北海道新聞 02/23 05:00
【新ひだか】樹齢約250年のカツラの大木が「ミシミシ」と音を立て、ゆっくりと倒れた―。千歳アイヌ協会は20、21の両日、アイヌ民族伝統の丸木舟「チプ」を約30年ぶりに造るため、日高管内新ひだか町静内の国有林で原木を調達した。20日の伐採作業に同行した。
同協会は2隻の丸木舟を持つが、老朽化のため3隻を新造することにした。伐採した3本の原木から切り出した9メートルの1本と5・5メートルの2本を4月以降、千歳市内で加工。8月下旬に完成させ、9月のサケを迎える儀式「アシリチェプノミ」で使う予定だ。
20日の伐採作業には、同協会や日高南部森林管理署、造林業者などから参加。道道静内中札内線の双川橋付近から林道に入ると急傾斜の渓谷が広がり、日高山脈の険しさを感じさせられた。目指す3本のうち、最も古いカツラは直径約1メートル、高さ約25メートル。静内川支流のシュンベツ川沿いを北に約14キロ進んだ林道と川の間の斜面に立っていた。
千歳アイヌ協会の中村吉雄会長(71)と同協会顧問で千歳アイヌ文化伝承保存会会長の石辺勝行さん(76)、同協会会員の西村晃太さん(26)らが立ち木の神にイナウ(木幣)の一種「チェホロカケプイナウ」を立てて祈りをささげた後、作業員がチェーンソーを使って20分ほどで切り倒した。
「ピリカ、ピリカ」。石辺さんは倒れた木を見て、「素晴らしい」「豊かな」という意味のアイヌ語を繰り返した。「大木をいただけてありがたい。チプ製作には多くの人に関わってもらい、特に若い人たちに造り方を覚えてもらいたい」
西村さんは「立派なチプを完成させて、アイヌ文化を知ってもらうために活用したい」と力を込めた。
カツラはアイヌ施策推進法に基づいて購入し、国のアイヌ施策推進交付金を活用した。(大谷佳奈)
※「チプ」の「プ」は小さい字
※「アシリチェプノミ」の「リ」と「プ」は小さい字
※「ピリカ」の「リ」は小さい字
※「チェホロカケプイナウ」の「プ」は小さい字
https://www.hokkaido-np.co.jp/article/514247
【新ひだか】樹齢約250年のカツラの大木が「ミシミシ」と音を立て、ゆっくりと倒れた―。千歳アイヌ協会は20、21の両日、アイヌ民族伝統の丸木舟「チプ」を約30年ぶりに造るため、日高管内新ひだか町静内の国有林で原木を調達した。20日の伐採作業に同行した。
同協会は2隻の丸木舟を持つが、老朽化のため3隻を新造することにした。伐採した3本の原木から切り出した9メートルの1本と5・5メートルの2本を4月以降、千歳市内で加工。8月下旬に完成させ、9月のサケを迎える儀式「アシリチェプノミ」で使う予定だ。
20日の伐採作業には、同協会や日高南部森林管理署、造林業者などから参加。道道静内中札内線の双川橋付近から林道に入ると急傾斜の渓谷が広がり、日高山脈の険しさを感じさせられた。目指す3本のうち、最も古いカツラは直径約1メートル、高さ約25メートル。静内川支流のシュンベツ川沿いを北に約14キロ進んだ林道と川の間の斜面に立っていた。
千歳アイヌ協会の中村吉雄会長(71)と同協会顧問で千歳アイヌ文化伝承保存会会長の石辺勝行さん(76)、同協会会員の西村晃太さん(26)らが立ち木の神にイナウ(木幣)の一種「チェホロカケプイナウ」を立てて祈りをささげた後、作業員がチェーンソーを使って20分ほどで切り倒した。
「ピリカ、ピリカ」。石辺さんは倒れた木を見て、「素晴らしい」「豊かな」という意味のアイヌ語を繰り返した。「大木をいただけてありがたい。チプ製作には多くの人に関わってもらい、特に若い人たちに造り方を覚えてもらいたい」
西村さんは「立派なチプを完成させて、アイヌ文化を知ってもらうために活用したい」と力を込めた。
カツラはアイヌ施策推進法に基づいて購入し、国のアイヌ施策推進交付金を活用した。(大谷佳奈)
※「チプ」の「プ」は小さい字
※「アシリチェプノミ」の「リ」と「プ」は小さい字
※「ピリカ」の「リ」は小さい字
※「チェホロカケプイナウ」の「プ」は小さい字
https://www.hokkaido-np.co.jp/article/514247