53 白鬚岳(1378m)<台高山脈>
(しらひげたけ)別称・朝倉山 吉野郡川上村のほぼ中央、池木屋山北西野赤倉山から南西に延びる稜線上にある。山頂に白髭大明神の祠があったことで山の名がついた。西側山麓の神之谷にある金剛寺には南朝の遺跡がある。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/4b/ab/26b236f7efb4f231d667dce94e1105e9.jpg)
柏木で吉野川を渡り、神之谷集落から峠を一つ越した東谷出合(530m)まで車で入る。地道の東谷林道を10分ほど歩くと終点となり、ここが登山口である。右手の谷へ下り、3度ほど沢を渡り返す。薄暗い谷の奥に細長い滝を見上げ、左の山腹の道に入る。右手下の谷にかかる滝と壊れた小屋を見て、道が谷に近づくところで水流がなくなった谷を離れる。ジグザグの登りから、手入れの行き届いたヒノキの美林の中を急登する。やがて頭上が開け、ホトトギスやウグイスの声を聞きながら、コアジサイの花の中を行く。思ったより楽に登り切って稜線に出ると、神の谷コースとの分岐である。腰を下ろすと、涼しい風が頬をなで、降るようなセミの声に包まれ、恐ろしいほど山深い感じがする。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/18/9b/caccbfe173910dfd14dc690b9bd59dc1.jpg)
尾根通しに雑木林の中を登り、コル状になった処で右手が開け、真下に不動窟の赤い屋根と幟が見えた。静まりかえった中で突然、激しい物音がして大型の鳥が羽ばたきの音高く飛び立って、斜面沿いに滑空して行った。タカのように思えた。大きな岩を捲き、露岩混じりの痩せ尾根を行く。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/1d/d1/77c86d5d000f8c50661f71b536966d59.jpg)
やがて北側のヒノキ植林の切り開きから薊岳から明神岳、桧塚、迷岳へと続く稜線が一望されるようになる。行く手には鋭い頂を天に突き上げた白髭岳が見える。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/5f/45/b66378e9b79dbb2c7c10612f8c22268c.jpg)
緩く登って低い笹原の中の明るい小台地、小白髭に着く。北側の集落では、ここを白髭岳とか粉尾(そぎお)峠、これから登る白髭岳をアサクラ山と呼ぶそうだ。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/5c/a6/50a495cbf6363995a48321568d755590.jpg)
小うるさいほどの痩せ尾根のアップダウンがあり、目立つピークだけでも4つを越していく。50m近く下るところもあるが、ブナやヒメシャラなどの木影を行くので思ったより涼しい。三つ目のピークは大きな岩の右手を捲いて、まだらロープが取り付けてある急坂を登る。四つ目のピークに立つと、目の前にすっくと白髭岳が立ちはだかっている。緑の山肌に一群の真っ赤なヤマツツジが鮮やかである。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/2a/e5/d0fd71b6915ec50a02bbf72d0be28ded.jpg)
最後の急登を終えて白髭岳山頂に立つ。山名の由来となった白髭大明神の祠は今はなく、三角点の前に「今西錦司先生1500山目の山」の小さい石柱がある。側面には「一山一峯に偏らず。一覚一私に偏らず。錦司」とある。展望は南側が日出ヶ岳から三津河落山と続く大台ヶ原、その右(南西)に孔雀岳から弥山、大普賢、山上ヶ岳へと続く大峰の山々。その右に丸い小白髭のピークが低く見える。展望を楽しみながらのランチタイムを終え、東へ少し下ると、露岩が散在し、迷岳、赤山、池木屋山など東から南にかけての展望が大きく開ける。ゆっくり展望を楽しんで、元の道を帰った。
天候に恵まれ、誰一人にも出会わない静かな山を楽しむことができたが、流石に登り応えがあった。帰り道で白屋岳の登山口を探しに行って、そこの小母さんに「白髭岳には白い鷹がいる」と聞いた。私たちが小白髭の手前で見た大きい鳥は、白ではなく茶色だったが、やはりタカだったのだろうか。
【コースタイム】東谷出合(530m)8:15…水場8:55…神の谷コース分岐(1080m)9:55~10:05…小白髭(1282m)10:30~10:40…白髭岳(1378m)11:35~12:20…小白髭13:15~13:25…東谷出合14:55