JR直営の印刷場名は国鉄時代の印刷場名を使用します。
10年以上前に御紹介した券も再度御紹介しようかと思います。
古紙蒐集雑記帖
仁賀保駅発行 仁賀保から110円区間ゆき片道乗車券・急行券 連綴券
前回と前々回エントリーで国鉄新潟印刷場で調製された乗車券と急行券の連綴券をご紹介いたしました。ご紹介してまいりましたように、連綴券は一般式乗車券と急行券の2枚を1枚にまとめたような様式ですが、たまにそうではない様式の券が出てくることもありました。
1977(昭和52)年12月に羽越本線仁賀保駅で発行された、仁賀保から110円区間ゆき片道乗車券と急行券の連綴券です。
青色こくてつ地紋のD型大人専用券で、新潟印刷場で調製されたものです。
左側乗車券部分は同駅から110円区間ゆきの金額式片道乗車券で、右側急行券部分は同駅から100kmまでの急行券となっています。
前回ご紹介いたしました大館駅から弘前駅までのものと同じ近距離用の券で、当時の110円区間は営業キロ11~15kmの区間帯になります。恐らく、この距離帯にある急行停車駅が営業キロ14.2kmの羽後本荘駅と11.3kmの象潟駅が該当し、どちらの着駅に対しても発売できるように金額式券の様式が採用されたものと思われます。この券が発売された当時、国鉄の急行料金に50kmまでの区間がありませんでしたので、大館の券と同様に100kmまでの区間が適用され、近距離であるがため、運賃の110円よりも急行料金400円と高くなってしまっています。
また、乗車券が発売当日限り有効の通用期間が1日間であるのに対し、急行券は1回限り2日間有効の通用期間が2日間となっており、発行日の翌日に未使用である場合、乗車券は無効であっても急行券だけは使用できることになります。
列車が頻繁に運転されている首都圏ではこのような近距離区間に優等列車を利用するという選択肢はさほど多くはないと思いますが、運転本数の少ない区間では、各駅停車を待つ時間がかなり長いため、「しかたなく」優等列車を利用しなければならない機会が少なくはないと思います。そのため、このような近距離の区間でも急行列車を利用する需要が多く、乗車券と急行券を発券する手間を合理化し、近距離用の連綴券が設備されていったのでしょう。
裏面です。急行券部分は券番のみですが、乗車券部分については券番の他に「仁賀保から110円」の表記と発行駅名が記載されています。これは、新潟印刷場の金額式券がこのような様式になっていたことに拠るものと思われます。
参考までに、発駅はご紹介の券の着駅である羽後本荘駅のものになりますが、当時の新潟印刷場で調製された金額式券を御紹介いたしましょう。
同印刷場の金額式券は発行駅名が裏面に印刷され、裏面には発行駅名のほか、発駅からの金額区間についての記載があり、恐らくこの様式に倣ったものと思われます。
しかしながら、当時はワンマン運転や乗車券を料金機に投入するようなことは無かったのに、なぜ裏面にまで金額表示をしたのか、理由は不明です。