公園を歩いていたら、花しょうぶの水の中に、お父さんと男の子が、釣り糸を垂れています。
「釣れた!」
男の子が叫びました。
何が釣れたのかしらと、あわてて私も、そばに近づいてみました。
花しょうぶを見て歩く、回廊の板の上に、釣られたザリガニが、ぴくんぴくんと動いています。
ザリガニと言って思い出すのが、息子がまだ幼稚園くらいのころのこと。
日曜日になると、私たち一家は、南麻布にある有栖川公園にザリガニ釣りに行っていました。
二子玉川から、車で246を走り、有栖川公園に行くのが、いつもの習慣でした。
小川に素足になって、息子と夫が入ります。
まだ小さかった娘と私は、上からその様子を見ています。
虫が苦手な私は、ザリガニ釣りの帰りに、ナショナル麻布スーパーマーケットでお買い物するのが楽しみだったのです。
息子が小学生になる頃には、もう日曜日の有栖川公園通いはなくなりました。
子どもも、忙しくてそれどころではなくなったのと、インターナショナルスーパーマーケット目当てで行っていた私も、その頃には玉川高島屋が、かなり充実していて、麻布まで行かなくても、ほとんどのものは明治屋で買えたからです。
よほど懐かしそうな顔をしていたのか、お母さんがバケツを持ってやってきて、
「こんなところに、ザリガニがいるんですよ」と、私に声をかけてくれました。
花しょうぶの水辺には、6月になると、うつくしい色とりどりの花が咲きます。
その時、ザリガニは、水の中で、どんな顔して、花々をのぞいているのでしょうか。