移民をふくめて、すべてのスウェーデン国民は個人ID番号をもつ。
番号は、生年月日+ランダムな4桁の数字、計12桁の数字で設定される。この番号は、生涯変わることはない。すべての手続き、登録にこの番号が使われる。
*
スウェーデンでは、保険医療部門は地方政府が基本的な運営責任をもつ。他方、外交や年金は中央政府が運営責任をもつ。
保健医療部門の運営には、全国の詳細なデータを収集する必要がある。責任をもつ機関として、疫学センターEpCがある。EpCは、関連するデータを収集するのみならず、統計を作り、分析して報告し、併せて疫学登録データの研究のための利用を援助し、奨励する。なお、データは、人口動態などの一般的な統計、犯罪統計、教育統計など多数の統計もデータベースとして登録されている。
すべての統計は、個人IDにより連結することができる。
保健医療分野の登録統計には、癌・処方薬・妊娠分娩・病院入退院・死亡などがあり、すべてが国全体の登録である。
いずれの登録もIDをもつ全国民を対象とし、その情報収集や登録にあたっては、本人の同意は不要である。各個人には、これらの統計から除外を求める権利はなく、逆に正確な情報を提供する義務を負う。
そして、収集されたデータにより完成された統計は、患者および国民にすべて公開される。
個人が特定できるデータが公開されることはない。登録された個人データは、文書による要求をおこなえば、本人はその内容を知ることができる。内容に誤りがあれば、訂正を求めることができる。
収集されたデータは、厳重に秘密が守られる。ただし、三つの例外がある。(1)研究目的にデータを開示すること。(2)統計作成目的にデータを開示すること。(3)個人特定ができないデータを公開すること。
こうしたしくみが作られたきっかけは、サリドマイド薬害である。この反省から、きわめて厳重な薬剤監視システムが作りあげられた。薬に限らず、すべての保健医療統計を常時モニタリングすることで、なにか不審な変動があれば、ほぼリアルタイムで問題点が把握される。
こうした正確な統計をふまえて、政策が決定される。
統計は、公開される。主要な統計は英語版が作成され、インターネット経由で入手できる。
ウプサラ大学が一般国民を対象とし、2千人規模の標本調査をおこなった。方法は、アンケートである。大部のアンケート冊子だったが、回収率は女性73%、男性56%であった。
日本で同じアンケート調査をおこなったら、回収率は25%程度だろう、と著者は推定する。
驚くべき数字ではない、もっと普通のアンケートなら、スウェーデン人の90%くらい回答する、というのが著者の知る研究者の見解であった。
スウェーデン人は、完璧な市民意識、完璧な市民たらんとする意識がある、というのが著者の結論である。基本的に、政府、公的機関に大きな信頼があるからだ、と。
*
スウェーデン人口のなかで移民の占める割合は高い。現在で5%。労働人口に占める外国出身者にしぼると、さらに高くなる。2007年現在、25歳から44歳までの女性のうち外国生まれの女性は19%、男性は15%。45歳から64歳までの場合、女性の17%、男性の15%は外国生まれである。ストックホルム市では、2008年1月1日現在、総人口の21%が外国生まれである。もっとも多い出身地はフィンランドの11.3%。以下、イラク8.8%、イラン5.7%、ポーランド5.3%、トルコ4%、ソマリア3.5%、チリ3.1%、ユーゴスラビア2.6%、ドイツ2.6%、エチオピア2.3%・・・・である。
最近数十年の中東、東欧など激変する政治的国際情勢を反映している。
1996年から2005年まで、少ない年で3千人台、多い年では8千人台の難民をスウェーデンは受けいれた。
移民の受けいれは今後も続く。現在外国生まれの人の比率は12%に近いが、2050年には18%になると予測されている。
スウェーデンでは、1930年代に出生率が著しく低下した。経済状況の悪化、人口の国外流出がその理由である。
20世紀をとおして、1人の女性が2人の子どもを産む状況が続いていた。しかし、1990年代に、出生率が急低下した。
大きく変化したのは、平均初産年齢である。1970年代には24歳だったが、最近まで急上昇し、29歳になった。1968年生まれ以降の女性が、明らかに子どもを持つ年齢を遅らせている。2000年には、分娩する女性の50%が30歳以上になった。
スウェーデンで2008年に発表された将来人口予測統計によれば、2050年までに総人口は120万人増加し、1,050万人になる。
合計特殊出生率は、1.77(2005年)から1.85(2050年)に改善する見こみだ。にもかかわらず、移民がなければスウェーデンの人口はどんどん減少していく。
【参考】石原理『生殖医療と家族のかたち -先進国スウェーデンの実践-』(平凡社新書、2010)
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番号は、生年月日+ランダムな4桁の数字、計12桁の数字で設定される。この番号は、生涯変わることはない。すべての手続き、登録にこの番号が使われる。
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スウェーデンでは、保険医療部門は地方政府が基本的な運営責任をもつ。他方、外交や年金は中央政府が運営責任をもつ。
保健医療部門の運営には、全国の詳細なデータを収集する必要がある。責任をもつ機関として、疫学センターEpCがある。EpCは、関連するデータを収集するのみならず、統計を作り、分析して報告し、併せて疫学登録データの研究のための利用を援助し、奨励する。なお、データは、人口動態などの一般的な統計、犯罪統計、教育統計など多数の統計もデータベースとして登録されている。
すべての統計は、個人IDにより連結することができる。
保健医療分野の登録統計には、癌・処方薬・妊娠分娩・病院入退院・死亡などがあり、すべてが国全体の登録である。
いずれの登録もIDをもつ全国民を対象とし、その情報収集や登録にあたっては、本人の同意は不要である。各個人には、これらの統計から除外を求める権利はなく、逆に正確な情報を提供する義務を負う。
そして、収集されたデータにより完成された統計は、患者および国民にすべて公開される。
個人が特定できるデータが公開されることはない。登録された個人データは、文書による要求をおこなえば、本人はその内容を知ることができる。内容に誤りがあれば、訂正を求めることができる。
収集されたデータは、厳重に秘密が守られる。ただし、三つの例外がある。(1)研究目的にデータを開示すること。(2)統計作成目的にデータを開示すること。(3)個人特定ができないデータを公開すること。
こうしたしくみが作られたきっかけは、サリドマイド薬害である。この反省から、きわめて厳重な薬剤監視システムが作りあげられた。薬に限らず、すべての保健医療統計を常時モニタリングすることで、なにか不審な変動があれば、ほぼリアルタイムで問題点が把握される。
こうした正確な統計をふまえて、政策が決定される。
統計は、公開される。主要な統計は英語版が作成され、インターネット経由で入手できる。
ウプサラ大学が一般国民を対象とし、2千人規模の標本調査をおこなった。方法は、アンケートである。大部のアンケート冊子だったが、回収率は女性73%、男性56%であった。
日本で同じアンケート調査をおこなったら、回収率は25%程度だろう、と著者は推定する。
驚くべき数字ではない、もっと普通のアンケートなら、スウェーデン人の90%くらい回答する、というのが著者の知る研究者の見解であった。
スウェーデン人は、完璧な市民意識、完璧な市民たらんとする意識がある、というのが著者の結論である。基本的に、政府、公的機関に大きな信頼があるからだ、と。
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スウェーデン人口のなかで移民の占める割合は高い。現在で5%。労働人口に占める外国出身者にしぼると、さらに高くなる。2007年現在、25歳から44歳までの女性のうち外国生まれの女性は19%、男性は15%。45歳から64歳までの場合、女性の17%、男性の15%は外国生まれである。ストックホルム市では、2008年1月1日現在、総人口の21%が外国生まれである。もっとも多い出身地はフィンランドの11.3%。以下、イラク8.8%、イラン5.7%、ポーランド5.3%、トルコ4%、ソマリア3.5%、チリ3.1%、ユーゴスラビア2.6%、ドイツ2.6%、エチオピア2.3%・・・・である。
最近数十年の中東、東欧など激変する政治的国際情勢を反映している。
1996年から2005年まで、少ない年で3千人台、多い年では8千人台の難民をスウェーデンは受けいれた。
移民の受けいれは今後も続く。現在外国生まれの人の比率は12%に近いが、2050年には18%になると予測されている。
スウェーデンでは、1930年代に出生率が著しく低下した。経済状況の悪化、人口の国外流出がその理由である。
20世紀をとおして、1人の女性が2人の子どもを産む状況が続いていた。しかし、1990年代に、出生率が急低下した。
大きく変化したのは、平均初産年齢である。1970年代には24歳だったが、最近まで急上昇し、29歳になった。1968年生まれ以降の女性が、明らかに子どもを持つ年齢を遅らせている。2000年には、分娩する女性の50%が30歳以上になった。
スウェーデンで2008年に発表された将来人口予測統計によれば、2050年までに総人口は120万人増加し、1,050万人になる。
合計特殊出生率は、1.77(2005年)から1.85(2050年)に改善する見こみだ。にもかかわらず、移民がなければスウェーデンの人口はどんどん減少していく。
【参考】石原理『生殖医療と家族のかたち -先進国スウェーデンの実践-』(平凡社新書、2010)
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