今朝、新聞で辛島昇さんご逝去を知りました。
辛島さんといったら南アジアの研究家です。
私が彼の書物に出会ったきっかけは、藤原新也の『印度放浪』でした。
悠久のガンジス川、そこに浮かぶ人間の遺体。
藤原新也のカメラと筆は、ぐんぐんと印度の奥深くまで踏み込んでいきます。
あの時代、藤原新也に影響されていた人は多かったはずです。
『西蔵漂流』ではチベットのオレンジの衣をまとった僧たちの、生々しい人間性にもふれていました。
さて辛島昇さんです。
『印度放浪』に端を発し、私はそれから何冊かインドに関連する本を読みました。
そして出会ったのが、辛島昇さんでした。
むろん、お会いしたことも、お話したこともありません。ただ著者として、その生き方に惹かれたのです。
『インド・カレー紀行』には、インド料理、カレーなどに使われる何十種ものスパイスの話や、カレーを通してインドの歴史や文化が語られています。
ジュニア新書なので、とてもわかりやすく書いてあります。
そういえば、友人Tさんに教えていただき、アマゾンで取り寄せて、昨日から「クミン」を使っています。
まさに「アジア!」といった香りの強いスパイスです。
お料理には、どうしても使えなくて(夫は平気な顔でヨーグルトにいれて食べていますが)粉薬みたいにして、飲んでいます。
その瞬間、アジアの香りが手のひらを駈けぬけます。
その手で新聞をめくり、辛島さんのご逝去を知りました。82歳だったそうです。