラーなりの理屈あり」





エラーの分類

2020-09-25 | ヒューマンエラー
エラーの分類

○思い込みエラー
 計画段階で、誤った状況認識によって、誤った計画をたててしまい、それを忠実に実行してしまうエラーである。たとえば、
 ・名刺の肩書きを信用してしまい、詐欺にあった
 ・新システムが導入されたのに、旧システムの操作をしてしまった
 思い込みエラーは、うっかりミスほど多くは発生しないが、ひとたび発生すると、その検出は難しい。したがって、被害は大きくなる。

○うっかりミス
 実行段階でおこる、計画された行為とは異なる行為をしてしまうエラーである。たとえば、
 ・景色に気をとられ、あやうく車が対向車線に飛び出してしまった
 ・朝出がけに頼まれた薬を買い忘れてしまった
 エラーのほとんどは、こうしたうっかりミスである。うっまりミスでも、おかした瞬間にミスと気がつくことが多いので、すぐに訂正すれば、事故にならならない、あるいは、被害の拡大を抑えることができる。

○確認エラー
 実行したことが、計画通りになっているかを確認する際のエラーである。たとえば、
 ・信号のない交叉点で充分に左右の確認をしなかったためひやり
 ・2人で別々に確認することになっていたが、一人が大丈夫というの  で確認しなかった
確認ミスがないなら、事故になる前にチェックができる。しかし、確認行為にもミスが発生してしまうことがあるので、事は面倒である。また、確認ができるのは、計画通りに実行されているかをチェックするうっかりミスの場合だけで、思い込みエラーは、計画そのものを正しいと思っているので、確認チェックをすり抜けてしまう。



危険予知力とは

2020-09-04 | ヒューマンエラー
危険予知力とは
 安全の先取りを保証するのが、危険予知力である。その構成要素は「危険察知力」と「危険回避力」の2つ。

●「危険察知力」
状況の中に潜在する危険を察知し、それへの対処をあらかじめ的確に予測できる力。これにも、2つある。
一つは、「現場に入る前のオフライン危険察知力」。
作業に入る前に、想定内の危険を指摘できる力である。KYTでは、もっぱらこちらの予知力の養成を行う。危険との時間的、空間的距離が大きい。
2つは、「現場でのオンライン危険察知力」。
今現在行っている作業が危険を発生する可能性を事前に察知する力である。最近では、現場力の一つとして、その劣化が指摘されている。危険との時間的、空間的距離が小さい。

●「危険回避力」
必要に応じて想定される危険を回避したり、危険に遭遇した時の対処を考えることができる力。
「オフライン危険察知」には、
・あらかじめ想定される危険の発生を押さえる対策を取る
・危険情報を共有することで危険回避行動を取る
ことができる。
「オンライン危険察知」には、
・その発生を緊急に報知する
・作業を中止も含めた危険の発生を押さえる緊急行動をとる
必要がある。




缶ビールを飲んでしまった」今日の大しまった

2020-08-16 | ヒューマンエラー
朝と夕に抗がん剤を飲む。
かなり強い薬らしく、食後服用の厳守となっている。
これまできちんと守ってきた。
ところが、夕方、食後、なんとなく気持ちよい酔い心地。
缶のラベルをみたら、ノンアルではなかった!!

アマゾン発注で誤って48個も注文してしまったもの。
服薬中は、冷蔵庫に入れないことにしてあったはずだがなー

しばらく、酔いが収まるのをまって服薬だなー




●使命の取り違えエラー」心理学基本用語

2020-07-13 | ヒューマンエラー
使命の取り違えエラー

人はエラー、事故を起こさないことを目標に生きているわけではない。安全という制約(上位の使命)の中で仕事上の目標を達成することになる。
ところが、しばしば、仕事上の目標が安全の制約をはみ出てしまったり、両者が葛藤したりすることがある。それが事故を発生させることにもなる。これが、使命の取り違いエラーである。




医療と看護の現場における ヒューマンエラー低減のための認知心理学からの提言(再再掲)

2020-06-12 | ヒューマンエラー
                     05/2/23 海保  改訂
医療と看護の現場における
ヒューマンエラー低減のための認知心理学からの提言
        筑波大学「心理学系」  海保博之

概要**************************************************
 エラーを事故につなげないためには、5M(Mission、Man,Machine,
Media,Management)一体で取り組む必要がある。ただ人が人を相手にして働く医療と看護の現場でのヒューマン・エラーは、ただちに事故につながってしまうことが多いだけに、その発生をできる限り抑えなければならない。
 そこで、本講演では、医療と看護の現場でのヒューマンエラーを減らすために看護師みずからが留意すべきこと(提言1ー5)と、エラーを事故につなげないための環境設計(提言6)とについて、認知心理学の立場から、6つの提言の形で提案してみる。
提言その1「コミュニケーション環境を良くする」
提言その2「目標管理を最適化することで使命の取り違えエラーを防ぐ」
提言その3「適切な知識管理によって思い込みエラーを防ぐ」
提言その4「適切な注意管理によってうっかりミスを防ぐ」
提言その5「確認を確実にすることで確認ミスを防ぐ」
提言その6「安全工学の考えを生かす」
****************************************************
 医療・看護の現場でのヒューマンエラーの特徴をプラントや原子力発電所におけるそれと比較してみると、2つの特徴を指摘することができる。
1)医療・看護の現場でのそれは、事故の被害が1人か2人程度に限定される。
プラントでは逆に、1人のエラーが大規模な被害を引き起こしてしまう。事故の被害が小さいと、マスコミも注目しない。当事者に限定的にしか事の重大さが認識されないため、より広範な対策にまで思いが及ばないということが多くなる。
2)医療・看護の現場では、エラーと事故との距離が非常に近いということがある。エラーがただちに事故につながってしまう。
 プラントでは、うっかりミスをしても、多彩な防御システムが用意されていてただちには事故にならないようになっている。
 このことは、医療・看護の現場では、働く人々一人一人がエラーをしない方策を考える必要があることを強く示唆している。

前提その1「メタ認知力を高める」
 人は必ずエラーをおかす。しかし、メタ認知力(自分の心を知り、自分をコントロールする力)を高めることで、事故につながるエラーを少しでも減らすことはできる。メタ認知力を高める王道は、エラー、事故に関する知識を豊富にすることである。本講演では、これが主となる。さらに、メタ認知力を高める方策として、内省/反省( reflection)をする習慣をつけ、さらに、その質を良質にすることが考えられる。    
    「エラーを知りおのれを知れば百戦たりとも危うからず」

前提その2「エラーを引き起す多彩な要因に目配りする」
 ヒューマンエラーを、その時その場にいたヒューマン(人)だけの問題として孤立させてとらえてはならない。その人を含めた組織、機械システム、メディア、さらに組織の使命にまで幅広くかつ深く原因追及の目を向けなければ、次の事故の防止にはつながらならない。     
      「”誰がした”より”何がそうさせた”かを考えよう」

前提その3「重大事故(アクシデント)を防ぐためには、多層防御の仕掛けを作り込む」
 ハインリッヒの法則(1:29:300)は、エラーと事故との直結を断ち切る障壁を工夫することの重要性・有効性を示唆している。 
  「エラーは庭に生えた雑草 積み取らないとどんどん増える」


提言その1「コミュニケーション環境を良くする」
 チームで仕事をしているときは、コミュニケーション環境が良好であることが、エラー,事故の防止に役立つ。思いを話す、意見を聞くといったことから、正確に伝える、わかりやすく伝えることまで、コミュニケーション環境を良好にするための努力を怠ってはならない。   
   「ホウレンソウ(報告、連絡、相談) 事故防止の栄養源」
1-1)自由な発言、きちんとした権限関係が良好なコミュニケーション環境を作る   
○権威主義はエラーチェックが効かない(医師ー看護師)
○言わずもがなは危険(看護師ー看護師)
○患者はエラーチェッカーの最後の砦(看護師ー患者)
       「伝える勇気 受け取る素直さ」(ビル工事現場にて)
1-2)指示・連絡を正確に
    「サクシゾン 一文字抜けば 死を招く」(赤穂市立病院)
○口頭伝達は、誤解のもと
○複雑な指示は、反唱確認、メモなどによるダブルモードでの確認を 
  例 「IV(Intravenou;静脈内に)」と「1V(1 Vial;1瓶)」
      *略語は同じでも意味は違う
    「フェルムカプセル」 と 「フルカムカプセル」
    「アルマール」と「アマリール」
    「タキソール」と「タキソラール」
      *最初と最後の文字が同じ。文字数も同じ
      *メニュー画面にこれが隣同士で表示される
       *薬名1文字違いは、1520件ある(読売新聞)
1-3)指示・連絡をわかりやすくする
 指示・連絡の内容の「正確さ」と「充足さ」が、まず、大切。
 しかし、これを重要視するあまり、正確さ・充足さ中毒に陥り、わかりに くい指示・連絡になってしまうことがある。
             「正確さ中毒はわかりやすさの大敵」
  実習1「電話で絵を描かせると」
○相手の知識と状況に配慮する
 ?関連知識がどの程度あるかに配慮
  ・伝えたいことに関連することを知っているかを確認する
 ?状況への配慮
  実習2「同じことでも状況によって異なる表現をする必要がある」  
○指示(作業)の全体像や意味を先に説明することで何が何やらわけのわか らない状態にしない

** 
提言その2「目標管理を最適化して使命の取り違えエラーを防ぐ」
 人はエラー、事故を起こさないことを目標に生きているわけではない。安全という制約(上位の使命)の中で仕事上の目標を達成することになる。ところが、しばしば、仕事上の目標が安全の制約をはみ出てしまったり、両者が葛藤したりすることがある。それが事故を発生させることにもなる。
  
 例 ミッション・エラ(使命の取り違いエラー)
    ・なにがより大切な目標かを見失う
    ・出来もしないことをやってしまう
    ・積極的行動によるエラーと表裏一体
       自己顕示欲と自己効力感がくせもの
    ・人によく思われたい/助けたい/喜んでもらいたい
             「ストっプ ザ 使命変更への誘惑」
2ー1)使命を意識して絶えず確認・活性化をはかる
  日本社会は、ハイ・コンテクスト(文脈規定性の強い)文化。 暗黙の使命が支配している。したがって、しばしば、使命と個人の内化目標との間にズレが発生する。安直な業績主義、合理化は、暗黙のしかし強力な目標となって、エラー、事故を誘発することが多い。
       「安全には 言わずもがなのことでも口に出す」
2-2)適度に具体的な目標に落として意識化する 
上位の使命(理念的使命)も下の使命(行動的使命)も同時に意識できるよ うな目標にしておく(ミドル・アウト表示)。
  例 「患者第一」より「安全ケアーを第一に」
    「安全運転」より「法定速度の遵守」
    「落っこちるより遅れる方がまし」
2-3)目標行動を単線化して、目標間の葛藤を起こさせない
何が何より大事かを完璧にわからせる  
  例 宅配便 
    ・3つの使命が葛藤している
       時間決め配達  安全運転  競争
    ・「安全第一」が「迅速配達」の上にくるようにしておく
     「安全第一は いつも第一に」

***
提言その3「適切な知識管理によって思い込みエラーを防     ぐ」
 人が頭の中に貯蔵した知識はすぐに不活性化してしまい、その知識を必要とするときにタイミングよく思い出せないことがある。 
               「仕事前 頭の準備体操も忘れずに」
 実習1「活性化した知識しか使われない」  
3-1)適切な知識を活性化する機会を頻繁に用意する
○研修会や朝会での打ち合わせでエラーに関連する知識を活性化する
 危険予知訓練(KYT)   

3-2)エラーにかかわる知識の高度化をする
知識の高度化とは、要素知識を体系化しより抽象化されかつ普遍化すること○高次の知識をテストすることで、低次の知識も活性化される 
  記憶--理解--応用--分析--総合--評価
○知識活性化と知識の高度化の観点からのマニュアルを見直す
  ・マニュアルの5つの役割   
     操作支援 参照支援 理解支援 動機づけ支援 学習記憶支援
  ・とりわけ、理解支援を工夫する
     操作の意味をわからせる 
          「手順には そうする意味があることを知る」

3ー3)思い込みエラーに対処する
 知識の不活性化とは逆に、その時その場で活性化している知識だけが使われてしまい、思い込みエラーを起こさせることがある。          とりわけ、即応を要求されたり、状況の激変のために、何が何やらわけがわからなくなってしまうような事態では、その時その場で目立つ限定された手がかりだけに基づいて駆動された知識だけを使って状況の解釈モデル(メンタルモデル)を構築しがちである。それが状況とのかかわりにふさわしくないとき思いこみエラーが起こる。  
 例 患者を取り違えているのに気がつかないで、誤った手術を完璧にし  て   しまう。 
 実習2「メンタルモデル駆動型の状況解釈を経験する」  

○思い込みエラーの特徴
 ?限定的な手がかりだけに基づいて状況を解釈している(視野狭窄)
 ?思い込みを否定する情報は無視される
   例 いったんつけられた病名が一人歩きをする
 ?状況が激変するまで、エラーであることに気がつない
                  「その思い 今一度の点検を」
○思い込みエラーに対処する  
 ?わけがわからない状況にしないことです
 ・仕事の目標や全体像をあらかじめ意識する
   実習3「大文字のTをさかさまに描いて、その上に三角形を」
 ・仕事に関連する知識を豊富かつ高度化しておく 
                「知は力なり」(ベーコン)
 ?あえて判断停止(エポケ)をする
 ・情報収集の時間をかせぐ
 ・ステレオタイプ(固定観念)による思い込みの防止  
 ?妥当なメンタルモデルを持つ
 ・使えそうな知識を動員する
 ?自分の思いを人に話せるようにする/話すようにする
 ・コミュニケーション環境を良好にしておく
 ・人と情報を共有する 
           「一人より 皆で確認 事故防止」(人事院)
 ・思いを外に出すことで自分の思い込みに気がつくことがある
 ?現場を一時的に離れてみたり、知識量や考え方の異質なメンバーを入れ  て、新鮮な目(fresh  eye)によるチェック体制を作り込む
              「一言居士 あなたは悪魔の代弁者」

****
提言その4「適切な注意管理によってうっかりミスを防ぐ」
 うっかりミスのほとんどは、注意管理不全から起こる。人の注意資源には限界があるからである。また、注意資源の活用の仕方も、いつも適切であるとは限らないからである。
「選択」、「配分」、「持続」についての注意の特性を知った上での注意の自己コントロールと、さらに注意管理の外部支援が必要となる。           
              「注意1秒 怪我一生」
4ー1)認知的葛藤状態にしない(「選択」の自己コントロール)
  実習「漢字ストループ課題」
  実習「1から10まで、ひらかなで書く」
 ○習慣的処理とは違ったほうを選択して処理するため過剰な注意が必要
 ○よそ見による見落とし
   外と内によそ見をさせるものがあるので面倒
          「このあたり美人多し よそ見するな」
4ー2)あわてない(「配分」の自己コントロール)           
    実習「書字スリップを起こしてみる」
      「あ」「数」をできるだけ速く何度も書いてみる
  ○配分された注意と仕事が要求する注意とのギャップ
    ・容量ギャップ(例 足りない)
    ・時間ギャップ(例 間に合わない)
4ー3)多重課題にしない(「配分」の自己コントロール)
  実習「自己チェック;あなたの聖徳太子度はどれくらい」
  ○多重課題は、注意量の限界に達しやすい         
4-4)管理用の注意を残しておく/複眼集中の状態にする
(「配分」の自己コントロール)
  仕事用に7割、管理用に3割    
 ○集中しすぎ(過剰集中)による視野狭窄
4-5)感情を安定させる(「配分」の自己コントロール)
  感情は注意の調節弁
   例 パニック時  恐怖が対象への過剰集中をもたらす
     高ストレス時  ストレスの原因に注意が取られる
4ー6)休憩の自己管理をする(「持続」の自己コントロール)
  退屈も疲労も危ない。いずれも、ある程度の自己モニタリングが可能。
 ○服務規程に従って休息管理に加えての、休息の自己管理も。

番外;自分の注意の特性を知る
  実習4「注意の持続力と集中力とを組合わせると」  


*****
提言その5「確認を確実にすることで確認ミスを防ぐ」
 エラーをおかすのは人間である限りしかたがない。
とすれば、エラーをしたかどうかを確認して、事故につながらないようにすればよいということになる。
 ところが困ったことに、確認という行為にもミスがある。
○確認行為そのものを忘れる
確認行為が習慣化してしまっていると、
・マクロ化の罠 
 PDSサイクルが一体化してしまい、See(チェック)だけ を分離させる のが難しくなる。
・現実モニタリングの混乱
 ストーブの火を消したかどうかなどのように、実際にやったこととやった つもりとの区別ができなくなることがある。
○確認そのものにミスが起こる
となると、確認忘れ、確認ミスは起こるという前提で、うっかりミスとおなじような仕掛けを作り込んでおくことをまず考えておく必要がある。
              「確認は 事故を防ぐ最後の砦」


5ー1)確認行為を確実なものにする
○一連の仕事の流れをあえて中断して確認する場所(ホールド・ポイント)を設ける
 とりわけ、仕事に熟練すると、ほとんど努力なく「むり、むだ、むら」(3ム)なく流れるかのごとく仕事が進んでいく。たくさんの要素行為があたかも一つの行為であるかのごとくになる。これを「仕事のマクロ化」と呼ぶ。その途中で、うまくいっているかを確認するのは、なかなか難しい。     「ベテランになる直前は要注意」
               「ベテラン意識はエラーのもと」
○確認を動作と言葉とで外に出すようにして(外化)、確認行為を確実なものにする
 例 指さし呼称
    指でさす---確認場所や行為の焦点化
    呼称---頭の中だけの確認にしない
        「指先で 危険読み取る 作業前」(中災防)
  
5ー2)確認ミスを防ぐ
○確認は複数で独立に行う
○仕事が終わった後の確認を確実に行う
  例 4S(整理 整頓 清潔 清掃)
          「4Sは エラーを防ぐ身だしなみ」

******
提言その6「安全工学の思想を生かす」
 安全工学は、人はエラーをおかすもの、機械・システムは故障するものとの前提で、機械・システムや人工環境の安全を工学的に保証する技術である。その背景には、エラー、事故防止のためのちょっとした心がけや仕掛けのヒントがある。まとめの意味で、そのいくつかを紹介してみる。
            「人は弱い葦(あし)されど工夫する葦」
6-1)馬鹿なことをしても大丈夫なようにしておく---フールプルーフ(fool proof;)
○すぐにはできないようにしておく
 ・カバーをかけておく
 ・手の届かないところにおいておく
○入れないようにする
 ・強制排除(ロックアウト)
○やるときに意識化せざるをえないようにしておく
 例 指さし確認
   ロックを解除してから湯を出す
○順番通りにやらないとだめ
 例 インターロック
    ふたを閉めないと電源が入らない電子レンジ
6-2)一つがだめでももう一つがあるようにしておく---フェールセーフ(fail-safe;故障しても大丈夫)
○複数で別々にやる
 例 ダブル・インカム(夫婦で稼ぐ)
○複数のシステムが動いているようにする
 例 コンピュータ・システムと口頭報告システムの併存

6-3)一つがだめならその次で防ぐ---多層防御(幾重にも障壁を設ける)             
           「安全には厚化粧もがまんのうち」
○ダブル、トリプルで「独立に」チェックをする
 例 稟議システム
6ー4)自然にそうしたくなる/したくないようにする---アフォーダンス(適切な行為を自然に誘う仕掛け)
○形を使う(シェイプ・コーディング)
○色を使う(カラーコーディング)
  例 国際標準(ISO) 緑は安全、赤が危険、青は低温、赤は高温
    文化差があるので要注意
○場所を使う(ポジション・コーディング)
  同型性になるように
   例 レバーを下ろすと水が出る  右のものは右で
                  「百の説法より一つの仕掛け」

*********
まとめ
 使命(M)からはじまって、計画(Plan)-実行(Do)-評価(See)の
M-PDSサイクルで起こる4つのエラー---「使命の取り違えエラー」「思い込みエラー」「うっかりミス」「確認ミス」---をめぐって、その特徴とそれが事故につながらないための方策を提言してみた。
 メタ認知力をつける、あるいはメタ認知力の発揮を支援するための一助になれば幸いである。
       「メタ認知こそ ヒトを猿から分けるもの」

最後に蛇足ながら
 しかし、やみくもな精神論(弛んでいるから、もっとしっかりやれ)にならないように注意してほしい。
 大事なことは、合理的な精神論の普及である。心理学の知見や考え方に裏づけられた「精神論」「自己コントロールの方策」を話させていただいたつもりである。
             「エラーにもエラーなりの理屈あり」






「失敗に強い人、弱い人」

2020-04-30 | ヒューマンエラー
「失敗に強い人、弱い人」
  • 失敗に弱い人が多くなってきた
今の日本、子どもの頃から大事に育てられ失敗経験が少ないためか、失敗に弱い人が多くなってきているような気がしてなりません。ちょっとした失敗で立ち直れなくなってしまったり、失敗を恐れて何事にもしり込みしてしまうような傾向が強くなってきているようです。
先日発表された日米中韓の高校生の意識調査でも、日本の高校生のこのあたりの傾向が際立っていました。「偉くならずに、のんびり」が他国に比してだんとつに高くなっていました。
もう一つ、日本社会にも、失敗に弱い人をどんどん作り出しているようなところもあります。学校、職場、社会全体が、失敗することを過度に責めてしまう雰囲気があることです。
一つの例を挙げれば、交通事故などでの業務上過失に対する厳罰化傾向です。相手を傷つける意図はない過失ですから、それを厳しく罰してもしかたがありません。それにいつかあなたも同じような加害者になってしまうかもしれません。こうした傾向が強まると、人は萎縮してしまいますし、再起不能となってしまいます。

  • 失敗に強くなるには
 失敗に強くなるには、社会の失敗文化、とりわけ失敗をしてしまった人に対する扱いや考え方が変わる必要があります。しかし、今の日本の社会、その兆しはありません。安全・安心への志向が非常に強くなっているからです。そのことを知った上で、個人の努力として、失敗に強くなるための考えや方策について考えてみたいと思います。
 まずは、「何事も」失敗しないで完璧にすることを自らの信念にしないことです。車の運転での失敗は困りますが、趣味のテニスの試合での失敗はどうということはありません。新規プロジェクトの遂行での失敗はどうでしょうか。
つまり、領域に分けて、失敗しても良い領域を作り、そこでは大いに失敗を楽しむのです。失敗するほど精一杯、力を出しきることの爽快さを味わうのです。失敗に強くなるには、失敗経験は不可欠ですから、こうした領域でたぷりとそれを経験しておくことです。
 失敗に強くなるためのもう一つの方策は、失敗によって起こったことの対処力をつけることです。もしあなたの失敗によって相手に迷惑がかかってしまったら、まずは、誠心誠意、誤ることです。損害を与えてしまったら、それは補償しなければなりません。
 3つ目は、失敗から学ぶことです。失敗はそれほど頻繁には起こりません。ですから、起こってしまった失敗を振り返って、なぜ失敗したのかの追及を自分なりにしてみるのです。安易な言い訳で済ませてしまわないで、なぜ失敗したのかを自らの知識を総動員して追求してみるのです。ここでは、事の真実はそれほど大事ではありません。その追求の過程であれこれと考えたことを、次に生かすことが大事になります。そうすれば、失敗は、あなたの貴重な知的財産になっていきます。

  • 失敗に強い性格
 多少の失敗などものともせず、ただひたすら直進あるのみという人もいます。たとえば、タイプAと呼ばれる性格の人です。忙しさを苦にせず、熱中して徹底的に仕事をし、自身満々で競争心の旺盛な人です。野口英世がそうだったようです。偉業を成し遂げるタイプですね。
自分もこんな人になれれば、と思われた方もいるはずです。しかし、性格は無理して変えようとしてもあまりうまくはいきません。長年にわたってあなたがそれなりに努力をして作りあげてきたものだからです。
それに、「失敗に強い」という観点からは、こうした人は要注意です。
なぜなら、失敗なんのそのですから失敗に強いようにみえますが、小さい失敗から学ぶことをしないため、いずれ取り返しのつかない大失敗をおかしてしまう可能性があること、失敗への対処力が身についていないためひとたび失敗するとさらにひどい状況を作り出してしまうこと、さらに、他人の失敗に異常なほど厳しいことの3つの理由からです。
 失敗に強い人とは、前の述べたような、失敗経験をしながら、そこから学べる人です。たとえるならば、柔道の受身が巧みな人のようになれることです。


 




(黒田勲「信じられないミスはどうして起こる」中災

2020-04-26 | ヒューマンエラー
熟練者に見られるエラーの特徴(黒田勲「信じられないミスはどうして起こる」中災防新書より)を分類すると

「習熟者の特性」    「ミスにつながる心的、行為」
●同じ仕事
1)同じ仕事をしているーー>型にはまりすぎている
2)長年月繰り返し実施しているーー>慣れ過ぎている

●仕事を知悉
3)仕事の内容をよく知っているーー>憶測が多く、真                  剣に考えない
12)からだが覚えているーー>うまく教えられない

●注意不要
4)苦労せずに実行できるー>気軽に不注意に操作する
9)余裕があるーー>遊びが多く、不必要なことをする
11)長時間実施できるーー>意識水準が低くなる

●熟練(無理なく、無駄なく、むらなく)
5)円滑に実行できるーー>割り込みに弱い
6)巧みに実行できるーー>自惚れが生ずる
7)誤りが少ないーー>誤っても気づかない
8)速い速度でできるーー>操作の抜け飛びが生ずる
10)不必要なことはやらないーー>気配りが悪くなる

●興味関心
13)その仕事に興味があるーー>他のことに興味をもたず                    狭視野になる
 


ヒヤリハットの心理 事例「うっかり確認しないために起こったヒヤリハット」(再掲)

2020-03-11 | ヒューマンエラー
02/10・9海保
ヒヤリハットの心理
事例「うっかり確認しないために起こったヒヤリハット」
1
2事例「●
 出発時間直前に乗客対応をした。出発信号の確認をしないまま、ドアを閉めブザーで運転士に出発合図をした。運転士も出発信号の確認をしないまま発車操作をしたが、すぐに停止信号に気がつき急停止した。
●事例分析 
 このヒヤリハット事例には、2つの問題があります。
 1つは、「注意の囚われによる手順の省略」といううっかりミスです。
 2つは、「2人確認による油断、つまり、相手が確認しているから自分は確認しなくとも大丈夫(社会的手抜き)」という、これもまた典型的な確認ミスです。
 
1)「注意の囚われによる手順の省略」ミスについて考えてみます。
 注意は、そのとき一番大事なこと、目立つことに精一杯に集中します。したがって、他のことへは注意が払われなくなります。この事例では、乗客への対応にほとんどの注意を払っています。それが終って元の発車手順の続きに戻るのですが、その手順は習慣化しているため、注意がその手順の実行から一瞬乗客対応のほうに向けられた間も、「発車前の信号確認」という手順を実行したかのように思ってしまいます。それが、手順省略になってしまったわけです。
 これに対処するには、「ご破算で願いましては」です。手順の最初に戻るのです。途中での妨害があったら、「最初からやり直す」のです。

 この事例は、別の見方をするなら、「習慣化した手順ほど確認行為が難しい」ということでもあります。ベテランやベテランになる直前の人がおかしやすいエラーの一つです。初心者は、一連の手順が習慣化していませんので、一つやっては確認、また一つやっては確認---をきちんとやらざるをえませんので、こうしたエラーはあまりしません。
 これへの対処は、習慣化した手順の流れを断ち切ることです。
○最も大事な手順のところ、たとえば、発車信号を確認したら、確認ボタンを押す/信号確認の貼紙を裏がえすなどの、もう一つ面倒な「目に見える行為」をするようにすることが有効かもしれません。
○指差唱呼ももちろん非常に有効な手立てですが、これ自体が習慣化していますので、それをやろうとした瞬間に注意がよそに囚われてしまうと、やったように錯覚してしまうことがありますので、万能ではありません。

2)もう一つは、2人確認による油断、つまり、相手が確認しているから自分は確認しなくとも大丈夫」という、確認ミス事態で起こる社会的手抜きです。





斜めの段差のある廊下でつまずく」
3 絵と文章 データベースからそのままを使う
4 (オフィスヒヤリハットより)
5
「解説」
 平面を歩くときは、ずっと平面であるとの前提で歩く。そこに突然の段差や斜面があったり、上下があったりすると、それがほんのわずかであっても、つまずく。下手をすると転んで怪我をすることもある。
 人の行為は予測によってガイドされているのである。
 自然環境なら、平面なのか斜面なのか、凸か凹かなどは、光線の加減や土の色具合などから自然にわかることが多い。自然には人の行為の予測をガイドする条件(アフォーダンス)が整っているである。
 しかし、人工環境では、同じ色や模様でしかも光線もかなりきついときには、平面ではないことを示す情報が瞬時にはわからないことが多い。結局、つまずいたり転んだりしたあとで気がつくことになる。
 こうしたことを防ぐためには、色彩や模様を使って、平面ではないことを気がつかせるようにしないと危ない。
「類似ケース」
○観光バスは座席が高いので、入り口に何段もの階段がある。降りるときに、とりわけ、薄くらい時には段差に気がつかないでびっくるすることがある。最近は、段差なしのバスも増えてきた。また、降車時には、段差のところが点滅するような仕掛けもある。