2月10日、復興庁設置法に基づき、復興庁が発足した。
本庁160人、岩手・宮城・福島の各復興局に30人。青森・茨城の各支所を含めて計250人の陣容。職員のほとんどは、国交省と農水省からの出向だ。
平野達夫・復興担当大臣、国会で答弁していわく、「被災地のニーズにワンストップで対応できる」。
ホントか?
復興構想会議の提言を受けた「東日本大震災からの復興の基本方針」は、2015年度末まで5年間の集中復興期間に国・地方併せて19兆円、10年間で23兆円の予算を織り込んだ。
事業予算と期限を確保し、あとは官僚の掌で利権を分配する手法は、かつての公共事業長期計画パターンだ。
対策本部名簿には、閣僚数名の後に、全府省からの事務次官が「幹事」として名を連ねる。
政権交代で葬り去ったはずの事務次官会議=省益調整会議が、亡霊のように甦っている。
自治体の予算獲得は、復興の錦の旗があっても、簡単ではない。
(a)自治体が復興庁に事業計画書を提出し、事前協議する。→(b)復興庁と各省が協議し、その結果(交付可能か否か)を自治体に知らせる。→(c)(交付可能な場合)自治体が復興庁に、各省に対する交付申請書を提出する。→(d)復興庁が各省に、自治体からの申請書を回す。→(e)各省が交付決定を行う。
要するに、交付権限は各省にあり、復興庁はその窓口というわけだ。
そして、(a)と(b)に4週間、(c)~(e)に4週間、合わせて2ヵ月間を要する。復興のために3次予算で1.9兆円が確保されたが、釜石市復興推進本部都市整備推進室が1月末に提出した事業計画が、まだ「国の確認中」というペースだ。
被災者も市町村もくたびれている。19兆円という巨額予算と住民の間には深い溝がある。それを誰が埋めるのか。<例>宮城県は高台移転だけで100ヵ所もあるが、自治体には技術者が足りない。土地区画整理事業のノウハウを持つ独立行政法人都市再生機構(UR)がハイジャックしているような状態だ。整理縮小されるURからすれば、復興事業は生き延びるための存在理由。しかし、区画整理で土地価格が上がるまちづくりモデルは過去のものだ。【五十嵐敬喜・法政大学法学部教授/元・復興構想会議検討部会専門委員】
廃棄物処理や除染は単価が高く、単価の安い事業は入札不調が障子、生活に必要な道路の簡単な補修ができない、など、おかしな問題が起きている。【五十嵐教授】
2,500万円以下の事業では、技術者がいない、などの理由で入札不調で終わる傾向がある。【岩手県県土整備部総務部入札室】
仕事量と労働者の需給関係が壊れて、労務単価がつり上がっているのだ。
「復興」に乗じた二重行政による組織延命策も見られる。
<例>①経済産業省中小企業庁「産業復興相談センター」と、②内閣府が営業準備中の株式会社東日本大震災事業者再生支援機構。
①は、返済困難な債務をいったん買い取り、無利息で10年間支払いを求めないスキームだ。震災を契機に、対象を中小企業のみならず農業者や医療法人・社会福祉法人にも拡張した。
問題は、その原資1,500億円を資金提供するのが、独立行政法人中小企業基盤整備機構であることだ。この独法は、2009年の事業仕分けで「抜本的見直し」を命じられた。2010年4月の独法仕分けでは活用されないでいる2,000億円を国庫に返納せよ、と。で、500億円を返却したところで震災が発生した。全額返納していれば先細りが確実だった。それが、10年間延命することになった。経産省にとって、貴重な天下り先が確保された。
②も、原資の出所は異なるものの、業務内容はほぼ同じだ。①は各県のみの相談、②は事業が県をまたがる場合にも対応・・・・という違いがあるだけだ。
復興利権にあやかろうと、それぞれの官庁が譲らず、それが復興庁という調整官庁の形をとって顕現しているのだ。
以上、まさの あつこ(ジャーナリスト)「復興庁は、巨額利権の調整官庁か」(「週刊金曜日」2012年3月2日号)に拠る。
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本庁160人、岩手・宮城・福島の各復興局に30人。青森・茨城の各支所を含めて計250人の陣容。職員のほとんどは、国交省と農水省からの出向だ。
平野達夫・復興担当大臣、国会で答弁していわく、「被災地のニーズにワンストップで対応できる」。
ホントか?
復興構想会議の提言を受けた「東日本大震災からの復興の基本方針」は、2015年度末まで5年間の集中復興期間に国・地方併せて19兆円、10年間で23兆円の予算を織り込んだ。
事業予算と期限を確保し、あとは官僚の掌で利権を分配する手法は、かつての公共事業長期計画パターンだ。
対策本部名簿には、閣僚数名の後に、全府省からの事務次官が「幹事」として名を連ねる。
政権交代で葬り去ったはずの事務次官会議=省益調整会議が、亡霊のように甦っている。
自治体の予算獲得は、復興の錦の旗があっても、簡単ではない。
(a)自治体が復興庁に事業計画書を提出し、事前協議する。→(b)復興庁と各省が協議し、その結果(交付可能か否か)を自治体に知らせる。→(c)(交付可能な場合)自治体が復興庁に、各省に対する交付申請書を提出する。→(d)復興庁が各省に、自治体からの申請書を回す。→(e)各省が交付決定を行う。
要するに、交付権限は各省にあり、復興庁はその窓口というわけだ。
そして、(a)と(b)に4週間、(c)~(e)に4週間、合わせて2ヵ月間を要する。復興のために3次予算で1.9兆円が確保されたが、釜石市復興推進本部都市整備推進室が1月末に提出した事業計画が、まだ「国の確認中」というペースだ。
被災者も市町村もくたびれている。19兆円という巨額予算と住民の間には深い溝がある。それを誰が埋めるのか。<例>宮城県は高台移転だけで100ヵ所もあるが、自治体には技術者が足りない。土地区画整理事業のノウハウを持つ独立行政法人都市再生機構(UR)がハイジャックしているような状態だ。整理縮小されるURからすれば、復興事業は生き延びるための存在理由。しかし、区画整理で土地価格が上がるまちづくりモデルは過去のものだ。【五十嵐敬喜・法政大学法学部教授/元・復興構想会議検討部会専門委員】
廃棄物処理や除染は単価が高く、単価の安い事業は入札不調が障子、生活に必要な道路の簡単な補修ができない、など、おかしな問題が起きている。【五十嵐教授】
2,500万円以下の事業では、技術者がいない、などの理由で入札不調で終わる傾向がある。【岩手県県土整備部総務部入札室】
仕事量と労働者の需給関係が壊れて、労務単価がつり上がっているのだ。
「復興」に乗じた二重行政による組織延命策も見られる。
<例>①経済産業省中小企業庁「産業復興相談センター」と、②内閣府が営業準備中の株式会社東日本大震災事業者再生支援機構。
①は、返済困難な債務をいったん買い取り、無利息で10年間支払いを求めないスキームだ。震災を契機に、対象を中小企業のみならず農業者や医療法人・社会福祉法人にも拡張した。
問題は、その原資1,500億円を資金提供するのが、独立行政法人中小企業基盤整備機構であることだ。この独法は、2009年の事業仕分けで「抜本的見直し」を命じられた。2010年4月の独法仕分けでは活用されないでいる2,000億円を国庫に返納せよ、と。で、500億円を返却したところで震災が発生した。全額返納していれば先細りが確実だった。それが、10年間延命することになった。経産省にとって、貴重な天下り先が確保された。
②も、原資の出所は異なるものの、業務内容はほぼ同じだ。①は各県のみの相談、②は事業が県をまたがる場合にも対応・・・・という違いがあるだけだ。
復興利権にあやかろうと、それぞれの官庁が譲らず、それが復興庁という調整官庁の形をとって顕現しているのだ。
以上、まさの あつこ(ジャーナリスト)「復興庁は、巨額利権の調整官庁か」(「週刊金曜日」2012年3月2日号)に拠る。
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