いつも歩いている公園の、桜並木は、そのすべてが老木です。
午前中に歩くことが、ほとんどですが、たまに日の暮れかけた時間に歩いていると、ふと、木の洞がこちらを見ているような錯覚を覚えることがあります。
洞の中には、小さな、名前の知らない生きものが生息していて、こちらをじっと見ている・・・。
この洞は、実は奥にずっと空洞が続いていて、その空洞を辿っていくと、地下に続き、そこから異界につながっていく。
暮れかけた薄墨色の空が、そんな気分に、私を誘うのかも知れません。
朝のかがやくような日をあびた桜の老木は、いつも冬枯れの木立をこちらにやさしく揺するだけです。
危うく、誘い込まれそうになった私は、あわててその場を離れます。
落日が、最後の力を振りしぼり、公園にひかりを差し込んでいました。