20階の窓辺から

児童文学作家 加藤純子のblog
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辻仁成さんのblogから

2020年11月02日 | Weblog

 

                 

 辻仁成の作品は、すばる文學賞を受賞した「ピアニシモ」しか読んだことがありません。

 その作品も、なんだか軽く、時代性は感じたけれど、胸にしみてきませんでした。

 それで、私の中では、out of  眼中でした。(ごめんなさい)

 ところが、ところが、ひょんなことから、彼のblogを時々読み始め、息子さんとの関係。

 パリの様子。

 日本に帰国した時の、彼の第二の故郷の話。

 そして何より、お料理の腕。

 それを読んでいるうちに、いつしか「辻仁成blog」ファンになってしまいました。

「ピアニシモ」で感じた、あの感じとは違う、人生を生きる、誠実に生きる、彼の姿が浮き上がってきます。

 

 彼は高校生の息子さんを、きちんと育てながら、彼と時には喧嘩して、でも生活者として、地に足をつけて生きています。

 時々東京に来るのは、出稼ぎ。

 高校生の息子さんと、彼は生きていかなくていけないのですから。

 

 でも日々の彼の生きることへの姿勢。

 息子さんと向き合う姿勢には、胸を打たれることがあります。

 そしてさすが、文章がお上手。

 だから、ぐいぐい読ませます。

  

 今は、高校生の息子から「音楽家になりたい」と、突如、進路変更を言い渡され、葛藤、葛藤、葛藤。

 親って、こんなもの。

 子どもよりずっと長く生きてきて、困難さを背負いながら、子育てをしてきた。

 そんな親のことなど、子どもは、想像すらできないものらしいです。

 すごく、切ない。

 彼はすぐにパリに帰りたい。でもこのコロナで、ましてやパリはまたもやのロックダウン。飛行機の飛ぶ本数も少なくなっているらしいです。

 「パパは、自分で空を飛んででも、すぐに、パリに行きたい」と。離れている距離の遠さが、読んでいて悲しいです。

 

 昨晩は、そんな彼の父親としての苦悩に共感しながら、彼の「マグロの漬け丼」の作り方をメモして、作ってみました。

 彼のより、お野菜をたくさんにしました。水菜と小葱に、マグロがすっかり隠れてしまっています。

 でも、簡単で美味しい。

 

「期待しない生き方というのは、自分で自分の道を切り開くという決意でもある。」

 息子さんとの葛藤を、考え考え考え続け、この言葉に到達します。

 すごく、胸に滲みました。

 

 父親である辻さんが、離婚して母親を失った、中学生になったばかりの息子の喪失感を埋めるように、毎日、毎日、パリで作り続けた、100個以上になるお弁当。

 手作りのお弁当が、彼の喪失感、悲しみを少しは癒してくれるのではと、思いながら。

 

 その話、いつか、丁寧に、息子さんにしてあげてください。

 彼がどんな思いで、ずっと一人で、異国で息子さんを育ててきたか、その思いを率直に話してあげてください。

 男って、そういう大切な部分、「当然、わかっているだろう」と思って、端折っちゃうから。

 お説教じゃなくて、辻さんの、息子さんへの思いを語ってあげてください。

 

 どう生きていくか。

 このコロナの時代。大人だって戸惑っているのですから、子どもにとっては、展望すら持てない。

 進路のことに言及して、お説教するのではなく、二人のこれまで生きてきた信頼関係。どれほど息子を大切に思い、育ててきたかを語り合ってください。

 

 祈っています。・・・って、「リアル辻仁成」には、お会いしたこともないですが。

 そんな気持ちにさせられる、blogです。

 まずは、辻仁成の近作、読まなくちゃ。

コメント
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