【三 上 山】432m。湖東平野に浮かぶ独立峰で往事から街道を行く人の目印であった。守山付近から見ると美しい円錐形で近江富士と呼ばれるが、実際は雌雄のピークを持つ双耳峰である。頂上部には巨大な磐座があり、古くから西山麓にある御上神社の御神体山とされてきた。俵藤太氏郷が「瀬田の橋下に住む大蛇の願いで、三上山に棲む山を七巻半する大ムカデを退治した」という蜈蚣退治の話から「ムカデ山」という俗称がある。
御上神社より
【コースタイム】表登山口09:45…妙見堂址9:55~10:00…割石10:20~10:25…山頂10:50~11:05…近江富士花緑公園11:50~12:25…御上神社13:00
今年になって初めての丸さん夫妻との山行は、丸さんのご希望で三上山になった。私たちにとっては2001年以来、13年ぶり3度目である。ここ二、三日ぐずついていた天候も、今朝は抜けるような青空で明けた。名神高速道を栗東で降り、8号線に入って間もなく御上神社に着く。ちょうど同じころに到着した丸さん車の隣りに車を入れる。駐車場では遠足に来た中学生たちが腰を下ろして、先生の話を聞いていた。国道を渡って目の前のローソンで弁当を仕入れて出発する。
集落を抜けて登山口にくる。石の階段を登りイノシシ除けの柵を開けて山道に入ると、はるか上の方で生徒たちの声が聞こえる。
(1989年撮影)
神が岩上から釣りをしたという魚釣岩は崩壊が進んだためか、1989年に撮った写真にはない金網が掛けられていた。
岩の左手から登り出し、壊れた茶屋跡を過ぎて妙見堂跡の広場に来る。
八重桜が一本、美しく咲いていた。林の中、ジグザグの道をゆっくり登っていくと、「二越・20m」の標識が右手を指していたので行ってみる。露岩があり展望が開けて、僅かに登っただけなのにかなり下に田園風景が見える。引き返して少し登ると、また登山道を離れて右へ「割岩」を指す標識がある。少し登り気味に行くと鎖のかかった大岩があり、右手をまくと割れ目の上に来る。
前も潜ったことを懐かしみながら、身体を横にして割れ目に入り写真を撮り合う。岩の上の説明板のところで登山道と合流する。
次第に勾配が強まり、ところどころに手摺の設けられた姥ヶ懐の岩場にくる。ミツバツツジの花越しに眼下の近江平野が美しく眺められる。時々、降りてくる人と出会う。男子生徒、しばらく上では女子生徒がバテて座り込んでいる。先生と少し話を交わして登ると、展望台と名の付いた頂上の大岩の上に出た。
近江平野に浮かぶ菩提寺山、その向こうに阿星山、金勝アルプス、湖南アルプス、千頭岳、音羽山…比叡山と、これまでに歩いた懐かしい山々が居並んで迎えてくれる。しばらく腰を下ろして眺めていると、小さい子供を連れた家族が姿を見せたので場所を譲る。
すぐ上には注連縄を捲いた岩を前にして石の鳥居が立ち、その奥に小さい社があった。拝礼して裏側に回ると山名板のある小広場でベンチも置いてある。最高点らしいので三角点を探したが見当たらなかった。まだ昼には早いので昼食は少し先にして、写真を撮りあっただけで下山する。
若い女性二人が降りて行った後を追うように下っていくと、裏参道へ道を指す標識があったが、健脚向きと示された急坂の道に入る。次の分岐でも「一般向き」と分かれて「健脚向き」に入る。「花緑公園へ1.5km」の標識が現れた。裏参道へは戻れないと気付いたが、面倒なので、ゴロゴロの急坂を下り続ける。
水平な道に降り立って地図板を見ると、東山麓の近江富士花緑公園上部にでている。「一般向き」を行った先ほどの女性二人が降りてきた。聞くと地元の彼女らも御上神社へ帰るそうだ。ミツバツツジの咲く広い道をいくと、今は通行禁止になっている湿原入口を過ぎて、緑の芝生が拡がり満開の八重桜が咲き誇る美しい場所にでた。
何棟かのバンガローや付属のバーベキューができる設備もある。女性たちは木の間越しに見える車が走る道へ出た様子だ。私たちは芝生に腰を下ろして弁当を食べる。怪我の功名ながら、思いがけず最後の花見ができた。
公園のゲートを出て県道325線沿いの広い歩道を南へ歩く。右手は公園の湿原で木道が続いている。歩道と車道を隔てる低い石積に濃い紫色のスミレがずっと並んでいた。
公園が終わると様々な緑色が織りなす田園風景が広がり、タンポポや菜の花の黄色が彩を添える上にすっくと立つ近江富士の姿がある。西に回り込むように歩くと右手に若宮神社があるところで県道27号線にでて、ここからは北西に歩く。今まで三上山主峰の左に見えた女山が次第に右に移り、やがて国道8号線の御上神社前に出た。
御上神社は天照大神の孫神・天之御影之神を祭神とする古社である。楼門は国の重要文化財で入母屋造の檜皮葺きで二層になっている。
国宝の本殿も檜皮葺だが、神社では珍しい入母屋造りである。参拝後、ゆっくりと境内を参観して今日の山行の締めくくりとした。雲一つない青空の下、爽やかな気候で汗もかかず快適なハイキングだった。