京のおさんぽ

京の宿、石長松菊園・お宿いしちょうに働く個性豊かなスタッフが、四季おりおりに京の街を歩いて綴る徒然草。

誰も知らない知られちゃいけない

2012-02-28 | インポート

 3月1日は芥川龍之介の誕生日である。

 芥川龍之介は、まあ、その小説を読んだことがない人はそうはいないだろう、という大文豪である。

 その芥川龍之介が生まれたのが、1892年の3月1日。

 そう、ちょうど120年前のことである。

 辰年辰の月辰の日辰の刻に生まれたから龍之介と名づけられたと言われる。

 真実は不明。

 120年、十二支が丁度十度巡った今年も当然辰年である。

 

 さて、芥川龍之介といえば、なんといっても『羅生門』である。

 むろん、他にも多数の代表作がある。

 が、ここは話の流れから、そう断定しよう。

 黒澤明の映画にもなった。

 もっとも、黒澤の映画の原作といえるのは、どちらかといえば、同じ芥川の『藪の中』である。

 それはともかく小説『羅生門』である。

 芥川は羅「生」門としたが、舞台となっているのは平安京の羅「城」門である。

 羅城門は、平安京の南の玄関である。

 内裏の南面中央からまっすぐ南へと伸びる朱雀大路の南端に、それはあった。

 都の正門として威容を誇ったが、十世紀後半に倒壊後、再建されなかった。

 荒廃した羅城門の様子は『今昔物語集』などに描かれ、それを元に芥川は『羅生門』を書いた。

  

 もちろん、今羅城門はなく、公園に跡を示す石碑が建っているばかりである。

 周囲はごく普通の住宅街で、当時を偲ぶよすがもない。

 奈良のように、再現して立てるようなスペースなどありゃしない。

 まあ、なんとなく「ああ、ここがそうなのかぁ」と、イメージしてみよう。

 それはそれで、一つの楽しみ方だろう。 

 ところで、平安京遷都と同時に、羅城門を挟んで東西に二つのお寺が建てられた。

 東寺と西寺である。

 東寺は今も残り、世界遺産に登録され、まあ、言わずもがなの名刹となっている。

 一方の西寺は、悲しいかな、朱雀大路の西側の荒廃とともに、寺もなくなっていった。

 今はその跡を示す碑や、礎石が残っているだけである。

 どういうわけか、ここも公園になっている。

 興味がある方は一度お訪ねになってはいかがであろうか。

”あいらんど”