語られる言葉の河へ

2010年1月29日開設
大岡昇平、佐藤優、読書

【震災】復興庁という名の、巨額利権の調整官庁

2012年03月17日 | 震災・原発事故
 2月10日、復興庁設置法に基づき、復興庁が発足した。
 本庁160人、岩手・宮城・福島の各復興局に30人。青森・茨城の各支所を含めて計250人の陣容。職員のほとんどは、国交省と農水省からの出向だ。
 平野達夫・復興担当大臣、国会で答弁していわく、「被災地のニーズにワンストップで対応できる」。
 ホントか?

 復興構想会議の提言を受けた「東日本大震災からの復興の基本方針」は、2015年度末まで5年間の集中復興期間に国・地方併せて19兆円、10年間で23兆円の予算を織り込んだ。
 事業予算と期限を確保し、あとは官僚の掌で利権を分配する手法は、かつての公共事業長期計画パターンだ。
 対策本部名簿には、閣僚数名の後に、全府省からの事務次官が「幹事」として名を連ねる。
 政権交代で葬り去ったはずの事務次官会議=省益調整会議が、亡霊のように甦っている。

 自治体の予算獲得は、復興の錦の旗があっても、簡単ではない。
 (a)自治体が復興庁に事業計画書を提出し、事前協議する。→(b)復興庁と各省が協議し、その結果(交付可能か否か)を自治体に知らせる。→(c)(交付可能な場合)自治体が復興庁に、各省に対する交付申請書を提出する。→(d)復興庁が各省に、自治体からの申請書を回す。→(e)各省が交付決定を行う。
 要するに、交付権限は各省にあり、復興庁はその窓口というわけだ。
 そして、(a)と(b)に4週間、(c)~(e)に4週間、合わせて2ヵ月間を要する。復興のために3次予算で1.9兆円が確保されたが、釜石市復興推進本部都市整備推進室が1月末に提出した事業計画が、まだ「国の確認中」というペースだ。

 被災者も市町村もくたびれている。19兆円という巨額予算と住民の間には深い溝がある。それを誰が埋めるのか。<例>宮城県は高台移転だけで100ヵ所もあるが、自治体には技術者が足りない。土地区画整理事業のノウハウを持つ独立行政法人都市再生機構(UR)がハイジャックしているような状態だ。整理縮小されるURからすれば、復興事業は生き延びるための存在理由。しかし、区画整理で土地価格が上がるまちづくりモデルは過去のものだ。【五十嵐敬喜・法政大学法学部教授/元・復興構想会議検討部会専門委員】

 廃棄物処理や除染は単価が高く、単価の安い事業は入札不調が障子、生活に必要な道路の簡単な補修ができない、など、おかしな問題が起きている。【五十嵐教授】
 2,500万円以下の事業では、技術者がいない、などの理由で入札不調で終わる傾向がある。【岩手県県土整備部総務部入札室】
 仕事量と労働者の需給関係が壊れて、労務単価がつり上がっているのだ。

 「復興」に乗じた二重行政による組織延命策も見られる。
 <例>①経済産業省中小企業庁「産業復興相談センター」と、②内閣府が営業準備中の株式会社東日本大震災事業者再生支援機構。
 ①は、返済困難な債務をいったん買い取り、無利息で10年間支払いを求めないスキームだ。震災を契機に、対象を中小企業のみならず農業者や医療法人・社会福祉法人にも拡張した。
 問題は、その原資1,500億円を資金提供するのが、独立行政法人中小企業基盤整備機構であることだ。この独法は、2009年の事業仕分けで「抜本的見直し」を命じられた。2010年4月の独法仕分けでは活用されないでいる2,000億円を国庫に返納せよ、と。で、500億円を返却したところで震災が発生した。全額返納していれば先細りが確実だった。それが、10年間延命することになった。経産省にとって、貴重な天下り先が確保された。
 ②も、原資の出所は異なるものの、業務内容はほぼ同じだ。①は各県のみの相談、②は事業が県をまたがる場合にも対応・・・・という違いがあるだけだ。
 復興利権にあやかろうと、それぞれの官庁が譲らず、それが復興庁という調整官庁の形をとって顕現しているのだ。

 以上、まさの あつこ(ジャーナリスト)「復興庁は、巨額利権の調整官庁か」(「週刊金曜日」2012年3月2日号)に拠る。
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【震災】原発>250km圏内は避難対象 ~機密文書「近藤メモ」~

2012年03月16日 | 震災・原発事故
 「福島第一原子力発電所の不測事態のシナリオの素描」と題した2011年3月25日付の資料がある。
 近藤駿介・内閣府原子力委員会委員長が原発事故の展開を評価したもので、通称「近藤メモ」と呼ばれる。
 あまりに衝撃的だったため、最近まで秘密にされていた。

 巨大地震とその後の大津波で、福島第一原発では外部電源と非常用電源が全て失われた。運転中だった1~3号機ではメルトダウンや水素爆発が発生し、定期点検中だった4号機では使用済み燃料プールで冷却水が大量に失われて水素爆発が起きた。
 その結果、広島原爆の168倍以上と推計される大量の放射性物質が大気中に放出された。国際原子力事象評価尺度(INES)でレベル7、チェルノブイリ原発事故と並ぶ最悪事故となった。
 しかも四つの原子炉が同時に危機に陥るという前例のない状況のなかで、「近藤メモ」は菅直人首相(当時)など官邸の限られた人間だけに共有された。

 「近藤メモ」は、今読み直しても、かなり正確に事故の進展を予測している。
 特に4号機など複数の原子炉の使用済み燃料プールで燃料破損が生じれば、250km圏内は避難対象地域になり得るという衝撃的なものだった。ゆうに東京をカバーし、3千万~4千万人という、信じがたい規模の避難となる。
 しかも「近藤メモ」は、「(自然<環境>減衰にのみ任せておくならば)数十年を要する」と続けている【注】。

 事故発生後の3月16日、菅首相は「本当に最悪の事態になったら、東日本がつぶれる」と発言した。大問題になったが、それは誇張ではなかった。
 これが原発の本質的かつ現実的なリスクだ。そして、脱原発が必然であることの根拠だ。

 【注】「【震災】原発>「廃炉」という地獄 ~40年後~

 以上、飯田哲也「「脱原発」が可能なこれだけの根拠」(「朝日ジャーナル」2012年3月20日臨時増刊号)のうち「1、脱原発「必然論」の「(1)「近藤メモ」の衝撃」に拠る。

    *

 「民間事故調」となる「福島原発事故独立検証委員会」は、2月28日に報告書を上梓した。このうち、「プロローグ」と「第3章 官邸における原子力災害への対応」が「文藝春秋」4月号に掲載された。
 4号機のプールに爆発した3号機から水が流れ込んだのは、まったくの幸運だったが、同じ運は二度と同じようにはやってこない。【「委員会」プログラム・ディレクター】
 建屋爆発直後の記者会見で、枝野幸男・官房長官(当時)に対して、記者たちは原子炉の破損状態や現状の10km圏内の避難で十分かと問い詰めたが、十分な情報を持たない枝野長官は曖昧な答えに終始した。枝野長官は「あのときの記者会見ほどつらい記者会見はありませんでした」と述懐する。
 3月15日朝、菅直人首相(当時)たちに対して勝俣恒久・東京電力会長および清水正孝・同社長(当時)がシミュレーションを示しながら、これによれば避難は第一原発から半径20kmの中におさまる、などと説明した。菅が、福島第一の原子炉と使用済み燃料プールの多さを指摘しながら「本当に大丈夫なのか」と確認したところ、清水は「そうすると30kmくらいですかね」と発言を変更した。<同席した官邸スタッフの一人は避難区域の容易な発言変更に驚き、とまどったと振り返る。>
 「最悪のケース」の想定づくりは、本来ならば班目春樹・原子力安全委員長の役目だが、班目は1号機の水素爆発の可能性を否定したため、菅の信用を失っていた。
 近藤駿介・原子力委員会委員長が「最悪のシナリオ」を作成することになった。作業は3日間の突貫作業となり、次のような分析が行われた。

 (1)水素爆発の発生に伴って追加放出が発生し、それに続いて他の原子炉からの放出も続くと予想される場合でも、事象のもたらす線量評価結果からは現在の20kmという避難区域の範囲を変える必要はない。
 (2)しかし、続いて4号機プールにおける燃料破壊に続くコアコンクリート相互作用が発生して放射性物質の放出が始まると予想されるので、その外側の区域に屋内退避を求めるのは適切ではない。少なくとも、その発生が本格化する14日後までに、7日間の線量から判断して屋内退避区域とされることになる50kmの範囲では、速やかに避難が行われるべきである。
 (3)その外側の70kmまでの範囲ではとりあえず屋内退避を求めることになるが、110kmまでの範囲においては、ある範囲では土壌汚染レベルが高いため、移転を求めるべき地域が生じる。また、年間線量が自然放射線レベルを大幅に超えることを理由にした移転希望の受け入れは200km圏が対象となる。
 (4)続いて、他の号機のプールにおいても燃料破壊に続いてコアコンクリートの相互作用が発生して大量の放射性物質の放出が始まる。この結果、強制移転を求めるべき地域が170km以遠にも生じる可能性や、年間線量が自然放射線レベルを大幅に超えることを理由にした移転措置の認定範囲は250km以遠にも発生する可能性がある。
 (5)これらの範囲は、時間の経過とともに小さくなるが、自然減衰にのみ任せておくならば、半径170km、250kmという地点が自然放射線レベルに戻るまでには数十年を要する。

 ここで「最悪のシナリオ」とは、4号機のみならず他の号機の使用済み燃料プールの燃料崩壊が起こり、コアコンクリート相互作用を起こした場合のことだ。 
 250km以遠まで汚染されるとなると、首都圏がすっぽり入ってしまう。それは。3,000万人の住民の退避が必要になることを意味している。
 並行連鎖型危機を特徴とする今回の危機の中で、防護が手薄な使用済み核燃料プールは“死角”となっていた。4号機の使用済み燃料プールがもっとも「弱い環」であることを露呈させた。
 <菅首相は退任後「今回の危機では、使用済み燃料プールがもっとも怖かった。最終処分地のないことがその背景にある」と述べている。>
 <「最悪のシナリオ」の内容は、官邸中枢でも閲覧後は回収された。その存在自体が、9月に菅首相が退任し、それに言及するまで秘密に伏された。>
 
 船橋洋一(福島原発事故独立検証委員会)「機密文書 官邸が隠した原発悪魔のシナリオ」(「文藝春秋」2012年4月号)に拠る。
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【震災】原発>ストレステストを再稼働に結びつけるな ~その理由~

2012年03月15日 | 震災・原発事故
 原子力安全・保安院は、2月8日の第8回ストレステスト意見聴取会で、関西電力大飯原発3、4号機のストレス報告書の審議を打ち切り、同月13日、この報告書を“妥当”とした「審査書」を原子力安全委員会に提出した。
 今後、(a)安全委員会による確認、(b)首相と関係閣僚の政治判断、(c)地元自治体の判断によって、再稼働の可否が決まる。

(1)原子力安全・保安院の問答無用
 昨年11月の意見聴取会発足以来、井野博満・東京大学名誉教授は委員の一人としてストレステストに疑問を呈する多くの質問書を提出してきた。しかし、それらのほとんどにまともな答がないまま審査書が作成された。
 特に第8回意見聴取会では、井野委員や後藤政志委員の質問に対する議論がまったく不十分なまま、審議が終了した。井野委員は、継続審議の確認を求めたが、市村知也・原子力安全技術基盤課長は答えず、その日の意見を受けて保安院が審査書を見直す旨を述べた。審議打ち切りを明言することなく、審議が打ち切られたのだ。
 そのうえ、審査書は次回の意見聴取会に提示されることなく、安全委員会へ送付された。
 市村課長は、井野委員に意見聴取会への参加を求めたとき、「議論を尽くす。期限を切ることはない」と述べた。背信行為だ。

(2)審査書の問題点
 飯原発3、4号機のストレステストの最大の問題は、“妥当”とした根拠がいい加減であることだ。
 次のような文言がある。「福島第一原子力発電所を襲ったような地震・津波が来襲しても、同原子力発電所事故のような状況にならないことを技術的に確認する」
 しかし、大飯原発の津波の想定は11.4mだ。福島原発事故での津波(遡上高)14mより低い。これでは水浸しになってしまう。
 また、想定される地震動も原発ごとに異なるので比較できない。
 このような不明確な判断基準で“妥当”かどうかを判定するのは難しいはずだ。
 保安院は、第1回意見聴取会(昨年11月14日)に「審査の視点(案)」を示したが、審査基準・判断基準は書かれていなかった。井野委員の質問に対し、「どういう尺度で見てゆくかについては、議論を通じて、改めて我々で整理して、どこかの形で示したい」と答えたのみだった。
 審査書でいきなり「福島第一原子力発電所を襲ったような地震・津波が・・・・」という見解が示されたが、これは基準と言える代物ではない。なぜなら、この後で次のように記されているからだ。「大飯発電所3号機及び4号機については、基準地振動の1.8倍の地震と、当初の設計津波高さ1.9mを9.5m超過する津波が来襲した場合でも、以下のとおり、炉心やSFP(燃料プール)の冷却を継続し、燃料の損傷を防止するための対策が講じられていることを確認した」
 この文言は、事業者のストレステストの後追いだ。何ら独自の基準に基づいていない。

(3)ストレステストの位置づけに係る日欧の相違
 EUのストレステストは、地震や緊急の事故に直面した場合にどの程度の頑健性(ロバストネス)を持つかを調べ、原発の弱点を調べ、改善することを目的としている。EUストレステストは、原発の安全基準とは別で、運転の可否の判定に使われていない。
 他方、昨年7月、菅直人首相(当時)が日本に導入するに当たっては「安全性に関する総合評価」とされ、その“一次評価”が定期点検で停止されている原発の運転再開の判断に使われることになった。

(4)大飯原発ストレステストの問題点
 (a)関西電力のストレステスト報告書には、大飯原発は基準値振動700ガルの1.8倍まで耐えられるとしている。
 しかし、700ガル以上の地震が来ない保証はない。地震の最大の大きさを現在の地震学では示すことができない。仮に設定された地震動の倍の地震に襲われれば、1.8倍の余裕はすっとんでしまう。
 大飯原発の700ガルという値は、大飯原発の海側にあるFo-AとFo-Bという2本の活断層が連動した場合を想定して決められている。しかし、大飯原発の陸側には熊川断層という活断層がFo-AとFo-Bの延長線上にあり、その傾斜も類似しているとされる。熊川断層がFo-AとFo-Bに連動すれば、地震規模が倍になってもおかしくない。大飯原発のストレステストは、この点をまったく考慮していない。

 (b)支持構造物と制御棒関連設備が評価対象から除外されている。支持構造物は壊れたとしても炉心溶融に至るプロセスとは直接関係ないので除外した、とある。
 しかし、配管サポートや機器の起訴ボルトが壊れた時に、それらによってサポートされていた機器の機能は本当に大丈夫なのか。幾つかの機器の基礎ボルトは1.3~1.4倍で壊れるのに、「余裕をはき出して」評価すればもっと大きい地震でも壊れないとしている。さらには 「支持構造物は全体の数が非常に多く、安全機能を失うまでの耐震裕度を個別に定量的に算定することが困難である」といった勝手な理屈で評価をしていない。
 手抜きと言わざるをえない。

 以上、井野博満(東京大学名誉教授/ストレステスト意見聴取会委員)「ストレステストを再稼働と結び付けてはならない」(「朝日ジャーナル」2012年3月20日臨時増刊号)に拠る。

    *

 「意見聴取会」という名には抵抗がある。意見を聴取されるのは専門家ばかりで、事故が起きた場合に被害を受ける立場の住民が参加していないからだ。
 1月に関西電力大飯原発3、4号機のストレステストの審査結果が聴取会に示されたが、保安院は傍聴人を締め出した。なぜ、そんなことをするのか。
 しかも、審査対象となる大飯原発の原子炉を製造したメーカーである当の三菱重工(MHI)や関連企業から、委員11人のうち3人までもが献金を受け取っていた。委員としての資格が問われる。
 さらに、ストレステストの審査にあたったのは原子力安全・保安院だが、実際の作業は原子力安全基盤機構(JNES)に委託している。JNESにはMHI出身者がいる。他方、関西電力はストレステストの作業をMHIに依頼している。これで公正・中立な審査が可能なのか。
 総務省「政策評価・独立行政法人評価委員会」も、昨年12月9日、中立性・公正性に疑問を呈している。
 あれほどの大事故がありながら、事故を生んだ構造そのものは何ら変わっていない。

 以上、井野博満「いまだ懲りない「原発ムラ」を憂う」(「週刊金曜日」2012年3月9日号)に拠る。
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【震災】原発>「民衆法廷」に出廷して ~犠牲のシステム~

2012年03月14日 | 震災・原発事故
 2012年2月25日、東京都内で「民衆法廷」が開催された【注1】。
 7人が意見を陳述し、東電や政府の罪と無責任を炙りだした。多くの人が責任者の処罰を求めた。「大戦後、『平和と人道に対する罪』という考え方が生まれたように、『人間と自然の尊厳を破壊した罪』という新たな概念をつくってでも、この前代未聞の罪を裁いてほしい」と訴えた人もいた。

 河合弘之・弁護士/検事団長は、事態の異常さを強調した。「最近のオリンパス事件など社会的影響の大きな企業の不祥事には、検察や警察が乗り出す。東電に対してはなぜ動かないのか。国策遂行を担った企業への遠慮があるのではないか。原発再稼働にストップをかけ、原発災害を二度と起こさないためにも、民衆法廷を通じて厳しく責任を追及していきたい、と」

 民衆法廷には、高橋哲也・東京大学大学院総合文化研究科教授も承認として出廷し、主尋問と反対尋問を受けた。その著書『犠牲のシステム 福島・沖縄』が「証拠採用」されたからだ。その際にただされた2点について、以下、改めて説明する。

(1)「原発ムラ」の責任と一般市民の責任
 今回の事故の第一義的責任は「原子力ムラ」の構成員にあるのは明白だが、原発稼働を許してきた市民にも、原発の地元住民にも責任がある。では、自らも責任を負う者が他者の責任を追及することは許されるか。
 「総懺悔論」に陥らないためにも、責任の質と程度の相違を明確にしなければならない。(a)安全対策を怠りながら絶対安全を騙り、事故を招いた原発システムの責任者たちの罪と、(b)電力消費者としてそれを受容してきた一般市民の責任は別ものだ。
 (a)は、法的責任を問われうるが、(b)の責任を問う者はいない。騙した者と騙された者があるとすれば、騙された者には騙された責任があるが、騙した責任と騙された責任は違う。
 騙された者は、そのことに気づいたならば、騙した者の責任を追及する権利がある。ドイツ連邦共和国は、ナチス犯罪人の訴追を自国の司法で行ってきた。1945年の敗戦後、日本人は侵略や植民地支配の責任者をみずから裁くべきではなかったか。

(2)原発という「犠牲のシステム」
 原発は「犠牲のシステム」だ。犠牲のシステムとは、或る者たちの利益が他の者たちの生活(生命・健康・日常・財産・尊厳・希望、等)の犠牲の上に生み出され、維持されるシステムだ。
 原発推進論者は、次のように主張するだろう。・・・・しかし、国家・社会の共同体を運営していくためには、誰かが嫌なことを引き受ける必要があるのではないか。その代わり、一方的な犠牲にしないよう見返り(<例>原発であれば電源三法交付金)を与えてバランスをとれば、犠牲のシステムにも一定の合理性があるのではないか。しかも、原発政策は議会制民主主義のもとで成立している。それをなぜ止めなければならないのか。
 「犠牲」の意味によっては、このようなシステムは、あまねく存在しているとも言える。人は動植物を食べ、その「犠牲」の上に生存を維持する。その意味では、人類は犠牲のシステムの中にあるとも言える。
 だが、ここでさしあたり問題になるのは、「犠牲」が申告な人権侵害である場合だ。
 原発は、苛酷事故や被曝労働等により、生存権・幸福追求権など基本的人権を脅かし、侵害する。だからこそ、法的責任も追及されるのだ。
 民主主義の手続きを踏んでいても、人権を侵害すれば罪に問われるのは当然だ。ナチスドイツの政策が典型例だ。
 電源三法交付金は、交付後に生じる人権侵害を埋め合わせるものではない【注2】。交付金は、苛酷事故が起きた場合の賠償金の前払いではない。住民は、そのような事故は「起こりえない」と言われ、安全を前提に原発と住んできた。だからこそ、「騙された」ということになる。
 いくら莫大な交付金を受け取り、立派な施設を造っても、苛酷事故で住めなくなれば元も子もない。
 さらに、苛酷事故は、交付金の恩恵をほとんど(または全く)受けない地域にまで人権侵害を及ぼす。 
 こうした犠牲のシステムは、やはり正当化できない。

 【注1】「【震災】原発>原発を問う民衆法廷
 【注2】沖縄県が振興費を受け取っていても、米兵の犯罪は犯罪だ。

 以上、高橋哲也「「民衆法廷」に出廷して 犠牲のシステム、責任のゆくえ」(「朝日ジャーナル」2012年3月20日臨時増刊号)に拠る。
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【震災】原発>「権力の動き=ニュース」という錯覚 ~大手メディア~

2012年03月13日 | 震災・原発事故
 3・11によって、テレビや新聞といった大メディアが馬脚をあらわした。東電、保安院、政府が不都合を隠し、事態の深刻さをごまかした発表を鵜呑みにし、そのまま伝えた。そればかりか、時にはそれを守り、加勢した。福島第一原発事故直後、国内のあちこちで起こったデモなど反原発の動きをある時期まで一切報道しなかった。こうしたすべてが明るみに出た後も、大手メディアの体制は基本的には変わっていない。
 福島原発事故報道の背景には、次の問題がある。
 (1)「権力の動き=ニュース」という錯覚。
 (2)専門性のある記者が育っていない。

 事故直後にSPEEDIの情報を公開しなかったため、福島の人たちは避難すべきところに避難できず、浴びなくてもよい放射線を浴びてしまった。この衝撃的な事実は、政府の発表を待たねば報道できなかった。SPEEDIの存在に気づいている記者はいたに相違ないが、日本の新聞はデータ入手に全力を挙げなかった。
 この背景に、政府が隠している情報を独自調査で明らかにする調査報道が伝統として根づいていないことがある。大手メディアが報道したのは、単純化して言えば、政府と東電の発表処理だ。権力側が発する情報を漏れなく報じたのだ。
 放っておけば、権力は秘密主義に走る。これは、古今東西変わらない事実だ。ひょっとしたら権力側が隠している情報を探し出し、わかりやすく伝える。これが本来の報道だ。
 ところが、福島第一原発事故では、調査報道とは正反対の発表報道が横行していた。

 この点、むしろ週刊誌のほうが活躍していた。
 <例>全国各地の放射線データ。文科省が集め、発表したデータでは、さほど危険でない数字が出ていた。ところが、「週刊現代」のスクープで数字が不正確であることが判明した。文科省のデータでは、地上10mとか20mの地点で測定されていて、実際に人間が行動する地上1mのデータとはまったく違った。
 「週刊現代」のスクープを大新聞が後追いして報じた。「週刊現代」のスクープであるとは明示しないで。
 新聞記者は、記者クラブにおける発表処理に忙しく、実際に街に出て何が起きているかを見たり聞いたりする体制になっていないのだ。

 大手メディアは、記者クラブ経由の「大本営発表」をそのまま垂れ流すだけで、原発直後の危険性を正確に伝えなかった。
 <例>事故直後から実際にメルトダウンが起き、専門家もその危険性を指摘していたにもかかわらず、政府・東電が否定したことから、大新聞は紙面上で「メルトダウン」という言葉を使うのを控えていた。「メルトダウン」という言葉を大新聞が一斉に見出しに使い始めたのは、事故発生から数ヶ月後、政府・東電が認めてからだ。史上最悪の原発事故が起きているときに、メディアは権力を監視せず、発表報道に終始した。

 さらに、事故発生から10ヵ月ほどたって、野田総理が「冷温停止で原発事故は収束した」と発表した。誰もがアホらしいと思うこの発表を、大新聞はほとんどそのまま一面で伝えていた【注1】。
 そして、一面を発表報道で埋める一方、中面で「本音では、それはどうかと思う」みたいなツッコミ記事を言い訳のように載せていた。
 一番目立つ一面で政府発表を大きく伝えるのは、「権力の動き=ニュース」と考えているからだ。大新聞にとって「ニュースを正確に伝える」とは、実は「権力の動きを正確に伝える」という意味なのだ【注2】。
 「権力=ニュース」という価値観が共有される世界では、特大ニュースとは、政府の政策など権力側の動きを誰よりも早く報じる「発表先取り型」だ。

 記者の専門性欠如も問題だ。取材現場では2~3年で記者の担当分野がころころと変わる。15年や20年も現場で記者をやっていると、大抵はデスクに昇格してしまう。実質的に管理職になって現場から離れる。特定分野で数十年も経験を積んだ専門記者が取材現場にめったにいない。
 記者として成功すると、経営幹部に抜擢される。経営者が記者の最終目標であるならば、記者としての専門性よりも車内事情にどれだけ詳しいか、といった要素のほうが重要になる。
 逆に言えば、発表報道中心なら専門記者は不要だ。プレスリリースを読みやすく加工できればいい。「誰が、何を、いつ、どこで、なぜ、どのように」を詰め込む逆三角形のスタイルを覚えればいい。ここでは独自性を発揮する余地はそんなにない。政府・東電の説明どおりに書いていればそれですむ。専門的視点から反論する必要はないし、反論したくても反論する能力がない。

 米国の新聞は違う。
 <例1>ウィリアム・ブロード記者(ニューヨーク・タイムズ)は、30年以上も科学記者を続け、多数の著作を発表していながら、なお第一線で活躍している。原発問題、環境問題にも詳しく、広範なネットワークを築いているから、政府・東電の発表のどこがおかしいかも鋭く指摘していた。書く記事も、深く掘り下げたニュース解説で、非常に長い。
 対照的に、日本の新聞記事は発表をコンパクトにまとめて、正確にわかりやすく伝えているが、その発表が何を意味するか、踏み込んで書いていない。

 <例2>ジュディス・ミラー記者(ニューヨーク・タイムズ)は、ピュリッツアー賞受賞歴もあるベテラン記者だ。イラク戦争前、大量破壊兵器がある、と匂わせる記事を何度も書いた。ブッシュ大統領やチェイニー副大統領、ライス国務長官が「大量破壊兵器はある」とイラク戦争を正当化したが、その根拠にしたのがミラーの記事だった。ところが、ミラー記者のネタ元は、ブッシュ政権高官なのであった。まさにマッチポンプだ。ミラーは、「御用記者」のレッテルを貼られ、新聞界から追放された。同業他社から徹底的に批判された。ニューヨーク・タイムズも長い検証記事を掲載し、過去の大量破壊兵器がらみの記事の問題点を洗い出した。多くはミラーの記事だった。

 【注1】夜討ち、朝駆けは体力がないと続かない仕事だ。逆に言えば、頭はいらない。そのほうが権力にとって都合がよい。頭でっかちの記者だと、「その情報はほんとうか?」と考える。権力側にしてみれば、そんな記者を相手にしていると、言ったことが思ったとおりに伝わらない。記者は権力と一体化しているのだ。だから、総理発言の背景に何があるのか、深く考察しなくなっている。
 【注2】報道において、容疑者以外は匿名だ。捜査当局は匿名だから、間違っていることが明らかになっても責任を負わない。権力側にある裁判官についても、ほとんど報道されない。報道されても名前だけだから、匿名と変わらない。検事も同様。権力側に気に入ってもらわなければ情報をリークしてもらえなくなるから、権力側を匿名にしておくことで恩を売っておく・・・・こんな論理がマスコミ側にはある。権力迎合型報道だ。そして、最も匿名性の中で生きているのは、メディアだ。無署名記事は、馴れ合いを生む土壌になっている。

 以上、インタビュイー:牧野洋(ジャーナリスト/翻訳家)/インタビュアー:渋谷陽一「なぜ日本のメディアは「報道の責任」を問われないのか」(「SIGHT」2012年SPRING)に拠る。
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【震災】原発>南相馬で内部被曝173人「要注意レベル」 ~最大7200ベクレル~

2012年03月12日 | 震災・原発事故
(1)キャンベラ社製WBC
 南相馬市は、人口66,105人。昨年10月、緊急時避難準備区域を解除されたが、市南部の一部が依然として警戒区域に指定されたまま。今年の米作は2年連続で作付け見送りが決まり、4月以降、22,669の全世帯に個人線量計が配布される。
 同市立総合病院では、昨年7月以来、住民を対象にホールボディーカウンター(WBC)による内部被曝検診を実施。今年1月末には受信者10,000人を超えた。当初は国産WBCだったが、9月以降キャンベラ社製WBCを使用することで精度の高い検査ができるようになった。

(2)「無視できないレベル」の16人
 9~12月の検査で、最大値を示したのは60代男性の7,200Bq(体重1kg当たり110.7Bq)で、被曝量は国の規制値1mSv/年をただ一人超過した。また、高校生以上の4,745人中16人から「無視できないレベル」のセシウム137が測定された。16人中3人が警戒区域に指定された小高地区、残る13人が原町地区の住民で、いずれも体重1kg当たり50Bqを超えていた。
 チェルノブイリ原発事故に基づく海外の研究期間の調査では、大人の安定基準を50Bqと定めているケースがある。「無視できないレベル」たる所以だ。

 7,200Bqの男性は、(a)震災直後の原発の爆発で大量被曝(セシウム137の生物学的半減期は70日だから推定30,000Bq)したか、(b)食事や水などによる慢性期被曝か、いずれであるかはWBC検査では明らかにできない。重要なのは、これ以上の被曝を避け、今後数値を下げることだ。【坪倉正治・東大医科学研究所/南相馬市立総合病院非常勤医師】

(3)「要注意レベル」の173人
 「要注意レベル」は、海外研究機関の調査によれば、子どもでは体重1kg当たり20Bq以上を指す。
 中学生以下で4人(検査人数579人)、高校生以上では169人(うち高校生1人)、計173人が該当した。
 大人では(2)の16人を除けば安全圏とされる数字だが、被曝の経緯が不確かな以上、「要注意」は当然だ。
 女性より男性、若年層より高齢者に高い数値が検出される経口がある。「要注意レベル」の人には再検査を始めている。きめ細かな診療体制の構築が必要なのだ。【上昌広・東大医科学研究所特任教授】
 ことに懸念されるのは、「要注意レベル」の中学生以下の4人と高校生1人だ。食事や水を介した慢性被曝が疑われている。
 家庭菜園や地元農家の直売所などで購入した野菜や果物が「内部ルート」ではないかという疑念だ。今後は3~6ヵ月おきに検査するなど、観察を継続する必要がある。【上特任教授】
 数値が低くても体内の局所にとどまって同じ細胞を傷つける内部被曝の性質を考えると、将来の健康被害を軽視することは絶対にできない。しかも、ベータ線核種のストロンチウム、アルファ線核種のプルトニウムなどはWBCでは検出できないため、決して安心できない。【西尾正道・北海道がんセンター院長】

 以上、徳丸威一郎(本誌)「南相馬で最大7200ベクレル 内部被曝173人「要注意レベル」」(「サンデー毎日」2012年3月18日号)に拠る。
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【震災】原発>いまだ収束せず ~米国が恐れる「核燃料火災」~

2012年03月11日 | 震災・原発事故
 米国の原子力技術者アーニー・ガンダーセンは、インターネットの動画で、3号機の爆発において使用済み核燃料プールで即発臨界が起こった可能性について解説している。今は爆発の原因を厳密に特定するのは困難な段階だが、上向きのベクトルで劇的な爆発が起こったこと、爆発位置の偏りを考えると、核燃料プールで不慮の臨界が起こった、と考えるのが自然だ。
 4号機の核燃料プールは、今も日本列島を物理的に分断するほどの力を持っている。震災時、このプールに炉心数個分の使用済み核燃料が入っていた。大気圏内で行われた過去の核実験で放出された総量に匹敵するほどの放射性セシウムが眠っている。
 恐ろしいことに、核燃料プールは遮蔽されていない。放射性物質が漏出し続けている。まさに「格納されていない炉心」だ。今は水で冷やしているが、プールにひびが入るなどして水位が下がり、冷却できなくなると、温度が上がって燃料棒の鞘であるジルコニウム合金が発火する。こうなると、もはや水では消火できない。核燃料が大気中で燃える。人類の誰も体験したことのない恐ろしい状況になる。今回の事故とは桁違いの膨大な放射性物質が出てくる。大惨事だ。
 震災直後、日本では1、3号機の爆発に気をとられていたが、米原子力規制委員会(NRC)は、この事態を非常に心配していた。
 ボロボロの4号機の燃料プールがガラッと崩れて、核燃料がバラバラと飛び散る事態も心配で、科学にとって未知の事態になる。今のところ、燃料プールに亀裂が入っただけで済んでいる。

 事故現場は、大規模な余震に再び襲われる可能性が高い。福島原発の前に70kmを超える「双葉断層」が横たわっているからだ。阪神・淡路大震災のエネルギーの8倍に相当するM7.9の内陸直下型地震が起こるおそれがある。
 過去を振り返れば、大地震の後には、再び大きな地震が起こることが多い。2004年、インド洋大津波を引き起こしたインドネシアのスマトラ島沖のM9.1地震の3ヵ月後にはM8.6の地震が起こった。
 余震がとても怖い。地殻が大変化した日本では、どこでも大地震が起こり得る時代が続く。すべての原発を今すぐ廃絶しないといけない。

 溶けた核燃料は、圧力容器から漏れて、その下のコンクリートの床に落ちた。メルトダウンした高温の核燃料が、コンクリートの土台も溶かして地中にめり込んだ可能性がある。溶け落ちた核燃料の温度が非常に高くなっていたと思われるからだ。昨年7月16日付けの茨城の地元紙「常陽新聞」によれば、気象庁気象研究所(つくば市)で、モリブデンやテクネチウムを大気中で検出した。4,000度異常の超高温でしか気化しない物質が、170km離れた筑波まで飛んできたのだ。それほど高温の核燃料は、コンクリートを突き抜けるのではないか。
 核燃料が1ヵ所に集中して落ちていれば。他方、広がって落ちれば、全体の温度は徐々に下がっていく。そうすれば抜け落ちない。どういう形状で落ちたかで変わってくる。現時点では、誰も確認できない。
 しかし、突き抜けていても、いなくても、格納容器からは既に大量の汚染水が漏れている以上、問題ではない。

 日本では何故かセシウムのことしか議論しない。モリブデンやテクネチウムが飛んでいるとは、それより沸点の低いプルトニウムやウランなども放出されている、ということだ。しかし、議論すらしていない。

 ガンダーセンが福島の子どもが履いた靴を測定すると、放射線量は靴底より靴紐のほうが高かった。結び目に溜まりやすいのだろう。セシウム以外の放射性物質も検出した。
 スリーマイル島原発事故では、11年後の1990年になって、やっと大量の放射能が漏れていたことが分かった。白血病や肺癌の増加が指摘された。肺癌は、事故で放出された放射性キノセンとクリプトンの吸入によるものだろう。
 今回の事故でもキノセンやクリプトンも出たが、まったく話題になっていない。内部被曝を防ぐ手だてがほとんど行われていない。
 ガンダーセンの試算では、将来的に少なくともフクシマ事故の影響で100万人は癌が増える。 
 米国にも今回の事故による放射性物質が飛んできている。特に西海岸のオレゴンで高い数値が出ている。アラスカの先のアリューシャン列島の上空を通って、カナダ方面から西海岸の北側に辿り着いたのだろう。
 海洋汚染は、すでにハワイまで広がっている。米国が日本に売った原発によって、米国の海洋が汚染されたのだ。

 ストロンチウムはカルシウムと置き換わって骨や歯に蓄積する。乳歯を集めてみれば、分布が分かる。
 しかし、法律上、本人の許可が必要で、難しい。

 東日本ではもうすぐ雪が溶け、大量に川に流れ出し、河口地帯から汚染が広がっていく。
 魚が汚染し、海底にも堆積する。
 多くの人が福島にとどまっているが、政府は放射性物質の厳密な調査も行っていない。
 極めて厳しい闘いが、今後数十年以上続く。 

 以上、広瀬隆&アーニー・ガンダーセン「福島第一原発事故は収束していない! 米国が恐れる「核燃料火災」の大惨事」(「週刊朝日」2012年3月16日号)に拠る。
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【震災】原発>「廃炉」という地獄 ~40年後~

2012年03月11日 | 震災・原発事故
(1)政府・東京電力の中長期対策会議が2011年暮れに発表したロードマップ
 順調に進んでも、現在30歳の若手社員が還暦を迎えるまで廃炉は実現しない。
 (a)2年以内に使用済み核燃料プールから核燃料の取り出しを始める。
 (b)10年以内にプールからの燃料取り出しを完了し、原子炉内などにある溶け落ちた核燃料の取り出しを始める。
 (c)20~25年後に溶け落ちた核燃料の取り出しを終える。
 (d)30~40年後に原子炉の解体を終えて放射性廃棄物を処分する。

(2)ロードマップのモデル
 1979年に事故を起こしたスリーマイル島原発(TMI)2号機の廃炉作業がモデルだが、TMIは炉心溶融したといっても、
 (a)核燃料は原子炉の中に留まっていたし、
 (b)建屋の水素爆発はなかった。しかも、
 (c)1基だけだった。さらに、意外と知られていないが、
 (d)TMIで行われたのはあくまで核燃料を取り出すところまでで、原子炉は今も密閉された状態で残っている。稼働中の1号機の寿命が尽きたところで一緒に解体し、一緒に廃炉にする計画だからだ。
 福島第一事故の収束のモデルとなるのは、(1)-(c)までで、その先は前人未踏の道を開拓しなければならない。

(3)TMIの燃料取り出し ~計画と現実~
 幾つもの予期せざるトラブルに遭遇し、核燃料取り出し(1990年)まで11年かかった。
 (a)最大の難所は、原子炉を水浸しにして放射線を遮った上で、溶け落ちた核燃料を取り出す作業だった。事故から7年後、炉内をカメラで覗くと、ミドリムシが繁殖していて、視界がほとんどなかった。消毒薬に使う過酸化水素水(オキシドール)を入れ、水が透明度を回復するまで、1年を空費した。
 (b)こびりついた核燃料を削るボーリングの開発にも時間がかかり、核燃料取り出しまで、当初の計画の倍の時間、4年を要した。

(4)カギとなる新技術開発
 核燃料取り出しは、TMI以上の困難が予想され、(1)-(c)の長期が設定されている。
 しかし、1~3号機が炉心溶融し、格納器も損傷しているから、スケジュール通り進行するか、疑問だ。
 カギとなるのは、ロボットなどの新技術が開発されるか否かだ。ロードマップには、「研究開発」という項目があちこちに登場する。(a)建屋内の放射線量を下げるための「遠隔除染装置の開発」。(b)格納容器の壊れた場所を特定するための「格納容器内調査装置の設計・製作・試験等」。(c)溶け落ちた核燃料を取り出すための「取り出し工法・装置開発」。
 今の技術ではどうにもならない、ということだ。
 国内の原発用ロボットは、災害現場の苛酷な状況に対応できる機能を持たないか、開発されたものの維持・運用の費用が出ずに廃棄されてしまった。「安全神話」のせいで、不要とされたからだ。この結果、福島第一原発事故が起きた時、即戦力となるロボットは国内に一つもなかった。現場に最初に投入されたのは、米国のバックボットなど軍事用に開発されたロボットだった。
 遅れて、日本の新型ロボット「クインス」が投入された。ある程度の高い放射線量下でも写せるカメラや汚染水の採取装置を加え、ガレキを乗り越える能力は世界最高・・・・という触れ込みだった。たしかに、一時、建屋内の動画撮影やガンマ線測定に活躍したが、昨年10月下旬、2号機の建屋内で通信が途絶えた。狭い場所で何かに引っかかり、もがくうちにケーブルが切れたらしい。
 「クインス」は、今も2号機のどこかに置き去りにされたままだ。
 今年に入って、改良型の「クインス2」と「クインス3」が投入された。トラブルがあっても、互いの連携プレーで無事帰還できる計画だ。
 ところが、実はロボットのCPUは、人間と同じくらいの放射線量にしか耐えられない、と考えられている。
 今年1月、東電が福島第一原発2号機の格納容器内に内視鏡に似たカメラを入れて調べた(映像は公開された)。映像は、放射線の影響でノイズが強く、中の様子をはっきりとは確認できなかった。核燃料取り出しには格納容器のさらに内側にある原子炉の中を調べなくてはならないが、そこはさらに放射線量が高く、ひどく汚染された世界だ。ノイズを小さくするカメラが開発できなければ、様子を確かめることはできない。そのための機器開発は、これからだ。
 ロボットによる調査の先に、本格的な廃炉作業が控えている。どれだけの壁が待ち受けているか、予想だにできない。

(5)ロードマップの実施体制
 (1)を達成するため、政府は経済産業省大臣政務官をトップに研究開発本部を設置した。事務局は資源エネルギー庁だ。使用済み核燃料プールや原子炉にある核燃料取り出しなど、課題に応じた作業チームが作られた。民間からも参画し、当面は世界に視野を広げて、今ある技術を集めて「カタログ化」することを目指す。

(6)課題
 (a)最大のヤマ場は、格納容器下部の補修・水張り(2016年度~)、そして抜け落ちた核燃料の取り出しだ(2021年度~)。それまでに技術開発が間に合うか。
 (b)もう一つ、巨額な費用をどう調達するか。スリーマイル島原発事故では、処理費用がこれまでに9億7,300万ドル(750億円)かかった。これに今後行われる解体費用が加わるから、実際の廃炉費用はさらに高くなる【注1】。
 廃炉は解体と放射性物質の処理が完成されて、初めて成し遂げられる。しかし、日本広しと言えども、どこの誰も核燃料取り出しの後については議論さえ行われていない。
 使用済み核燃料のように高レベルでなくても、原子炉など中レベルの放射性廃棄物さえ、持って行き場がない。
 日本で唯一、廃炉を成し遂げた日本原子力研究所(現・日本原子力開発機構)の動力試験炉(JPDR)にしても、解体した原子炉や制御棒などは、黒鉛を混ぜた鋳鉄製の遮蔽容器やドラム缶に詰め込んだまま専用の倉庫に眠っている。
 東京都市大(旧・武蔵野工大)の、1989年に停止して2004年から廃炉作業に入っている熱出力わずか100Wのミニ原子炉【注2】さえ、廃炉計画書には原子炉解体時期は「X年」とだけ記され、特定されていない。最終処理の見とおしがまったく立っていないからだ。

 【注1】「東京電力に関する経営・財務調査委員会」の試算(昨年10月まとめ)によれば、1兆1,510億円。上記のような困難を考慮すると、実際の費用はもっと高くなるのは確実だ。さらに、事故を起こさなかった5、6号機も廃炉にするならば、この額はさらに膨らむ。東京電力と原子力損害賠償支援機構は、2021年度までの分だけで総額1兆円かかる、という資金計画を策定している。
 【注2】福島第一原発1~4号機の熱出力の合計の85,000分の1だ。

 以上、東京新聞原発取材班「汚染廃棄物の捨て場がない 「原発廃炉」40年後に待つ“地獄絵図”」(「週刊文春」2012年3月15日号)に拠る。
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【震災】原発>殺されゆく弱者

2012年03月10日 | 震災・原発事故
 今回の災害でも、被害を最も受け、いわば殺されたのは社会的弱者だ。強い者しか生きていけない社会は、災害時にはそれがあからさまに現れる。
 支援の必要な人たちには、行き場も居場所もなかった。一部の人々の懸命な努力で何とか生命をつなぎとめているが、いまなお行政の支援は十分ではない。

<例1>障がい者
 被災地での「障がい者」の死亡率は、健常者の2倍にのぼる。「障がい者」の生活は、地震を生き残った後も苛酷だった。
 (a)やっとのことで避難所にたどり着いた聾唖者は、「無口な人」と思われたまま、体調の悪化を伝えることができず、事切れた。
 (b)集団行動が難しい発達障害児は、車の中での生活を強いられた。避難所を出たら、「逃げた」と言われて、物資が供給されないケースもあった。
 (c)てんかん児は、薬が切れたあと発作を起こし、命の危険にさらされた。当初、必要な薬を入手することは不可能に近かった。
 (d)こだわりの強い自閉症の子どもは、環境が変わったため、食事が喉を通らず衰弱し、まったく排便しなくなった子どももいた。

<例2>高齢者
 夜中に徘徊する認知症の高齢者たちは、介助者から先に疲弊して倒れていった。疲労が虐待に繋がるケースもあった。

<例3>女性
 (a)DV
   女性への暴力的な言動が被災地で増えた。
   仕事も財産も誇りも失った男たちは、「酒を飲む」か「家族に当たる」か「寝ている」か、の状態になった。
   父親が荒れて子どもが恐怖に怯え、毎日泣きながら眠り込む。女性が離婚を申し出ると、夫から、自分の荷物を家中のゴミと一緒に送りつけられた。女性は、鬱を発症した。
   仮設住宅では、パーソナルスペースはなく、逃げ場がない。「夫が一服するために部屋を出るときだけが生きている心地がする」女性もいる。
   一時金が出ると、多くの男たちが酒場に向かった。一家単位での支払いは女性を苦しめることになった。

 (b)性暴力
   早い段階から報告された。若い女性の隣にわざと寝る男性。女性が寝場所を変えても、ついてきて隣に寝る。隣にこないで、と言うと、「どこで寝ようがオレの買ってだろ」と開き直る。
   過去の震災や停電などによる性暴力被害のフラッシュバックに悩む被害者が多数存在することも、今回明らかになった。

<例4>外国籍女性
 被災地には、外国籍(フィリピン、韓国、中国、ベトナム、タイなど)の「妻」が少なくない。多言語による情報はほとんどなく、たとえ役所から提供されても届かなかった。
 外国籍女性のDV保護率は、日本人女性の6倍だ。失業率は40%以上。この数字に、今回の被災が重なったのだ。
 被災地5県で生活し、仕事をしていた外国籍住民は91,147人(2011年3月15日現在)。うち、行方不明者の数は把握されていない。身元が確認されたのは、23人の死亡者だけだ。
 震災直後には流言飛語が飛び交い、外国籍住民は避難所の片隅で肩を寄せ合って小さくなっていた。 

 真の復興とは、殺さない、殺されない社会を作ることだ。
 被曝した人を抜きにして、電力の未来を語るべきではない。原発の是非を問う住民投票は、被害者の手によってなされるべきで、利益を享受している者たちの手で行われるべきでない。
 そして復興は、地元を知り抜いている地方自治体の主導の下に行われるべきだ。特別なニーズを抱えている構造的弱者にとっては、そこにしか命綱はない。だが、復興の要となる自治体職員は疲弊しきっている。なぜこうなってしまったのか。

 以上、辛淑玉(人材育成コンサルタント)「殺されゆく弱者 非常時に表れる差別意識 ~震災で噴き出した歪み(上)~」(「週刊金曜日」2012年3月2日号)に拠る。
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【震災】原発>ついに始まった千葉県柏市の人口流出

2012年03月09日 | 震災・原発事故
 千葉県柏市は、原発事故がもたらした「ホットスポット」、首都圏でも局所的な高線量を示す自治体として世に知れわたった。

 昨夏まで、秋山浩保・柏市長は市民の動きに冷淡だったが、「ホットスポット」と呼ばれるようになってから態度が変わった。ほぼ同時期に柏市の人口流出が始まり、市長はいっそう危機感を煽られたらしい。【押川正毅・東大物性研究所教授】
 震災以降、柏市の人口動態に初めて異変が起きたのは、昨年8月だ。1,498人の転入に対し、転出は1,591人。差し引き93人の人口減少だ。以降、7ヵ月連続で転出が転入を上回り、この2月には転出が209人超過する異常事態となった。
 放射能に怯えて家族全員で柏市を去った知人もいる。人口流出は、放射能汚染の影響としか考えられない。【押川教授】 

 秋山市長は、年頭に、人口減と放射能の因果関係を認めた。
 線量は問題のないレベルとした初動対応の失敗が、市民の不安を招いたのだ。【秋山市長】

 最近は、除染で使うマスクやスコップなど消耗品を現物支給するようになった。市が、私たちを熱心に支えてくれるようになったのは、驚きの一語に尽きる。【川田晃大・「つながろう柏! 明るい未来プロジェクト」代表】

 以上、徳丸威一郎(本誌)「南相馬で最大7200ベクレル 内部被曝173人「要注意レベル」」(「サンデー毎日」2012年3月18日号)に拠る。
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【震災】原発>東京湾に放射能汚泥が堆積中 ~海の汚染~

2012年03月09日 | 震災・原発事故
(1)福島県沖
 福島の漁師は、原発事故以来、操業自粛を強いられている。妻子はおろか、漁師自身、「怖くて食べられない」。
 農水省がまとめたセシウムの検査結果によれば、福島県沖では今年に入ってから593点の魚介類を検査。
 シロメバル3,100Bq/kgを最高に、11種42点が、出荷制限対象となる暫定規制値(500Bq/kg)を超えた。汚染の出方は魚種によって不均一だが、汚染レベルは高止まりしている。
 ただし、仮に4月から厳しく見直される暫定規制値(100Bq/kg)を適用すると、ヒガンフグ、ホッキガイなど30種159点が出荷制限となる(全体の26%)。

(2)東京湾
 福島以外の海域で、新たな懸念を指摘する専門家もいる。わけもて注目されるのが東京湾の海底汚染だ。 
 今年、一部の魚から微量ながら汚染が見つかった。千葉県船橋市沖のスズキから16Bq(1月23日)、東京都江戸川区沖のスズキから9Bq(2月24日)が検出された。
 ここ半年間、汚染が見つかっていない江戸前のマアナゴなど魚介類も、この先、湾の汚染が進めば、汚染が見つかる可能性がある。
 東京湾の汚染は、地表に降下したセシウムの流入が原因だ、とする見方が強い。
 旧江戸川河口の泥では、最高値800Bqほど。今のところ首都圏の土壌と同じ程度の汚染レベルだ。汚染濃度のピークは、原発事故から2~3年後だ。ピーク時の濃度は今より極端に上がることはなくても、湾全体に汚染が広がる可能性がある。ピーク時に魚にどんな影響が出るか、予測できない。【山崎秀夫・近畿大学教授】
 原発近くの海底にたまった高レベルのセシウムが汚染源となり、徐々に流れ出し、海岸線に沿って南に流れる沿岸流により千葉県の房総半島を回り込み、東京湾の入り口まで辿り着いているかもしれない。今後の廃炉作業工事の過程で、地下水などを通じて新たなセシウムが海に流入しないとも限らない。海のモニタリングの継続が不可欠だ。【山崎教授】
 海底の泥の中に棲む生物を餌にする魚介類がいる。ために食物連鎖によって汚染が広がる可能性はある。東京湾で獲れる主な魚介類のスズキ、アナゴ、アサリ、シジミなどは漁期に合わせて引き続き検査する。【東京都の担当者】

(3)日本の海全体
 福島第一原発の20km圏内の海底土は、原発にごく近い場所の汚染は極端に高いものの、全域は東京湾の汚染濃度とさほど変わらない。にもかかわらず魚の汚染には大きな差がある。東京湾ではセシウムが粘土にくっついた状態で海へ流れ込んだのに対し、福島では原発からセシウムが直接流入した。ために、海中で浮遊しやすく、プランクトンを介して生態濃縮を起こしているおそれがある。回遊魚が南北に汚染を広げていることも想定される。【山崎教授】

(4)汚染の北限 ~北海道東端~
 海洋汚染は、北海道東端の北方領土付近まで広がっている。昨年10月から、検出例が相次いでいる。室蘭市沖のマダラから70Bqが検出された(1月)。北海道根室沖海域(福島第一原発から750km)で獲れたマダラから31Bqが検出された(2月)。
 マダラは沿岸に棲息するとされる。福島周辺から北上してくる海流はない。海水の定点観測結果は不検出だ。宮城県沖の海水検査でも不検出が続く。道内の陸地にセシウムはほとんど降下していない。海に流れ込んだ可能性もない。だから、マダラの汚染源として考えられるのは、汚染海域から回遊してきた小魚だ。これを食べた可能性だ。【北海道の担当者】
 昨夏北海道沖で獲れたサンマの複数からセシウムが検出された。サンマは回遊魚だ。マダラの餌になる。

(5)汚染の南限 ~神奈川沖~
 前記農林省のデータのうち沿岸に棲むヒラメなどの数値を比較すると、汚染の南端は、神奈川沖辺りにありそうだ。
 江の島先で獲れたカンパチから59Bqが検出された(昨年10月)。同じ海域のシイラから21Bqが検出された(昨年11月)。小田原市沖(原発から直線距離300km)ではヤマトカマス、ヒラソウダ、ブリから9~19Bqが検出された(昨年10月以降)。 
 黒潮があるため、海流で福島からセシウムが流れ込むことは考えにくい。陸地に注いだセシウムが雨に流され、川を経由して海に流入し、汚染した餌を食べた魚に移ったのだろう。【神奈川県の担当者】
 伊豆半島を越えた静岡県御前崎市沖でも、昨年10月以降、沿岸の魚介類から0.2~1.1Bqを検出している。
 海の汚染はいつ収束するのか。

 以上、大場弘行(本誌)「江戸前はどうなる 東京湾に放射能汚泥堆積中」(「サンデー毎日」2012年3月18日号)に拠る。

 【参考】「【震災】原発>食卓の放射能汚染、2012
     「【震災】原発>海洋汚染の拡大・・・・表層から海底へ、海のホットスポット、陸から海へ
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【経済】金持ちに1%の富裕税を課せ ~消費税の2倍の税収~

2012年03月08日 | 社会
 日本経済を苦しめてきた要因は、富裕老人・億万長者が激増し、彼らが多くの資産を独占していることだ。
 彼らの資産を社会に還元しなければ、日本経済の復活はあり得ない。富裕税は、今の日本にとって欠くべからざる制度だ。
 富裕から税を徴収するのは、実は簡単だ。日本全体から見れば、富裕層は1割に満たない存在だからだ。国民の多数が支持すれば、政治も霞が関も動かざるを得ない。

 財務省は、昨今、「所得」や「消費」にばかり課税しようとしてきた。特にバブル前後からは、低所得者の所得や消費に対する課税を強化してきた。
 日本の税収の3本柱は、法人税、消費税、所得税だ。
 しかし、税金は「資産」にもかけることができる。しかも、そのほうが、所得や消費にかけるよりも公平で大きな税収が得られる。
 所得税増税は給料を減らし、生活を苦しくさせ、消費を減らし、不景気を呼ぶ。消費税増税も、物価が上がり、生活を苦しくさせ、消費を減らし、景気を冷え込ませる。
 他方、所得-消費=資産は、いわば予備のお金だ。消費に影響しないし、国民生活が苦しくなるわけではない。
  今の日本経済は、資産が異常に膨らんでいる。先進国と比較して、所得や消費は高くないのに、資産だけが大きい。低所得者の所得や消費にばかり課税し、金持ちの資産に課税しなかったからでもある。

 資産に課税しなかったのは、金持ちが抵抗してきたからだ。資産持ち=金持ちが政治家に圧力をかけてきたからだ。
 そもそも、政治家自身が金持ちだ。小泉純一郎しかり、田中真紀子しかり、鳩山兄弟しかり。

 では、富裕層にどう課税するか。もっとも有効なのは富裕税だ。余剰資金にかける税金だ。フランスなど先進国の一部で導入されている。
 <例>1億円以上の資産の持ち主に1%の税金をかける。
 富裕税は、国民生活に直結しないし、金持ちにとっても負担感はさほど大きくない。
 そして、わずかな税率で、莫大な税収を生む。
 日本には個人金融資産が1,400兆円あり、不動産などと合わせれば8,000兆円の資産がある。これに1%の富裕税を課せば、80兆円の税収となる。資産の少ない人を課税免除しても、少なくとも20兆円以上になる。
 10年間の震災復興費(20兆円余)とほぼ同じ額の税収が、1年間で得られることになる。
 消費税を10%に増税した場合に新たに得られる税収(約10兆円)の2倍の税収を得られることになる。しかも、消費税増税は、消費の大幅減少や格差拡大につながるが、富裕税は消費に影響しないし、格差を改善する。
 富裕税を恒久税とすれば、毎年この額が入る。今の日本の財政問題はこれですべて片づくし、中間層以下の人たちにも大幅な減税ができるだろう。そうすれば消費も上向く。
 富裕税1%で、日本の懸案事項のほとんどが解決するのだ。
 金持ちが文句を言ってくれば、多数決で締めあげればよい。

 富裕税1%を課しても、海外へ資産を移したりはしない。海外に資産を移すだけで、資産の数%~数十%目減りするからだ。また、海外で資産を管理すれば、毎年数%以上の手数料がかかる。現実にはあり得ない。
 フランスでは富裕税を逃れるために海外に流出する金持ちが毎年数百人いる。2005年には649人いた。ただ、フランスには相続税もかかる。
 日本では、相続税の代替として富裕税を創設すれば、この弊害は防げる。相続税より富裕税のほうが実質的な負担感は低いのだ。
 また、フランスは同じ言語や文化を持つ地域が国外にたくさんあり、日本とは事情が違う。
 わずか1%の富裕税を逃れるために海外で暮らそうとする人は、まずいないだろう。

 以上、武田知弘「金持ちに1%の富裕税を課せ! ~数字が見抜く理不尽ニッポン 第10回~」(「週刊金曜日」2012年3月2日号)に拠る。

 【参考】「【経済】年々減る給与、年々増える会社の貯金 ~企業の内部留保金300兆円~
     「【経済】税制が作った“富裕老人”400万人
     「【経済】消費税は失業者を増やす
     「【経済】「億万長者激増」の原因 ~税制~
     「【経済】「億万長者激増=景気低迷原因」説 ~日本に5万人の億万長者~

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【震災】原発>原発を問う民衆法廷

2012年03月07日 | 震災・原発事故
(1)日時
 2012年2月25日(土)

(2)場所
 機械振興会館(東京都港区) 東京タワー正面

(3)主催者
 「原発を問う民衆法廷」実行委員会 (委員長:伊藤成彦・中央大学名誉教授)

(4)参加者:次の(a)~(d)および傍聴人300人
 (a)申立人
 (b)検事団
 (c)判事団
 (d)アミカス・キュリエ(法廷の友だち)・・・・被告人(東京電力、政府ら)の主張の代弁者

(5)目的
 被害者の視点から原発政策を問い直す。

(6)内容 
 (a)実行委員長あいさつ
   戦争ではなく原発(政策)を裁くのは、今回が世界で初めて。この法廷活動を通じ、原発を停止させたい。
 (b)刑事被告人および容疑
   事故当時の東京電力、政府、関係機関幹部ら・・・・「公害犯罪」の第2、3条違反および刑法の業務上過失致死傷罪の容疑で起訴された。
 (c)申立人および申立
   福島における原発事故被害者(当事者)7人。
   <例>設楽俊司・「被災地障がい者支援センターふくしま」・・・・障がい者が福島で避難できず、ヘルパー不足にあえいでいる。
 (d)証人尋問
   高橋哲也・『犠牲のシステム 福島・沖縄』の著者・・・・「犠牲のシステム」とは、ある者たちの利益が他の者たちの生活の犠牲の上にのみ満たされ、維持されるもの。原発は、「犠牲のシステム」だ。ある人々の人権が深刻に侵害されていることを忘れるべきでない。

(7)判決   
 この民衆法廷は、全国を巡回する。次回は5月下旬に福島で行われ、判決も下される。  

 以上、西村仁美(ルポライター)「東電、政府らが「刑事被告人」に 「原発を問う民衆法廷」始まる」(「週刊金曜日」2012年3月2日号)に拠る。
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【震災】原発>今後日本のエネルギー政策はどう変わるべきか

2012年03月06日 | 震災・原発事故
 2011年夏、電気が足りることは証明された。
 電気が足りる、足りないの議論とは切り離して、戦略的にエネルギーシフトしていく必要がある。
 日本では、自然エネルギーでは文明のエネルギーのすべてを賄えないという根拠のない思い込みが拡がっているが、自然エネルギーの最も主要な太陽光エネルギーでいうと、今我々が使っている化石燃料と原子力による電力を足した総量のおよそ1万倍のエネルギーが地球に降り注いでいる。
 我々が今使っているエネルギーは、電気、湯・蒸気、自動車や飛行機を動かす燃料の3つだ。この3つに変換できさえすればいい。しかも、我々の使っているエネルギーは、太陽光エネルギーのわずか0.01%だ。自然エネルギーですべてを賄うのは、できる、できないの問題ではなく、いつまでにできるかという時間の問題だ。
 もっと大事なことは、この文明社会を持続的にする、ということだ。その持続性は、先進国と途上国の格差を解消しつつ、将来の世代に残すべき遺産を食いつぶさない、という本当の意味での持続性だ。再生可能エネルギーと資源を再生が可能な範囲で使う社会でしか、この持続性を保つことができない。
 自然エネルギー100%は、できる、できないではなく、しなければならない。

 環境省の評価によれば、2010年3月のデータでは、太陽光発電は最大1億5,000万kWのポテンシャルがあり、住宅での発電量を合わせると、およそ2億kWのになる。これは日本の電力設備の発電量に匹敵する。
 風力発電にいたっては、最大20億kWの、もっと大きなポテンシャルがある。

 消費電力見直しは、例えば、スウェーデンのヨーテボリ南部の住宅は暖房設備がまったくない。外がマイナス40度になっても屋内は20度に保たれている。壁の厚さが42cmあり、窓が三重の木製サッシになっていて、間にアルゴンガスが封入されている。その表面は、Low-Eガラスでできている。空気を入れ換えるときには熱交換するので、冷たいフレッシュな空気は暖かいフレッシュな空気になり、屋内の汚れた空気は屋外に出るとき冷たい空気になる。
 室内は、ささやかな太陽エネルギーと電化製品、人間から出る熱によって20度に保たれるのだ。
 この住宅は、普通に分譲または賃貸しされている住宅だ。
 日本でも販売されているスウェーデンハウスであれば、日本の普通の住宅に比べて暖房の使用量は数分の一で済む。太陽熱温水器により給湯も自然エネルギーで賄うことができる。浴槽も、魔法瓶風呂と節水シャワーにより、給湯のエネルギーを大幅に削減できる。
 暖房は40度、給湯は60度の熱でできる仕事だが、この熱はエネルギーの中でもっとも「質」の低い、捨てる直前のものだ。電気でこの熱を作るのは非常にもったいない。発電するとき出る温排水として投入エネルギーの60%は捨てられる。その温水で暖房・給湯を賄うなど、この部分を節約する方法がある。

 以上、インタビュイー:飯田哲也(NPO法人環境エネルギー政策研究所長)/インタビュアー:川辺美希「原子力発電というのは、国際社会ではもう終わっているものなんですね」(『私たちは原発を止めるには日本を変えなければならないと思っています。』、ロッキング・オン、2011)に拠る。
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【震災】原発>つぶされたエネルギー政策見直し議論

2012年03月05日 | 震災・原発事故
 エネルギー政策の見直しの視点は、反原発、環境政策のほか、経済合理性もある。
 1997年から、経産省に電力自由化を進める動きがあった。OECDによる「日本はさらに電力を自由化すべきである」というレポートに端を発する。レポートには、OECDに出向中の経産官僚の意向が働いている。
 当時の経産省の主流派は、改革派・市場原理派で、電力自由化によって電力会社を組み伏せ、解体しようとした。背景に、米国の巨大エネルギー企業、エンロン社が進めた電力市場原理主義があった。自由化が実現すれば、地域独占の構造が崩され、実質的に経済競争力を失っている原発からの撤退も視野に入れざるを得なくなる。
 OECDレポートに続き、佐藤信二・通産大臣が「電力自由化を検討する」と表明した。しかし、佐藤は3回続けて総選挙で落選し、電力会社は政治力を見せつけた。
 しかし、大臣が落選しても、実質主導権を握っているのは官僚で、その後も彼らはエンロン社とも連携して自由化実現に動いた。部分的自由化が始まり、自由化が実現する寸前までいったが、カルフォニア州停電(2000年夏)を受けて、電力会社や既得権益を守ろうとする専門家たちが自由化の弊害を主張し、巻き返しに出た。自由化陣営も応戦したが、エンロン社が会計粉飾問題で破綻し、この議論は終結した。
 この時点から、電力自由化の核心「発送電分離」は禁句となった。

 2004年には、青森県六ヶ所村再処理工場をめぐる議論も起こった。経済的にも技術的にも合理性を欠く高速増殖炉や核燃サイクルを中心とする再処理路線に対し、経産省の事務次官を中心とした経産省キャリア官僚がその見直しを図った。ただし、核燃サイクルは国策という体裁を保ったままブレーキをかけようとする動きだった。
 勝俣恒久・東電社長(当時)も再処理路線の見直しを半ば公言していた。しかし、東電が再処理から撤退すれば、施設が集中している青森県との関係が悪化するだけでなく、使用済み核燃料は行き場を失い、六ヶ所再処理工場につぎ込んでいた資金が負債となって圧迫する。東電は再処理から離脱する意志を伝えつつ、経産省に助けを求めたが、経産省・東電それぞれの原子力ムラの抗争の結果、六ヶ所再処理工場は運転に向けて進められることになった。
 再処理見直しの動きが霧消した後、経産省内ではバックラッシュが起こった。まさに「安政の大獄」だった。
 原子力ムラは、経済的合理性からの理論も完全に押しつぶしてきた。

 原子力ムラは、1950年代から進化がない。日本のエネルギー政策は、実質的な議論もなく進んできた。経年劣化と空洞化が進んでいる。
 3・11以前、「日本の原発技術は最先端」という神話が語られてきたが、原子力分野で使われるソフトウェアはほぼ米国製だ。
 日本の原子力産業を代表する企業として三菱重工、東芝、日立製作所があるが、三菱は米国ウェスティングハウス社、東芝・日立は米国ゼネラルエレクトリック社の下請け的存在だった。東芝によるウェスティングハウス社買収(2006年)は、独自技術の未完成を立証する。
 この技術面の空虚さは、安全審査面で問題を生んだ。安全審査文書の作成や東電・経産省の確認作業は簡単な語句の確認が行われるだけだし、本番の安全確認もシナリオどおり予定調和で進められる。
 津波や地震の可能性、非常用電源がすべて失われてしまうような状況については検証されない。

 以上、インタビュイー:飯田哲也(NPO法人環境エネルギー政策研究所長)/インタビュアー:川辺美希「原子力発電というのは、国際社会ではもう終わっているものなんですね」(『私たちは原発を止めるには日本を変えなければならないと思っています。』、ロッキング・オン、2011)に拠る。ます」(『私たちは原発を止めるには日本を変えなければならないと思っています。』、ロッキング・オン、2011)に拠る。
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