『本読みの達人が選んだ「この3冊」』で、英文学の小池滋が選ぶ「イギリス史」のベスト・スリーは、①『概説イギリス史 -伝統的理解をこえて』(青山吉信、今井宏・編/有斐閣選書)、②『ピープス氏の秘められた日記』(臼田昭/岩波新書)、③『ミドロジアンの心臓』(ウォルター・スコット/岩波文庫)。
一般の日本人のイギリスに対してもつイメージは一面的になりがちなのだが、これを排し、複眼的見方を強調するのが①。「ジェントルマンの功罪」という一章が特に設けられている。人を理解してこそ、はじめて国の歴史がわかる。
イギリス人の一典型が日本人によって見事に描かれたのが②。ちなみに、日本のピープス氏は『元禄御畳奉行の日記 ―尾張藩士の見た浮世』(神坂次郎/中公新書)に描かれた。
イングランドとスコットランドの違いと断絶を史書以上にわかりやすく教えてくれるのが③。両チームによるラグビーの「国際」試合に驚く人は、スコットの小説で勉強したまい。
『本読みの達人が選んだ「この3冊」』で、詩人・評論家の与謝野文子が選ぶ「フランス史」のベスト・スリーは、①『ジョゼフ・フーシェ』(シュテファン・ツワイク/岩波文庫)、②『バルザック全集』全26巻(東京創元社)、③『フランス史3 -19世紀なかば~現在』(柴田三千雄・樺山紘一・福井憲彦・編/山川出版社)。
入れ替わる政権をささえ、どの政権下でも生きのびる警察官僚フーシェの心理を描くのが①。著者は礼讃していない。だが、伝記作家の力は偉大だ。日本の読者をして、縁もゆかりも、親しむべきいわれもない一人のフランス人を妙に記憶にとどめしむ。
19世紀のすさまじい変化の妙味をあじわうにはバルザック全編を追うにしくはない。王党派的保守的感性のほうが、スタンダールのような進歩的知性より、社会の実相をよく映しだす。階級と風俗、心性、都市と田舎、新民法、土地の細分化などなどが描きつくされる。
③のように、最新研究の傾向を反映し、社会・経済・文化現象からとらえた歴史は、年代と人命と勝利の記録にあふれた昔の歴史から遠い。あったままの過去を描くという使命は、仮構としての歴史の壁にたえずぶつかっている。
『本読みの達人が選んだ「この3冊」』で、歴史学者の弓削達が選ぶ「ローマ史」のベスト・スリーは、①『クォ・ヴァ・デス』(シェンキェーヴィッチ/岩波文庫)、②『ローマ人の国家と国家思想』(マイヤー/岩波書店)、③『ローマの歴史』(モンタネッリ/中公文庫)。
ローマへの関心を植えつけてくれる小説が①。木村毅訳(世界文学全集25、昭和3年刊)、河野与一訳(岩波文庫)が出ていたが、いま入手しやすいのは木村彰一訳(岩波文庫)だ。
弓削達がローマ史を専門として勉強する過程で、ローマ理解の骨格をつくってくれたのが②。
「歴史の研究成果は叙述によって完成する。叙述は完成であり問題提起である。ローマ史のように千年以上もつながる歴史の叙述は至難の業である。それを一冊の本でこなしたもの」が③。「前2000年頃から、ローマ帝国の終りまでの叙述に脱帽する。著者が専門の歴史家ではなかったから出来たのかもしれない」
【参考】丸谷才一編『本読みの達人が選んだ「この3冊」』(毎日新聞社、1998)
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一般の日本人のイギリスに対してもつイメージは一面的になりがちなのだが、これを排し、複眼的見方を強調するのが①。「ジェントルマンの功罪」という一章が特に設けられている。人を理解してこそ、はじめて国の歴史がわかる。
イギリス人の一典型が日本人によって見事に描かれたのが②。ちなみに、日本のピープス氏は『元禄御畳奉行の日記 ―尾張藩士の見た浮世』(神坂次郎/中公新書)に描かれた。
イングランドとスコットランドの違いと断絶を史書以上にわかりやすく教えてくれるのが③。両チームによるラグビーの「国際」試合に驚く人は、スコットの小説で勉強したまい。
『本読みの達人が選んだ「この3冊」』で、詩人・評論家の与謝野文子が選ぶ「フランス史」のベスト・スリーは、①『ジョゼフ・フーシェ』(シュテファン・ツワイク/岩波文庫)、②『バルザック全集』全26巻(東京創元社)、③『フランス史3 -19世紀なかば~現在』(柴田三千雄・樺山紘一・福井憲彦・編/山川出版社)。
入れ替わる政権をささえ、どの政権下でも生きのびる警察官僚フーシェの心理を描くのが①。著者は礼讃していない。だが、伝記作家の力は偉大だ。日本の読者をして、縁もゆかりも、親しむべきいわれもない一人のフランス人を妙に記憶にとどめしむ。
19世紀のすさまじい変化の妙味をあじわうにはバルザック全編を追うにしくはない。王党派的保守的感性のほうが、スタンダールのような進歩的知性より、社会の実相をよく映しだす。階級と風俗、心性、都市と田舎、新民法、土地の細分化などなどが描きつくされる。
③のように、最新研究の傾向を反映し、社会・経済・文化現象からとらえた歴史は、年代と人命と勝利の記録にあふれた昔の歴史から遠い。あったままの過去を描くという使命は、仮構としての歴史の壁にたえずぶつかっている。
『本読みの達人が選んだ「この3冊」』で、歴史学者の弓削達が選ぶ「ローマ史」のベスト・スリーは、①『クォ・ヴァ・デス』(シェンキェーヴィッチ/岩波文庫)、②『ローマ人の国家と国家思想』(マイヤー/岩波書店)、③『ローマの歴史』(モンタネッリ/中公文庫)。
ローマへの関心を植えつけてくれる小説が①。木村毅訳(世界文学全集25、昭和3年刊)、河野与一訳(岩波文庫)が出ていたが、いま入手しやすいのは木村彰一訳(岩波文庫)だ。
弓削達がローマ史を専門として勉強する過程で、ローマ理解の骨格をつくってくれたのが②。
「歴史の研究成果は叙述によって完成する。叙述は完成であり問題提起である。ローマ史のように千年以上もつながる歴史の叙述は至難の業である。それを一冊の本でこなしたもの」が③。「前2000年頃から、ローマ帝国の終りまでの叙述に脱帽する。著者が専門の歴史家ではなかったから出来たのかもしれない」
【参考】丸谷才一編『本読みの達人が選んだ「この3冊」』(毎日新聞社、1998)
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