記憶には、記憶する内容によって、3種類ある。事典的な意味の記憶(意味記憶)といつどこでなにをという情報の記憶(エピソード記憶)、そして、さまざまな技法をさせる記憶(手続き的記憶)である。
ここまでは、もっぱら、意味記憶とエピソード記憶にまつわるエラーの話をしてきた。最後に、手続き的記憶にまつわるエラーについても触れておく。
手続き的記憶は、それがほとんど無意識のうちに自動的に機能しているため、あまり関心を引かないところがあるが、我々の習熟した認知的、行動的な技能はすべて手続き的な記憶に負うている。したがって、それにまつわる特徴的なエラーもある。
1)思い込みエラー
上達は、その過程で状況との密接なコラボレーションが必要となる。したがって、上達した技能は、その状況に置かれればほとんど自動的に実行される。状況の一部が変化したようなときにも、いつもと同じ技能が実行されてしまうと、エラーとなってしまう。
例 快速電車だと思い、駅を通過してしまった。
2)省略エラー
一連の要素技能は、ひとたび動き出すと次々と自動的に実行される。その間に、割り込みがあると、一部の要素技能が実行されないエラーが起こる。
例 ワンマンバスの運転者が発車動作をいようとしたところ、乗客から話かけられ、ドアを開けたまま発車してしまった。