京浜急行電鉄 硬券発売終了 ~その6~

京浜急行電鉄の乗車券の話題の最終回です。もう少しお付き合いください。



同社の昭和50~60年代の乗車券は関東の大手私鉄乗車券としては、金額式を採用せずに着駅の書かれたものが使用されており稀少性がありましたが、平成になってからは金額式券となってこの5月まで何とか持ち堪えてきたものの、とうとう廃止されてしまいました。



しかし、昭和40年代のものを見ますと、かつては金額式券が使用されていた時代があったようです。



   



昭和48年12月に品川駅で発行された、30円区間ゆき乗車券です。
この当時の金額式券は大人・小児用の様式もあったようで、小児断線がついています。小児断線があるために券面が大人専用券と比べると狭くなっていますが、たとえ狭くとも同社硬券の特徴である「ゆき」の文字が印刷されています。



以前、相互式券を御紹介いたしました際に図示させていただきました泉岳寺駅の券とほぼ同時期のものであり、これらを照らし合わせて考えて見ますと、やはり同区間の運賃が打切り計算で計上されていたことが窺われます。



    (泉岳寺駅発行の相互式券)



次に御紹介いたしますのは、まだ等級制のあったころの昭和41年4月に京浜川崎駅(現・京急川崎駅)で発行された、20円区間ゆき乗車券です。



   



発駅の活字大きく、「2等」の文字が入っていることと「通用発売当日限り」となっている点が異なりますが、末期の金額式券と様式的に大変似ています。



このように見て参りますと、同社の硬券乗車券はまだまだ奥が深そうです。

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京浜急行電鉄 硬券発売終了 ~その5~

前回エントリーにおきまして京浜急行電鉄の矢印式と相互式乗車券を御紹介いたしましたが、途中駅においては両矢印式の券が使用されており、同社の硬券乗車券の全盛の時期は、大半がこの様式であったと思われます。



   



品川駅で発行された、山口証券印刷調製と思われる両矢印式券です。
同駅は途中駅ながら京急本線の起点駅という変則的な扱いとなっており、矢印式や相互式券のほか、都営浅草線との接続駅である泉岳寺駅も同社路線の駅であるため、最短区間の乗車券のみは両矢印式券となっています。



   



横浜駅で発行された券です。
これは井口印刷調製と思われるもので、上の品川駅のものと活字の字体が異なっています。この券の場合、着駅が品川方面は泉岳寺1つですが、反対方面は安針塚駅と逗子海岸(現・新逗子)の2駅となっており、矢印が着駅分の2つとなっています。



   



京急川崎駅で発行された両矢印式券です。
本来、矢印は着駅の数分だけだけですが、この券は何らかのミスで着駅2つに対し、矢印が6つもついてしまっています。



   


   



次は小児用券です。
京浜川崎駅(現・京急川崎駅)のものが山口証券印刷調製のもので、京浜富岡駅(現・京急富岡駅)のものが井口印刷調製のものと思われます。


様式は同じですが、印刷場の違いにより、活字や影文字の字体に違いが見受けられます。

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京浜急行電鉄 硬券発売終了 ~その4~

いままで3回に亘って京浜急行電鉄末期の硬券を御紹介致して参りましたが、昭和50年代後半から60年代にかけての乗車券には特徴があり、関東の大手私鉄としては珍しく、自社線内完結の金額式の硬券というものは存在せず、必ず着駅の表示された様式のものとなっていた時代がありました。



では、品川駅を含む、発駅から双方向に着駅が存在しない起終点駅や、双方向に着駅がない区間に見られた、矢印にて着駅が表示されている「矢印式」の券を見て見ましょう。




   



羽田空港駅(一代目)で発行された、糀谷駅ゆきの乗車券です。
羽田空港駅は空港線の終着駅でしたが、現在の羽田国内線ターミナル駅となっている羽田空港駅とは違い、現在の天空橋駅の付近にありました。



このように双方向に着駅が無い場合、矢印式が多用されていました。



   



品川駅で発行された、鶴見市場・羽田空港(現・天空橋)・東門前ゆきの乗車券です。
路線が途中で分岐しているために着駅が複数方向に存在する場合、最遠区間の着駅が並んで記載されておりました。


なお、同社本線(京急本線)は泉岳寺駅~浦賀駅間でありますが、品川駅~泉岳寺駅間は本線上にあるものの支線扱いとされており、品川駅が起点となっています。



   



同じ品川駅発行の金沢文庫ゆきの乗車券です。
この券は矢印が「」のようになっており、一種の相互式のような券です。



   



この様式は、空港線の小島新田駅にも見られました。



このように、同線では矢印式と相互式が使用されておりますが、果たして、これらがどのように使い分けられていたのか、これからの研究課題です。



   



最後に、昭和47年に泉岳寺駅で発行された相互式券です。
同駅は京急本線の駅ではありますが、駅務の一切は東京都交通局に委託されており、この券は東京都交通局窓口で発行されています。


山口証券印刷調製と思われる券ですが、これは矢印が組み合わさった「」の様式ではなく、きちんとした相互式券となっています。


この券には少々疑問がありまして、当時、泉岳寺駅からの初乗り区間は南馬場駅(現・北馬場駅と統合されて新馬場駅となっています)までとと思われますが、この券は南馬場までとはせずに敢えて品川駅で打ち切られています。本線と支線の関係で収入管理が区別されていたのでしょうか?

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京浜急行電鉄 硬券発売終了 ~その3~

引き続き、京浜急行電鉄硬券の話題です。



   



硬券末期に神奈川新町駅で発行された、大人・小児用入場券です。乗車券同様、山口証券印刷調製と思われるもので、B型無地紋となっています。


同社の末期の入場券には大人専用券は存在せず、大人・小児用となっており、小児断線がついておりました。



   



昭和62年に京浜川崎(現・京急川崎)駅で発行されたものです。神奈川新町のものとは違い、この当時のものには小児断片に綴じ穴が開けられておりましたが、末期のものには綴じ穴はありません。
理由は定かではありませんが、末期には記念要素での購入が主で実用としての需要は殆ど無く、また、小児用の入場券も存在しておりましたから、わざわざコストをかけて綴じ穴を開ける必要も無かったため、省略されたのかも知れません。



   



こちらは神奈川駅で発行された、井口印刷調製と思われる様式です。こちらも横浜以南の駅でよく見られましたが、神奈川駅のように横浜以北の駅にも設備されている例があったようです。ちなみに、同日に購入した小児用入場券は山口証券印刷調製のものでした。


井口印刷調製のものは駅名のフォントが小さく、小児断線の綴じ穴が無いのが特徴でした。また、ヘッドにある「(京浜急行電鉄)」の社名の特活が山口証券印刷のものと雰囲気が異なり、小児断片のところにある「小」の活字が太い毛書体のようなフォントに、井口印刷の特徴がよく出ています。



   



こちらは上大岡駅で発行された井口印刷調製のものですが、ヘッドの社名が特活ではなく、活字製版されています。



   



次は、天空橋駅で発行された、山口証券印刷調製と思われる小児専用券です。残念ながら井口印刷調製の小児専用券が手元に無いのですが、各駅に小児専用の入場券も設備されていました。



    



こちらは品川駅で発行された100円(小児50円)時代の小児専用券です。大人・小児用の券の料金を50円にした上で「小」の影文字を入れてしまったミス券となっています。
よほど気づかれなかったのか、当時幾つかの駅で同時多発ゲリラ的に同じようなミス券が設備されてしまっており、さほど珍しくはなくなってしまった感のあるものでした。

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京浜急行電鉄 硬券発売終了 ~その2~

前回に引き続き、京浜急行電鉄の硬券乗車券の話題です。今回は末期に発売されていた、小児用の乗車券です。


   


品川駅で発行された、130円区間ゆき小児用乗車券です。
一般的な様式のもので、大人用券同様山口証券印刷調製と思われます。

同社の小児用乗車券は小児専用券であっても130円区間であることを前面に表記し、「小児70円」と追記されています。


   


こちらは平和島駅発行のものです。
様式的には品川駅のものと同じですが、発駅の平和島の「平」の活字がなぜか旧字体が使用されています。ちなみに、当時発売されていた大人専用券は新字体が使用されていました。

 

小児用乗車券の中には、「掟破り」も存在しました。


   


県立大学駅発行のものです。
通常は「130円区間ゆき 小児70円」と表記されるのが一般的な同社の小児用乗車券ですが、県立大学・横浜(北口)・横須賀中央の各駅にあったものは、70円区間ゆきという表記になっており、小児運賃の記載のないものになっていました。

これらがなぜそのような表記となっていたのか理由は不明ですが、70円区間では現場に混乱を来たす恐れが考えられ、わざわざ途中で様式を変更したとは考えにくく、これらは印刷ミスにより生まれた可能性があります。


   


最後に御紹介いたしますのは、大人用券同様、横浜以南の駅で見られました、井口印刷調製と思われる様式の券です。

京急富岡駅で発行された小児用券で、大人用券同様、「から」と「発売当日限り有効」「下車前途無効」は活字製版となっており、特活は使用されておりませんでした。
また、「小」の影文字の字体が丸っこいものとなっている点と、小児運賃の表記のところに、「円」の文字がないのが特徴です。

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