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イルカの赤ちゃん、愛称「レンカ」に おたる水族館 道内初の繁殖で誕生

2024-11-03 | アイヌ民族関連

栗栖維意 会員限定記事

北海道新聞2024年11月2日 19:11(11月2日 20:23更新)

愛称が「レンカ」に決まったバンドウイルカの赤ちゃん(おたる水族館提供)

 【小樽】おたる水族館(小樽市祝津3)は2日、道内水族館で初めて繁殖に成功し、8月18日に同館で生まれたバンドウイルカの赤ちゃん(雌)の愛称を「レンカ」に決めたと発表した。アイヌ語で「希望」などの意味。通常営業期間中の24日まで終日観覧できる。

 同館は、職員が考案した五つの愛称を候補として10月1~27日、来館者による「現地投票」と、「インターネット投票」を呼びかけた。投票総数は6532票で、最多のレンカは1802票を集めた。

 ・・・・・・

https://www.hokkaido-np.co.jp/article/1083492/


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『山女』福永壮志監督がアイヌの家族に密着 ドキュメンタリー映画『アイヌプリ』予告編

2024-11-03 | アイヌ民族関連

リアルサウンド 11/2(土) 13:02配信

『アイヌプリ』ポスター ©2024 Takeshi Fukunaga/AINU PURI Production Committee

 12月14日よりユーロスペースほかにて全国順次公開されるドキュメンタリー映画『アイヌプリ』のポスタービジュアルと予告編が公開された。

【写真】『アイヌプリ』場面写真

 本作は、『山女』でTAMA映画祭最優秀新進監督賞を受賞し、『SHOGUN 将軍』(ディズニープラス)でも監督を務めた福永壮志監督によるドキュメンタリー映画。人気マンガの実写化などで関心が高まるアイヌ文化を継承し、日常の中で“アイヌプリ”(アイヌ式)を実践する人々を追った。

 2020年トライベッカ映画祭の審査員特別賞を受賞した『アイヌモシㇼ』では、北海道・阿寒湖のアイヌコタンで暮らす少年の成長を通して、現代のアイヌ民族のリアルな姿を描いた福永監督。本作では、北海道・白糠町で生きるアイヌの家族に密着し、自らのルーツを大事にしながら今を生きる彼らを映し出していく。すでに本作は第29回釜山国際映画祭、そして現在開催中の第37回東京国際映画祭でも上映された。

 北海道・白糠町で生きる天内重樹(シゲ)。現代人としての日々を過ごしながらも、彼のやり方でアイヌプリ(アイヌ式)を実践し、祖先から続くマレㇷ゚漁(鮭漁)の技法や文化を息子の基樹に伝えている。シゲとその家族の日常を追い、自らのルーツを大事にしながら今を生きる彼らの姿に迫る。

 公開されたポスタービジュアルには、「今を生きる、ある親子の物語」という言葉とともに、白糠町で生きる天内親子が並んで川に向かい、マレㇷ゚漁を実践する様子が捉えられている。

 あわせて公開された予告編では、マレㇷ゚漁を息子に教える父が「アイヌの考え方で言うと、自然界のいろんなものにカムイ(神様)が宿っていて……」と語り、実際に獲った魚に「ごめんねではなく、ありがとう」と息子に伝えるシーンも。また、笑顔あふれる日々の暮らしや、生き生きとした等身大の家族、仲間たちの姿が北海道の荘厳な大地とともに映し出されている。さらに、本作で映画音楽を手がけたアイヌの伝統楽器・トンコリ演奏の第一人者でもあるOKIの音楽の一部を聴くことができる。

https://news.yahoo.co.jp/articles/1555b7bf2663e7e120e9e97b9c249cb9a5eb49ed


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『ゴールデンカムイ』アシㇼパを徹底考察!新しい時代を生きる彼女に望みたいこと

2024-11-03 | アイヌ民族関連

武将ジャパン 2024/11/02

原作漫画に始まりアニメから実写版映画、そしてドラマへ。

今なお数多のファンを喜ばせている『ゴールデンカムイ』ですが、その中で杉元佐一と並んで最も重要なキャラクターといえばアシㇼパでしょう。

実写版では山田杏奈さんが演じるアイヌの少女。

改めてこの魅力的なヒロインについて考察すると同時に、彼女にまつわるモヤモヤの正体を考えてみたいと思います。

【TOP画像】ゴールデンカムイ22巻(→amazon

ヒグマを倒す小柄なアイヌの少女

『ゴールデンカムイ』は日露戦争から戻った和人の元軍人である杉元佐一と、アシㇼパが出会うところから話が勢いよく進み始めます。

アシㇼパの登場シーンは、これ以上のインパクトはないと思えるほど鮮やかさ。

凶暴なヒグマ相手に戦う杉元の前にあらわれると冷静に矢を射かけ、二人で協力してヒグマを倒すと、アシㇼパは「シサム(和人)にしてはなかなかやる」と杉元を認めるのです。

杉元から刺青人皮について聞いたアシㇼパは、自分のアチャ(父)も、刺青人皮をめぐる争いの中で命を落としたと語ります。

二人は手を組み、刺青人皮を集め、金塊を見つけることを契約し、冒険が始まるのです。

この場面は映像化されるとアクションもキレキレ! ヒグマも迫力満点です。

しかし、その動きだけでなく、アシㇼパというヒロインがいかに斬新な登場をしているのか、改めて考えてみたいところです。

ジェンダー規範を超えるヒロイン

アシㇼパと、他のアイヌ女性を比較してみましょう。

頭部につけたアシㇼパのマタンプㇱには刺繍が入っています。

しかし、女性は入っておりません。刺繍入りのマタンプㇱを女性が日常的に着用するのは、明治時代後期になってからのことです。

アシㇼパの口の周りには、他のアイヌ女性と異なり、シヌイェ(刺青)が施されておりません。

本人の口から新しい女だから入れないと語られています。明治政府が禁止した風習であるからには、アシㇼパは素直に従ったようにも思えます。

しかし、シヌイェをしていないと結婚できないとされていたことをふまえると、ジェンダー規範への反抗にも思えます。

そしてアシㇼパを語る上でなんといっても欠かせないのが、弓矢です。

アイヌでは男性が狩猟を行うとされています。女性でありながら弓矢を装備し、ヒグマを倒すアシㇼパは個性的で、やはりジェンダー規範を破っていると思えます。

これはアイヌだけのことでもありません。近年の調査ではハンターの比率における男女比は、そこまで大きく差がないと判明してきました。

時代が下り、ジェンダー規範を当てはめた結果、歴史があやまって認識されていたのです。

「男が狩猟、女は採集」という古い規範踏み越えつつ、アシㇼパは物語に登場したのです。

◆9000年前に女性ハンター、「男は狩り、女は採集」覆す発見(→link

物語が進んでいくと、アシㇼパがこうなったのは、父の教育方針ゆえだったと明かされます。そこで杉元はこう嘆くのです。

アシㇼパはアイヌのために戦うジャンヌ・ダルクなのか!ーーと。

実は初登場時からアシㇼパは、ただの少女にとどまらぬ要素がいくつもありました。アイヌ文化に馴染まなければこの謎は解きにくく、杉元同様、多くの読者も罠にかかる仕掛けとも言えます。

アシㇼパさんと杉元が「ヒンナヒンナ」をする旅路に溢れる誠意

『ゴールデンカムイ』の展開は、アシㇼパの扱いによって大きく区切ることができます。

前半部は、杉元とアシㇼパ、それに白石を加えたトリオが基本となります。

刺青人皮争奪がプロットの根幹としてあるものの、印象的であるのは北海道を旅して周り、そこでアイヌ独自のご当地グルメを楽しむ姿です。

殺戮に手を染めてきた凶悪犯罪者と命のやりとりをしつつも、どこま牧歌的に思える旅路が続いてゆきます。アシㇼパが見せてくるアイヌの知恵、特に食に関するものは本作を決定づけるものといえます。

食文化ひとつとっても、アイヌと和人は前提からして大きく異なります。

和人は、仏教の影響が食生活に大きな影響をあたえています。人間にとって益獣と見做された動物は、命を奪ってはならないとして、口にしなくなりました。

農耕に用いる牛馬。朝の訪れを告げる鶏がこれに該当します。

アイヌの場合、むしろカムイとして矢にあたりに来ると考えられる。

動物を殺して食べることを残酷だとみなすわけではない。むしろ欠かせぬ営みでした。

こうした考え方を、和人は真摯に考えてきたかどうか。

アイヌのヒロイン像として、アシㇼパとナコルルを比較してみましょう。

1990年代に大ヒットした格闘ゲーム『サムライスピリッツ』シリーズに登場するキャラクターです。

「大自然のおしおきよ」

そんな決め台詞があるナコルル。彼女のいるステージの背景には、ヒグマを含めた野生動物がいます。

アイヌはヒグマの幼獣は飼育するものの、成獣をそうすることはありません。あの描き方は、動物と触れ合い心を通い合わせるディズニープリンセスのような像をナコルルに反映しているように思えました。

現代の自然保護や動物愛護活動と混同しているような造型に見えたのです。

一方でアシㇼパは、ヒグマに矢を放つ。野生動物を撲殺し食べる。一線を画し、より正確に描かれたアイヌ像といえました。

動物の肉を、アシㇼパと杉元が変顔をしながら食べる。「ヒンナヒンナ」というアシㇼパが食事時に発するセリフは、この作品の象徴となりました。

そのせいか、読者の間では誤解が広まってしまっています。「ヒンナヒンナ」は食事の際だけにいう言い回しでもありません。

映画版では誤解を招かないように、アシㇼパの家独自の風習と説明がなされておりました。

そんな幸せで牧歌的な世界観は、アシㇼパが彼女の父であるアチャと再会する網走監獄編で転換点を迎えます。

樺太で現実と向き合い、覚醒を促される

アチャ(父)は死んだものとアシㇼパは理解していました。

そのアチャことウイルクが生存し、顔の皮を剥ぎ、網走監獄で生存していると確認されるところが、作品の重要な折り返し地点です。

このとき、ウイルクの同志であったキロランケの策略により、彼は尾形の狙撃により殺害されます。その場にいた杉元も撃たれ、アシㇼパはキロランケによって、樺太へと連れ去られました。

コンビであったアシㇼパと杉元のしばしの別れが訪れます。杉元は先遣隊を率い、樺太でアシㇼパ奪還に挑むことになるのです。

この樺太編では、アシㇼパのルーツが明かされます。

アシㇼパは、父であるウイルクと同じ青い瞳をしています。

ウイルクの父はポーランド人で、樺太に囚人としていたころ、樺太アイヌ女性との間に子が生まれました。それがウイルクのルーツでした。

アシㇼパというヒロインは、歴史の中で生まれた存在であることが樺太編でわかります。まさにこの時代、この地理の中で生まれた存在であると。

日本の近代史は、イギリスとロシアの展開する【グレート・ゲーム】に巻き込まれながら展開してゆきました。

アジア進出をめぐるこの二大国は、多くの国と地域を巻き込みつつ、覇権闘争を繰り広げ、ついには極東へ到達します。この大国の争いはチェスにたとえられ、【グレート・ゲーム】と呼ばれました。

徳川幕府はこのことを認識しており、幕閣はイギリスか、ロシアか、どちらかを選ぶことは危険だと認識していました。ヒグマと獅子はどちらがマシか、そう問いかけるほどナンセンスだとわかっていたのです。

そこで、消去法でフランスに接近することとなります。

一方で幕閣官僚ほど老成していない志士たちは、倒幕というイギリスの投げた餌に食いつきます。

イギリス商人は南北戦争終結で余った武器を倒幕を狙う勢力に売りつけ、イギリス留学させ、自国の戦略へ取り込みをはかる。長州藩の維新志士たちは松下村塾出身であることを誇りとしてきました。

しかし、実際には吉田松陰の教えを受けたあと、イギリスで学識を上書きされていることも確かなのです。

植民地支配のノウハウとして、支配地の若きエリートを、支配する側の国に留学させることがあげられます。

生麦事件】のあと、イギリスは江戸総攻撃を計画したことすらあります。

しかし、そうするまでもない。自国の息のかかったテロリストを扇動し、クーデターを起こす。こうして傀儡政権を打ち立てた方が安く済む。その結論に至ったのです。

かくしてイギリスは極東の日本を取り込むことに成功。

明治維新のあと、政府はパークスの顔色をうかがうような状況となりました。まんまとロシア牽制に成功したのです。

幕末明治の日英関係が思てたんと違う!新政府はイギリスの言いなり?

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愛弟子として日本を握ったイギリスとしては、ロシアを刺激しないようにしたい。

そうなったとき、ある島が紛争の種として浮上しました。

樺太です。

田沼意次が政治を担った【田沼時代】、幕府は北方にも目線を注ぎました。松前藩とアイヌを経由した貿易に力を入れるだけでなく、対ロシアを見据え、蝦夷地と樺太警備に注力したのです。

そのあと田沼意次の失脚、ナポレオン戦争によりロシアの南下がおさまったことなどから、こうした政策は棚上げとなります。

それでも樺太は日本領だという認識は幕府にはあり、明治政府も引き継ぎます。

ところがそこへイギリスが割り込み、ロシアを刺激しないためにもロシア領にするよう迫ります。

近代国家成立とともに、北の島には国境線が引かれてゆきました。しかし、島に暮らす人々にとって、国家同士のゲームなど何の関係もありません。

理不尽な政治により迫害され、消されていってしまう。そんなウイルクやキロランケが抱いた焦燥感は、樺太という島に上陸することで見えてきます。

そんな大国間の政治的な駆け引きがあればこそ、青い目を持つウイルクは生まれました。彼の運命は、【グレート・ゲーム】の中で生まれていたのです。

樺太編あたりから、困惑する読者もいたものです。

「北海道でヒンナヒンナしている姿が楽しかったのになぁ」

そんなぼやきもありました。

確かに樺太編以降、ギャグや軽いノリは健在であるものの、テーマがあまりに重くなっていったことは確かです。

鶴見は父への憎悪を娘にぶつけてくる

樺太編のラストで、アシㇼパは杉元と再会を果たします。

この二人に白石を加えた三人組は再起動。そしてアシㇼパと杉元二度目の契約を結び、金塊争奪戦へ向かってゆくのでした。

杉元と再会したものの、アシㇼパは揺れ動いているようにも思えます。

樺太編ラストで命を落としたキロランケは、アイヌのために戦うようにアシㇼパを導いてきました。

父であるウイルクも、アシㇼパをそう育て上げてきたことが樺太編の回想からわかります。そのことを彼女は認識したのです。

樺太編では、ウイルクと鶴見の因縁も明かされてゆきました。

ウイルクは、諜報員としてロシアに潜入していた鶴見と出会っていました。そして鶴見の妻子をあやまって殺していたのです。

鶴見の狙いとは、金塊ではなく妻子の復讐ではないか? そう示されてゆきます。

樺太編のあと、アシㇼパは、北海道アイヌの少女としてだけではなく、親世代に翻弄され、鶴見に怒りをぶつけられるて姿が見えてきます。

金塊争奪戦の後半は、命を落とす人物も増えてゆき、シリアスな展開へ向かってゆきます。

鶴見はアシㇼパに対し、父ウイルクの凶行を暴露します。アイヌたちを殺戮し、金塊を埋めた怪物こそがお前の父親なのだと、ウイルクから剥ぎ取った顔の皮を被った鶴見はアシㇼパにつきつけるのでした。

彼女が未来を選ぶとき

ゴールデンカムイ』の登場人物の中でも、アシㇼパは若い部類に入ります。

杉元はじめ、日露戦争経験者が己の過去と向き合うことが多い中で、彼女は未来をどう選ぶのか、そのことが突き付けられていると言えます。

アシㇼパがどの未来を選ぶのか?

ウィルクやキロランケが望んだように、アイヌの未来のために闘争を選ぶのか?

ウィルクとキロランケの同志であったソフィアは、死の間際にアシㇼパが自由に選ぶようにと託しています。

革命をめざした闘士として生きてきたソフィアは、自分の選んだ道では掴み取れなかったものが何か、わかっていたのかもしれません。

『ゴールデンカムイ』の最終決戦は、争奪戦参加者たちが金塊でなく、自分の欲望と向き合うことになります。

尾形は、自ら手にかけた,最悪の弟である勇作の亡霊と向き合う。

土方は、近藤勇ら新選組の幻の中へと向かってゆく。

鶴見は妻子の死。

こうした過去と向き合う人物が退場を迎えるのに対し、未来を掴もうとする人物には道が拓けています。

鯉登は、月島を鶴見から奪い返すことに全力を注ぐ。

そしてアシㇼパと杉元は、互いがいかに大事か確認しあい、ともに歩む覚悟を確認する。

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そうして大団円を迎え、白石は別の道を歩むものの、アシㇼパと杉元は幸せな未来を迎えたように思えます。

北海道で暮らす二人。きっと「ヒンナヒンナ」と言い合い、幸せな生活を送っているのだろうと思わせるところで、この大長編は終わります。

ただ、これでスッキリしないこともまた、確かなのです。

『ゴールデンカムイ』の最終盤から結末にかけての展開は賛否両論でした。

モヤモヤする。すっきりしない。竜頭蛇尾。そんな不満も聞こえてきましたし、私も実は首を捻った読者の一人です。

実はあの結末で、触れられていない人物と地域があります。

樺太です。

樺太はウイルクとキロランケの懸念が的中してしまいます。樺太に残ったチカパシとエノノカの運命は悲痛なものがあります。

アシㇼパはあくまで北海道アイヌであることを選び取り、その中のハッピーエンドに歩んで行ったように思える。ある意味、父・ウイルクから受け継いだ樺太は一切引き継がなかったともみなせなくもないのです。

そんなすっきりしなかった読者であることをふまえ、アシㇼパというヒロインの意味を再度考えたいのです。

それは大団円なのだろうか?

背が伸びたアシㇼパと、杉元が笑いながら北海道の森の中を歩いてゆく――。

金塊争奪戦の最中に手にした北海道の土地権利書を、土方歳三の戦友である榎本武揚に託したことで、国立公園として保全される土地は守り抜くことができた。

受け継がれたアイヌの伝統や工芸品も、現在まで残されている。これもアシㇼパや杉元、アイヌと和民族が手に手をとり合って協力した結果である。そう導く結末を迎えます。

これまでアイヌを大きく扱う作品となれば、差別や「滅びゆく存在」という、和人の偏見ありきの暗い描写も多いものでした。

そこから抜け出す意味では、あの明るい結末が挑戦的で斬新で意義があることは理解できます。

ただ、これには無理があります。

まず、榎本武揚は信頼できるのか?

土方歳三と箱館戦争で戦い、かつ明治政府に権限を持つ人といえば、消去法で榎本になるとは思います。しかし、彼が土方との関係をそこまで大切にし、アイヌの権利を守るために動くとは思えないのが厳しいところです。

榎本にとって、明治政府において懇意にしていたのは薩摩閥の黒田清隆です。榎本の器量を惜しみ、坊主頭になってまで除名嘆願をしたのが黒田でした。

この友愛を美談として片付けてよいものかどうか。黒田の対アイヌへの態度は、日本史に残る政治家の中でも最低に入ります。移住がスムーズでないからと、武力まで用いてアイヌを追い立てたのが黒田です。

その黒田の右腕であった榎本に、そんな大事な権利書を託してよいのでしょうか?

ここで榎本は信頼できる政治家として、伊藤博文と西園寺公望の名をあげます。この二人も、アイヌの未来を託せるかどうか、難しいところではあります。

そもそも明治政府は信頼できるのか?

江戸時代から、和人はアイヌとの契約を守らないものとされてきました。アイヌは字すら書けないと侮り、誤魔化す和人は多いものでした。

そのあとの明治政府も、アイヌとの約束を反故にしています。そういう政府が秘密裏に出てきた権利書を真面目に扱うとは思えないのです。

結末で権利書が起こした結果として、国立公園や国定公園の保護もあげられます。

アイヌ文化が和人とアイヌの協力で守られたともされます。

ただ、文化保全がアイヌをとりまく問題のすべてかと言われると、決してそうではありません。

ウィルクやキロランケがこの結末を知って、果たして納得できるのかどうか。

一応、アシㇼパがアイヌの権利を守ったように導かれてはいるものの、どうにも苦しいものに思えます。

現在、インターネット上では連日アイヌへの差別投稿がみられます。そんな問題を扱うとき、枕詞のようにこう語られることが多いものです。

ウポポイや『ゴールデンカムイ』のヒットにより、アイヌ文化は身近になったものの……

◆アイヌの人々に対する偏見や差別をなくそう(→link

◆【第168回】アイヌ民族差別の背景には何がある?(→link

確かに『ゴールデンカムイ』によって、アイヌ文化が身近になったとは思います。

ただし、それがアイヌの権利向上や差別解消とつながるかというと、それはまた別の話です。

アイヌへの関心が高まると同時に、ヘイト言説も増しているのが現実社会です。

もしもアシㇼパや、ウイルクや、キロランケが現代にいて、スマートフォン越しにそんなヘイトを目にしたら、彼らはどう思い、行動するのでしょうか。

その姿や投稿を見て、杉元ら和人たち、そして私たちはどう思い、行動するのでしょうか。

漫画にそこまで期待してどうするのかと言われればそうです。ハッピーエンドを貫きたい作品としてはありなのだと思えます。

ただ、そこに2010年代から2020年代にかけて発表された作品としての限界点はどうしても感じてしまうのです。

アシㇼパは過去の作品と比較すれば、格段に進歩しています。

1990年代に一世を風靡した『サムライスピリッツ』シリーズのナコルルと比較すれば、考証が格段に進歩しています。

先住民キャラクターでいえば、ディズニー映画にもなった『ポカホンタス』ほどご都合主義ではありません。2020年代ともなれば、『ポカホンタス』の再現だけは、最低限回避すべき先住民描写の代表格といえます。

そうしたハードルはクリアしたキャラクターがアシㇼパであるといえます。マジョリティによって都合がよいだけの「マジカル・アイヌ」はもう古いのです。

『ゴールデンカムイ』そのものも、アシㇼパも、素晴らしい描き方だとは思います。

ただ、世界と原住民を取り巻く価値観が変わりゆく速度が、速まってきているとも思えるのです。

そのあたりの懸念を考えてみましょう。

『ゴールデンカムイ』は参考文献も多く、極めて真摯に取材を重ねており、考証は確かなものがあります。

ただ、関連作品のスタッフや商品化において、配慮が不足しているのではないかと思ることもしばしばあります。

アイヌ関連ではありませんが、第七師団をモチーフとしたアパレルグッズが販売中止となったことがあります。配慮不足でしょう。

ファンダムでは、アシㇼパの和名について議論が発生したこともありました。和名はあくまで和人の都合で強要されたものであり、それはアイデンティティの侵害であることは考えたいものです。

作品から何も学べていないのか。私がそう悲しくなってしまうのは、『ゴールデンカムイ』ファンがアイヌルーツの方を執拗に攻撃する様を見る時です。

作品への愛が暴走するにせよ、そのことは作品の意義を全く理解していないと示すことでもあります。白石が犬とひっかけてアシㇼパをからかった際、杉元がどうしたか思い出してください。

そして実写化において議論となったのが、アシㇼパはじめ、アイヌ役はアイヌルーツが演じるかどうかということでした。

これは役者の機会均等といった要素もあります。海外と日本の状況の違いもあります。

ただ、時代が変化しつつあることをふまえますと、ルーツは一致させたほうが作品としての寿命は長くなったのではないかと思えなくもありません。

アシㇼパは少女です。オーディションでルーツの一致する子役を選ぶこともできたのではないかと私は思います。

たとえばディズニー映画実写版『モアナと伝説の海』は、ルーツの一致する役者が選ばれています。

海外ほど日本ではこうしたルーツ一致を重視してこなかったものの、2024年朝の連続テレビ小説『虎に翼』で画期的な試みがありました。

朝鮮からの留学生には、韓国から日本にきた役者のハ・ヨンスさん。そして朝鮮人(当時の呼び方による)の兄弟役には、朝鮮学校卒業生である許秀哲さんと成田瑛基さんが起用されました。

2018年朝の連続テレビ小説『まんぷく』では、ヒロイン夫が台湾出身の華僑である設定が「普通の日本人が馴染めるように」という配慮のもとで改変されました。それから十年経たぬうちにここまで進歩したのです。

あのドラマについて、私は放送当時から差別的で話にならないと感じていました。

しかしその思いを吐露すると、かえってお堅い変人扱いされることもしばしばあり、うんざりさせられたものです。

それが2024年ともなれば、前述したように『虎に翼』は積極的に、日本にいた朝鮮人(当時の呼び方による)差別を描いているのですから、時代は変わるものなのです。

ルーツに配慮したた作品が増え、それに見る側も慣れてゆくと、ルーツが一致しないキャスティングは古く見えてしまうことになりかねません。

私自身、そうした経験はあります。

2016年公開の映画『ドクター・ストレンジ』を楽しく見ました。

しかし、今になってみると、原作でアジア人であったエンシェント・ワンを、なぜ白人のティルダ・スウィントンが演じたのだろうかと思ってしまい、見返す気には到底なれません。

理屈でなく、感情でもう、あえて見る必要もないリストに入れてしまう。これが価値観の進化なのかと我ながら驚いています。

ポリコレだのなんだの、反発する意見が多いことはわかります。

ただ、一人のファンとして、作品そのものの寿命を長くするためにも、現状にとどまらず、一歩先をゆく先進性を発揮していただきたいと思ってしまいます。

「新しい時代を生きる彼女」はこれからも続くと信じて

それを踏まえまして、もう一度、権利書を手にしたアシㇼパの選択を考えてみましょう。

ウィルクやキロランケは、アイヌの権利を守るためにはテロリズムや武装蜂起も辞さない思考のもとで戦い抜いていました。

アシㇼパはそれを踏襲せず、権利書を用いて政府といわば「水面下の取引」をして、カムイの住む土地を守ったという設定にされています。正面切って交渉していません。

正史としてアシㇼパの交渉を描けないフィクションとしては、そこが限界なのだろうとは思います。

しかし、結局アシㇼパは、否定したようでウィルクとキロランケの路線を取ったように思えます。

アジア・太平洋戦争後、新たなる憲法のもと、アイヌ女性であるアシㇼパも被選挙権を得ました。

ならば、彼女には政治家として、アイヌの権利闘争に立ち上がるという道はあります。

政治家とまではゆかずとも、実在する活動家のように、水面下ではなく表立って立ち上がることもできたはずです。

杉元はアシㇼパをジャンヌ・ダルクのようにしたくはないと語っています。アシㇼパにとって大事な杉元への配慮ゆえに立ち上がらず、北海道のコタンで静かに暮らしたという考えもあるでしょう。

しかし、こう考えてくると、何かモヤモヤしませんか?

当然のことながら、そんなアシㇼパは見たくないという反発は想像できます。

あるいは、いくらなんでも杉元にそこまで気遣うのだとすれば、あのいきいきとしたアシㇼパは台無しではないかと思うかもしれません。

そのモヤモヤの正体を、一人一人考えることが大事だと私は思うのです。

かわいらしい少女は受け入れる。でも、権利だなんだとわめく大人の女には嫌悪感が滲む。そう思うのだとすれば、それは差別ありきかもしれません。

声高に権利を訴える相手が苦手だという意識があるとすれば、そこにも何か偏見があるのかもしれない。

そもそも和人が、あるべきアイヌ像を規定するのは余計なお世話ですよね。

何度でも繰り返します。

『ゴールデンカムイ』も、アシㇼパも、素晴らしい。

しかし、未来には発表当時の限界があったとみなされることでしょう。

ラストで杉元と並んで歩く姿で終わるというのは、当時の限界がある。今読むと古さを感じる。そう評されるかと思います。

あるいは実写ドラマではラストが変わっているか。野田先生自身が続編を描くことだって考えられるのです。

それは悪いことだと私は思いません。

アイヌを取り巻く環境、和人の価値観が変われば、そうしたことは起こり得ます。

私は、良い方向でそんな変化が起こる未来を、一人の読者として待ち望んでいます。

https://bushoojapan.com/historybook/goldenkamuy/2024/11/02/185352


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台湾・新竹県の先住民集落 台風21号で孤立 徹夜の復旧作業続く

2024-11-03 | 先住民族関連

中央社フォーカス台湾 2024/11/02 18:21

台風21号で孤立した新竹県尖石郷スマングス集落への道路で続く復旧作業=新竹県政府提供

北部・新竹県尖石郷のスマングス(司馬庫斯)集落が、先月31日に台湾を襲った台風21号の影響による道路の寸断で孤立している。郷では夜を徹して道路の復旧作業を急いでいる他、3日早朝には食料などの物資を人力で集落に届ける予定だ。

スマングス集落には台湾原住民(先住民)族タイヤル族の人々が多く暮らす。尖石郷の曽国大郷長は中央社の取材に、2日午後にスマングス集落から来た住民と会い、集落側からも復旧作業が進められていることが伝えられたと語った。

また集落では約150人が孤立し、食料は3日夜までの分しか残っていないと説明。郷公所(役場)では3日早朝に徒歩で物資を集落に届けるとした。

集落の孤立を受け、国軍は3日午前にも集落内にいる通院が必要な人や慢性疾患の患者などの下山支援をする予定だとしている。

(魯鋼駿/編集:齊藤啓介)

https://japan.focustaiwan.tw/photos/202411025003


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祈りで先住民の脳損傷完治=バチカンで神父を聖人認定

2024-11-03 | 先住民族関連

ブラジル日報 2024年11月2日

ジャガーに襲われたソリーノ・ヤノマミさん(右)と看護を行ったフェリシタ・ムソーニ修道女(左)

 先住民族ヤノマミの男性ソリーノさんが1996年にジャガーに襲われて頭部の一部を失い、医師から絶望視されながらも、ジュゼッペ・アラマノ神父への祈りと同宣教会の修道女たちの看護とによって後遺症なく回復した。この奇跡はカトリック教会に認められ、アラマノ神父は今年10月20日にローマ教皇によって列聖(canonização、聖人に認める儀式)された。10月21日G1(1)が報じた。
 1996年2月、狩猟中のソリーノさんはジャガーの親子に遭遇し、背後から襲われた。この攻撃により頭皮と頭蓋骨の一部が剥がされ、脳の大部分が露出するという深刻な傷を負った。彼は医療チームから絶望視されていたが、コンソラータ宣教会の修道女らが献身的に看護し、ジュゼッペ・アラマノ神父への祈りを通じて奇跡的な回復を遂げた。
 ケニア出身のフェリシタ・ムトーニ修道女は、現場に駆け付けた最初の人物だった。「先住民族の一人が、義理の弟がジャガーに襲われて怪我をしたということで私に電話をかけてきました。村に到着すると、血だまりで土の床に男性が倒れていました。彼の頭蓋骨は開いており、脳の一部がぶら下がっていました。私は優しく水で頭皮を洗い、唯一持っていた布地であるブラウスで彼の頭皮を縛りました」と語った。応急処置の後、病院搬送のための支援を要請。ヤノマミ地域は飛行機でしかアクセスできないため航空搬送された。
 病院でソリーノさんを診察した医療チームは、脳損傷の影響により、後遺症を残さずに生き続ける可能性は低いと診断。だが、修道女たちは絶望の中でアラマノ神父への祈りを求め、「奇跡のみが希望をもたらす」と信じていたという。
 ソリーノさんは現在約68歳で、後遺症なく生活しており、この回復はカトリック教会により「アラマノ神父の奇跡」として認められた。担当医のマリオ・サンタクルス氏は、ソリーノさんの回復には科学的な説明がつかないと述べており、「脳組織を失ったために運動機能障害や麻痺、知的障害が生じるはずだったが、検査の結果、彼は正常に回復し後遺症が皆無であることが確認された」と語っている。
 教皇フランシスコは10月20日、バチカンのサン・ピエトロ広場でのミサ中に14人の新しい聖人を宣言し、その中にアラマノ神父が含まれている。
 1851年にイタリアで生まれたアラマノ神父は、宗教奉仕と宣教活動に生涯を捧げ、1900年にコンソラータ宣教会を創設し、10年には修道女協会も設立。26年に死去するまで、アフリカやブラジルのヤノマミ地域など、世界中で宣教活動を行った。
 ヤノマミ地域でのコンソラータ宣教会の活動は、60年代に始まり、ロライマ教区のエヴァリスト・スペングレル司教は、違法な採掘活動による健康危機におけるこのミッションの重要性を強調し、「ヤノマミ地域では、福音を直接布教するのではなく、文化尊重や対話を目的とした活動が行われている」と述べた。

https://www.brasilnippou.com/2024/241102-13brasil.html


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インドネシア政府が先住民族恒久機関の設立を承認

2024-11-03 | 先住民族関連

VOI 02 November 2024, 19:15

先住民族のイラスト。(greeners.co)

【ジャカルタ】インドネシア政府は当初、コロンビアのカリで開催された第16回生物多様性条約締約国会議(COP16 CBD)の最終日に、第8条j補助委員会の設立を支援するための進歩的な措置をとったため、拒否を表明した国の一つとして。

大まかに言えば、第8条jは、気候変動を克服するために先住民族が行う伝統的な知識、革新、慣行の尊重、保護、認識に関連しており、保全の原則と生物多様性の持続可能な利用に関連しています。

「繰り返し述べてきたように、インドネシアは先住民族と地域社会(IPLC)の貢献を認識し、CBDの下で構築されたすべての文書のプロセスの一部としてIPLCを認識しています」と、土曜日(2/11)にジャカルタでアンタラが受け取った声明で、環境林業省の種と遺伝子の生物多様性保全局のアソシエイトエキスパート政策アナリストLuc'lu'Agustianaは述べています。

コロンビアCBDのインドネシア共和国代表の一人である彼は、インドネシア代表団は先住民族の認識を支援し、態度の変化の理由としてCBD加盟国間の妥協の精神を支持するという強いコミットメントを伝えたと述べた。

しかし、Lu'luは、認識のステータスをより高いレベルに引き上げるために、この場合、第8条jに関連して、インドネシアはメカニズムがどのように実装されるかについての明確化が必要であると付け加えました。この明確さは、CBDでの交渉中にインドネシア代表団の懸念でした。

「次のステップは、この新しい機関である補助金付きボディ8jが、今日私たちが設定したマンデートに従って、公正かつオープンにどのようにうまくパフォーマンスを示すことができるかです」とLu'luは先住民地域登録庁(BRWA)からのプレスリリースを通じて述べました。

補助金ボディ記事8jの設立は、モントリオールクーミンググローバルバイオダイバーシティフレームワーク(KM-GBF)で世界が合意した目標を実行するためのアドバイス、推奨事項、およびガイダンスを提供することを目的としています。

慣習地域登録庁のカスミタ・ウィドド長官は、先住民族と地域社会の恒久的な機関の設立に対するインドネシア政府の支援は、2024年8月にマールフ・アミン副大統領によって開始されたインドネシアの生物多様性行動と戦略計画またはIBSAPと一致する必要があると述べた。

「これが、先住民族の生活の多様性と地元の知恵を持つ先住民族の領土の完全な認識と保護になることを願っています」と彼は言いました。

一方、COP-16の最終セッションに出席したグリーンピース・インドネシア森林キャンペーンのシャフルル・フィトラ氏は、インドネシアはついに国際社会の先住民族に偏見を示し、先住民族の権利を認め、尊重し続けるという憲法上の義務を果たすことができると述べた。

https://voi.id/ja/news/430463


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牡丹社事件に関するロシアの資料を展示 台湾で特別展

2024-11-03 | 先住民族関連

中央社フォーカス台湾 2024年11月2日 15時6分

特別展について説明を行う国立台湾図書館の曹翠英館長(奥左)=2024年10月30日、新北市(同館提供)

(新北中央社)清朝末期に起きた牡丹社事件や当時の台湾人の暮らしに関するロシアの資料を集めた特別展が10月30日、北部・新北市の国立台湾図書館で始まった。ロシアの研究機関、ロシア科学アカデミー東洋学研究所のバレンティン・ゴロバチョフ副所長は、当時の資料から台湾人の善良さや純粋さが感じられると語っている。

牡丹社事件は、台湾南東部に漂着した宮古島民54人が台湾原住民(先住民)族パイワン族に殺害されたのを受け、1874年に日本軍が南部に侵攻し、恒春半島一帯で約半年間にわたり占領体制を敷いた一連の出来事。

展示の企画、構成を担うキュレーターを務めた台北教育大学(台北市)の楊孟哲非常勤教授によると、日本軍の侵攻時にはロシア軍人のチェレンチェフが戦況を観察した他、その後に台湾の戦略的重要性を認識した同じく軍人のイビスが現地調査を行った。2人が残した資料はロシア・サンクトペテルブルクの海軍文書館が所蔵しており、今回初めて展示されるという。

ゴロバチョフ副所長は中央社の電話取材に、イビスは身ぶり手ぶりで意思疎通し、狩猟生活を通じて頭目を含む原住民や宣教師らと交流を深め、メモやイラストで当時の台湾の人々や社会、原住民語、風俗を記録したと説明。チェレンチェフは日本軍の侵攻に賛同せず、平和的な外交手段で問題を解決すべきだと考えていたことが分かると述べた。

またイビスが訪問した場所をロシア人旅行家が2014年に訪れた記録なども併せて紹介しており、世紀を超えた台湾のイメージや歴史的価値が見られるとしている。11月17日まで。

(黄旭昇/編集:齊藤啓介)

https://news.livedoor.com/article/detail/27484371/


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「ウテカンパ」に主催者賞 子育て支援活動など評価   白老

2024-11-03 | アイヌ民族関連

2024.11.02苫小牧民報

白老町のNPO法人ウテカンパ(田村直美代表)が、住みやすい地域社会づくりへの優れた活動を表彰する「あしたのまち・くらしづくり活動賞」(公益財団法人あしたの日本を創る協会やNHKなど主催)の主催者賞に選ばれた。内閣総理大臣賞など三つの賞に次ぐ位置付けで、子育て支援や女性活躍の推進、介護予防サロンなどの活動が評価された。田村代表は「関わった一人ひとりに与えられた栄誉」と喜びを語る。

ウテカンパ主催の地域交流イベント(2023年5月)

 同財団法人は全国各地のまちおこしを支援し、独自の発想で地域、人材、暮らしづくりに取り組む団体などを毎年表彰している。今年の最高賞・内閣総理大臣賞には佐賀市のNPO法人空家・空地活用サポートSAGAを、主催者賞にはウテカンパを含む5団体を選んだ。

 ウテカンパは、町社台出身の田村代表が多文化共生を旗印に掲げ、2019年に発足。当初から助産師や看護師、介護専門士ら多様な個性を持ったスタッフたちが、さまざまな理由で社会的に弱い立場を強いられている人たちの居場所づくりに取り組んでいる。

 具体的には、アイヌ文様刺しゅう講座、母子に寄り添うママカフェ、介護予防や健康促進に資する「まちの保健室」などを開催。今年3月には地域医療の先進地である茨城県神栖市の神栖済生会病院と連携して地域医療勉強会、子どもの心身を暴力から守る教育プログラムを学ぶワークショップなどを開いている。弱者に寄り添う地道な活動が評価されて受賞した。

 表彰式は2日に東京都内で行われ、田村代表は「多様な個の集まりが、さまざまな可能性を広げてきた。そのことが認められてうれしい」と前を向き、これからの活動を見据えている。

https://hokkaido-nl.jp/article/35961


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縄文人はどこから来た? 遺伝をめぐる“誤解” 古代ゲノム研究から見えてきたこと #令和の人権

2024-11-03 | アイヌ民族関連

Yahoo!ニュースオリジナル特集 11/2(土) 17:00配信

(図版提供:太田博樹さん)

「ゲノム」(genome、遺伝情報)が身近になってきた。自分の体質や「ルーツ」がわかるとうたう検査キットが数万円で利用でき、ダイエット目的や単純な興味で購入する人が増えている。一方で、結果をうのみにしたり、遺伝だけでは決まらないものが「わかる」とされたりするなど、遺伝にまつわる誤解も広がっている。ゲノム人類学が専門の太田博樹さん(東京大学教授)は、「遺伝学は差別につながるとして忌避される傾向にあったが、もはや避けては通れない。ちゃんと理解して、差別のない社会を目指す方向に進むべき」と話す。太田さんに、古代ゲノムが明らかにすることや、現代社会に生きる私たちがそれをどう受け止めるべきかなどについて聞いた。(取材・文:藤井誠二/撮影:鈴木愛子/Yahoo!ニュース オリジナル 特集編集部)

遺伝子検査が「『人種』という概念を再生産しているところがある」

去る8月30日、DNA(デオキシリボ核酸)をめぐるある判決が言い渡された。暴行の罪で起訴されたものの無罪となった男性が、警察当局が採取したDNA型・指紋・顔写真の抹消を国に求めた裁判。名古屋高等裁判所は一審同様、抹消を命じた。判決は、DNAという「究極の個人情報」を捜査機関がみだりに保持するのは憲法違反とし、関連する法律の整備を求めた。重要な司法判断だ。

遺伝情報の利用には、ゲノム医療などのポジティブな側面がある一方、差別や偏見の温床になる危険をはらむ。

個人が利用できるさまざまな「遺伝子検査サービス」もある。ウェブサイトで検査キットを購入し、唾液を送ると、健康情報や体質、「祖先ルーツ」などの解析結果が返送される。数万円程度で利用できるが、データ解析・解釈の科学的根拠が明らかではない場合がある、さらに解析結果に疑問や不安が生じた時のサポートが十分ではないなどの問題が指摘されてきた。

古代ゲノム研究の日本における第一人者、東京大学教授の太田博樹さんはこう話す。

「遺伝子検査による祖先(ルーツ)解析は、欧米では大流行しましたが、日本ではそれほどでもありませんでした。欧米で流行した理由は、『○%ドイツ人』『○%イタリア人』という具合に意外なルーツが表示される面白みですが、日本の場合、たいてい『100%日本人』と表示されるんです。中国や韓国が数%入ることがあるかな、というぐらい。それは当たり前で、参照しているデータベースに大陸のデータが細かく入っているわけではないし、欧米ほど移動していないから、『日本列島にいました』というストーリーを売るだけになってしまう」

この場合の「100%日本人」は、「数百年前ぐらいから、現在日本国とされているエリアに住んでいた人がご先祖ですよ」というくらいの意味しかないのだが、あたかも「純粋な日本人」という「人種」が存在するように読めることも、差別に悪用されるリスクがつきまとう。

「遺伝学的には『人種』の概念は否定されています。そんなことはもう常識なんだけど、そういった遺伝子検査が『人種』というアイデア(概念)を再生産しているようなところはありますね」

では、病気予防に利用するなら問題ないのか。

「そもそも病気は環境要因が大きいし、遺伝性があることと遺伝的に決まることは一致しないのに、そういった基本的なことを理解しないまま、重篤な疾患を予告されたらどうするのでしょうか。僕は遺伝カウンセラーの充実が必要だと思っていますが、医療従事者の介在なしで医学的な情報を受け取ることについて、十分に対策されていないと思います」

欧米や韓国、オーストラリアなどでは、遺伝情報による差別を禁止したり、医療以外での検査を制限したりする法律を定めている。日本では、2023年に成立した「ゲノム医療推進法」で、医療分野での遺伝情報の保護と差別等への適切な対応が定められたが、それ以外は未整備だ。

この数十年で遺伝についての研究が大幅に進んだ。中学校や高校の教科書も少しずつ変わっている。しかし、大人になった後に遺伝について学び直す機会はほとんどない。

「日本では長い間、ヒトの遺伝学は忌避されてきました。差別を生むからという理由です。『ヒトの遺伝については教科書に書くな』という主張は強かったし、僕もかつて言われました。でももうそういう状況じゃない。むしろ、ちゃんと理解することが重要です。遺伝は怖いものではなく、みんなが持っている情報なんです。ゲノム教育をきちんとしたほうが、差別を乗り越えられると思います」

縄文人は南回りルートで来た? 地球上に「純○○人」はあり得ない

ゲノムとは「生物の遺伝情報の総体」だ。遺伝情報の本体はDNAという物質。長い紐状のDNAはヒストンというタンパク質に巻き付きながら小さく折りたたまれ、染色体を形作る。染色体は細胞核の中にある。

太田さんは、古代DNAから「人間とは何か」を探る研究をしている。具体的には、考古遺跡などから出土する人骨のDNAを解析し、人類集団における遺伝子のバリエーションを研究する。

約30億もの塩基対で構成されるというヒトゲノムの解読計画が完了したのが2003年。遺伝子の変異がデータベース化されて、包括的に参照できるようになった。加えて、ネアンデルタール人のゲノムが解読され、それと比較することで、ホモ・サピエンス固有の変異が明らかになった。

太田さんは、1992年に古代DNAをテーマとして研究を始めた。1997年に東大で博士号を取った後、ドイツのマックス・プランク進化人類学研究所に留学したが、2022年にノーベル生理学・医学賞を受賞したスヴァンテ・ペーボさんは、同研究所の創設者の一人である。太田さんも親しく接した。

「ゲノム人類学は新しい学問です。ホモ・サピエンスの起源はアフリカだと科学的に言えるようになったのはたった30年前。それまでは、アジア人は北京原人の子孫だといった仮説を支持する研究者も多かったし、検証することも難しかった。アフリカ単一起源で固まったことによって、あいまいだったことがはっきりしてきたんです」

「人種」についてゲノム科学が明らかにすることと、人々の素朴な感情は時に衝突する。太田さんには、それを実感する出来事があった。

太田さんは、2012年ごろから数年間、琉球大学と共同で沖縄の先島諸島で調査を行った。先島諸島は台湾と地理的に近いので、ゲノム的に両者になんらかの共通点が見いだせるのではないかと考えたからだ。宮古島と石垣島の高校生に協力してもらって唾液を採取し、ミトコンドリアDNAを台湾の先住民のデータと比較した。検体提供者には、少なくとも祖父母の代より前から先島諸島に住んでいる人を選んだ。そうしたところ、予想に反する結果が導き出された。

「地理的に近い台湾よりも、アイヌやメインランド(本州)のジャパニーズと遺伝的な関係をより強くシェアしていることがわかったんです」

発表した論文が沖縄の地元紙に大きく取り上げられると、民族的なイデオロギーに依拠した感情的な意見がいくつか寄せられたのだ。「その結果を認めたくない」というものだ。那覇でイベントに登壇した際に直接言われたこともあった。

「『沖縄と本州は違わないと学者さんは言うけれど、やっぱり我々は違うと思っている』と言われました。科学で説明されることと、民族の歴史や文化を混同されたのだと思います。僕は、先島諸島は日本と一体であると主張したかったわけじゃない。台湾の先住民とはゲノム上の関係を見つけることはできませんでしたよ、というだけです。別の調査でも、沖縄の島々はやはり本州とクラスターする(相互に関連する)。比較的最近、日本列島からのジーンフロー(一つの集団から別の近縁の集団へと遺伝子が流入すること)を受けているように見えます。おそらく3千年以内のことです。3千年は、ゲノムの世界では最近と言っていい」

太田さんの補足によれば、約3千年以内の本土日本人のゲノムは、大陸からのジーンフローを受けている。それよりも前、縄文文化の時代(1万6千年前から3千年前)に日本列島に住んでいた人たちが「縄文人」だ。では、縄文人と呼ばれる人たちはどこから来たのか。

その足取りの一端を、太田さんらの研究チームが明らかにした。縄文人は、タイの奥地に暮らす少数民族マニ族の祖先とゲノムの多くの部分を共有していたのだ。2018年に論文として発表した。

「もともとは、ラオスの遺跡から発掘された8千年前の人骨のDNA解析に成功したことが土台になっています。タイやラオス周辺には『ホアビニアン』と呼ばれる狩猟・採集文化が存在し、その継承者と考えられる狩猟採集民が現在も暮らしていますが、発掘されたのは『ホアビニアン文化を持つ8千年前の骨』でした。ホアビニアンの直接の子孫の一つがマニ族です。ホアビニアン人骨のゲノムと似たゲノムを持っているグループを探していくと、東南アジアの古人骨と並んで、日本列島の古人骨である縄文人が浮かび上がってきた。こんなに近いんだとびっくりしました」

約6万年前にアフリカを出たホモ・サピエンスは、いくつかのルートで移動し、枝分かれしながら世界各地へ散っていった。その中に日本列島にたどり着いたグループがいたわけだが、南回りで東南アジアからやってきたのか、北回りでシベリア経由でやってきたのか、研究を始めた当時はわかっていなかった。

「何万年も前に日本列島にたどり着いた人たちを『日本人』と呼べるのか。僕ら研究者は、『日本列島に住んでいる/住んでいた人』という言い方をすることが多いですね」

遺伝子のスケールで考えれば、国民国家が形成された時代などごく最近だ。

「日本人に限らず、地球上に『純○○人』はあり得ない。それをユニバーサルな感覚と捉えて心地いいと思う人もいれば、『日本人』を太古からの一つの血のつながりの集団みたいなものだと思っている人は、僕が言っているようなことは不快だと感じるかもしれません」

ゲノム科学が「現代社会に生きる私たちの『人種』の認識を変えていく」

遺伝子検査キットの話に戻るが、「祖先解析」に「ハプログループ」という言葉が出てくる。筆者があるキットを利用してみたところ、祖先は「ハプログループB」と出た。日本人の8人に1人が該当する、2番目に多いグループだそうだ。

太田さんによれば、「ハプロ」とは「片方の側からの」という意味で、対義語は「デプロ」(両方からの)だ。母系しか伝わらないミトコンドリアDNA多型で分類されるので「ハプロタイプ」とか「ハプログループ」と呼ばれる。日本人集団では10から20もの種類が見られ、多い順にD(D4、D5)、B(B4、B5)、M7(M7a、M7b、M7c)……といった具合。

「僕はこれがあまり好きじゃなくて。タイポロジー(個人を類型化して把握しようとすること)だと思っているので。消費者に伝えておくべきこととしては、タイプの出現頻度は時代とともに変わっていきます。今はグループDが一番多いけど、いずれ変わるし、縄文時代はM7aとN9bがほとんどだった。だから、どう物語るかによるんですよね。グループBなら、『3千年前に日本列島に入ってきたグループですよ』とも言えるし、『1万年前に誕生したグループで、オセアニアに行った人たちと同系統ですよ』とも言える。消費者がどのように受容したいかによると思うんです」

筆者が利用したサービスでは、「ハプログループB」は「約4万6千年前に、ユーラシア大陸を海岸沿いに移動してきた集団の中から、インドシナ半島で誕生した」後、「環太平洋に沿って南米の方まで、南の方はポリネシアの方までと幅広く拡散したと考えられています」と書かれていた。要するに、判明するのは、自分が分類されるハプログループが発生した地域と移動ルートということになる。

とはいえ、それを知るだけでも、今ここにいる自分という存在は、途方もない時間のなかで他人同士が出会い、混じり合った結果であると感じることができた。娯楽の一種だと割り切れば、はるか遠い祖先に想いを馳せるロマンは悪くない。

今後、ゲノム科学はますます進化し、遺伝子検査もよりカジュアルになっていくだろう。「自分の遺伝情報をどのように受け入れるか」といったことも考えなくてはならない時代がやってくる。遺伝情報を差別や偏見と結びつけないためにはどうすればいいのか。

太田さんは、遺伝と個人の関わりについて、著書でこのように書く。

〈DNAで個体識別や身元調査することは可能である。しかし、逆にいえば、頑張らないと差違を検出できないくらいヒトは均質だ。それゆえ現代科学において生物学的な意味で『人種(race)』の存在は否定されている。そして、一人ひとりの個人のアイデンティティは、DNAの系譜の中にあるわけではない。その人が生きてきた歴史の中にある〉(『ゲノムでたどる古代の日本列島』)

太田さんは、「ゲノムを社会から遠い存在にしたくない」と話す。

「ヒトの遺伝情報は99.9%までが共通です。残りのわずか0.1%の差異が、環境要因や突然変異と相まって、性別や皮膚の色や病気の有無などとして現れる。僕は、遺伝を科学的に理解することによって、『人種』や『民族』の概念や、病気の捉え方が変わり、そのような認識の変化が差別や偏見を減らしていくのではないかと期待しています。ヒトゲノム解読計画の完了から二十余年。学問にゲノムを導入する試みはまだ始まったばかりです」

太田博樹(おおた・ひろき)

東京大学大学院理学系研究科生物科学専攻教授。1968年生まれ。東京大学大学院理学系研究科修了、博士(理学)。マックス・プランク進化人類学研究所、イエール大学の研究員、東京大学大学院新領域創成科学研究科助教、北里大学医学部解剖学准教授を経て、2019年から現職。専門はゲノム人類学。著書に『遺伝人類学入門』『古代ゲノムから見たサピエンス史』、共著に『ゲノムでたどる古代の日本列島』など。

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藤井誠二(ふじい・せいじ)

ノンフィクションライター。1965年、愛知県生まれ。著書に『「少年A」被害者遺族の慟哭』『殺された側の論理』『黙秘の壁』『沖縄アンダーグラウンド』『路上の熱量』など多数。近著に『贖罪 殺人は償えるのか』。

https://news.yahoo.co.jp/articles/c72dd204b2e71633fc1ab9e655cfdea0a8ee7330


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