7月、8月、9月と暑い夏が過ぎて、もう10月、今年もちゃんと秋が来た。年中で最も好きな季節だ。周囲の大気は温度と湿度を落としてグッと引き締まり、山々や野原も、道端や海岸に生える草木の色合いも、徐々に落ち着いたものに変わって行く。
50代になって海に復帰し、更に事務所に換気扇を導入して、かなりしんどかった夏バテから開放された、ということはどこかに書いた。今夏は元気が余って(いたわけでもないが)、徳島に8回も通い、毎回1~4泊はするから、3ヶ月のうち1ヶ月近くは、車中泊のキャンプ生活をしていたことになる。
「この夏はこれこれをやろう!」と心に留めておいた計画の、およそ半分は完了し、残りは未完了、というよりちょっと手を付けた程度で、この気分の良い秋の季節に持ち越されることになった。
未完了の計画の中には、数冊の本があった。加藤周一の『羊の歌』と英訳本"A sheep's song"を合わせ読むこと、丸山真男の『日本の思想』を読み込むこと、ニーチェの『ツァラトストラは・・・』にサラッと目を通すこと。
『羊の歌』はもう40年以上の付き合いで何回読んだかわからない。それがこの夏前に、「英訳本の中には何か欠けているものを感じる」などという感想がクラウス先生から出てきたものだから、これも読んでおかにゃしょうがないだろうということになって、早速、USアマゾンから取り寄せた。
これが岩波新書の上下二冊の体積比10倍くらいの大部で、薄いクリーム色の表紙で上品に装丁されたものになっていた。すでに何章かは読了したが、原著の何が「欠けている」かはまだ分からない。後の二冊は数ページをめくった程度でストップしている。
私は典型的な乱読型の一人で、これは「読書術」の続きで書くべきことなのだが、ことのついでに触れておくと、他にも継続的に目をさらしている本が数冊ある。本といっても紙ではない。いわゆるデジタルブック。キンドルとIpadには、B・ラッセルの主要著書をまとめた"Complete Writings" や E・フロムの"Escape from Freedom"などの間に、アメリカの作家サーファーが書いた小説"West of Jesus: Surfing, Science, The Origin of Belief" なんてのも混じっている。
気が向いたときに、気が向いた本から、気が向いた方法で読み始める。数ヶ月前から採用した方法に、「寝て読む」というのがある。ベッドの枕の上に所見台を取り付けて、上向きに寝たままIpadのキンドル本を読むのである。
普通、寝っころがっての読書は、頭を支える腕がじきに痺れて長い時間は続かない。それがこの姿勢でタッチパネルの利点を使うと、ちょっと驚くほど楽になる。しかも、身体姿勢はほぼ完全にリラックスしているから、活字の方もリラックスするのか、その内容が普段よりも、すんなり身体の中に流れ込んで来るような気がする。
多少の難点は、夜寝る前にこれを長時間続けると、頭が冴えてしまうということだ。下手をすると寝られなくなる。まあ、人間の頭は、ほんとに睡眠を必要としているときは、何があっても休止してしまうようにできてはいるから、そう案ずることもないのだが・・・。