◆短期記憶/長期記憶(short‐term memory/long‐term memory)
人間における知の働きを、コンピュータの情報処理過程になぞらえてモデル化したもの(情報処理心理学)が、1970年代から使われてきた。それが、短期記憶と長期記憶の存在を仮定した二貯蔵庫モデルである。
短期記憶は、入力された情報をたかだか20秒程度の間、保存しておくところである。長期記憶は、短期記憶で一定の処理をされた情報を、知識として長期間にわたり保存しておくところである。それぞれの処理特性を、さらに概観してみる。
短期記憶は、そこに貯蔵しておくことのできる情報の容量にも限界がある。その上限として、7±2(magical number seven plus minus two)が知られている。短期記憶では、入力された情報をリハーサルしながら、長期記憶に貯蔵されている知識を使って、処理目的にふさわしい符号化を行う。これによって、長期記憶内の知識もまた更新される。
長期記憶では、短期記憶で処理された情報を、既存の知識のなかに取り込み、長期間にわたり保存する。
そこから、必要に応じて情報は、検索され短期記憶に転送される。保存容量は、ほとんど無限と考えられている。忘却が起こるのは、情報が消失してしまったからではなく、検索手がかりの不足やストレスなどのために、検索に失敗したからと考えられている(検索失敗説)。