20階の窓辺から

児童文学作家 加藤純子のblog
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『トゥルー・ストーリーズ』(ポール・オースター 新潮文庫)

2011年03月16日 | Weblog
                

 余震が続いていたり、原発の放射能漏れが気になったりで、テレビをつけたまま読書三昧の日々です。今日は仲間うちの研究会「Beー子どもと本」が予定されていましたが、中止になりました。
 そのお仲間の新刊で、恵贈いただいたままのご本を地震でごちゃごちゃになった膨大な本の山から、やっと見つけ出し読んでいるところです。
 
 雑誌『日本児童文学』は、1970年代からのバックナンバーをちゃんと揃えてベッドルームの書棚にしまってあります。
 これは地震でも無事でした。
 
 問題は、ここ数年の『日本児童文学』と、子どもの本研究会の書評誌『子どもの本棚』。
 せっかく年数別、月別に並べてあったのが、ばらばらに。
 片付けるときはもう必死で、そんなふうに並べることが出来ませんでした。

 いずれ書棚を買い換えたら・・・。
 それまではごちゃごちゃに山積みです。
 
 そのなかで、なぜか手にしたのが、大好きなオースターのエッセイ集『トゥルー・ストーリーズ』
 9・11から一ヶ月たった2001年10月11日に書かれた「地下鉄」というエッセイが収録されています。
 ここには世界の悲惨に対する静かな悲しみをたたえた文章が綴られています。
 
 列車の騒音、列車のスピード。駅に来るたびにスピーカーからほとばしり出る、バリバリという不可解な雑音。がくんと揺れて、突如バランスを失い、見知らぬ者同士の体がぶつかり合う衝撃。余計な口を利かずにいることの、微妙な、この上なく文明的な技術。
 やがて,見たところ何の理由もなしに、明かりが消えて、ファンのうなりがとまり、誰もが黙っておとなしく、列車がふたたび動き出すのを待つ。誰ひとり、何も喋らない。ため息すらほとんど漏らさない。わがニューヨーカー仲間たちは、闇のなかでじっと、天使の忍耐強さとともに待っている。

 今回の想像を絶する自然災害を人たちが、このオースターのような気分になるのは、いったい、いつのことでしょう。
 いまはただひたすら踏ん張って、この危機を乗りこえていくしかありません。
 春は必ず来ることを信じて。
コメント
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