帯には、20の心から20編のおくりもの、と書いてあります。
20編の作品を読んでいくと、どれもこれも心があたたかくなるようです。
その中から2編、ご紹介。
『クマ町』(森くま堂)
クマだけが住むクマ町のお話。
「クマオくん」は、その町におとうさんとおかあさんと三人で住んでいます。
大工さんのお仕事をしているおとうさんは、風邪のためベッドに寝ています。
「クマオくん」は、仲よしの「クマコちゃん」にキンカンの実のシロップづけをもらう約束で出かけていきます。おかあさんはおとうさんの大好物の「ハチミツ豆」をことことと煮ています。
でもさびしがりやのおとうさんは、ひとりでベッドに寝かされていることに不満そう・・・。
そんな「クマオくん」は仲よしの「クマコちゃん」と遊んでいて、子グマと出会います。
ひとしきり3人は遊んだあと、「クマオくん」は子グマから小さな小さな木彫りの家をもらいます。それを見つめていたら・・・。
特徴的なのは、森くま堂さんの文体です。
まるで翻訳の幼年童話のようです。
以前「んの反乱」という作品を読ませていただいておりましたが、そのときにも感じたことです。ありきたりな表現ではなく、とても工夫されています。
いえ、そのセンスこそが、森くま堂さんの大きな武器になるだろうと思いました。
『まいごのネズミ』(白矢三恵)
交番のおまわりさんの「やすおさん」のところへ、迷子のネズミがやってきます。
いつもやさしいと評判の「やすおさん」は、いまにも泣きそうなネズミから、「家」を見つける手がかりを聞き出していきます。
ネズミの「チューキチ」が話す、その家への手がかりを聞きながら、読者はだんだん手に汗を握りしめます。
「もしかして・・・・」
胸が高鳴ります。
その「もしかして・・・」が少しずつ確信にたどりついていきます。
そうしたストーリー運びが、小さい子ども向けのご本としてとてもお上手です。
この「もしかして・・・?」の感覚を、引きずらせながら物語を作っていくというのは、小さい子のお話の場合、重要な「鍵」のような気がします。
そして結末がわかり、ほっとする。
この、ほっとする感覚も大切です。
そのあたりが絶妙なテクニックで描かれています。
皆さま、ぜひお読みになってください。