(1)携帯電話のマナーin日本
1990年代中頃に、日本で携帯電話の使用が広がりはじめたとき、新幹線の車内やレストランで携帯電話を使用していた。
喫煙と同様、携帯電話も(静寂という)環境を汚染する。
いま、ある程度以上の水準のレストランでは、携帯電話を使った話し声はほとんど聞こえない。新幹線の車内も、かなりの静寂が維持されている。
携帯電話のマナーは、日本は世界最高水準にある。
(2)携帯電話のマナーof中国人観光客
新幹線の車内やレストランで、携帯電話を使用した中国人観光客の話し声が耳に入る場面が増えたように思う。
中国では鉄道社内やレストランでの携帯電話使用は、ごく当たり前のことかもしれない。
そうであれば、異なる文化が日常生活レベルで接触したために生じた軋轢である。日本社会のルールが中国人観光客に十分に伝わっていないことの結果だ。
(3)郷に入っては郷に従え
中国人観光客に対して、日本社会のルールを徹底的に知らせる必要がある。中国人観光客が増え始めたいま、クリティカルな時期だ。
新幹線では、携帯電話制限について英語で放送される。しかし、中国語では車内放送されない。ホテルやレストランでも、テーブルの上に注意書きが必要だろう。
(4)ビザ発給要件緩和
日本は、これまで外国人観光客が来ない国だった。今の835万人が、仮に1,000万人に増えても、南アフリカを抜いて世界第20位になるにすぎない。
日本人は、日常生活レベルで外国人と接する機会が少ない。
中国人観光客も、これまでは団体客だった。その行動は、ガイドによって一定の範囲にとどめられていた。
今年7月から、ビザ発給要件が緩和されて状況が変わった。(2)の光景は、こうした変化によってもたらされたものだ。
(5)異文化との接触の少ない日本
移民が多ければ、社会の中で、さまざまな文化との共存が行われる。他民族国家アメリカでは、長い経験にもとづく知恵によって、異文化との摩擦への対処が行われてきた。
日本は、異文化との日常生活レベルでの接触がきわめて少なかった。しかし、日常生活レベルで、異文化との接触がだんだん広まりつつある。
日本社会は、中国人観光客の増加によって、基本的な変化に直面せざるをえないだろう。日本と中国の所得格差が縮小するにつれ、日常生活レベルで中国人と接する機会は、今後飛躍的に増加する。
こうしたなかで日本社会のルールを維持するためには、まず日本社会のルールを彼らに伝える必要がある。
(6)異文化との日常生活レベルでの接触
日本は、これまで先進国、特にアメリカとの間では留学生や市民による接触を行ってきた。少数であろうが、あったことは事実だ。アメリカへの留学生や企業の駐在員がそうだ。アメリカ社会のルールに従った経験があれば、文化が違っても同じ人間だ、と実感できる。
欧米以外で日本人がこうした関係を確立できたのは、おそらく韓国との間だけだ。
しかし、アジア諸国、特に中国との間では、こうした関係が築かれていない。
日本企業からアジア諸国へ赴任する駐在員は、現地住民から隔離された住宅地で生活することが多く、仕事上の付き合いはさておき、現地社会に溶けこんで、その一員として生活することが少なかった。だから、市民間のコミュニケーションは、ごく限定的になってしまった。
(7)文化バリアの克服
日本とアジア諸国、特に中国との付き合いが、これまでとは違ったものにならざるをえなくなってきつつある。
私たちは、中国との間で、文化の違いを克服した関係を築くことができるだろうか?
【参考】野口悠紀雄「携帯電話のマナーを中国人に徹底させよう ~「超」整理日記No.534~」(「週刊ダイヤモンド」2010年10月30日号所収)
↓クリック、プリーズ。↓
【BC書評】
1990年代中頃に、日本で携帯電話の使用が広がりはじめたとき、新幹線の車内やレストランで携帯電話を使用していた。
喫煙と同様、携帯電話も(静寂という)環境を汚染する。
いま、ある程度以上の水準のレストランでは、携帯電話を使った話し声はほとんど聞こえない。新幹線の車内も、かなりの静寂が維持されている。
携帯電話のマナーは、日本は世界最高水準にある。
(2)携帯電話のマナーof中国人観光客
新幹線の車内やレストランで、携帯電話を使用した中国人観光客の話し声が耳に入る場面が増えたように思う。
中国では鉄道社内やレストランでの携帯電話使用は、ごく当たり前のことかもしれない。
そうであれば、異なる文化が日常生活レベルで接触したために生じた軋轢である。日本社会のルールが中国人観光客に十分に伝わっていないことの結果だ。
(3)郷に入っては郷に従え
中国人観光客に対して、日本社会のルールを徹底的に知らせる必要がある。中国人観光客が増え始めたいま、クリティカルな時期だ。
新幹線では、携帯電話制限について英語で放送される。しかし、中国語では車内放送されない。ホテルやレストランでも、テーブルの上に注意書きが必要だろう。
(4)ビザ発給要件緩和
日本は、これまで外国人観光客が来ない国だった。今の835万人が、仮に1,000万人に増えても、南アフリカを抜いて世界第20位になるにすぎない。
日本人は、日常生活レベルで外国人と接する機会が少ない。
中国人観光客も、これまでは団体客だった。その行動は、ガイドによって一定の範囲にとどめられていた。
今年7月から、ビザ発給要件が緩和されて状況が変わった。(2)の光景は、こうした変化によってもたらされたものだ。
(5)異文化との接触の少ない日本
移民が多ければ、社会の中で、さまざまな文化との共存が行われる。他民族国家アメリカでは、長い経験にもとづく知恵によって、異文化との摩擦への対処が行われてきた。
日本は、異文化との日常生活レベルでの接触がきわめて少なかった。しかし、日常生活レベルで、異文化との接触がだんだん広まりつつある。
日本社会は、中国人観光客の増加によって、基本的な変化に直面せざるをえないだろう。日本と中国の所得格差が縮小するにつれ、日常生活レベルで中国人と接する機会は、今後飛躍的に増加する。
こうしたなかで日本社会のルールを維持するためには、まず日本社会のルールを彼らに伝える必要がある。
(6)異文化との日常生活レベルでの接触
日本は、これまで先進国、特にアメリカとの間では留学生や市民による接触を行ってきた。少数であろうが、あったことは事実だ。アメリカへの留学生や企業の駐在員がそうだ。アメリカ社会のルールに従った経験があれば、文化が違っても同じ人間だ、と実感できる。
欧米以外で日本人がこうした関係を確立できたのは、おそらく韓国との間だけだ。
しかし、アジア諸国、特に中国との間では、こうした関係が築かれていない。
日本企業からアジア諸国へ赴任する駐在員は、現地住民から隔離された住宅地で生活することが多く、仕事上の付き合いはさておき、現地社会に溶けこんで、その一員として生活することが少なかった。だから、市民間のコミュニケーションは、ごく限定的になってしまった。
(7)文化バリアの克服
日本とアジア諸国、特に中国との付き合いが、これまでとは違ったものにならざるをえなくなってきつつある。
私たちは、中国との間で、文化の違いを克服した関係を築くことができるだろうか?
【参考】野口悠紀雄「携帯電話のマナーを中国人に徹底させよう ~「超」整理日記No.534~」(「週刊ダイヤモンド」2010年10月30日号所収)
↓クリック、プリーズ。↓
【BC書評】