SmartFLASH 2022.12.24 16:00

写真:Everett Collection/アフロ
待望のジェームズ・キャメロン監督最新作『アバター:ウェイ・オブ・ウォーター』が世界各地で封切られました。日本でも12月16日に上映が開始され、出足から好調です。
約200年後の未来。地球からはるか彼方にある神秘の惑星パンドラで、先住民ナヴィと人間のDNAを組み合わせたアバター(分身)に自らの意識を送り込んだ主人公、元海兵隊員のジェイク(サム・ワーシントン)が、ナヴィの族長の娘であるネイティリ(ゾーイ・サルダナ)と出会い、荒廃した地球を離れた人類との確執と惑星の運命を揺るがす戦いに身を投じていく物語「アバター」。
それから約13年ぶりの続編で、舞台は第1作の10年後です。
パンドラで、ジェイクとネイティリは結ばれ、現在は息子のネテヤムとロアク、娘のトゥク、養女のキリ、そして人間のスパイダーとともに平和に暮らしていました。しかし、そこに再び人間たちが現れ、ジェイクは家族を守るために森を離れ、海の部族のもとに家族で身を寄せます。ところが、その美しい海にも侵略者が接近して……。
東京・日比谷のTOHOシネマで、まず『ヴィジュアル・ディクショナリー』を買い求めました。登場人物だけでなく、ナヴィの暮らしから独特な動植物まで、細部にわたりアバターの世界観が詰まっているプログラムで、映画への期待が高まります。平日の昼間にもかかわらず、シアターの席はほぼ埋まっていました。
『ターミネーター』や『タイタニック』など、最新の映像技術を駆使した作品で、映画ファンを虜にしてきたキャメロン監督。
公開当時、全世界興行収入1位を記録した前作の『アバター』は、「エモーション・キャプチャー」と呼ばれるキャメロン監督自身が作り出した最新の映像技術を使っていました。俳優が演技する動きをコンピューターに記録し、CGキャラクターで再現する「モーション・キャプチャー」の「異星人」(ナヴィ族)たちが、本当の感情を持っているようだったからです。大興奮した方も多いでしょう。
今回、映画館で観るという点では、「ハイフレームレート(HFR)」が注目を集めています。本作品は、一般的な映画で用いられる秒間24コマの倍の48コマで撮影されました。フレームレートが高ければ高いほど映像は滑らかになり、大画面でも3D映像が見やすくなります。
一部の映画館で、撮影と同じハイフレームレートで上映がおこなわれており、追加料金はそれなりにかかりますが、「アバターならHFRでしょう」と考え、IMAXレーザーの3Dシアターで観賞することにしました。入口で3Dメガネをもらってからシアターへ。
余談ですが、他のシアターに行く人より、なんとなく大きなポップコーンと飲みものを抱えている人が多いような気がします。「あ、長い映画だからか」と、勝手に納得。本編192分。覚悟を決めて映画を観るのって、たまにはいいですね。
そして、3時間超は飽きることなく、期待を裏切られることなく、アバターの世界に没頭しました。
海中シーンの美しさ、生物の動きのなめらかさは筆舌に尽くしがたいほどです。シュノーケリングしかできない私の経験した限りでは、紅海に面したエジプト・ダハブのブルーホールの海が竜宮城のように美しかったですが、それ以上とも思えるくらいにファンタジーで、「わー、きれい!」と小さく歓声を上げてしまうほど。こういう映画こそ映画館の大スクリーンで観なければと、心から感じました。
キャメロン監督はダイビング好きで知られ、また2012年には潜水艇で水深約1万1000メートル、世界最深といわれるマリアナ海溝に単独で到達するなど、海には特別な思いがある方です。著書の『SF映画術 ジェームズ・キャメロンと6人の巨匠が語るサイエンス・フィクション創作講座』(DU BOOKS刊)によれば、「岩礁を見て、そこにいる生物がもっと大きいと想像すればいいだけ。たちまち周りが異星人の星になる。実際、想像を超えた世界が広がっている」と、自らの探検心を海とからめて述べ、また「これからのSF作品に必要なのは、技術ではない。想像力」だとも語っています。
そんな監督が描くのですから、海のシーンは特別になるはずですね。
もちろん映像美だけではなく、迫力あるストーリー展開があるからこその3時間だということはお伝えしておきます。1秒でも見逃したらついていけないわけではありません。いくつものテーマがじんわりと伝わってきて、気がついたら、またスクリーンに没頭できるという感覚でしょうか。
キャメロン監督は「『アバター』を観た人の90パーセントは視覚的な美しさやアドベンチャラスな物語を楽しんだだけだと思っている。残りの10パーセントの観客がメッセージを汲み、それを今後の行動をあらためるきっかけにしてくれたり、他者への不寛容や自然に対する尊敬の欠如を気づかせる警鐘として真剣に受け取ったりしてくれただろう」(『SF映画術』)とも話しています。そういう感想を持つ人の割合は、もしかしたら続編でも同じかもしれません。
でも、純粋に楽しめる映画って素敵だとも思います。監督の込めたメッセージは、ネタバレになってしまうので、どうぞみなさん、劇場で感じてください。
『アバター』はさらに続編があるそうです。誰も思いつかないような想像力で、キャメロン監督がどんな未来の世界を描くのか、また楽しみに待っています。
横井弘海
東京都出身。慶應義塾大学法学部卒業後、テレビ東京パーソナリティ室(現アナウンス室)所属を経てフリー。アナウンサー時代に培った経験を活かし、アスリートや企業人、外交官などのインタビュー、司会、講演、執筆活動を続ける。旅行好きで、訪問国は70カ国以上。著書に『大使夫人』(朝日新聞社)( SmartFLASH )
https://smart-flash.jp/showbiz/215918/1

写真:Everett Collection/アフロ
待望のジェームズ・キャメロン監督最新作『アバター:ウェイ・オブ・ウォーター』が世界各地で封切られました。日本でも12月16日に上映が開始され、出足から好調です。
約200年後の未来。地球からはるか彼方にある神秘の惑星パンドラで、先住民ナヴィと人間のDNAを組み合わせたアバター(分身)に自らの意識を送り込んだ主人公、元海兵隊員のジェイク(サム・ワーシントン)が、ナヴィの族長の娘であるネイティリ(ゾーイ・サルダナ)と出会い、荒廃した地球を離れた人類との確執と惑星の運命を揺るがす戦いに身を投じていく物語「アバター」。
それから約13年ぶりの続編で、舞台は第1作の10年後です。
パンドラで、ジェイクとネイティリは結ばれ、現在は息子のネテヤムとロアク、娘のトゥク、養女のキリ、そして人間のスパイダーとともに平和に暮らしていました。しかし、そこに再び人間たちが現れ、ジェイクは家族を守るために森を離れ、海の部族のもとに家族で身を寄せます。ところが、その美しい海にも侵略者が接近して……。
東京・日比谷のTOHOシネマで、まず『ヴィジュアル・ディクショナリー』を買い求めました。登場人物だけでなく、ナヴィの暮らしから独特な動植物まで、細部にわたりアバターの世界観が詰まっているプログラムで、映画への期待が高まります。平日の昼間にもかかわらず、シアターの席はほぼ埋まっていました。
『ターミネーター』や『タイタニック』など、最新の映像技術を駆使した作品で、映画ファンを虜にしてきたキャメロン監督。
公開当時、全世界興行収入1位を記録した前作の『アバター』は、「エモーション・キャプチャー」と呼ばれるキャメロン監督自身が作り出した最新の映像技術を使っていました。俳優が演技する動きをコンピューターに記録し、CGキャラクターで再現する「モーション・キャプチャー」の「異星人」(ナヴィ族)たちが、本当の感情を持っているようだったからです。大興奮した方も多いでしょう。
今回、映画館で観るという点では、「ハイフレームレート(HFR)」が注目を集めています。本作品は、一般的な映画で用いられる秒間24コマの倍の48コマで撮影されました。フレームレートが高ければ高いほど映像は滑らかになり、大画面でも3D映像が見やすくなります。
一部の映画館で、撮影と同じハイフレームレートで上映がおこなわれており、追加料金はそれなりにかかりますが、「アバターならHFRでしょう」と考え、IMAXレーザーの3Dシアターで観賞することにしました。入口で3Dメガネをもらってからシアターへ。
余談ですが、他のシアターに行く人より、なんとなく大きなポップコーンと飲みものを抱えている人が多いような気がします。「あ、長い映画だからか」と、勝手に納得。本編192分。覚悟を決めて映画を観るのって、たまにはいいですね。
そして、3時間超は飽きることなく、期待を裏切られることなく、アバターの世界に没頭しました。
海中シーンの美しさ、生物の動きのなめらかさは筆舌に尽くしがたいほどです。シュノーケリングしかできない私の経験した限りでは、紅海に面したエジプト・ダハブのブルーホールの海が竜宮城のように美しかったですが、それ以上とも思えるくらいにファンタジーで、「わー、きれい!」と小さく歓声を上げてしまうほど。こういう映画こそ映画館の大スクリーンで観なければと、心から感じました。
キャメロン監督はダイビング好きで知られ、また2012年には潜水艇で水深約1万1000メートル、世界最深といわれるマリアナ海溝に単独で到達するなど、海には特別な思いがある方です。著書の『SF映画術 ジェームズ・キャメロンと6人の巨匠が語るサイエンス・フィクション創作講座』(DU BOOKS刊)によれば、「岩礁を見て、そこにいる生物がもっと大きいと想像すればいいだけ。たちまち周りが異星人の星になる。実際、想像を超えた世界が広がっている」と、自らの探検心を海とからめて述べ、また「これからのSF作品に必要なのは、技術ではない。想像力」だとも語っています。
そんな監督が描くのですから、海のシーンは特別になるはずですね。
もちろん映像美だけではなく、迫力あるストーリー展開があるからこその3時間だということはお伝えしておきます。1秒でも見逃したらついていけないわけではありません。いくつものテーマがじんわりと伝わってきて、気がついたら、またスクリーンに没頭できるという感覚でしょうか。
キャメロン監督は「『アバター』を観た人の90パーセントは視覚的な美しさやアドベンチャラスな物語を楽しんだだけだと思っている。残りの10パーセントの観客がメッセージを汲み、それを今後の行動をあらためるきっかけにしてくれたり、他者への不寛容や自然に対する尊敬の欠如を気づかせる警鐘として真剣に受け取ったりしてくれただろう」(『SF映画術』)とも話しています。そういう感想を持つ人の割合は、もしかしたら続編でも同じかもしれません。
でも、純粋に楽しめる映画って素敵だとも思います。監督の込めたメッセージは、ネタバレになってしまうので、どうぞみなさん、劇場で感じてください。
『アバター』はさらに続編があるそうです。誰も思いつかないような想像力で、キャメロン監督がどんな未来の世界を描くのか、また楽しみに待っています。
横井弘海
東京都出身。慶應義塾大学法学部卒業後、テレビ東京パーソナリティ室(現アナウンス室)所属を経てフリー。アナウンサー時代に培った経験を活かし、アスリートや企業人、外交官などのインタビュー、司会、講演、執筆活動を続ける。旅行好きで、訪問国は70カ国以上。著書に『大使夫人』(朝日新聞社)( SmartFLASH )
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