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児童文学作家 加藤純子のblog
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『コスモス 七番目に出会った人』(ジャイブ ピュアフル文庫)

2008年07月21日 | Weblog
 日本児童文芸家協会の友人、光丘真理さんから新刊をご恵贈いただきました。真理さん、おめでとうございます!
 この『コスモス 七番目に出会った人』は、昨年ご出版された『コスモス 二番目に好きなもの』の続編です。
 一巻の舞台は東京の郊外。丘の上にある家の玄関は、いつも薄荷のようなさわやかな風が通りすぎていく場所です。
 そしてその場所は「みかげ」の新しい人生がスタートしたところです。
 詳しくは、ぜひ第一巻をお読みになってください。

 そして第二巻の舞台は京都に移ります。
 この第二巻を拝読しながら思ったのは、光丘真理さんの生活者としての視点の芳醇さです。
 作品の細部に、その豊かさが宿っています。
「みかげ」のひりひりした気持ちに寄り添って読みながらも、作者は、そこに心地いい風の通り道を必ず用意しています。
 その通り道がすてきなのです。
 たとえば父親と再婚し、新しい母になった洋子さん。
 あるいはその洋子さんの母親である京都に住むサワさん。
 そのサワさんの孫の涼さん。
 そんな大人たちの豊かな生きように、読みながらこころ惹かれていきます。これはもしかしたら光丘真理さんそのものなのかもしれないと思わされながら。
 そんなふうにステキな大人の女の人たちの魅力的な立ち居振る舞いや所作に。
 そして同じく、真理さんかしらと思わされるのは主人公の「みかげ」の繊細さや一途さにもいえることです。
 この作品をお書きになりながら、きっと彼女は何回も、いえ何十回も、ご自分と向き合い、対峙されながら「みかげ」像と、それを取り囲む大人たちのすがたや気持ちを、ご自分にひきよせ、描かれていったのでしょう。
 心憎いほどのおしゃれ心や、うっとりするような小道具の数々を忍ばせながら。
 
 チャーミングで明るく、どんな時にもいろいろな人たちをやさしく気遣われる、光丘真理さんならではの作品です。そしてこのシリーズは、彼女の代表作のひとつにあげられるでしょう。
「みかげ」に寄り添いながら、京都の町の空気を感じ、青春の頃の、あのひりひりした感じや甘酸っぱくて切ない感覚を、ぜひみなさん、思いっきり堪能なさってください。

コメント
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