図書館へ行った帰りに、近所の商店街で年老いたおばさんが、あさりやお豆の炊いたものを売っていました。
いつもでしたら通りすぎてしまうのに、ちょっとした人だかりに興味をそそられ、のぞきこみました。
すると、白インゲンを甘く炊いたものが目に入りました。
そこだけ、ひかり輝いているのです。
ひとりの食事に、お豆を煮るのは面倒です。
次々と買っている人たちにつられ、
「これ、いただきます」
白インゲン豆を指さしました。
「200円です。おいしいですよ」
おばさんが、やさしい声でいいました。
帰ってきて食べたら、ほんとうにおいしい。
お豆がやわらかく、ほどよい甘みです。
お正月には欠かせない、菊乃井の「黒豆煮」のような、ほっこりとした上品なお味です。
あのおばさんの「おいしいですよ」は、自信の表れだったのかもしれないと、食べながら思いました。
市井を生きるお店屋さんの、底力を感じた瞬間でした。