20階の窓辺から

児童文学作家 加藤純子のblog
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『碧空の果てに』(濱野京子著・角川書店刊)

2009年06月11日 | Weblog
 友人の作家、濱野京子さんの新刊のご紹介です。
 角川書店の’銀のさじシリーズ’の一冊で、今度の作品はファンタジーです。
 ほんとうに彼女は、変幻自在に物語を操る魔術師のような作家です。

 主人公のメイリンは、長身で馬の手綱さばきにも長けていて、なおかつ並はずれた怪力の持ち主です。
 そういった言わば『女性」という括りから外れているという自己への懐疑が、彼女を、年頃になりながらも「結婚」や「恋」といった、甘やかな感情から遠ざけています。
 その彼女が、異国で・・・。
 と、ストーリー展開は、お読みになってのお楽しみということで。
 
 私はこの作品はある意味、いままでの濱野京子さんの作品のなかで、いちばん彼女らしいテーマ設定だと思いました。
 メイリンの自己に問いかけるアイデンティティの在処が。
 また、そのキャラクターもおもしろい。
 男女3人の恋模様と、その行方もおもしろい。
 それは、まるで人気少女漫画を読んでいるときの気分に似ています。
 あるときはこのメイリンのうつくしい姿にうっとりと夢見心地になり、またある時は恋の行方にどきどきしたり・・・。
 また、ある時はメイリンの潔く知的で、凛々しい姿にあこがれたり・・・。

 そう、この作品は、縦軸に「女」であるがゆえの足枷から、いかに自分らしく生きるかといったメイリンのアイデンティティを描き、横軸にはそういったあこがれやきらきらした夢を散りばめ、読者の心をわしづかみにしているのです。
 ファンタジーをあまり読み慣れていない読者でも物語世界にすっと入っていけるのは、ここには「少女たちのあこがれ」がふんだんに散りばめられているからです。
 
 皆さまどうぞお読みになってください。
コメント (2)
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