コラム「ポジティブ思考ってどんなもの」@@@@@@@@@@@@@@@
● ポジティブ思考、花盛り
ポジティブ思考、今花盛りです。インターネットで検索すると20万件近くの膨大な数がヒットします。生き方講座やブログの流行テーマになっているようです。たとえば、
・ポジティブ思考で難局を切りぬけよう
・ポジティブ思考こそ新しい世界を切り開く鍵
・ポジティブ思考でうつから脱却
ポジティブ思考、万々歳というところです。
実は、ポジティブ思考という用語を掲載している心理学辞典はほとんどないのです。自分が監修した「心理学総合辞典」(2006)にも、一番新しい心理学事典にもありません。ポジティブ心理学、ポジティブ幻想はあるのですが、ポジティブ思考はありません。
にもかかわらず、世の中には、これほど広まっているのです。このギャップ、なぜなのか。心理文化論としては、興味深いのですが、ここでは話を先に進めます。
心理学の用語としてはないのですが、感情と思考とが一体になった認知現象――「温かい認知」「熱い認知現象」と呼ばれることがあります(コラム参照)ーーの一つとして研究されてきています。そこでは、こんなことがわかっています。
・楽しい気分のときは、楽しいことがよく記憶できる(気分一致記憶)
・楽しい気分のときは、相手を肯定的に判断する(気分一致判断)
・楽しい気分のときに憶えたことは、楽しいときによく思い出せる (気分状態依存効果)
・ポジティブな感情状態では、簡便で直感的な情報処理をしがち