同人誌『季節風』から生まれた、いとう みくさん渾身のデビュー作です。
食いしん坊で、いつも明るい細川糸子を取り巻くクラスの人間模様が、短編連作という形で描かれています。
第一話の主人公は「細川糸子」
第二話の主人公は「町田良子」
第三話の主人公は「高峯理子」
第四話の主人公は「坂巻まみ」
第五話の主人公は「滝島径介」
この五人のクラスメートたちが、それぞれとふれあい、拒絶しあったり、憧れたり、ときに悲しんだり、苦しんだりしながら、「糸子」を中心につながっていく物語です。
その関係性を捉える視点。人間を捉える視点に、読みながら「季節風」の代表だった、後藤竜二さんの作品を思い出していました。
人間存在をまるごと認め、まるごと受け止め、まるごと描写する。
彼の人間を捉える確かな視点を、いとう みくさんは、確実に受け継いで描いています。
読みながら、
「後藤竜二よかったね。あなたの書く姿勢を引き継ぐ後輩が、着実に育っていますよ」
と、空に向かってつぶやいていました。
皆さん、ぜひお読みになってください。