新刊4冊をご紹介いたします。
まずは絵本から。
『王国のない王女のおはなし』(サラ・ギブ絵・石井睦美訳・BL出版)
石井睦美さん翻訳の、とても贅沢な作りのうつくしい絵本です。若い女性がときめきそう・・・。
サラ・ギブの繊細で華麗で装飾的な絵が、ページを繰るたびにあらわれ、そのうつくしさにわくわくします。
自分の王国を持っていない、うつくしく、行動的な女王さまが、自分の王国、そして自分の居場所を見つけ出していくストーリーです。
女王さまは、たくさんの若い王さまたちから結婚を申し込まれます。
それを受け入れれば、求めていた「自分の王国」ができます。
けれど、物語は思わぬ方向へと・・・。
女王さまが道化師にもらった赤いストッキングが、とてもチャーミングです。
『源氏物語 時の姫 いつか、めぐりあうまで』(越水利江子・角川つばさ文庫)
越水利江子さんの筆による『源氏物語』です。
とにかく文章がうつくしい。平安王朝文学のみやびで香り高い世界を、うつくしい文体で描ききっています。
特徴的なのは、オリジナルのキャラクター「水鬼」を登場させたこと。この「水鬼」が「光源氏」の人間性を際立たせています。
とにかく『源氏物語』は、54帖からなる大長編物語。その光源氏の若い頃だけを描いても一冊の本に納めるのはとうてい無理です。それを、実に見事にまとめていらっしゃいます。
物語の中心に、「光」と「ゆかり」そして「水鬼」を据えたことで、『源氏物語』の輪郭と、その時代の空気がきちんと伝わってくるような作りになっています。
このご本はきっと、『源氏物語』をはじめて読む子どもたちには、心ふるわせる、まさに「いちばん最初に出会う、あなたのための「源氏物語」」になると思います。
『とびだせ!そら組 レスキューたい』(田部智子・岩崎書店)
田部智子さんの低学年向けご本です。
ある朝、二年そら組のクラスメートの「カズくん」が、とり小屋の前から動きません。
主人公の「コータ」と「テンテン」は真相を探るべく、とり小屋へ。
そこにはなんと、ネコが・・・。
子どもたちが、とり小屋のうしろに落ちてしまったネコを助けようと四苦八苦する様子が、とても楽しいです。
そして最後に登場した図工室の「みどり先生」の、カッコいいこと!
ネコ救出に、手に汗をにぎりしめたかと思ったら、ラストでは、思いっきりスカっとさせてくれる。
痛快で、楽しいお話です。
『初恋ダイアリー 片思い』(宮下恵茉・成田サトコ・濱野京子・ポプラ社)
三人の作家の手による「片思い」のお話の収録された、キラキラのかわいい表紙のアンソロジー。
濱野京子さんの作品は『アイの花ことば』
お花のだいすきな、そしてそのお花屋さんにバイトできている高校生にひそかにあこがれの気持ちを抱いているアイ。
「デブ」と言われ、その屈辱からダイエットに成功し、すっかりきれいになった親友のサユ。
ふたりの「友情」とそれぞれの「恋」のお話です。
そのお話のエッセンスになっているのが「花ことば」。
1巻が「片思い」、2巻が「告白」、3巻が「デート」と、それぞれの作家の書かれた主人公たちの「恋」がどうなっていくか、このあとの展開にドキドキするような作りになっています。
こういった仕掛けは、アンソロジーとしてははじめてではないでしょうか。
皆さま、この4冊、どうぞお読みになってください。