会話---仲間を元気にする習慣づくり③
「会話を元気づけに活用しないのはもったいない」
● たかが会話、されど会話
この年になると、人と話すことがかなり減ってきます。とりわけ、大学の教員は、研究室があるので、誰も来なければ、一日まったく会話なし、といこともしばしばです。さらに、家では、妻と2人。とりたてて会話と呼ぶほどのやりともそれほどはありません(不仲というわけではありません。念のため)。あらためて会話不足の自分に驚かされます。
それもあってか、最近やけに会話のことが気になります。とりわけ、女性の会話上手がうらやましくてなりません。
テニスコートにいくと、ゲームをまっている間、楽しそうに会話しているのは女性だけ。男は、お互い離れて座り黙ってゲームをみているか、順番がくるまで一人散歩です。
昨日の暑気払いでも、女性だけでなにやら盛り上がっていました。
話すように作られている女性脳と、勝つことを志向するように造られている男性脳との違いなんて話もどこかで聞いた気がしますが、確かに、遺伝的な性差の一面ではないかとは思います。
しかし、これほどいろいろ意味で大切な会話。
女性の独占物にしておいてよいわけはありません。
心の元気づけという点で、すこし考えてみたいと思います。
●会話の3つの機能
会話には3つの機能があります。
一つは、心の中に溜まっていた思いを吐き出させる「カタルシス機能」です。話してすっきりした、聞いてもらってありがとう、という気持ちにつながります。
2つは、「親しみを高める機能」です。会話の頻度と親しみとはほぼ比例関係にあります。
3つは、「情報交換と発想触発の機能」です。うわさ話からビジネス上の情報交換、さらに研究上の発想触発まで多彩です。
となると、会話は「仲間を元気にする」だけでなく、「頭」「気持ち」も元気にする、まさに総合的な機能をもっていることになります。
一応、3部「仲間の元気づけ」に入れておきましたが、せっかくですので、会話の心の元気づけ機能を総合的に考えみたいと思います。
● 気持ちをすっきりさせる(カタルシシ機能)
話すと気持ちがすっきりするのは、どうしてなのでしょうか。
気持ちは、普段はストレートに表に出してはいけないことになっています。腹が立っても、ぐっと抑えなければなりません。うれしくて舞い上がっても、それを素直に表現してしまうと仲間からひんしゅくをかってしまうこともあります。
気持ちの表出には、一般的にほどほどの抑制が求められます。だからこそ、たとえば、酒席や晴れの席、あるいは一人のときなどでは、「どうぞ、ご自由に」となります。
あるいは、気持ちの言語化をします。気持ちを言葉にするわけです。そのための語彙がたくさんありますね。
ネガティブのほうなら、「悲しい、つらい、凹んだ、――――」
ポジティブなら「楽しい、うれしい、幸福、――――」
言語化することで、気持ちの世界に閉じ込められたエネルギーが知的世界に転化されます。そして、暴れ馬が御者の手綱裁きによって動くような感じになります。
言語化にも、内向的に行う場合と、外向的に行う場合とがあります。いずれにも、カタルシス機能があります。暴れ馬のたとえを使うなら、御者の制御のもとで、馬場を動き回るようなものです。
内向的に行う言語化の典型が、日記です。日記に、思いのたけを書く、あれです。
外向的に行うのが会話です。
会話をカタルシスとして機能させるためには、いくつかの工夫が必要となります。
① 聞き上手をみつける
会話は相手があってはじめて成立します。ましてや、自分の思いのたけを受け止めて気持ちすっきりとなるためには、それなりの相手でないとうまくいきません。
それになりの相手とは、聞き上手ということになります。
あなたの言うこと(思い)を、じっくりと共感的に受け止めてもらえる相手です。
自分の場合は、妻がそんな存在だったときがあったように思います。
あなたの場合は、どうでしょうか。
② 自分が聞き上手になる
聞き上手の相手を求める前に、自分が聞き上手になってしまうこともあります。それが、相手に聞き上手の大事さを実感してもらえることになります。会話は、相互的なものです。相互的であることを無視する会話をする人が結構、多いのも事実です。できれば、そういう人は避けたいですね。
「賢さは聞くことに由来し、後悔は話すことに由来する」なんて格言もあるくらいです。
● 親しみを増す
① 会話の親しみの機能は、初対面でもう発生している
前後左右、見知らぬ人に囲まれたところに着席したとして、すぐに隣の方に挨拶ができますか。
あるとき、これをしなかったばかりに、食事中、ずっとだんまり、気詰まりな時間を過ごしたことがあります。
② 秘密を話す
「実は、――」は、親しみを確実に増します。
自己開示と呼ばれているものですが、一種の秘密の共有です。会話の楽しみの一つでもありますね。
うわさ話もこの類になりますが、一番は、自分のことを開示するものです。
自慢話もありますが、これは、要注意です。むしろ、「実は、この前、振り込め詐欺にあいそうになってね」といった類の失敗話のほうが、親しみを増します。
● 頭を元気にする
会話の3つ目の機能は、会話のもっている知的機能です。
もちろん、ここでは、これまで述べてきた会話とは、内容が違います。
知的内容です。たとえば、
・ 夕べ読んだ本の感想
・ 今気になっていること
・ 日本の政治についての意見
テーマはいくらでもあります。
こうした知的内容について、あなたはどれくらい仲間や家族と会話しているでしょうか。
あるいは、そもそも、こうしたテーマについて、問いかける仲間や家族がどれくらいいるのでしょうか。
多くは、こういうテーマについては、議論、討論の範疇になります。ことあらためて、たとえば、会議の場でやることになります。
しかし、その手前で、お隣さんとちょっと休憩のときに会話してみる、ということもあってよいのではないでしょうか。
やや「重い」会話になります。会話の暗黙のルールからすると、やや違反めいたところがあります。しかし、そこから発想のヒントが得られたり、解決の糸口が得られたりすることがあります。
我々研究者にとって、学会の場がこうした役割を果たしています。
「会話を元気づけに活用しないのはもったいない」
● たかが会話、されど会話
この年になると、人と話すことがかなり減ってきます。とりわけ、大学の教員は、研究室があるので、誰も来なければ、一日まったく会話なし、といこともしばしばです。さらに、家では、妻と2人。とりたてて会話と呼ぶほどのやりともそれほどはありません(不仲というわけではありません。念のため)。あらためて会話不足の自分に驚かされます。
それもあってか、最近やけに会話のことが気になります。とりわけ、女性の会話上手がうらやましくてなりません。
テニスコートにいくと、ゲームをまっている間、楽しそうに会話しているのは女性だけ。男は、お互い離れて座り黙ってゲームをみているか、順番がくるまで一人散歩です。
昨日の暑気払いでも、女性だけでなにやら盛り上がっていました。
話すように作られている女性脳と、勝つことを志向するように造られている男性脳との違いなんて話もどこかで聞いた気がしますが、確かに、遺伝的な性差の一面ではないかとは思います。
しかし、これほどいろいろ意味で大切な会話。
女性の独占物にしておいてよいわけはありません。
心の元気づけという点で、すこし考えてみたいと思います。
●会話の3つの機能
会話には3つの機能があります。
一つは、心の中に溜まっていた思いを吐き出させる「カタルシス機能」です。話してすっきりした、聞いてもらってありがとう、という気持ちにつながります。
2つは、「親しみを高める機能」です。会話の頻度と親しみとはほぼ比例関係にあります。
3つは、「情報交換と発想触発の機能」です。うわさ話からビジネス上の情報交換、さらに研究上の発想触発まで多彩です。
となると、会話は「仲間を元気にする」だけでなく、「頭」「気持ち」も元気にする、まさに総合的な機能をもっていることになります。
一応、3部「仲間の元気づけ」に入れておきましたが、せっかくですので、会話の心の元気づけ機能を総合的に考えみたいと思います。
● 気持ちをすっきりさせる(カタルシシ機能)
話すと気持ちがすっきりするのは、どうしてなのでしょうか。
気持ちは、普段はストレートに表に出してはいけないことになっています。腹が立っても、ぐっと抑えなければなりません。うれしくて舞い上がっても、それを素直に表現してしまうと仲間からひんしゅくをかってしまうこともあります。
気持ちの表出には、一般的にほどほどの抑制が求められます。だからこそ、たとえば、酒席や晴れの席、あるいは一人のときなどでは、「どうぞ、ご自由に」となります。
あるいは、気持ちの言語化をします。気持ちを言葉にするわけです。そのための語彙がたくさんありますね。
ネガティブのほうなら、「悲しい、つらい、凹んだ、――――」
ポジティブなら「楽しい、うれしい、幸福、――――」
言語化することで、気持ちの世界に閉じ込められたエネルギーが知的世界に転化されます。そして、暴れ馬が御者の手綱裁きによって動くような感じになります。
言語化にも、内向的に行う場合と、外向的に行う場合とがあります。いずれにも、カタルシス機能があります。暴れ馬のたとえを使うなら、御者の制御のもとで、馬場を動き回るようなものです。
内向的に行う言語化の典型が、日記です。日記に、思いのたけを書く、あれです。
外向的に行うのが会話です。
会話をカタルシスとして機能させるためには、いくつかの工夫が必要となります。
① 聞き上手をみつける
会話は相手があってはじめて成立します。ましてや、自分の思いのたけを受け止めて気持ちすっきりとなるためには、それなりの相手でないとうまくいきません。
それになりの相手とは、聞き上手ということになります。
あなたの言うこと(思い)を、じっくりと共感的に受け止めてもらえる相手です。
自分の場合は、妻がそんな存在だったときがあったように思います。
あなたの場合は、どうでしょうか。
② 自分が聞き上手になる
聞き上手の相手を求める前に、自分が聞き上手になってしまうこともあります。それが、相手に聞き上手の大事さを実感してもらえることになります。会話は、相互的なものです。相互的であることを無視する会話をする人が結構、多いのも事実です。できれば、そういう人は避けたいですね。
「賢さは聞くことに由来し、後悔は話すことに由来する」なんて格言もあるくらいです。
● 親しみを増す
① 会話の親しみの機能は、初対面でもう発生している
前後左右、見知らぬ人に囲まれたところに着席したとして、すぐに隣の方に挨拶ができますか。
あるとき、これをしなかったばかりに、食事中、ずっとだんまり、気詰まりな時間を過ごしたことがあります。
② 秘密を話す
「実は、――」は、親しみを確実に増します。
自己開示と呼ばれているものですが、一種の秘密の共有です。会話の楽しみの一つでもありますね。
うわさ話もこの類になりますが、一番は、自分のことを開示するものです。
自慢話もありますが、これは、要注意です。むしろ、「実は、この前、振り込め詐欺にあいそうになってね」といった類の失敗話のほうが、親しみを増します。
● 頭を元気にする
会話の3つ目の機能は、会話のもっている知的機能です。
もちろん、ここでは、これまで述べてきた会話とは、内容が違います。
知的内容です。たとえば、
・ 夕べ読んだ本の感想
・ 今気になっていること
・ 日本の政治についての意見
テーマはいくらでもあります。
こうした知的内容について、あなたはどれくらい仲間や家族と会話しているでしょうか。
あるいは、そもそも、こうしたテーマについて、問いかける仲間や家族がどれくらいいるのでしょうか。
多くは、こういうテーマについては、議論、討論の範疇になります。ことあらためて、たとえば、会議の場でやることになります。
しかし、その手前で、お隣さんとちょっと休憩のときに会話してみる、ということもあってよいのではないでしょうか。
やや「重い」会話になります。会話の暗黙のルールからすると、やや違反めいたところがあります。しかし、そこから発想のヒントが得られたり、解決の糸口が得られたりすることがあります。
我々研究者にとって、学会の場がこうした役割を果たしています。